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奈良スバルが人材育成に取り組む「レガシィB4レストアプロジェクト」
2005年式「レガシィB4」を現行スポーツモデルとのタイム計測に向けカスタマイズ
2026年7月27日 10:00
- 2026年7月22日 開催
スバルでは、全国の販売会社を販売実績やサービス実績、CS(顧客満足度)などから総合的に評価し、優れた販売会社を「ディーラー・オブ・ザ・イヤー」として表彰している。
この表彰を3年連続で受賞しているのが「奈良スバル自動車」である。奈良スバルは2011年の初受賞以来、2020年まで10回連続+2023年より3年連続受賞した実績を持ち、通算受賞回数は13回に上る。
奈良スバルはクルマの販売や整備だけでなく、人材の育成にも力を入れている。これまでもスバル360のレストアなど、通常業務では経験する機会の少ない整備や修復作業を通じて、メカニックの技術力を高める取り組みを行なってきた。
その新たな試みとして2026年にスタートしたのが、2005年式の「レガシィB4」を使用する「レストアプロジェクト」である。
今回の車両は大掛かりな修復を必要とする状態ではないため、経年劣化した部品の交換と、奈良スバルが取り扱う車検対応のスポーツパーツによるカスタマイズを行なう。パーツを段階的に交換しながらテスト走行を重ね、走行性能に生じるメリットとデメリットを検証していく計画だ。
作業にはベテランと若手のメカニックが共同で参加する。1つの車両を同じ目標に向かって仕上げていくなかで、ベテランが持つ技術や知識を若手へ伝えることも、このプロジェクトの大きな目的となっている。
期間は約1年を予定しており、完成後にはミニサーキットでスバルの現行スポーツモデルとタイム計測を含めた乗り比べを行なう予定である。
ベテランから若手へ、技術と知識を受け継ぐ場となるレストアプロジェクト
今回は、三重県鈴鹿市にある「モーターランド鈴鹿」で行なわれたテスト走行の現場で、プロジェクトをまとめる奈良スバルの萱原正啓氏に話を聞くことができた。
萱原氏は今回のレストアプロジェクトの目的の1つとして、ベテランメカニックと若手メカニックの間で、技術の伝承をスムーズに行なえる環境を作ることを挙げている。
通常業務とは異なる環境で、ベテランと若手が同じ目標に向かって共同作業を行なえば、普段よりも気軽にコミュニケーションを取ることができる。そのなかで、自然な形で技術や知識が伝わっていくことを期待しているという。
プロジェクトへの参加は会社からの指示によるものではなく、クラブ活動のように社員が自ら参加を表明する形式となっている。今回のテスト走行には、奈良スバルの5店舗から、若手メカニック4名、ベテランメカニック10名、営業スタッフ3名が参加していた。
プロジェクト車両は2005年式のレガシィB4。エンジンは280PSを発生するEJ20で、トランスミッションは5速MTとなる。
この車両は下取り車として入庫したものであるが、走行距離はなんと約1万4000km。ボディ、サスペンション、機関、内外装のすべてが良好なコンディションを保っていた。
この車両をベースにプロジェクトを進めていくのだが、写真を見ても分かるとおり、板金を伴うようなレストア作業が必要な状態ではない。今回は約20年という時間の経過によって劣化したパーツを交換することを軸に、奈良スバルで扱うことのできる車検対応のスポーツパーツを組み込んでいく。
最終目標は、レガシィB4の性能を現在のスポーツモデルと対抗できるレベルまで引き上げ、現行のスバル製スポーツモデルとミニサーキットでタイム計測を含めた乗り比べを行なうことである。
今後のプロジェクトの進め方について
今回のテスト走行では、公道では試すことのできないペースで走行し、クルマの特性や挙動を体験することを目的としていた。
この後はいよいよカスタマイズ作業に入るが、この「レストアプロジェクト」では、店舗ごとに作業内容を振り分けている。
まずは大和郡山店で、サスペンションの交換を行なう。その後、香芝店でシートやステアリングなど、ドライビングに関わるパーツを交換する。次に橿原店でブレーキ関連とホイール・タイヤの作業を行ない、奈良店と生駒店でエンジンやトランスミッションに関する作業を行なう予定となっている。
作業店舗を分けたのは、どこか1店舗に作業拠点を設けてしまうと、それ以外の店舗から参加するメンバーに、作業のたびに移動する負担が掛かってしまうためだ。
なお、自分の所属店舗では行なわない作業にも立ち会いたいという希望があれば、自由に参加することができる。そのため、希望すればすべての作業に携わることも可能となっている。
それぞれの店舗での作業期間は約2か月を目安としており、作業終了後には、その都度モーターランド鈴鹿でテスト走行を行なう予定である。約1年後の完成を目指し、その時点で現行のスバル製スポーツモデルとの走行比較を行なうスケジュールとなっている。
「大丈夫、何とかなるで!」と言えるメカニックになる
萱原氏からプロジェクトの概要をうかがうなかで、印象的だったのが「『大丈夫、何とかなるで!』と言えるようになってほしい」という言葉だった。
奈良スバルのメカニックは整備について学び、スバルが定める手順に沿って正確な整備を行なう技術力を身に付けている。人材としては十分に優秀なのだが、幅広い車種を扱う整備の現場では、セオリーどおりのチェックや作業だけでは対応が難しいケースもある。
そのようなとき、経験豊富なメカニックは、自らが蓄えてきた技術や知識の引き出しから有効な手段を導き出し、対処方法を考えることができる。
そして、不安そうな表情を浮かべるクルマのオーナーに向かって、「大丈夫、何とかなるで!」と声を掛けることができる。しかも、実際にトラブルを解決してしまうのだ。
そうした柔軟な思考と応用力を備えた人材が、このプロジェクトから育っていくことが期待されている。また、自らの技術力や知識の高さを実感することで、仕事への満足感や、やりがいをより強く感じられるようになることも、この取り組みの狙いとなっている。
若手メカニックはプロジェクトをどう受け止めたのか
最後に、当日参加した若手メカニックへのインタビュー内容を紹介しよう。最初は麻田拓真氏。入社してまだ1年と2か月ほどの新人さんである。以前は違うメーカーでメカニックをしていたとのこと。
プロジェクトに参加した理由は、このような実践的な技術習得の機会を作ってくれたことをスキルアップに活用したいという思いから。カスタマイズされたクルマは好きだが、これまで出来上がったクルマに乗ることはあっても、ノーマルから仕上げていくことは経験したことがなく、その過程を今回のプロジェクトで知ることができる点も魅力であるという。
今回はプロジェクト車両のドライブもしたが、その点については「走らせ方とかはよく分からないのですが、操作に対してこんなふうに反応するんだということを感じることができました」と語ってくれた。
入社5年目になる岸さん。整備士の専門学校を卒業して奈良スバルへ入社したとのこと。女性メカニックは数少ない存在であるだけに、どうしてこの道を選んだのかをまず伺ってみたところ、シンプルにクルマが好きで、それをきっかけにメカニックになってみたいと考えたからとのこと。
今回は事前にヘルメットとグローブを持参することと言われていたが、当初は助手席への同乗くらいのことを考えていた。ところがなんと自分で運転することになっていた。急に言われて戸惑う気持ちはあったが、せっかくの機会だとコースへ出る。そして感想は「めちゃめちゃ良い経験ができました」「こんな走りができるのか」といったものだった。
プロジェクトに関しては、サーキットという場所を使うことで作業の正確さだけでなく、スピード感も要求されることが自分の成長にとってメリットのあるものと考えているそうだ。
お父さまがクルマ好きでその影響を受けて自身もクルマ好きになったとのこと。奈良スバルに入社したのも、お父さまが「スバル車に乗りたい」と言ったことがきっかけになったそうだ。整備士の専門学校を卒業している方で、学校時代に二級自動車整備士資格を取得している。また、自分の趣味として軽自動車の耐久レースに参戦していて、今回のテスト走行の数日前にも、他のサーキットで耐久レースをしていたそうだ。
このプロジェクトでは、ハイパワーのクルマをベースにスポーツ走行向けのカスタマイズを進めていくところに魅力を感じた。高性能車に対してパーツを変えるとどのようになるかを知りたいし、油口さんの所属する店舗には4輪アライメントテスターもあるので、そうした機材を普段の仕事とは違った目線から活用していくことにも大いに興味があるとのことだった。
森岡氏も入社5年目とのこと。プライベートでは現行型のBRZに乗っていて、HKS製サスペンションキットやブリッツ製マフラーを組み込んでいる。サーキット走行会にも参加しているスポーツドライブ愛好家である。
森岡氏が在籍する大和郡山店は、サスペンションまわりの担当で作業はサスペンションキットへの交換だけでなく調整も含まれるので、調整した際にどのような変化があるのかを作業する立場から知ることができるのが楽しみだという。また、サスペンションキット交換に合わせてブッシュ類の交換も予定しているので、そうした作業に対しての変化がどうなるかについても興味があるとのこと。
今回の走行ではタイヤのグリップ不足とブレーキを踏み込んでも思っているような制動力が出てなかったことを感じたとのことで、その要因はどんなものかと聞いてみると「クルマが重たいことではないか」という返答だった。走り慣れている人らしい返答が聞けた。

























