奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2010」【後編】
カメラマンシートは、初企画ながらおおむね成功


 前編では、練習走行が行われた金曜日の模様をお届けしたが、後編では雨となった土曜日、そして一転して快晴となった日曜日の模様をお届けする。

豪雨となった土曜日
 2日目は天気予報どおり、残念ながら雨となった。11時がセッション開始なので、8時に名古屋市内を出発。伊勢湾岸道に乗る際に鈴鹿IC(インターチェンジ)と、その手前の四日市JCT(ジャンクション)が渋滞しているとの表示が出ていた。四日市JCTの渋滞はみえ川越ICまで延びていたので一つ手前の湾岸桑名で降りて国道23号を鈴鹿に向かった。途中のスーパーで買い出しをし、10時前に駐車場に到着、雨も降っているので1コーナーゲート近くの駐輪場に自転車を駐めB席に入った。

B1席に落ちる水滴を係員が工夫したシートで排水溝に流していた

 当初は小雨が続く程度かと思っていたので、午後の予選に備え午前中のフリー走行も走るだろうと考えていたが、スタンドに着く頃にはかなりの雨量となっていた。B席は古くからあるスタンドで1階部分も雨が落ちてくる状況だった。係の人はB1席の頭上の柱から落ちる雨水対策に追われていた。柱にヒモをかけビニールシートを張り、ビニールシートが舞い上がらない様に水の入ったペットボトルを重しにして、溜まった水はペットボトルを切ってつないだフレキシブルホースで排水溝に流すという、なかなかの工作だ。

 我々の席はB2席で2階なのだが、雨にくじけB1席後ろで雨宿りをしているうちにセッションが始まった。友人2人は、「今日はここでいいや」とB1席後ろで立ち見を決め込んだ。筆者は取材パスがあるので、C席で撮影をしようと思っていたが、あまりの雨にしばらく様子を見ることにした。

 各チーム、インストレーションでコースに出るが、そのままピットに戻り誰も走らない状態が続いた。アルグエルスアリ選手が走り出したので、筆者も雨の中、意を決してC席に移動した。昨年の雨のセッションも最後は走ったので後半に期待だ。

 結果はご存じのとおりマクラーレンの2人が少し走ったが、ほとんどのチームは走行を再開することもなくセッションは終了した。走行を待つ間に近くの階段から流れる雨水を撮影したのだが、B席に戻る途中に滝のように雨水が流れる階段があった。結果としてはこれが、この日のベストショットとなった。B席に戻ると、前日は「J席いいねぇ」と言っていた友人が「やっぱB席はいいねぇ」と勝手なことを言っていた。


C席でジッと我慢の観客。ちなみに傘は飛ぶおそれがあるので使用禁止少しだけ走行したので撮ってみた
観客席を流れる雨水を見つけて撮影B席側ではもっと凄いことになっていた。この日のベストショット

 すでにジーンズは膝上までビッショリ濡れていた。友人2人をB席に残し、用もないのだが、一応取材センターまで移動することにした。やっとの思いでたどり着き取材センターの1階でポンチョを脱いでいると、オグたんこと小倉さんが、いつもの満面の笑みで話しかけてきた。ずぶ濡れで気も滅入る状態だったが、少し気分が晴れやかになった。

 取材センターに移動したのは正解だった。結果として予選は中止になったので、室内でダラダラと時間を潰すことができた。この日は予選の後に行われるポルシェカレラカップの終了後に、カメラマンシートの特典の1つである原富治雄氏によるワンポイント講座が、逆バンクオアシスのカメラマンインフォメーションで予定されていた。

 予選が中止になったので、さっさと帰りたいところだが、ワンポイント講座が20分遅れで行われることになったので逆バンクに向かった。午前中のセッション終了から豪雨の中ですでに4時間以上が経過していることもあり参加者は20名ほどだった。予定時間の30分は、司会者の質問に答える形式で行われた。

 企画段階からアドバイザーとなっていた原氏は、カメラマンシートの5万5000円の価格を聞いて、800人の定員に対し200人程度だと思ったら600人が購入したことに驚いたとのこと。金網の中で撮っているプロのカメラマンと、観客席から撮るアマチュアカメラマンの温度差に対する不安など、企画段階からの苦労話を語った。カナダグランプリは金網に撮影用のカメラホールがないため、自分で金網を黒のつや消しに塗って撮影したことなどを紹介し、ヘアピンの金網を黒く塗った経緯を説明した。原氏からも参加者に来年以降への希望を聞くと、カメラバッテリーの充電用のコンセントの提供など、実現できそうな意見も出ていた。

 予定の30分で一旦終了したが、そのまま質疑応答形式で原氏は参加者の質問に答えていた。手ブレ補正は使っているかとの質問には「ピットでの撮影では使用するが、コースの撮影ではOFFにしている」。マシンを後ろから撮るのが難しいとの質問には「近付いてくるマシンはフレーム内で徐々に大きくなってくるから撮りやすいが後ろ向きはフレームアウトしたところから始まるので難しい。ファインダーを覗かないほうの目も使ってマシンの動きを見ると撮りやすくなる」と1つ1つ丁寧に回答をしていた。質問が出終わった頃に、筆者から参加者に満足度を聞くと、50%と100%の人が1人ずつ、多くの参加者は70~90%の満足度だった。もし晴天が続いていたら、さらに満足度は高くなったであろう。質疑応答は30分も続き、終わった頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

カメラマンシートインフォメーションでワンポイント講座が行われた講師を務めたF1フォトグラファー原富治雄氏講座修了後も質疑応答が続いた

快晴の日曜日
 日曜日は15時スタートなので昼前に出発と思っていたが、10時から予選が行われることになったので7時出発となった。友人2人は東京と福岡から来たので、朝寝坊できることを見込んで予定した飲み会を行ったので少々お疲れ気味で日曜日の朝を迎えた。

 日曜日に予選、決勝を行うワンデーレースはF1史上2回目。前回は2004年の鈴鹿で、歴史に残るワンデーレースなのだが、そのことよりもそのレースがEOS 20D購入直後のデビューレースだったことが鮮明に記憶に残っている。

 この日はほとんど渋滞することもなく鈴鹿に到着。友人2人は1コーナーゲート近くの駐輪場へ。筆者は逆バンクで予選を撮ることにしたので、逆バンクゲートからサーキット入りした。

 前日の天気予報では9時頃まで雨が残ると思われたが、出発前からすでに青空が見えていた。コースは一部にウェットパッチが残っていたがほぼドライ。予選、決勝がドライだとレッドブルの独走になってしまいそうだが、前日の雨を思い出せば、晴れてよかった言わざるを得ない。

 予選はQ1、Q2、Q3と3回に分けて行われる。各ラウンドの間にインターバルがあるので、近くなら撮影ポイントを移動することも可能だ。予選Q1は逆バンク進入を正面から、Q2は逆バンクのクリッピングを流し撮り、Q3はC席横のカメラマンシート専用エリアに移動して撮る作戦を立てた。

 Q1とQ2は同じ逆バンク内なので移動の問題はなし。Q2の流し撮りはクリッピングを通過するマシンを横から撮るパターンと、S字から逆バンクに進入するマシンを小さめにして、スローシャッターで撮るパターンで撮ってみた。

 Q2終了後にスタンドを見回すとD席後方のカメラマンシート専用エリアは黄色いビブスで埋め尽くされていた。S字方面を見ると昨年ガラガラだった席が多くの観客で埋まっていた。それは1人のF1ファンとしてとても嬉しいことだった。ただし、カメラマンシートの席であるD席1エリアはかなり空席が目立っていた。この席の購入者はすぐ後ろのカメラマンシート専用エリアやヘアピン、スプーンなど専用エリアに移動して撮影しているため、どうしても空席になってしまう。仕方ないとはいえ、少々残念に感じられた。

予選Q1は正面から撮影Q2は横の流し撮りと、進入部分のスローシャッターによる撮影
D席後方のカメラマンシート専用エリアは黄色いビブスで埋め尽くされていた逆バンクからS字方面のD席2~4エリアの観客席。昨年はガラガラだったが、今年は多くの観客で埋まったカメラマンシート席は、チケット購入者が撮影のために上段の専用エリアや、ヘアピン、スプーンなどの専用エリアに移動したため空席となっているところが多かった

 Q2が終わった段階で、大急ぎで逆バンクからC席横のカメラマンシート専用エリアに移動を開始。途中D席5エリア後方のカメラマンシート専用エリアをチラッと確認して、Q3開始ギリギリにC席横の土手にたどり着いた。C席横、S字のカメラマンシート専用エリアは土手全体ではなく、ロープで斜めに区切られた範囲となっていた。このロープはC2席最上段の観客がS字方向を見たときに、立って撮影するカメラマンが視界を遮らないという配慮だと思われる。筆者がこの場所で撮るときは、土手の中段まで降りているが、一般観客との共存のため仕方ないだろう。

 この場所はS字の進入を流し撮りしたり、正面に回り込んで撮ったり、S字2つ目に向かうマシンを後方から狙ったりとバリエーションが豊富なのだが、10分のセッションだけだったので、今回は流し撮りだけで終了した。

 予選が終了したので、S字から見える観客席を見回すと、どの席もそれなりに観客が入っている感じだった。急遽開催された午前中の予選なので、決勝が始まる頃にはさらに観客は増えているだろう。

こちらはS字、D席5エリア後方のカメラマンシート専用エリアC席のS字側の土手もカメラマンシート専用エリアC席横、S字のカメラマンシート専用エリアは土手全体ではなく、ロープで斜めに区切られた範囲
S字一つ目の進入を流し撮りD席5エリアも多くの観客で埋め尽くされていたA2席ピット側ブロックも午前中からほぼ満席状態
A2席1コーナー側のブロックは少し空席が見えたC席後方にはベビーカー置き場も設置されていた

 11時に予選が終了し、15時の決勝までは4時間あるので取材センターに向かった。グランドスタンド裏に着くと、今年もすべてのドライバーの写真が設置されていた。昨年は四角い板にドライバーの写真が貼ってあったが、今年は人物の形に切り取られているので肩を組んで撮影できる構造になっていた。人気チームの前には記念撮影を待つ列ができていた。

 すぐ隣はPit-FMのブースでラジオの貸し出しを待つ人が長蛇の列をなしていた。GPスクエア全体も観客で大混雑、はるか遠くにステージも見えたが、近付けそうにない雰囲気だった。国内レースが開催されたときに募集していたF1キッズデザインコンテストの結果が発表され、ペイントされたマシンも展示されていた。

昨年は大きな板に写真が貼られていたが、今年は人物の形に切り取られているのでドライバーと肩を組むことも可能Pit-FMの貸出ブースは長蛇の列となっていた予選終了後のGPスクエアは多くの人で賑わっていた
F1キッズデザインコンテストの結果が発表されていた実際にペイントされたマシンも展示サポーターの名前が書かれた「もっと鈴鹿、もっと感動」の巨大パネル

 パドックへ通じるトンネルに、妙なポスターが貼られていた。8月のSUPER GTのときには気付かなかったので、今回のF1のために用意されたのだろうか。SUPER GTのときには観客で埋め尽くされることもあるパドックトンネルだが、F1開催時は関係者とパドッククラブのお客さんが通るだけなので閑散としている。ジョーク混じりのポスターの真意は不明だが、ここを通った方は筆者のように「何だこれは?」と思っただろう。トンネルを抜けると着物を着た女性がパドッククラブのお客様をお迎えしていた。海外から来た方にはインパクトがありそうだ。

国内レースでは混雑しているパドックトンネルも閑散としている。こんなポスターが貼られていたここまでは真面目だが……どうしたらトンネルからコースに登れるのか?
ご注意と言われても……ハイ出ないかもしれない……いや出ないはずだ
トンネルを抜けると、パドッククラブの入り口では着物の女性がお出迎え

 決勝前にはアイルトン・セナ生誕50年記念「F1デモンストレーション走行」とドライバーズパレードが行われた。F1デモンストレーション走行はピットビルの2階テラスから見た。走行したマシンはロータス97Tとロータス78でブルーノ・セナ選手と佐藤琢磨選手がドライブした。ロータス78は筆者がF1に興味を持ち始めた頃のマシンで、黒に金色のJPSはとにかく格好良く見えた。おそらく多くのF1ファンの記憶に残る1台だろう。

 テラス下のピットロードを見ると、そこを歩いていたSUPER GTやフォーミュラ-・ニッポンに参戦している井口卓人選手と目があった。井口選手も気付いて、いつものくったくのない笑顔を見せてくれた。可夢偉選手の活躍を見ると、井口選手が早くF1に乗る日が来て欲しいと思った。

 ピットロードがにぎやかになってきたので筆者もピットロードに降りてみることにした。丁度ドライバーズパレードが始まったのでピットウォールの隙間からカメラを構えた。大半のドライバーは観客席の方を見ているので、ピット側からの撮影はイマイチだった。決勝開始まで1時間半。各チームのピットを見るとタイヤ交換用のエアガンが用意され初日に見たときよりも、グッとレースっぽい雰囲気となっていた。

ドライバーズパレードの先導車は、F1のセーフティカーに使われているメルセデスベンツ SLS AMGほとんどのドライバーは観客席に向かって手を振るのだが、バトン選手がピット側を見てくれたアロンソ選手は正面を向いてスタート
ヒュルケンベルグ選手我らが可夢偉選手もこちらを向いて手を振ってくれた
決勝1時間半前だったのでエアガンも取り付けられていたウィリアムズは4本取り付くタイプトロロッソは先端で2つに分かれ、各2本ずつエアガンが付くタイプ
フェラーリは……まだホースが付いていないルノーのピットウォールは8人掛け。モニター上部のペットボトル入れが微笑ましいモニターはサムスン製でした
フォースインディアはまだノンビリムードザウバーは誰もいなかった

 決勝30分前。各車がピットアウトしグリッドにマシンが並べられた。30分前になるとほとんどの観客が自分の席に座るので、大観衆の前にF1マシンが並ぶ風景を撮りたいとV2席の最上段まで上がって撮影した。V2席の1コーナー側に移動してもう1枚、さらにA1席、A2席でも撮ってB2席にたどり着いたときはフォーメーションラップ直前だった。

満席となったV2席11エリア付近からスタート直前の様子V2席10エリア付近からの様子スタート直前のA1席
A2席のピット側のブロックA2席の1コーナー側B2席も多くの観客が観戦していた
B2席からA1席とA2席を見るとほぼ満席に見えるA2席の1コーナー側ブロックもほぼ満席C1/C2席は少し空席があったが、2000枚完売の小林可夢偉応援席はぎっしり観客で埋まっていた

 決勝は観戦モードなのでカメラより先にFMラジオを準備。待ちに待った決勝が始まった。スタート直後いきなりアクシデント発生。その瞬間はカメラも構えていなかった。仮にファインダーから見ていても、先頭の数台を見てしまうのでマッサ選手のクラッシュに気付くのはコースを外れてからだったと思われる。

 たまたま目の前にマッサ選手が止まったので一応撮影。帰宅してテレビで見ると、マシン後方からの映像には大破した左サイドポンツーンが映っていなかったのでご覧いただきたい。レースが少し落ち着いたので、観客席の様子なども撮影。C1/C2席の2コーナー側が少し空席が目立ったが、他のスタンドは遠くから見た感じは観客で埋まっていた。実に素晴らしい光景だ。

スタート直後、目の前でマッサ選手が止まった。テレビ中継では映らなかったが左側は大破していたリスタートしたポイントトップ5台

 B2席の2階は高さもあり、コースもよく見える観戦には最高の席。しかし、撮影にはそれほど向いていない。カメラは手元にあるので、標準ズームで広角のスローシャッターを撮りながら観戦した。レース内容はというと、小林可夢偉選手の大活躍でサーキットは大いに盛り上がった。土曜日の雨にはガッカリしたが、可夢偉選手の活躍で大満足の日本グランプリとなった。

観戦向きの席なので、望遠ではなく広角スローシャッターで撮ってみたヘアピンで順位を上げた可夢偉選手が2コーナーに来ると大歓声ゴールした可夢偉選手にスタンドから拍手と歓声が送られた

 レース終了後は自転車を駐めた逆バンクゲートに向かった。逆バンクゲートを出ると正面ゲート方面に登る坂は通行止めになっていて、歩行者天国のようにスムーズに移動することができた。金曜日から置きっぱなしにしてきた自転車を積み込み、17時過ぎに駐車場を出発。国道23号は少し混んでいたので海側に逃げて四日市市内を通過。その後は渋滞もなく6時にみえ川越ICを通過、1時間チョットで名古屋市内の自宅に帰宅することができた。

決勝終了直後、観客の大移動が始まった逆バンクゲートを出ると交通規制が行われていたので、片側は歩行者天国状態だった

 今年の日本グランプリは、筆者としては満足度が高かった。決勝レースで盛り上がったこともあるが、金曜日が自由席となり、鈴鹿らしい自由な雰囲気が感じられる日本グランプリになったことが大きく影響しているように思う。

 チケットの販売価格や企画シートなどの新たな試みもよかったと思われる。D席2エリア、O席などの価格が見直され、昨年ガラガラだったスタンドを多くの観客が埋めてくれたことも雰囲気を盛り上げた1つの要因だ。若干空席が目立ったC2席は少し価格を下げたほうがよいのかもしれない。金曜日にあふれるほど人が集まったI席は仮設スタンドを復活させたほうがよい気もする。大改装後、2回目となる日本グランプリだが、昨年より今年はよくなったので、また来年に期待が持てると感じている方も多いだろう。

 サーキット周辺はそれなりに渋滞するものだが、アクセスの分散化などの効果もあり、今年もそれほど大きな渋滞はなかったようで、ネットの掲示板などでも昔と比べると随分スムーズになったとの書き込みも見受けられる。筆者も20年ほど前は正面ゲート近くの路上で1時間以上1mmも動かなかった経験がある。それから外に駐めるようになったのだが、多くの観客が歴史を積み重ね、それぞれの観戦スタイルを確立してきたことも渋滞緩和になっているのかもしれない。

 個人的に注目していたカメラマンシートは、おおむね成功した企画だと感じられた。強いて言えば、カメラマンシートの観客がカメラマンシート専用エリアに移動してしまうため、逆バンクにポッカリ空席ができていたことが少々気になった。カメラマンシートを購入する方は、席はいらないのかもしれない。その分1万円でも安くしたほうが、喜ばれるような気もする。あるいは、どこの指定席を購入しても、オプションとしてカメラマンシート専用エリアを購入できる形式もありえるだろう。例えばA2席とカメラマンシート専用エリアをセットで購入とか、J席とセットで購入とかができれば、観戦スタイルの幅も広がるし、スタンドの一角がポッカリ空席になることもない。

 原富治雄氏の講座でも、今年が初めての企画で手探り状態で進められたとの発言もあった。来年はもっと満足度の高い企画に発展しそうな期待もある。サーキット側から緑の金網を黒のつや消しに塗っていいと言われれば、スプレー持参で撮影に行く人だっていそうな気がする。1年経ったら撮影ポイントの多くが黒い金網になっているかもしれない。今回のカメラマンシートは、鈴鹿サーキットがアマチュアカメラマンを大切に思う気持ちも垣間見られ、筆者はこの先に期待を感じさせてくれたと思っている。

 個人的には金網外の最強環境で臨んだF1日本グランプリだったが、しょせん身体は1つ、セッションは5回(雨のためマイナス1回)。限られた時間の中で移動して撮影できるポイントには限界があった。ヘアピンだけ見ても進入側でも撮ってみたいし、スプーンもさまざまな位置から撮影は可能なエリアだ。限られた時間の中では、それなりに移動して撮れたとは思うが、腕の限界もあるので、結果はこんなものだろうといった感じだ。

 鈴鹿サーキットで行われるF1日本グランプリが確定しているのは来年までだ。2012年以降は現在交渉中と言われている。富士スピードウェイで行われた2年を含め、1987年から24年間続いている日本グランプリだが、自動車を取り巻く環境、経済状況などを考えると、突然開催されなくなる可能性もある。もし可夢偉選手がフェラーリやマクラーレンに乗ってチャンピオン争いをするときが来たとして、そのとき日本グランプリが開催されなくなっていたらどれほど悲しいことだろう。サーキットに足を運ぶF1ファンも、テレビで観戦するF1ファンも、1人1人がF1日本グランプリを支えていく気持ちを持っていただければと思っている。素晴らしいレースを見て、筆者自身も微力ながら貢献して行きたいと感じた日本グランプリだった。

(奥川浩彦)
2010年 10月 15日