「NISMO FESTIVAL」リポート 歴代のGT-RやZが集結、2010年のFIA仕様GT-Rも初公開 |
NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は12月6日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)において「NISMO FESTIVAL(ニスモフェスティバル)」を開催した。快晴のもと、約2万9000人の観客が集まった。
NISMO FESTIVALは、1年間に渡って行われたNISMOのさまざまなモータースポーツ活動を応援したファンに対して、感謝を込めて開催するファン感謝デーで、今年で13回目を迎える。
オープニングではNISMOの柿元総監督が挨拶を行った |
■ピットに展示された歴代のレーシングカー
ピットにズラリと展示された歴代GT-RやフェアレディZは、ファンによる投票で組み合わせを決める「オールスタードリームバトル」のほか、来年度のFIA(国際自動車連盟)GT選手権に参戦する2010年仕様の「NISSAN GT-R」が登場する「GT-Rワールドチャレンジ」を筆頭に、GT-Rだけでレースを行う「GT-Rスペシャルバトル」などに参戦した。
展示車両には、ハコスカやケンメリといった第1世代のGT-Rや、1999年にル・マン24時間制覇を目指して開発されたNISSAN R391、1992年にJSPCシリーズタイトル獲得と、デイトナ24時間の2レースの制覇を目標に掲げたYHP ニッサン R92CPなどもあったが、これらの多くは昨年はコースを走行したのだが、今年は展示のみとなった。
■オールスタードリームバトル
オールスタードリームバトルは、現役ドライバーはもとよりSUPER GTなどで活躍する監督も含め、好みのペアをファンが選んで投票するというイベント。そして今回、2000票を越える票数を獲得した星野一義監督と星野一樹選手、柳田春人氏と柳田真孝選手という“親子タッグ”が誕生した。しかも、星野ペアが乗るのは2002年にJGTCに参戦した「カルソニックスカイライン」で、柳田ペアが乗るのは“Zの柳田”の異名どおり、2006年にSUPER GTに参戦した「MOTUL AUTECH Z」だ。
途中リタイアした星野ペアのカルソニックスカイライン |
グリッドは影山正美選手&藤井誠暢選手ペア(XANAVI NISMO Z:2007年 SUPER GT)、柳田春人氏&真孝選手ペア(MOTUL AUTECH Z:2006年 SUPER GT)、田中哲也選手&セバスチャン・フィリップ選手ペア(ザナヴィ ニスモ Z:2005年 SUPER GT)、本山哲選手&安田裕信選手ペア(当初MOTUL PITWORK GT-R:2003年 JGTCの予定だったが急遽1998年ペンズオイルGT-Rに変更)、近藤真彦監督&荒聖冶選手ペア(ザナヴィ ニスモ GT-R:2003年 JGTC)、星野一義監督&一樹選手ペア(カルソニックスカイライン:2002年JGTC)、松田次生選手&ブノワ・トレルイエ選手ペア(ザナヴィ ニスモ GT-R:2002年 JGTC)、長谷見昌弘監督&横溝直輝選手ペア(ニスモテストカー:2002年 JGTC)、ロニー・クインタレッリ選手&J.P・デ・オリベイラ選手ペア(ペンズオイル・ニスモ GT-R:1999年 JGTC)の順。
周回数は9周で、その中でドライバーの交代が義務づけられる。2周のフォーメーションラップののちローリングスタート。最初にドライバー交代を行った長谷見/横溝ペアがみごとに優勝、以下柳田ペア、近藤/荒ペアと続いた。星野ペアは残念ながらリタイアに終わったが、レース中には星野一義監督がどこからか持ってきた黄旗を振って他車に「追い越し禁止」の注意をしていた。この時点で星野ペアの順位は最下位で、追い越されることはない。つまり氏の心憎い演出というわけである。こうしたパフォーマンスに、観客席からは大きな声援があがっていた。
GT-Rワールドチャレンジに参加した面々 |
■GT-Rワールドチャレンジ
GT-Rワールドチャレンジでは、2009年に初めてFIA GT選手権にテスト参戦した、ゼッケン35をつけた「NISSAN GT-R」をミハエル・クルム選手がハンドルを握ったほか、今回のNISMO FESTIVALがお披露目となる、2台の2010年仕様「NISSAN GT-R」(以下、FIA GT-R)がデビューした。ドライバーは本山哲選手とブノワ・トレルイエ選手。また、過去に世界で戦ったZEXEL SKYLINE(1991年 Gr.A)を長谷見監督が、NISMO GT-R LM(1996年 ル・マン)を星野監督がドライブして登場する予定だったが、NISMO GT-R LMはマシントラブルのため残念ながら不参加となった。
2010年仕様のFIA GT-Rに搭載されるエンジンは、5552cc VK56DEで、最高出力600HP、最大トルク650Nm以上で後輪駆動。ボディーサイズは4730×2040mm(全長×全幅)で、ホイールベースは2780mm。サスペンション形式はフロントダブルウィッシュボーン、リアマルチリンク。これら公表された主要諸元は2009年仕様と大きく変わらないものの、フロントのトレッドは1670mmから1675mmに変更されている。ホイールサイズは前後とも13.0J×18。
コースをパレード走行したのちに、メインスタンド前では各選手とNISMOの眞田裕一社長のインタビューが行われた。今年開発ドライバーを担ったミハエル・クルム選手は「2010年仕様はハンドリング性が一段と上がり、レベルアップした」と言う。
また、眞田社長からはFIA GT選手権はワークスチームが参戦できないため、現在パートナーチームを探しているとし、テストドライバーを行っているミハエル・クルム選手については「現在準備中の段階ではあるが、マシンの性能は向上しているし、今年以上に頑張ってもらえると思っている」と、来年度もドライバーを務める可能性を示唆した。
当日はミハエル・クルム選手が2010年仕様に乗る場面も | ミハエル・クルム選手と入念に打ち合わせをしていたのはブノワ・トレルイエ選手 | NISMO GT-R LMがマシントラブルのため、出走しなかった星野監督とニスモの眞田裕一社長 |
今年FIA GT選手権にテスト参戦した2009年仕様のFIA GT-R |
左からスパ24時間耐久レースに参戦したZEXELスカイライン(R32型)、2009年仕様FIA GT-R、2010年仕様FIA GT-R |
2010年にFIA GT選手権に出場予定のNISSAN GT-R |
グリッドウォークには、多くの来場者が参加 |
■GT-R スペシャルバトル
GT-R スペシャルバトルは、数多のレースで歴史を作ってきたGT-Rだけが参加するイベント。大きくGr.A参戦車両(3台)、JGTC参戦車両(6台)、SUPER GT参戦車両(4台)の3世代から計13台がエントリーした。そのまま走ったのでは差が開いてしまうため、SUPER GTマシンはドライバーとタイヤ交換、JGTCマシンは30秒のピットストップが課せられるハンディキャップが設けられた。SUPER GTマシンのタイヤ交換時はピットワークのタイムアタックも実施。レースは10周で、スタート前には来場者がマシンと選手らと触れあえるグリッドウォークも実施された。
参加マシンとドライバーは、MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ:2009 SUPER GT)、HASEMI TOMICA EBBRO GT-R(ロニー・クインタレッリ/安田裕信:2009 SUPER GT)、IMPUL カルソニック GT-R(松田次生/セバスチャン・フィリップ:2009 SUPER GT)、HIS ADVAN KONDO GT-R(J.P・デ・オリベイラ/荒聖治:2009 SUPER GT)、MOTUL PITWORK GT-R(影山正美:2003 JGTC)、ザナヴィ ニスモ GT-R(田中哲也:2003 JGTC)、ザナヴィ ニスモ GT-R(柳田真孝:2002 JGTC)、カルソニックスカイライン(星野一樹:2002 JGTC)、ペンズオイル・ニスモ GT-R(横溝直輝:1999 JGTC)、ペンズオイル・ニスモ GT-R(藤井誠暢:1998 JGTC)、ユニシア ジェックス スカイライン(長谷見昌弘:1993 Gr.A)、カルソニックスカイライン(星野一義:1990 Gr.A)、STPタイサン GT-R(近藤真彦:1992 Gr.A)。
レース展開は、やはり同世代ごとにグループが分かれる展開で、なんと言ってもGr.Aの3台に注目が集まった。負けず嫌いで知られる星野監督と長谷見監督のバトルでは、お互いにダンロップコーナーをショートカットするという意地の張り合いで、ある意味ガチンコバトルを楽しませてくれた。近藤監督もショートカットするも、マシントラブルによりリタイアした。
ダンロップコーナーをショートカットし近藤監督を抜き去る星野監督。このあと、長谷見監督と近藤監督もショートカット |
また、ピットでのタイムアタックは、HIS ADVAN KONDO GT-Rが21秒32で1位を獲得したが、2位のIMPUL カルソニック GT-Rは互角で作業をこなし、ほぼ同時でコースインする展開を見せ、観客を大いに沸かせていた。なお、NISMOワークスチームは左フロントタイヤの交換に手間取り順位を落としたが、最終的には1位でゴール。
MOTUL AUTECH GT-R |
HASEMI TOMICA EBBRO GT-R |
IMPUL カルソニック GT-R |
HIS ADVAN KONDO GT-R |
MOTUL PITWORK GT-R | ザナヴィ ニスモ GT-R | ザナヴィ ニスモ GT-R |
ペンズオイル・ニスモ GT-R |
ペンズオイル・ニスモ GT-R |
ユニシア ジェックス スカイライン |
カルソニックスカイライン | |
STPタイサン GT-R |
各ドライバーや監督と触れあえる絶好の機会のグリッドウォーク |
このほかにも、マーチのワンメイクレース「MARCH Cup エキシビジョンレース FINAL」やフェアレディZだけが参加する「Z-Challenge エキシビジョンレース」、各レースマシンの隣に乗れる同乗走行が、レーシングコースで行われた。
日産自動車のタバレス副社長は昨年に続き今年もMARCH Cupに出場 |
今回がラストレースのMARCH Cup | 柳田真孝選手は日産のエースナンバー装着車で出場 | |
星野一樹選手も出場 |
Z-Challenge エキシビジョンレースには谷口信輝選手らも参加 |
同乗走行で各マシンに乗り込む来場者。なんとも羨ましい経験をしていた。バスに乗ってコース内を疾走するレーシングカーを間近で見られるサーキットサファリも行われた |
パドック側のイベントエリアにはさまざまなグッズを出展メーカーが展示・販売するほか、スタンド側のイベントエリアでは日産とNISMOのグッズ販売コーナー、子供向けのレーシングカート体験試乗会(プロドライバーによるチーム対抗戦デモレースも実施)、実際のレースで使用されたホイールやメカニックウェアを販売するガレージセールがなど開かれた。
■パドック側イベントエリア
■スタンド側イベントエリア
レースで使われたアイテムが多数並んだガレージセールコーナー |
京商ブースにはGT-Rに関連する製品がズラリと並ぶ。塗装済みボディーも参考出品 |
Omori Factoryワールドでは、大森ファクトリーのスタッフにより午前中にエンジン分解デモ、午後には組み立てデモが行われた |
エンディングでは各ドライバー、監督が勢揃い |
■「来年こそはチャンピオンを奪回すると心に誓いたい」
イベントの最後には、選手を代表して本山選手と、鈴木豊監督、眞田社長らから挨拶があった。本山選手からは一年間応援してくれたことへの謝意が語られ、こうしてファンと触れあえたことに対してドライバーやスタッフ陣も嬉しかったと言い、「年1回に限らず、こうしたイベントをもっとやっていきたい」と抱負が述べられた。
また、鈴木氏からは、GT500であと一歩のところで優勝を逃したことについて「本当に申し訳ありませんでした」と話し、「来年こそはここにいる皆様の熱い声援に応えてチャンピオンを奪回すると心に誓いたい」と述べた。
眞田社長は「SUPER GTでは必ず良い結果が残せるようにしたい。また、どこの国で行われるかスケジュールは決まっていないが、FIA GT選手権への出場も予定しているので、ぜひ応援をお願いしたい」とし、イベントが締めくくられた。
日産ファンにとっては、NISMO FESTIVALはレース本番とはまたひと味違った雰囲気でレーシングマシンやドライバーたちと接することのできる、数少ない貴重なイベント。冒頭で記載したように、昨年と比べて出走車両が若干減ったものの、日産づくしのフルコースに、来場者は満腹だったようだ。
選手を代表して本山選手が御礼の挨拶 | 「チャンピオンを奪回すると心に誓いたい」と述べた鈴木豊監督 | 「来年も応援をお願いします」と眞田社長 |
(編集部:小林 隆)
2009年 12月 9日