ブリヂストン、「B・フォレスト エコピアの森 横浜 in 道志」開所式
横浜市の水源地区を森林整備

「B・フォレスト エコピアの森 横浜 in 道志」開所式

2010年6月5日開催



 ブリヂストンは6月5日、山梨県道志村に「B・フォレスト エコピアの森 横浜 in 道志」と名付けた森林整備活動区域を設けた。これは、神奈川県横浜市の水道局が行っている水源林整備「水源エコプロジェクト(W-eco・p ウィコップ)」が、同社が従来から進めてきた森林整備活動「B・フォレスト エコピアの森」と環境に対する考え方などで同様のものがあることから実現したもの。

 同社は、低燃費タイヤ「ECOPIA(エコピア)」の売上げの一部を使っての森林整備活動を、福岡県久留米市、栃木県那須塩原市、山口県下関市と、事業所や工場のある地域などで順次行っており、コンベヤベルトや免震ビルの免震ゴムなどタイヤ以外の化工品を生産する横浜工場が神奈川県にあることが、そのきっかけとなっている。

B・フォレスト エコピアの森 横浜 in 道志は、「道志の森キャンプ場」の奥にある。キャンプ場から25分ほど山に向かって歩くと、横浜市の水源であることを示す看板が見えてくるさらに歩き、三ヶ瀬川を越えると開所式の会場三ヶ瀬川には真新しい木製の橋が架かっていた。これは開所式の前日、ブリヂストンや横浜市水道局の協力によって作られたもの。ブリヂストンのスタッフ曰く「石橋(同社の創業者の姓で、社名の由来)ではなく木製です」
三ヶ瀬川の透明度は非常に高い除幕を待つ、開所式会場
開所式で挨拶を行う横浜市水道局 事業推進部担当課長 松元公良氏

 横浜市から道志村まで約50~60kmほど離れているが、横浜市はなぜこのような遠くに横浜市は水源を求めたのだろう。開所式で挨拶に立った横浜市水道局 事業推進部担当課長 松元公良氏は「横浜の歴史は幕末に国際港として開かれたことに始まる。外国船など遠距離の航海をする船が多く、港では航海時に必要となる水の積み込み作業が発生する。横浜では良質の水を確保するために相模川の上流に水源を求め、1887年(明治20年)に日本初の鉄の水道管を使った水道を完成させた」と言い、安定的に良質な水を確保するため、1916年(大正5年)に道志村から約2900ha(横浜スタジアム約1100個)の森林を水源かん養林として買い取った。

 水源かん養林に雨や雪が降ることで、ミネラルを含んだ水源となるのだが、この水は船乗りから“赤道を越えても腐らない”と評判が立つほど良質なものだと言う。横浜市水道局は昨年、道志水源かん養林を守り育てていくために、企業からの支援プログラムである水源エコプロジェクトを開始し、ブリヂストンは約11ha(横浜スタジアム約4.5個)をエコピアの森 横浜 in 道志として支援していく。


ブリヂストン 横浜工場長 幾田英樹氏

 ブリヂストン 横浜工場長の幾田英樹氏は「近年、干ばつなどにより森林の荒廃が問題となっている。間伐など適切な整備を行うことで森の活力を取り戻し、生物多様性の保護やCO2吸収力の向上、水の浄化や保持などさまざまな環境保全に貢献できる。ブリヂストンは2005年から那須塩原市でB・フォレストという森林整備活動を行ってきた。この経験と実績を活かすことができることもあって水源エコプロジェクトに参加した」と言う。

 間伐などの森林整備活動は、日常的な作業は横浜市水道局が行うものの、年に何度かは同社従業員も参加するとした。実際、開所式の後、初の間伐体験を水道局とともに開催した。


道志村 大田昌博村長

 この開所式には地元道志村の大田昌博村長も参加し、「横浜市とは水によって100年を超えてつながっている。道志村ではこの水を“舌の先から腹の底まで蕩かすような水晶のような水”と表現しており、日本一おいしい水とも言われている。こうした水を守るための努力を行っているが、いろいろな事情で(森の)手入れが行き届かない部分もある。そういった部分を企業のCSR活動で支援していただけるのはありがたい」と謝辞を述べた。


ブリヂストンのスタッフ(左)、横浜市、道志村のスタッフ(右)によって除幕式が行われた除幕された看板には、B・フォレスト エコピアの森 横浜 in 道志の名前が刻まれている
左からブリヂストン 横浜工場長 幾田 英樹氏、同社 執行役員田籠敏氏、道志村 大田昌博村長、横浜市水道局 事業部長 島田和久氏ブリヂストン、道志村、横浜市水道局によって記念植樹も行われた。植樹された木はヤマボウシで、“友情”の意味を持つ

 開所式の後、横浜市水道局がサポートし、ブリヂストン 横浜工場の従業員とその家族が参加する間伐体験が行われた。

 作業は伐採する木に、ロープをかけることから始まる。なるべく高い部分にローブをかけたほうが木を倒しやすいため、4mほどのハシゴを使って木に登っていく。落ちると危険なため墜落防止のための安全帯を使っていた。その後、倒す方向の木の根元に、ノコギリで“く”の字状の切り込み(受け口)を入れ、逆側には直線状の切り込み(追い口)を入れていく。この作業には時間がかかっていたようで、1個所の受け口を入れるのに3~4人が交代しつつノコギリを引いていた。

 受け口と追い口が入れば、ロープで引くことで木は倒れた。倒れた木は、枝などを切り取り、4m単位に切断して所定の場所に運ばれていた。間伐された木は、4m単位の木材として出荷されていく。

間伐体験は、開所式会場からさらに5分ほど登った場所になる危険な作業を伴うのでヘルメットを被る。間伐で使用するノコギリは腰に付ける間伐する木にハシゴを立てかける。およそ4mほど
幾田横浜工場長が率先して参加。腰に安全帯を巻く。万が一のための準備できるだけ高いところにロープを取り付ける。これは倒しやすくするため木の根元に“く”の字状の切れ込みを入れ、受け口を作る
斜め切りは力の入れ方が難しいようで、苦労していた交代しながら切り進んでいく
受け口を作成。木は手前に倒れるようになる受け口と反対側に、ノコギリで追い口を作る受け口と追い口ができたら、ロープを引く
木が倒れていく。地面が柔らかいためか、音はそれほどしない
木の切断面。右側が受け口木の長さを竹で測る。竹1本の長さは2mなので、2度測ると目的の4mが算出できる4mの場所で切断する。倒れた木の上面には圧縮方向の力がかかっているため、本来は下面から切る。うまく切れなかったため、水道局のスタッフが両側をかかえて持ち上げ、ノコギリの刃が木に入っていくようにした
小枝を切り払う4mに切り出した木を所定の場所まで運ぶ。水をたっぷり含んでいるせいか、大人4人がかりでも重かったとのこと

 この間伐作業には幾田横浜工場長も率先して参加。幾田氏は、「普段工場ではノコギリなどを使っての作業は行わないため、体のあちこちが痛くなった」と言い、「やはりプロの方は、力の使い方がうまい。間伐作業は最終的には人の手でやらなければならないと改めて感じることもできた。多くの人が参加することで、より森林の手入れを行えるのではないか」と、森林整備作業の大変さと、支援の必要性を語っていた。

(編集部:谷川 潔)
2010年 6月 7日