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ボルボの安全は神話ではなくデータに基づいた成果!? セーフティエキスパートのロッタ・ヤコブソン博士に聞いてみた

子供とドライブするドライバーはぜひ読んで考えていただきたい

ボルボで37年にわたり車内安全を研究してきたセーフティのエキスパート、ロッタ・ヤコブソン博士の貴重な話を聞く機会があった

ボルボが考える自動車の「安全」とは?

 2027年で創業100周年を迎えるボルボは、1959年に3点式シートベルトを発明したり、チャイルドシートを車両環境でテストしたり、実際の事故現場に出向き自ら調査をして開発にフィードバックしたりと、早くから安全性能を重視したクルマ作りを続けてきた自動車メーカーだ。

 そんなボルボで、37年にわたり車内安全を研究してきたセーフティのエキスパート、ロッタ・ヤコブソン博士が来日し、子供の車内安全に関するセミナーを開催。子供の身体特性や実際の事故研究に基づいたチャイルドシートやジュニアシートの正しい使い方、「なぜその安全対策が必要なのか?」を細かく解説してくれた。

今回安全に対する取り組みを詳しく語ってくれたロッタ・ヤコブソン博士

 同時に、ボルボの安全思想の根底にある「人はミスをする」という考え方に基づいて開発された安全機能の一例として、先日発表された新型「EX90」「ES90」に搭載された「車内置き去り防止」に関する最新技術も紹介された。

ロッタ・ヤコブソン博士の経歴

常に安全の最先端を追求し続けているボルボの思想

 ボルボは常に開発プロセスの中心に「安全」があり、1970年からスウェーデン国内で衝突事故に遭ったボルボ車のもとへ社内の事故調査隊を派遣し、現在では約8万人以上にのぼる乗員のデータが蓄積されているという。

 2000年には、少なくとも1日1台は新車を衝突させてさまざまな検証を行なう「ボルボ・カーズ・セーフティセンター」をオープン。法規制要件よりもさらに過酷な条件でのテストを行なうなど、交通事故撲滅に向けての取り組みに重要な役割を果たしてきた。

ボルボ・カーズ・セーフティセンターをオープンさせ、事故データを独自に収集している

 そして1990年代には、側面衝突の安全技術で世界をリード。これまでに世界初の安全技術として、SIPS(側面衝撃吸収システム)、SIPS bag(サイドエアバッグ)、頭部側面衝撃吸収エアバッグであるIC(インフレータブルカーテン)、DMIC(ドアマウンテッド・インフレータブルカーテン)を実用化してきている。

ボルボはこれまでに4つの世界初技術を開発してきた

 こうした日々の研究開発によって、ボルボ車は着実に衝突事故における被害を軽減することに成功。これはシートベルト着用のドライバーの傷害リスクが、50年で約6分の1まで減っているというデータからもよく分かる。また1970年代は男性ドライバーに比べて女性ドライバーの傷害リスクが高かったが、現在ではほぼ同等の傷害リスクとなっている点も興味深い。これも、さまざまな体格・年齢・着座ポジションのちがいを踏まえながら研究を行なってきた成果だろう。

ボルボの安全に対する取り組みの進化

 だからこそ、ボルボは子供の安全についても並々ならぬこだわりを持って取り組んできたといえる。子供……特に乳幼児の骨格はもろく、大人と同乗して同じ衝突事故に遭った場合でも子供のほうがより大きな傷害を受けやすいからだ。長年の研究に基づき、ボルボは子供への最善の安全対策として、「最低でも4歳までは後ろ向きチャイルドシートを使用」すること。そして「身長140cmに達し、かつ10歳以上になるまではブースターシートを使用」することを強く推奨している。

ボルボは4歳までは後ろ向きチャイルドシートを、身長140cmかつ10歳以上になるまではブースターシートの使用を強く推奨している

ではなぜ“後ろ向き”チャイルドシートのほうが安全なのか?

 実際に車体が大破する衝突事故が起こった事例として、大人は骨折程度の傷害だったが、後席右側に座っていた2歳9か月の男児はブースタークッションに座っており、命を落としてしまった。後席左側に座っていた5歳8か月の女児もブースタークッションだったが、特に傷害はなかった。

ボルボが独自に集計し続けてきたデータに基づき、後ろ向きチャイルドシートの安全性が実証されている

 亡くなった男児は頸部、つまり首に重傷を負ったことが致命的だった。乳幼児は首の骨が未発達で、前向きに座っていると衝突時に前に大きな荷重がかかり、頭部の重さをほぼ首だけで支えることになる。それが後ろ向きなら、頭部と背中を同時に受け止めることでバランスよく支えられるため、傷害リスクや致死率が低くなる。また誤使用があった場合でも安全性が保たれやすく、ハーネスや取り付け時のたるみによる影響も受けにくいという。

首へのダメージをいかに抑制するかが重要なポイントになる

 日本では、警察庁とJAFのチャイルドシート使用状況全国調査(2023)で、着座時の誤使用が約55%にのぼるという結果が出ている。ISO-FIXの普及とともに、取り付けの不適正は減りつつあるようだが、最も多いのはハーネスの締め付け不足というデータが出ていて、ボルボの推奨するように後ろ向き装着にすれば、万が一の際にその影響を受けにくいというのはありがたいデータだ。

 さらに近年、ハーネスではなく胸パッドのようなもので固定するという「インパクトシールド型チャイルドシート」が販売されているが、ボルボはこれを推奨していない。肩が拘束されないため、車外に放出される危険性が高いからだ。

ボルボの後ろ向きチャイルドシートの歩み

 また新生児から乳児をフラットに寝かせるタイプのベビーシートもNG。厳密にいえば、未熟児として生まれた新生児を横向きに寝かせるベビーシートはあるのだが、最低でも45度、できるだけ垂直に近い角度で後ろ向きに座らせることが望ましいという。スウェーデンでは1960年代の導入以降、後ろ向きチャイルドシート使用時の死亡例はごくわずかだということが、何よりの証明だといえるだろう。

スウェーデンでは後ろ向きチャイルドシートが最も安全というデータがある

 続いてジュニアシートについて。世界初のブースタークッションを開発したボルボは4つのポイントを挙げている。まず、子供をシートベルトの適切な位置まで高くする必要があること。車両のシートベルトは大人を基準に作られているためだ。

 次に快適に座れる座面の長さを確保すること。腰ベルトを骨盤の上、太もも側にかけること。肩ベルトを胸と肩にかけること。子供をシートベルトの中にしっかり収め、腹部を守ることが重要だと説く。ジュニアシートの場合は、背もたれがあるものと、座面単体のものがあるが、これはどちらでも安全性に関する効果は変わらないという。

ボルボのブースタークッションの歩み
ブースタークッションもブースターシートも基本的に子供を守るのはシートベルトとなるため、シートベルトが機能する位置に座ることが重要となる

 保護者として気になるのは、「いつシートベルトのみの使用に移行すべきか?」という点だが、ボルボは5つのステップテストを推奨している。

1:子供が背中を車両シートの背もたれにつけて座れること。
2:子供の膝がシートの端で自然に曲がること。
3:腰ベルトが子供の太ももの上部にかかること。
4:肩ベルトが子供の首と肩の間にかかること。
5:走行中ずっと前かがみになったり横にかたむいたりせず、正しい姿勢で座っていられること。

 この5点をクリアしていることが重要だが、絶対にやってはいけないのは シートベルトが首に触っていると危険だと思い込み、脇の下を通したり、肩の後ろを通して腰ベルトのみで座らせる こと。

ブースタークッションはベルトのゆるみを低減するほか、側面衝突時にも有効

 これでは衝突時に腹部を守れず、傷害リスクが高まってしまう。ロッタさんの研究によれば、シートベルトが首に触っていても、衝突時には首から離れていく構造になっているため首が切れてしまう心配はないという。ただ、快適性の面では気になるものなので、洋服の首周りの生地を伸ばして首とシートベルトの間を保護するとよいとのことだった。

チャイルドシートは誤った装着状態では機能しない

置き去り防止はもっと重要視されるべき事案

 続いては、子供やペットの置き去り防止をサポートする安全装備について。今年もすでに、0歳児が車内に残され熱中症で亡くなったという報道があったばかりだが、子供の車内置き去りは世界的な社会問題になっている。ただし、これは故意や過失によるものは稀なケースで、多くは保護者が車内に人が残っていることを忘れてしまうのが原因。

子供やペットの置き去り防止をサポートするボルボ

 疲労や不安による注意散漫、直前の予定変更などが人の脳に「忘れる」という状態を引き起こすことにある。私も娘がまだ幼いころ、家事と仕事で手一杯になり、時間に追われていたり夫婦喧嘩をして気分が落ちている時など、うっかりしそうになったことが何度かあったのを思い出す。

 こういう時に、クルマが「第2の目」になって事故を未然に防ぎたいというのがボルボの考え方だ。新型EX90やES90に搭載されているのは、車内センサーを活用した車内置き去り防止システム。

置き去り防止のための車内センサー活用例

 レーダーによって、車内にいる子供やペットの呼吸による胸の動きなど、サブ㎜単位の微細な動きをエネルギー変化として検知するもの。そして車両をロックしようとした際にドライバーに注意を促すというものだ。センサーはトランク内までカバーし、もし注意を促しても解決しない場合はバッテリがある限り車内の空調を維持し、クライメートシステムが作動し続けるようになっている。

ボルボが搭載するシステム

今日から実践できる「子供との安全なドライブ」のための7つのポイント

今回の安全セミナーには多くのモータージャーナリストが参加して耳をかたむけていた

 最後に子供との安全なドライブのために、今日から実践できる安全のヒントを7つ、教えていただいた。

1:子供の体格と年齢に合ったチャイルドシートを必ず使用する。
2:できるだけ長く、少なくとも4歳までは後ろ向きチャイルドシートを使用する。
3:後ろ向きチャイルドシートを助手席で使用する場合は、前席エアバッグがオフになっていることを確認する。
4:チャイルドシートが正しく取り付けられ、子供がチャイルドシートに正しく固定されていることを確認する。
5:ブースターを使用する際は、以下を確認する。
・腰ベルトが骨盤の上、太もも側にかかっていること。
・肩ベルトが胸と肩にかかっていること。
6:ブースターシートを使用する子供には、シートベルトプリテンショナーと優れた総合保護性能を備えた、安全なクルマが重要。
7:子供やペットを、絶対に車内に放置しない。

ロッタ・ヤコブソン博士の安全に対する熱い思いがたっぷりと込められたセミナーだった

 今の日本は、多くの親世代が子供のころにはまだチャイルドシートの重要性が知れわたっていなかったため、「なぜチャイルドセーフティが重要なのか?」を大人に対して粘り強く伝えていくことも大切だ。

 同時に「子供をチャイルドシートなしで乗車させることは、道路の真ん中を歩かせるのと同じくらい危険な行為です」という、ロッタさんの言葉が強く印象に残った。ぜひ周囲のドライバーや家族にこの事実を周知していただければ幸いです。