ニュース
BYD、新型「ATTO 3 EX」解説とともにコンパクトクラスの新PHEV「ATTO 2」導入を予告
2026年9月30日 18:17
- 2026年9月29日 実施
BYD Auto Japanは9月29日、コンパクトBEV(バッテリ電気自動車)新型「ATTO 3 EX」の発売に合わせて、市場動向や業績、最新技術に関する説明会を実施した。
グローバル累計267万台達成と海外市場での急成長
登壇したBYD Auto Japan 代表取締役社長の東福寺厚樹氏は、2026年1月~8月におけるBYDのグローバル販売実績を公表。世界累計販売台数は267万台に達し、月別推移では「年初の1月と2月に一時的な伸び悩みを見せたものの、3月以降は急速に回復軌道に乗っている」と説明。
市場別内訳では、競争が激化する中国国内市場が151万台(前年同期比41%減)と減速傾向にある一方で、海外市場向け販売が116万台(同86%増)と飛躍的な伸長を記録していると強調した。
また中国国内では、政府の支援策見直しや景気減速、Xiaomi(シャオミ)やHuawei(ファーウェイ)といった通信系新規参入メーカーの隆盛により一時的に押されているものの、ブラジル、オーストラリア、イギリス、メキシコ、ドイツなど世界各国での原油高・ガソリン価格高騰を背景としたBEV需要の急増が追い風になっているという。
さらにインフラ面では、5月より導入を開始した1.5MW(メガワット)の超高速充電ステーション「スーパーチャージャー」を中国国内で年内2万基設置する目標を掲げ、すでに1万か所の開設を完了。イギリス(600か所計画)やインドネシアなどの海外市場へも順次展開を始めていて、メガワット充電対応車両の拡充とともにBEV需要を牽引していると事業の好調さをアピールした。
日本国内のBEV&PHEV市場とBYDの販売実績
日本国内市場の動向(2026年1~8月)については、国内の全乗用車市場が前年並み(前年比1.4%増)で推移するなか、国産乗用BEVは前年同期の4260台から4万454台へと約8.5倍に増加。輸入乗用BEVもテスラなどの牽引により2万9000台規模(同1.5倍)へ伸長し、乗用車全体におけるBEVシェアは従来の1.5%から3.1%へと倍増していると説明。
こうした環境のなかで、BYDの国内BEV販売台数は1427台(前年同期比32%減)となった。この要因について東福寺氏は、「今年4月より適用された国のCEV補助金の上限額が、従来の35万円から15万円へ減額された直接的な影響」と分析。
一方、2025年12月に投入したBYDのPHEV(プラグインハイブリッド)モデル「シーライオン6」が1670台を登録。BEVの減少分(約800台)を補って余りある実績を上げ、国内輸入PHEVカテゴリーではトップシェアを獲得。また、BEVとPHEVを合わせたBYD全体の国内登録台数は、前年同期比+38%の成長を達成したという。
軽BEV「ラッコ」の受注実績と納車状況
7月28日に発表した軽自動車BEV「ラッコ(RACCO)」の受注状況については、9月27日時点での受注累計は1832台に達していると報告。また、受注ユーザー内訳としては、新規ユーザーが82%、BYD既存オーナー(乗り換え・増車)が12%、紹介などが5%と、購入者の8割以上がBYD初購入の新規ユーザーとなり、狙い通りブランドの裾野を広げるエントリーモデルとして機能。グレード別では、250万円を切る価格設定と320km(WLTCモード)の航続距離を備えた最上位グレード「ラッコ 300 プレミアム」に受注の85%が集中していると明かした。
ボディカラー構成は定番の「ホワイト」が最多ながら、新色の「チーズイエロー」や「ミッドナイトグリーン」も高い支持を獲得している。
デリバリーに関しては、世界的なバッテリ需要の逼迫により「ラッコ 300」系のバッテリ供給が一時的にタイト化し、現在約1300台のバックオーダーが発生していると明かした。ただし、直近より出荷が再開され、増産体制と本国からの増便により「11月中旬までにはバックオーダーをおおむね解消できる見込み」と東福寺氏は説明。なお、ベースグレードの「ラッコ 200」は即納可能な体制が整っているとのこと。
新型「ATTO 3 EX」の投入と2か月後の「ATTO 2」国内予告
東福寺氏は、今回発表した新型ATTO 3 EXについて、「2023年1月の参入以来、国内で累計2684台を販売してきたロングセラーの正常進化モデル。駆動方式をFWDからRWDへ刷新し、AWDの追加や足まわりの全面新設計など、フルモデルチェンジに近いアップデートを遂げた」とアピール。
最後に、「約2か月後(11月下旬)には、コンパクトクラスの新たなPHEVモデルとなる『ATTO 2(アット ツー)』を日本市場へ導入します。このサイズ感のPHEVは国内初導入となる予定です」と発表。相次ぐ新車投入により国内での製品ラインアップを急速に拡充し、日本のBEV/PHEV市場における存在感を一段と高めていく構えを示した。
「アウターパネル以外はほぼ完全新設計」フルモデルチェンジ級の進化
続いて商品企画部の田川博英部長が登壇。「今回の刷新はマイナーチェンジという位置づけですが、フロントフェンダー、ルーフ、バックドアの鉄パネル以外はすべて変えていて、実質的にはオールニュー、フルモデルチェンジ級の進化を遂げています」とアピール。
新名称の「EX」は、バッテリの大容量化(74.88kWh)により、WLTCモードの一充電走行距離を従来の470kmから、RWD(後輪駆動)モデルで620km、AWD(四輪駆動)モデルで550kmへと飛躍的に拡大し、遠出やロングドライブへの安心感を高めたことによる「EXTEND(生活を広げる)」。
また、従来のFWD(前輪駆動)からRWDへと駆動方式を変更した上で、最高出力330kW(449PS)、0-100km/h加速4.0秒を達成するAWDモデルを新設定。雪道走行からスポーツドライビングまで幅広い選択肢を提供する「EXPLORE(選択肢を広げる)」。
さらに、前席センターコンソールに保温(最高50℃)と冷蔵(最低-6℃)に対応した車載温冷蔵庫を新採用。500mlペットボトル4本を収納可能とし、車内での新たな体験価値を提供する「EXPERIENCE(体験を広げる)」と、日々の生活や体験を拡大する3つのEX(コンセプト)が込められていると説明。
現行モデルのユーザーの9割が男性、40~50代ファミリー層が中心
現行モデルユーザーやターゲットユーザーについて田川氏は、「一般的な国内乗用車市場では保有者の約60%が50歳以上であるのに対し、現行ATTO 3のオーナーは40代・50代が約6割を占め、全体平均よりも若い年齢層に支持されています。また、テクノロジーへの関心が高い初期需要ということもあり、所有者の9割が男性である点も特徴です」と説明。
また購入理由としては、「価格と性能のバランス」が高く評価されていて、購入者の55%が他社製EVと比較検討した一方で、残る45%はガソリン車やハイブリッド車(HEV)と比較した上で最終的に選択したという。ちなみに新型ATTO 3 EXでも、この40~50代の合理的・先進的なファミリー層をメインターゲットに据えるという。
コラムシフト化で洗練された室内空間と充実の機能装備
外観デザインは、一見すると従来型のフォルムを継承しているように見えるが、樹脂パーツ類やヘッドランプハウス、アルミホイールのデザインを全面変更。リアは、ハイマウントストップランプ付きのスポイラーや、メビウスの輪と「中国結び」を意匠化した新しいリアコンビネーションランプを採用。サイドモールも従来のシルバーからブラックへと統一し、引き締まった印象を与えた。ボディカラーは新色の「ルビーレッド」を含む全5色展開。
インテリアは、従来のブルー基調からシックなグレー基調へと変更し、イエローステッチでアクセントを追加。ステアリングホイールやスイッチ類も一新したほか、シート形状もヘッドレスト別体のセパレート構造へと変更している。
また、シフトレバーはステアリングコラム右側のコラムシフトへと変更。これにより広くなったセンターコンソールには、前述の車載温冷蔵庫や2台同時充電が可能な50Wワイヤレス充電器など機能的な装備が配置されている。
充電性能の強化とユーザーに寄り添う「充電予熱」「5段階電流制限」
続いて技術顧問の三上龍哉氏が、新型ATTO 3 EXに採用している技術について説明を実施。新型はリン酸鉄リチウムイオン(LFP)の「ブレードバッテリ」の容量を、現行の58.56kWhから74.88kWhへと大幅に拡大。これに合わせて急速充電の最大受電能力も85kWから100kWへと引き上げられているという。
三上氏は、自身が実際にテストした実測データを提示し、「外気温34℃、路面温度約40℃という厳しい条件のもと、150kW急速充電器を使用して充電を行なったところ、SOC(バッテリ残量)30%から82%までの30分間で44.3kWhの給電を達成しました。これはRWDモデル換算で約366km走行分の航続距離をわずか30分で回復できる性能であり、日本国内の超高速充電インフラでも非常に高い実効充電速度を発揮します」と効率のよさを紹介。
続けて、「新型には、冬季朝一番の急速充電速度低下を防ぐ『充電予熱機能』に加え、普通充電時の供給電流を任意に落とせる『電流制限機能(5段階調整)』を新たに実装しました。契約アンペア数が低い家庭(40A契約など)で、エアコン使用中にBEVの充電を行なってもブレーカーが落ちないよう任意に調整できます」と新型に備わる利便性を説明した。
RWD/AWD化と高出力化を受け止める「ダブルジョイント式ストラット」
また、運動性能面における最大のトピックは、「駆動方式が従来のFWD(前輪駆動)からRWD(後輪駆動)およびAWD(四輪駆動)へと刷新された点」と言及。
フロントサスペンションには、新たにダブルジョイント(デュアルボールジョイント)式のマクファーソンストラットを採用。コントロールアームを2本の独立したリンク構造とすることで、ステアリング操舵時の回転軸(キングピン軸)をよりタイヤ中心に近い最適な位置に配置。さらにキャスター角を約3度寝かせるアライメント変更を行ない、直進安定性とステアリングの復元性を高めたという。
また、AWDモデル(最高出力330kW/449PS)の高出力化と重量増に対応するため、スプリングの固有振動数を13Hzから16~17Hz(スポーツサスペンションに相当するバネレート)へと引き上げ、ショックアブソーバーの減衰力を強化。バネ下・バネ上の無駄な揺れを抑え込み、接地感の高いニュートラルなハンドリング特性を作り上げている。
さらにAWDモデルには、高度な駆動制御「iTAC(インテリジェント・トルク・アダプテーション・コントロール)」を搭載。モーター内のレゾルバセンサーが0.022度単位でスリップの予兆をミリ秒単位で検知し、ホイール空転を防ぎながら低ミュー路での安定走行を可能にした。
中国国家規格(GB)を超える「1000J底面衝撃試験」と「塩水浸水試験」
新型に搭載されるバッテリパックは、ボディ構造の一部とする「CTB(Cell to Body)」技術を採用。アルミケース底面にはグラスファイバーコンポジット製の堅牢なアンダーカバーと緩衝材が配置されている。
またBYDでは、中国の法的国家規格(GB規格)や、保険自動車安全指数(C-IASI:CHINA INSURANCE AUTOMOTIVE SAFETY INDEX)が規定する試験を上まわる厳しい自社基準を設定。27.4kgの先端が尖った重頭を3.7mの高さからバッテリ底面に落下させる「1000J(ジュール)底面衝撃試験」を実施し、強烈な衝撃を与えてもバッテリの変形・発火・爆発が一切起きないことを確認しているという。ちなみに最近改定されたGB規格の基準は300Jなので、3倍以上の大幅に上まわる内容でテストを行なっている。
さらに、突起物への乗り上げ・引きずり試験や、水深1mの3.5%塩化ナトリウム水溶液(塩水)に2時間没させる「塩水浸水試験(IPX7適合)」も実施。導電性の高い塩水環境下でも漏電や絶縁低下、内部浸水が起きない高い密閉度と絶縁性能を担保している。
最後に三上氏は、「中国市場のGB規格やアセスメント(C-NCAP、CIASI)は法的拘束力を持ち、市場のユーザーから声を受けると、目まぐるしいスピードで厳格化されています。BYDはこうした過酷な検証をパスした高い安全性と耐久性を誇るバッテリ・車体構造を、日本市場のモデルにもそのまま投入しています」と信頼性の高さを強くアピールした。
6年15万km保証と75%のユーザーが加入する「E-Passport」
最後にアフターセール部の山本直樹部長が登壇。山本氏はまず、BEVに対する一般的な顧客意識の調査結果を提示。自社アンケートにて「バッテリの劣化」や「故障時の高額な修理費」への漠然とした不安を抱くユーザーが一定数存在することに触れ、それらを払拭するために設定した手厚いアフターサービス体系を説明した。
新車保証に関しては、軽BEV「ラッコ」で好評を得ている「6年15万km」の新車保証とロードアシスタンス(6年間・24時間365日対応)を、「新型ATTO 3 EXにもそのまま適用します。これは一般的な国産車の3年6万km、特別保証5年10万kmをも大きく上まわる、クラス最高水準の手厚い体制を整えています」と説明。
また、車検や定期点検をパッケージ化した「E-Passport(メンテナンスパック)」は車検込みで約14万円前後の価格設定となっており、購入者の約75%が加入しているという。10万円を超えるメンテナンス商品において7割を超える加入率は、業界的にも非常に高い水準であると強調した。さらに、BYDではバッテリまわりも、高電圧部品全般を8年15万kmまで補償するほか、SOH(State of Health:バッテリ健全度)に対する最長10年30万km(有償延長含む)の保証を設定している。
SNSの「壊れやすい」「部品がない」といった漠然とした不安にも言及
続いて山本氏は、SNSなどで散見される「BEVは故障しやすい」「中国からのパーツ供給が遅い」といった不確かで漠然とした不安な声があることに対して、「24時間対応ロードアシスタンスの出動実績データでは、出動理由の大部分は12V鉛の補機類バッテリのトラブルや、タイヤのパンク、NFCカードキーの磁気トラブルなど日常的な内容レベルであり、車両そのものの重大な不具合(保証修理対象の不動)による出動率はわずか0.85%(1%未満)に留まっています。これは輸入車ブランドの平均値と同等以下の極めて低い水準です」と解説。
部品供給体制については、「横浜・大黒ふ頭の国内倉庫にて約7000アイテムの純正パーツを常時在庫管理していて、国内即納率は97%を達成。航空便(2~3週間)や船便(2か月以内)による本国からの補充ルートも完備しており、安定した補修環境を構築している」と盤石の態勢だと強調した。
走行10万km超の車両でもバッテリSoHは平均97%をキープ
最後に山本氏は、全国のディーラーに入庫した実車353件のバッテリ診断ソフトウェア測定結果を公表。日本導入初期に納車され、3年目の車検時期を迎えて走行距離が5万km~7万kmを超えた車両や、なかには10万kmも超えた車両もあったが、ブレードバッテリの平均SoH(State of Health:バッテリ健全度)は97%という極めて高い数値を記録。
1000日(約3年)経過時点や5万km以上走行しても、ほとんど容量劣化が進行しないリン酸鉄バッテリならではの強みが実証され、山本氏は、「実際の測定データが示す通り、長期間・多走行でも安心して乗り続けていただける耐久性を備えています。今後も手厚いアフターサービスで国内のカーライフを支えていきます」と説明会を締めくくった。

































