首都高、中央環状線の看板落下事故会見 看板を固定する打込式ピンに問題か |
首都高速道路は、7月16日に首都高速 中央環状新宿線 山手トンネル内(外回り)初台南出口付近で発生した案内看板落下事故について事故調査委員会を設置し、その調査結果の取りまとめを12月13日に発表した。
この事故は、7月16日2時45分ごろに重量1.6t、4.5×0.55×1.7m(幅×奥行き×高さ)サイズの内照式案内看板が本線上に落下したもので、案内看板の鉄枠を固定していた日本ヒルティ製の打込式のピン20本すべてが引き抜けたというもの。
この事故発生により、原因調査と復旧作業を実施するための構造検討を行うため、横浜国立大学の池田尚治名誉教授を委員長とする「初台南出口付近案内看板落下事故調査委員会」を設置。7月22日に行われた第1回委員会を皮切りに、全4回の委員会を開催。今回発表された内容は、4回の委員会の内容を取りまとめたものとなる。
記者会見には、首都高速道路 取締役常務執行役員 恵谷舜吾氏と事故調査委員会 池田尚治委員長らが出席し、事故の概要を説明した。
首都高速道路 取締役常務執行役員 恵谷舜吾氏 | 事故調査委員会 池田尚治委員長 |
委員会によれば、事故現場を調査したところ打込式ピンに破断、変形はなく、打込式ピンの打ち忘れや穴径の過大、穴深さの過小もなかったと言う。しかし、打込式ピンの引き抜き試験を行ったところ、ピンの引き抜きに対する抵抗値にばらつきがあったと言う。
当初、日本ヒルティより首都高速へ報告された引き抜き抵抗力は、7-8kN~11-12kN(平均値9.8kN)だったが、現地調査では1-2kN~11-12kN(平均値6.1kN)と、引き抜き抵抗力が打込式ピンによってばらつきがあるうえに、平均値そのものが低いという結果となった。
これを受け、事故調査委員会で審議した復旧構造(ボルト構造)で再び固定することを決定するとともに、万が一ボルトが損傷しても落下しないよう、落下防止ワイヤーを設置する。事故現場の案内看板はこの方式で12月5日に復旧しており、山手トンネル内で同構造を持つ残り22基については、ボルト構造への変更を2011年2月までに完了させる予定。
山手トンネル内には打込式ピンを用いたトンネル内施設用支持金物や耐火パネルがあるが、これらはすべて点検済みであること、また案内看板と構造が異なることから落下の危険はないとしているが、2011年1月から順次補強を行うとしている。なお、首都高速全体で打込式ピンを使って案内看板を固定しているのは、この山手トンネルのみとなる。
こうした結果を受け、同社が実施する再発防止策は次の3点としている。
・トンネル内付属物取り付け構造の設計においては、本委員会で審議された復旧構造を基本に、多面的な安全性検討を踏まえた設計を行う。
・新材料などを採用する際に実施する、設計、施工における品質確保のための方策について、弊社が行うべき事項、工事請負者が行うべき事項をそれぞれ定める。
・上記再発防止策が確実かつ継続的に実施されるよう、設計、施工の品質管理を統括する部署において、定期的にフォローアップを行う。
恵谷氏は「事故が起きたのが未明だったため走行中のクルマに当たらなかったが、これが渋滞時であれば大惨事になる可能性があった。不安感を与えてしまい、申し訳ない」と述べたほか、引き続き事故の検証を弁護士らを交えて行い、打込式ピンの製造元である日本ヒルティや、看板設置を行った鹿島建設などへの対応を検討していきたいと語った。
ペンの横にあるのが打込式ピン(左)。かなり小型のものだが、これで約1tの荷重に耐えられると言う | 打込式ピンの代わりに用いられるボルト(左)。かなりサイズが異なる |
(編集部:小林 隆)
2010年 12月 14日