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レクサス パスファインダー エアレーシング、室屋義秀選手のエアレースX参戦機体を公開
水噴射、サメ肌翼、新型パフォーマンスシートを投入する2026年シーズン
2026年7月7日 12:20
- 2026年7月2日 開催
室屋義秀選手が率いる「レクサス パスファインダー エアレーシング」は7月2日、福島県福島市のふくしまスカイパークにて取材会を開催し、2026年シーズンの「エアレースX」を戦うレース機体「Zivko Edge 540 V3」を公開した。
2026年シーズンのエアレースXは、6月28日に公開された開幕戦「Race 1」に続いて、第2戦「Race 2」が7月19日に公開、第3戦「Race 3」が8月16日公開、第4戦「Race 4」が9月13日に公開される。
取材会には、すでに今シーズンの全フライトの計測を終えた室屋選手が登壇。パートナーであるレクサス技術陣が、最新の機体のアップデートポイントや新開発の「パフォーマンス向上シート」について語った。
自動車由来のウォータスプレーで吸入空気を冷却
2025年シーズンの室屋選手は、最終戦でパトリック・デビッドソン選手に敗れ、シリーズランキング2位で終えた。チームが2026年シーズンに向けて最大の課題としたのが夏場のエンジンパワー低下。エアレースで使用される機体は過給機を持たない完全な自然吸気エンジンのため、高温多湿な日本の夏場は空気密度が下がり、出力が大幅に低下してしまうという。
この課題に対し、レクサスは自動車のラリーなどで培った「ウォータスプレー(水噴射)」の知見を航空機用エンジンに最適化して投入した。
機体開発を担当するレクサス パスファインダー エアレーシング テクニカルコーディネーターの中江雄亮氏は「高温多湿で空気密度が下がってしまうので、どうにかエンジンパワーを維持するために工夫を凝らしました。インテーク(吸気管)に水を噴射して、吸入空気を直接冷やす構造を投入しています」と解説。パイロットの背後に積載した5Lのタンクから、3分間のフライトでほぼ全量を噴射し尽くす冷却システムとなり、実戦では大きな効果を発揮しているという。
超々ジュラルミン製デフレクタを5軸NC加工で塊から削り出す
冷却効率を高めるためにカウリング内部の空気の流れを整えるデフレクタ(導風板)にも、レクサスの最新加工技術が投入された。従来は職人が板金で叩き出し、焼き入れと焼き戻しを繰り返して作っていた航空用アルミパーツを、トヨタ自動車で試作や生産技術を担う「ものづくりエンジニアリング部」の東富士チームが持つ5軸NC削り出し技術によって一体成形した。
素材には航空用アルミ合金である超々ジュラルミンを採用。インゴット(塊)から複雑な形状を丸ごと削り出すことで、継ぎ目のない圧倒的な強度と、コースや気候のコンディションに合わせて形状をCADですぐに変更・即時製造できる再現性を手に入れた。
中江氏は「非常に複雑な形状ですが、チームのメカニックがドイツ・ケルンに拠点を持つTOYOTA Racingのチームと技術交流をして、彼らがWEC(世界耐久選手権)などで培ってきた精密なものづくりのノウハウを入れて削り出しています」と、自動車レース直系の先進技術であることを強調した。
“サメ肌”加工で翼の摩擦抵抗を低減
機体表面の空力処理にも、新たなアプローチが試みられている。主翼の後方半分、色が切り替わっている部分には、流体力学の概念に基づいた“サメ肌”加工の「摩擦抵抗低減コーティング」が施された。
3分の1の模型を使った風洞試験で空気抵抗の低減効果を定量的にはじき出し、実機でのフライトテストでも明確なデータ差が確認されたという。
同機体でフライトをした室屋選手は、「表面に目に見えないレベルの微細な凹凸をつけることで摩擦抵抗を少なくしています。剥がして飛んだときと、つけて飛んだときで、明らかにデータの差が出るほどのアドバンテージがあります」との感触を述べるとともに、「早く自分のクルマでも試してみたいですね」などと、自動車への技術フィードバックにも意欲を示していた。
パイロットの身体能力を引き出す「パフォーマンス向上シート」
今回の取材会で最も注目を集めたのが、レクサスが主導して開発した新型シート。一般的な自動車のシートが目指す「ホールド性」や「快適性」ではなく、パイロットの認知・判断・操作という「身体パフォーマンスを能動的に引き出す」という全く新しい思想で設計されたシートとなる。
シートまわりの解説を担当したレクサス パスファインダー エアレーシング 操縦環境チームリーダーの尾崎修一氏は、「ただ姿勢を保つだけでなく、足のペダル操作(ラダー操作)に対して、いかに筋力を素早く、反応よく発揮できるかというアプローチです。足を内旋(わずかに膝を内側に入れる)させることで体幹を固め、筋肉の連動性を高める構造にしています。さらに、骨盤の固定の仕方や角度、あるいは外的な刺激をあえて入れることで、これまでにないパフォーマンスを引き出せることが分かってきました」と明かした。
データ即時開示の新ルールがもたらす、期限ギリギリの心理戦
取材日当日時点、室屋選手は2026年シーズンの「エアレースX」第4戦までのタイム計測をすでに終えている。今シーズンのエアレースXにおいて、戦い方を大きく変える要素となっているのが「データの即時開示システム」。
これは、各チームがフライトを終えた時点で、タイムだけでなくペナルティのカウント状況も含めたすべてのフライトデータが大会側のシステムへ即座にアップロードされ、全チームに開示される仕組み。これについて、室屋選手は「大会側もライバル同士の隙間を詰めて戦いを盛り上げるために、相手の戦略を開示するようにしたのだと思う」と分析する。
データが全開示されるため、本来であれば「相手の出方を見て、わざと順位を落としてトーナメントの当たり方を調整する」といった高度な戦略も可能になる。しかし、各チームの裏をかく心理戦が激化し、ライバルチームたちは手の内を隠すため、フライト締切の「最後の一刻」までデータをアップロードしなくなったという。
室屋選手は「本当はライバルのタイムを見ながら目標を定めて飛びたいですが、ライバルチームはみんな最後の一刻まで飛ばない(笑)。お互いに完全に手の内を探り合っている状態です。ただ、われわれは他人のデータに惑わされず、事前のシミュレーションで算出した最速のラップタイムを『チャンピオンデータ』として設定し、そこをターゲットに精度を上げていく戦い方をしています」と語った。
新たな空のモータースポーツ「エアレースX」の次戦「Race 2」は7月19日に公開され、さらに「Race 3」は8月16日公開、「Race 4」は9月13日公開と続く。ふくしまスカイパークという厳しい環境で「1%のスピードアップ」を積み重ねた室屋選手は、その勝利を確信している。












