クラッシュ続出!! 激しいバトルが展開された「WTCC日本ラウンド」
決勝日は、日本開催として初めて好天に

好天の中開催された「WTCC日本ラウンド」

2011年10月23日決勝開催



 WTCC(World Touring Car Championship、世界ツーリングカー選手権)の日本ラウンドが、10月22日、23日の2日間にわたり、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。WTCCは、FIA(世界自動車連盟)が公認する4つの世界選手権(残り3つはF1、FIA GT、WRC)のうちの1つで、実際に市販されている乗用車を改造したレーシングカーで争われるレースとなり、ヨーロッパを中心に日本、中国などを含む世界各地を転戦している。

 第10戦にあたる日本ラウンドは、鈴鹿サーキットの東コースを使って行われた。ドライバーチャンピオンを争う、シボレー・ワークスの3人(イヴァン・ミューラー、ロバート・ハフ、アラン・メニュ)の3人を軸に激しいレースが展開された。

シボレー超特急が駆け抜けた2011年のWTCCチャンピオンシップ
 WTCCに利用されているのは、S2000(スーパー2000)と呼ばれる規定に基づいた車両。連続する12カ月間に2500台以上が生産されているなどの条件を満たしている必要があり、ワンオフのスペシャルな車両での参戦はできなくなっている。

 もともとのS2000の規定では、エンジンは2リッターとなっていたが、今年のWTCCでは、1.6リッターターボに変更された。シーズン当初は、いくつかの車両で旧規定の2リッターエンジンを性能調整の下で利用していたが、現在ではすべての車両が1.6リッターターボのエンジンへと変更している。

 この1.6リッターの新規定に完全に合致した車両を、レースシーズン前となる冬のテストに間に合わせたのがシボレーだ。よく知られているように、シボレーはGMのブランドの1つで、日本ではコルベットやカマロといったスポーツカー、SUVのキャプティバ、コンパクトカーのソニックなどを展開している。

 そのシボレーがWTCCに投入しているのは、「クルーズ」という日本では未発売のミッドサイズのセダン。このクルーズにシボレーのWTCC活動をオペレーションしているイギリスのレーシングチームRML(Ray Mallock Ltd)が開発した1.6リッターターボエンジンを搭載して今シーズンを戦っている。

 ほかのコンストラクター(BMW、セアト、ボルボカーズ)に先駆けてテストなどにこぎ着けたこともあり、昨年のダブルチャンピオン獲得に引き続き、今シーズンも独走を続けている。日本ラウンドの前のスペインラウンドで早々とマニファクチャラーズ(製造者部門)のタイトルを2年連続で獲得したのだ。

 なお、WTCCのルールや、そのほかのチーム、ドライバーなどに関しては、以前の記事「鈴鹿にWTCC(世界ツーリングカー選手権)がやってくる!!」で解説しているので、そちらをあわせて参照していただきたい。

シボレー クルーズ 1.6T。今年のWTCCのマニファクチャラーズチャンピオンを獲得

鈴鹿での焦点は、3人のシボレードライバーによるチャンピオン争い
 今シーズンのシボレーは、他メーカーを圧倒していた。その理由の1つは先述した、新規定にいち早く対応したことにあるが、事実上ワークスチームはシボレーだけだったということもあるだろう。

 WTCCではメーカーがマニファクチャラーチームとして登録した車両によって争われるメインのシリーズと、メーカー系チームではないプライベートチームによって争われるヨコハマトロフィーという2つのクラスに分けられている。

 今年のシリーズにマニファクチャラーチームとして登録していたのは、シボレーのほか、BMW、セアト、ボルボカーズの3メーカーだが、BMWとセアトに関しては、メーカーが直接運営するワークスチームではなく、メーカーがサポートを行うチームでの参戦になっていた。つまり、ワークスチームとして参戦していたのは、シボレーとボルボカーズだけなのだ。しかも、ボルボカーズは来年以降の本格参戦の可能性を探る、という形で参戦していたため、本格参戦のワークスチームは事実上シボレーだけという状況になっているのだ。

 メーカーがサポートするとは言え、プライベートチームではワークスチームに太刀打ちするのは資金面や規模の面から難しく、そうしたこともシボレーが独走する背景となっているのだ。

 このため、ドライバーズチャンピオンシップも、事実上シボレーの車両をドライブする3人のドライバーにより争われている。日本ラウンド前にポイントランキングトップにいたのが、1号車のイヴァン・ミューラー、16ポイント差の2位が、2号車ロバート・ハフ、3位がハフから64ポイント差の8号車アラン・メニュとなっており、シボレー勢内でのチャンピオン争いが、WTCCの大きな焦点となった状態で日本ラウンドを迎えたのだ。

 さらに、今回のWTCC日本ラウンドには、地元日本のドライバーも4名参戦することになった。その筆頭はシボレーワークスの1台をドライブすることになった、新井敏弘。新井はWRCにも多数参戦しているラリードライバーで、今回はWTCCにタイヤを供給する横浜ゴムの推薦でシボレーワークスの4台目を急遽ドライブすることになった。9月にイギリスでクルーズを半日テスト走行しただけで、いきなり日本ラウンドを迎えることもあり、経験不足をどのようにカバーするかがポイントになる。

 2人目は、今年WTCCにレギュラー参戦している谷口行規。谷口は昨年は岡山国際サーキットで開催されたWTCC日本ラウンドの第1レースでヨコハマトロフィー(昨年はインディペンデントクラスと呼ばれていた)で優勝するなどの結果を残しており、そうした実績を買われて今年はBamboo Racingからヨコハマトロフィーに参戦している。すでにWTCCを1年走ってきて車への慣れは問題なく、走り慣れている地元の鈴鹿でどのような結果が出せるかに期待が集まる。

 3人目は、GP2などに参戦するなどヨーロッパでも名前がよく知られる吉本大樹。吉本は世界志向が強く、日本ラウンドへの参戦も、ここで結果を残して来年以降のフル参戦を狙うつもりという本気のチャレンジだ。4人目はWTCCと併催されるスーパー耐久などで活躍した加納政樹。2008年のWTCC日本ラウンドへ参戦した経験もあり、2度目のWTCCチャレンジとなる。

シボレークルーズ 1.6Tを駆ってスポット参戦した新井敏弘今年のWTCCに日本人として初めてフル参戦している谷口行規
セアトを駆ってWTCC日本ラウンドにスポット参戦した吉本大樹BMWを駆ってWTCC日本ラウンドにスポット参戦した加納政樹

過去3年間の岡山国際サーキットでのレースはすべてウェットレースだったが、今回の鈴鹿はにわか雨こそあったものの、基本的にはドライの路面でレースが行われた

コースは鈴鹿サーキットの東コース。抜きどころは1コーナーのみか
 今回のWTCC日本ラウンドは、昨年までの岡山国際サーキットから鈴鹿サーキットへと会場を変更して開催されることになった。ただし、鈴鹿サーキットといっても、F1などで利用されるフルコースではなく、メインストレートから1コーナー、S字、逆バンクを経由してダンロップを過ぎたあたりでメインストレートに戻る東コースを利用する。



WTCCは東コースを使って開催された

 鈴鹿サーキットの関係者によれば、東コースで開催する理由は、WTCCはF1のように高速なレーシングカーではないため、フルコースでレースを行うと、1周の周回に時間がかり、観客の目の前にレーシングカーが帰ってくるまでの間隔があいてしまうから。実際、今回の東コースのラップタイムは50秒そこそこ。コースのどこにいても1分でまた観客の前に車が帰ってくる状況になっており、観客を飽きさせなかったことは事実だ。

 東コースでの本格的なレースは、今回のWTCCが最初ではない。過去にはフォーミュラ・ニッポンのようなフォーミュラカーでもレースが行われた実績があり、その時の結果などを踏まえて今回の東コースという選択になったようだ。

 しかし、東コースにしたことで、ある懸念がもたれていたことも事実だ。その懸念とは、追い越しが難しいのではないかということだ。元々鈴鹿サーキットは追い越しがしやすいコースではないのだが、パッシングポイントとしてよく挙げられるのは、1コーナー、ヘアピン、スプーン、シケインの4個所。1コーナー以外はいずれも西コース側にあるのだ。実際、予選後にミューラー、ハフ、メニュに聞いてみたところ、口を揃えて「リスクを冒さない限り追い越しは不可能」と語っていた。また、各ドライバーが懸念していたのが、1、2コーナーのコース幅が狭いため、スタート直後に車が殺到したときに何らかのアクシデントが起きないかという点。そして不幸にもこの予想は的中してしまう。

第1レースは予想どおりシボレーの勝利。しかし、勝ったのは伏兵メニュ
 昨年まで3度岡山国際サーキットで行われたWTCC日本ラウンドの決勝は、すべて雨。今回の鈴鹿でのレースは、練習走行こそ雨に見舞われたものの、予選、決勝ともにドライで行われ、WTCCならではの激しいバトルが展開された。

 第1レースは2回目の予選の順位順(10位まで、11位以下は1回目の予選の結果順)にスタートし、予選順位は8号車 メニュ、1号車 ミューラー、30号車 ダールグレン(ボルボカーズ)となっており、ミューラーとチャンピオン争いを展開する2号車 ハフは4位にとどまった。メニュ、ミューラー、ハフともに初めての鈴鹿となるのだが、ハフはやや手こずっているように見えた。

 日本人選手は、10号車 谷口が12位、シボレーワークスに乗ることで期待されていた31号車 新井は17位に入ったが、予選終了時の車検の信号を見落としたため、予選タイム抹消となり最後尾に回されることになった。

 新井によればこの予選終了時の車検についてはチームからも何も説明がなかったとのことで、チーム側のミスだったようだ。このほか、88号車 吉本が18位、68号車 加納が22位という結果になった。

 第1レースはスタートからいきなり波乱の展開となった。3番手スタートのボルボのダールグレンが、スタートをやや出遅れたところを後ろからプッシュされ、1コーナー手前でスピン。内側のガードレールに接触しコースに戻ってきて31号車 新井などを含む数台と接触したからだ。これで、新井は1コーナーの内側に飛び出し、車に若干ダメージを負うが、スピン後、車をぴったりとコース上に戻すドライビングテクニックを見せ、詰めかけたファンから大きな歓声を浴びていた。

スタートの直後の第1コーナー進入前。ブルーのボルボのダールグレンが後続の車に押し出されスピン。右はトップを争うシボレー3台(Photo:Burner Images)ダールグレンの車は、シリーズスポンサーであるKENWOODの看板をヒットした(Photo:Burner Images)

 混乱はさらに続き、2コーナーで15号車 トム・コロネル(BMW)が、スタートで抜いた2号車 ハフに押し出される形で接触。3号車 ガブリエル・タルキーニ(セアト)と18号車 ティアゴ・モンテイロ(セアト)の2台などを巻き込み、クラッシュする形になった。これでタルキーニはほぼ最後尾に順位を落とし、モンテイロはその場で動けなくなりリタイア。コロネルは右フロントのサスペンションを傷め、ピットで修復に入り、第1レースからは脱落となった。

1コーナーから2コーナーにかけては、ハフとコロネルが接触し、勢いでその前の3号車 タルキーニに当たってしまうタルキーニがイン側へと巻き込まれていき、そこに同じくセアトのモンテイロが来て激突してしまう。中央のハフは何事もなく抜けていくが、右側のBMWのコロネルは右フロントを破損
谷口は外側を上手く回ってアクシデントに巻き込まれることなく順位を6位にまでジャンプアップ。後ろでは88号車 吉本と31号車 新井がクラッシュに巻き込まれスピンしている

 これによりセーフティカーが導入され、もともと23周だったレースはWTCCの規定(セーフティカーが出た場合には、2周までの範囲でレースが延長される)により25周に延長され行われることになった。この時点での順位はスタートでメニュを抜いたミューラー、2位メニュ、3位にハフとなっており、シボレーの1-2-3。4位はヨコハマトロフィーのトップになる17号車 マイケル・ニケルス、11号車 クリスチャン・ポールセン、そしてそれに続き谷口がスタートの混乱を上手く切り抜けて6位にジャンプアップしていた。

この多重クラッシュにより、セーフティカーが導入されたセアトのモンテイロはフロントを大破し、走行不可能に、即リタイヤ。第2レースまでに修復もできなかった
吉本のセアトもフロントを大破するが、ピットに戻ることができレース続行第1レースはセーフティカーの先導によりレース続行

 セーフティカーがピットに戻りレースが再開されると、8周目の1コーナーでメニュがチームメイトのミューラーのインに入り、これをパスしていった。ミューラーがタイトルを争っている相手はハフであるため、無理に抵抗していない感じに見て取れた。

 レースはその後、ミューラーがハフを押さえ込むレースになるのかと思われたが、10周目の終わりにレースは大きく動くことになる。最終コーナーの進入でバランスを崩したミューラーがグラベルに飛び出してタイムロス、その間にハフ、ニケルスの2台に抜かれたのだ。シボレー・チーム監督のエリック・ネーヴをして「今年初めてのミューラーのミス」ともいう、名手ミューラーの珍しいミスで、大きな順位変動につながった。

 これで、1位メニュ、2位ハフ、3位ニケルス、4位ミューラー、5位ポールセンとなり、各ドライバーが指摘してた“抜けないレース”が展開されることになる。その後のパッシングは、7位の29号車 コリン・ターキントンが谷口を1コーナーで抜いていったぐらいで、上位での順位変動はなかった。

レースは7周目に再開。トップはミューラー、2位メニュ、3位ハフとシボレーの1-2-3だが、超接近バトルが展開されたメニュが1コーナーでミューラーをパスする。以降ハフとの直接対決になるが、10周目の終わりにミューラーが最終コーナーでまさかのミスをして4位に後退して決着伏兵ニケルスがミューラーを抜き3位へ。ヨコハマトロフィーの首位もゲット
スタートで6位まで上がった谷口だが、16周目にターキントンにパスされるが、見事7位に入賞でポイントゲット第1レースのポディウム。優勝は中央のアラン・メニュ(シボレー)、2位にロバート・ハフ(シボレー)、3位マイケル・ニケルズ(セアト)(Photo:Burner Images)

 シボレー勢で今シーズンあまり元気のなかったメニュが復活の優勝を飾り、2位ハフ、3位はヨコハマトロフィーのトップとなるニケルス、4位ミューラー、5位ポールセン、6位ターキントンとなった。日本勢は谷口が7位、加納が14位、新井が15位、吉本はリタイアという結果になった。

第2レースではBMWのトム・コロネルが最後まで守りきる
 第2レースは、トップ10のグリッドが予選1回目のトップ10の逆順となるため、1位が予選1回目10位で谷口のチームメイトとなる9号車 ダリル・オーヤン。2位がBMWのセミワークスとなる15号車 トム・コロネル、以下2号車 ハフ、1号車 ミューラー、18号車 モンテイロ、5号車 ダールグレンという順位になる。モンテイロは第1レースでのクラッシュにより、出走取りやめとなってしまった。ボルボのダールグレンは、なんとか車を修復しグリッドにつくことができた。

 第1レースではペースカー先導でのローリングスタートだが、この第2レースではF1と同様のスタンディングスタート方式が採用されている。第2レースでよいスタートを切ったのは、2番手のコロネル。1コーナーまでにオーヤンを軽々と抜くと、そのままトップに立った。

 オーヤンは、やや失速気味に5位ぐらいまで落ちると、1コーナーでガブリエル・タルキーニに後ろから当てられ、1コーナーでスピン。グラベルにはまり最後尾まで後退してしまった。タルキーニには、ピットスルーペナルティーが出されてこちらも大きく後退し、結局レース中盤に車の不調でリタイアを喫することになった。

第2レースはグリッドスタート(Photo:Burner Images)2番グリッドのトム・コロネル(BMW)が飛び出す。2位ミューラー、3位ハフの順で展開するポールポジションのオーヤンは、後ろからタルキーニにヒットされ、1コーナーのグラベルへ。レースには復帰するものの、大きく順位を落とす結果になった

 レースは1位コロネル、2位ミューラー、3位ハフ、4位ダールグレン、5位メニュとなり、レースは2位のミューラーが1位のコロネルを、そして3位のハフが2位のミューラーを追い抜くことができるのかに焦点が移っていった。

 結論から言えば上位3台は近づきはするものの、抜くまでには至らず、緊迫感の中レースは展開していく。大きく動いたのは15周目、それまで3位のハフを激しく攻め立てていたボルボのダールグレンがS字でいきなり失速、4位の座をメニュに奪われた。ダールグレンはその後スピードを取り戻し、そのまま5位を走った。

 結局レースは、ミューラーの猛攻を振り切ったBMWのコロネルが優勝。彼の優勝は、今季初で、2008年のWTCC日本ラウンドのレース2以来となる。日本にゆかりの深いコロネルが2勝目も日本でマークするという劇的な幕切れで終了することになった。

 2位はミューラー、3位はハフとなり、2レースが終わってみると、両者のチャンピオンシップのポイント差は16点差から13点差に縮まることになった。つまり、ドライバーチャンピオンシップの行方は、僅差のまま、残り2戦となる中国2連戦(上海、マカオ)へと引き継がれることになったのだ。

2位争いはシボレーの2台により展開された。4位にはボルボのダールグレンが上がってきて、シボレーのハフを攻めてる展開にレース中盤、いきなり失速したボルボのダールグレンをメニュが抜いていく。これでシボレーの2-3-4フォーメーション完成。その後BMWのコロネルを攻め立てるものの、抜くまでにはいかずそのままゴールレース2の表彰式。1位コロネル、2位ミューラー、3位ハフ。ヨコハマトロフィーは第1レースについてニケルスが優勝(Photo:Burner Images)

 なお、日本人勢は谷口が14位、新井が15位、加納が16位、吉本が17位という結果になった。レースでは日本人同士の激しい争いが展開され、サーキットは大いに盛り上がった。

大クラッシュから珍しい名手のミスまで、盛りだくさんのレース
 今回鈴鹿で初開催されたWTCC日本ラウンドだが、1コーナー、2コーナーで大きなアクシデントが発生したり、名手ミューラーがミスしたり、日本にゆかりの深いトム・コロネル選手が優勝したりと、見所が多数で、正直20分強のレースが短く感じたほどだ。

 鈴鹿サーキットの公式発表によれば、今回のWTCCの観客動員数は1万6000人で、2週間前にF1日本グランプリが開催されたばかりだという条件を考えれば、かなり健闘したと言えるのではないだろうか。WTCCには、タイヤサプライヤーとして横浜ゴムが参加しているが、日本の自動車メーカーは参加していない。こうしたレースにはつきもののメーカー動員(ディーラーなどの関係者をスタンドに招待するアクティビティなど)が期待できないため、この1万6000人というのは自腹でチケットを購入した人たちだと考えてよいだろう。それで初年度で1万6000人なのだから、すごく多いという訳ではないが、健闘したという評価が適切と思う。

 ただ、来年に向けていくつかの課題も見えてきたとも言える。1つにはドライバーからも上がっていた、“抜けない”という問題は考慮する必要があるのではないだろうか。シボレーのハフやメニュは記者会見で鈴鹿サーキットは素晴らしいサーキットだと褒めたあとに、「できればフルコースを走ってみたいな」ということを付け加えているなど、ドライバーにしても抜きどころが増えるフルコースでの開催希望があった。その辺りも踏まえて、来年はフルコースでやってみるというのも1つの案だろう。

 予選日、決勝日のピットウォークを見ていて感心したのは、シボレーの3人やコロネルのような有名な選手だけでなく、日本では無名に近いダールグレンなどにサインを希望するファンが多かったことだ。つまり来場者の多くは、熱心にWTCCを追いかけているファンと思われ、WTCC日本ラウンドも4年目になり確実に日本に根付きつつあるのだろう。あとは、日本メーカーの参戦でもあれば、一挙に人気に火が付きそうなところまで来ているのではないだろうか。

ピットウォークでは各ドライバが即席サイン会の大サービス。日本ではあまり知名度がないと思われていたダールグレン選手だが、実は結構長い列ができていた。日本のファンは目が肥えている……第2レースを優勝したトム・コロネル選手。1999年のフォーミュラ・ニッポンチャンピオンで、日本とのゆかりは深い有料席となっていたせいか、スタンドにはあまり観客は集中せず、1コーナー、2コーナーといったアクシデントが発生そうなコーナーに多くの観客が陣取っていた。2コーナーの内側はレーススタートから5周までは進入禁止になっていたが、開放されると通な観客が続々集まってきた

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦/報道専用レースフォトデータベース Burner Images)
2011年 10月 28日