SUPER GTシリーズが岡山で開幕。GT500の優勝はZENT CERUMO SC430
SUPER GT第1戦岡山【GT500編】

優勝したZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)

2012年4月1日決勝開催



 4月1日、SUPER GTの今シーズンの開幕戦となる2012 AUTOBACS SUPER GT第1戦「OKAYAMA GT 300km RACE」の決勝レースが岡山国際サーキット(岡山県美作市)で開催された。GT500クラスは38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)が100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)との歴史に残るバトルを制し優勝した。

GT500参戦ドライバー

 シーズン開幕にあたり注目されたのは、外国人ドライバーの移籍だ。昨年までウイダー HSV-010で小暮卓史選手とコンビを組んでいたロイック・デュバル選手がホンダ陣営からレクサス陣営に移籍。36号車 PETRONAS TOM'S SC430で中嶋一貴選手とコンビを組む。デュバル選手が抜けたウイダー HSV-010は昨年GT300に参戦していたカルロ・ヴァン・ダム選手がステアリングを握ることとなった。

 23号車 MOTUL AUTECH GT-Rはブノワ・トレルイエ選手が抜けミハエル・クルム選手が復帰し本山哲選手とコンビを組む。低迷が続いていた8号車 ARTA HSV-010にはラルフ・ファーマン選手が復帰し小林崇志選手とコンビを組む。日本人選手では、脇阪寿一選手が39号車 DENSO KOBELCO SC430に移り石浦宏明選手とコンビを組むことになった。

 昨年大躍進を見せたミシュランタイヤは今年も1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)と39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)の2チームが使用する。


号車マシン(ドライバー)
1号車S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)
6号車ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)
8号車ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)
12号車カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
17号車KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)
18号車ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)
19号車WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)
23号車MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)
24号車D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)
32号車EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)
35号車KeePer Kraft SC430(国本雄資/アンドレア・カルダレッリ)
36号車PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴/ロイック・デュバル)
38号車ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
39号車DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)
100号車RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)

GT500クラススタートシーン。36号車が100号車に追突

 決勝前日の予選は目まぐるしく変わる天候に翻弄されたが、昨年後半から調子を上げてきた38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)がポールポジションを獲得、2位は昨年の岡山で2位となった100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)、3位は36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴/ロイック・デュバル)、4位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)、昨年のチャンピオンチーム1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)が5位となった。

 82周の決勝レースは快晴の下、14時にスタートした。ポールポジションの38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)はトップをキープしたが、2番手スタートの100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也)は1コーナーのブレーキングでタイヤスモークをあげた36号車 PETRONAS TOM'S SC430(ロイック・デュバル)に軽く追突され姿勢を乱し、コーナー立ち上がりで36号車 PETRONAS TOM'S SC430に先行された。

 3位に後退した100号車 RAYBRIG HSV-010はバックストレートで23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲)に並ばれ、ヘアピンのブレーキングが遅れアウトに膨らんだところを23号車 MOTUL AUTECH GT-Rとさらに1号車 S Road REITO MOLA GT-R(ロニー・クインタレッリ)にも抜かれ5位に後退した。

1周目のバックストレート。23号車と100号車が3位争いヘアピンで100号車がアウトに膨らみ1号車にも抜かれ5位に後退スタートして3周で上位陣の差が開いた

 3位に浮上した23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは徐々に36号車 PETRONAS TOM'S SC430との差を詰め、7周目の1コーナーでアウトから併走、インアウトが入れ替わる2コーナーを制し2位に浮上した。抜かれた36号車 PETRONAS TOM'S SC430は後続の1号車 S Road REITO MOLA GT-R、さらにその後方の100号車 RAYBRIG HSV-010と3位のポジションを争うこととなった。

23号車が36号車に追い付き、2位争いは接触しながらの攻防となるが23号車が先行した36号車が1号車と競り合う間に100号車が近付いて来た

 オープニングラップで5位に後退した100号車 RAYBRIG HSV-010は、23周目のアトウッドカーブの進入でGT300マシンの処理に失敗した1号車 S Road REITO MOLA GT-Rのインに飛び込み4位に浮上。そのまま36号車 PETRONAS TOM'S SC430の背後に迫り、HSV-010のコーナリング性能の高さを活かし、28周目のダブルヘアピン2つ目を小さく旋回し加速、短いストレートで並びかけマイクナイトコーナーでインを取り3位まで順位を戻した。

1号車の背後に迫る100号車100号車は1号車、36号車を抜きトップ争いを追った

 トップ争いは5秒ほど開いた差が徐々に縮まり、20周目には3秒を切り、23周目には0.8秒と、あっと言う間に2台は接近、テール・トゥ・ノーズの争いとなった。10周近く続いた接近戦は33周目のヘアピンで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが38号車 ZENT CERUMO SC430のインに飛び込み逆転、ついにトップに浮上した。

23号車は38号車に追い付きバトルへ23号車がトップ浮上ファーマン選手の復帰で戦闘力を高めた8号車が4位争いに加わった

 82周のレースの半分を前にして上位陣のピットインが始まった。最初にピットインしたのは2位に後退した38号車 ZENT CERUMO SC430。36周目にピットに入り平手選手から立川選手にドライバー交代した。続く37周目にトップの23号車 MOTUL AUTECH GT-R、それに続き100号車 RAYBRIG HSV-010も同時ピットイン。それぞれクルム選手、山本選手にドライバー交代しコースに復帰した。

 コースに戻った23号車 MOTUL AUTECH GT-Rのペースが遅く、短時間のピット作業ですぐ背後に迫った100号車 RAYBRIG HSV-010がバックストレートで抜き去りポジションアップ。前周にピットインした38号車 ZENT CERUMO SC430はアウトラップを終えペースアップ。最終コーナーで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rに追い付きストレートでオーバーテイクした。これで事実上のトップは100号車 RAYBRIG HSV-010、2位に38号車 ZENT CERUMO SC430。3位に23号車 MOTUL AUTECH GT-Rとなった。先にタイヤの暖まった38号車 ZENT CERUMO SC430が100号車 RAYBRIG HSV-010の背後に迫まり、46周目には0.6秒差まで詰め寄るがそこから徐々に差は開き、56周目には4秒の差が付きこのまま100号車 RAYBRIG HSV-010が逃げ切るかと思われた。

アウトラップで23号車を抜いた100号車先にピットインした38号車が100号車の背後に迫る4秒差を付け逃げる100号車。初優勝が見えてきた

 後方からジリジリと順位を上げてきたのは、昨年の岡山でトップ争いを演じた17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)だ。予選は13位と沈んだが、金石選手が担当した前半で5周目に12位、8周目に11位、15周目に10位、27周目に9位と順位を上げ、全車ピットインを終えると7位まで浮上した。

17号車は13位でスタート。3台による最下位争い5周目に32号車を抜き12位45周目に8号車を抜き6位浮上

 塚越選手に交代したレース後半も勢いは衰えず、45周目に8号車 ARTA HSV-010を抜き6位、56周目には1号車 S Road REITO MOLA GT-Rも抜き5位にポジションアップ。レース終盤は23号車 MOTUL AUTECH GT-R、36号車 PETRONAS TOM'S SC430と3位表彰台争いをする位置まで順位を上げてきた。

1号車との差を縮め、56周目にオーバーテイクし5位へ

 トップ争いは4秒の差が終盤に縮まり、38号車 ZENT CERUMO SC430のベテラン立川選手が、若手の山本選手がドライビングする100号車 RAYBRIG HSV-010を攻め立てた。69周目のヘアピンでアウトから38号車 ZENT CERUMO SC430がアウトから並びかけ併走。ヘアピン立ち上がりは山本選手が立川選手を押し出すことなくアウト側1車身残してリボルバーへ。そのままインアウトが入れ替わったリボルバーでインを取った38号車 ZENT CERUMO SC430が再びトップに浮上した。

レース終盤、38号車が100号車に追い付き、各コーナーで攻め立てた

 同じ周のヘアピンで3位争いにも順位交代があった。4位の36号車 PETRONAS TOM'S SC430が23号車 MOTUL AUTECH GT-Rのインに飛び込むがややオーバースピードでラインが膨らんだ。接触を避けた23号車 MOTUL AUTECH GT-Rがアウト側に逃げたところに17号車 KEIHIN HSV-010がマシンをねじ込み4位にポジションアップ。23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは一瞬で5位まで後退した。

 トップ2台の差は残り8周で2.5秒。今度こそこのまま逃げ切りかと思われたが、山本選手は諦めていなかった。残り4周でタイム差は1秒を切り最終盤のバトルが始まった。残り2周、その差は0.5秒。ダブルヘアピン手前の短いストレートで100号車 RAYBRIG HSV-010はマシンを左右に振り牽制。38号車 ZENT CERUMO SC430がインを閉め苦しいライン取りでダブルヘアピンの1つ目に進入するや、100号車 RAYBRIG HSV-010はアウトにマシンを振りやや加速気味にアウト-アウト-インのラインで抜け、ほんのわずかのストレートで一気にオーバーテイク。ダブルヘアピンの2つ目でついにトップに立った。

残り2周。38号車と100号車のトップ争い逆転でトップに返り咲きファイナルラップに突入する100号車

 いよいよ最終ラップ。直線スピードはレクサスSC430が有利、コーナーリングはホンダHSV-010が有利。バックストレートエンドのヘアピンまで逃げ切れば100号車 RAYBRIG HSV-010はシリーズ初優勝が見えてくる。2台はテール・トゥ・ノーズでそのヘアピンに進入した。

ファイナルラップで再逆転しチェッカーを受ける38号車と、100号車

 100号車 RAYBRIG HSV-010はややインを閉めるラインでヘアピンに進入。しかしほんのわずかオーバースピードとなりインに隙間ができた。その隙間を逃さず38号車 ZENT CERUMO SC430がマシンをねじ込み、軽く接触をしながら抜き去り、この日3回目のトップに立った。ダブルヘアピン、マイクナイトと100号車 RAYBRIG HSV-010の得意なコーナーも死守し、0.6秒差で逃げ切り歴史的な勝利を飾った。

 その後方では3位表彰台争いも最後のバトルが展開された。ファイナルラップに進入する直前の最終コーナーで17号車 KEIHIN HSV-010が36号車 PETRONAS TOM'S SC430を抜き3位に浮上。予選13位から10台抜きで表彰台を獲得した。最終ラップのリボルバーでタイヤトラブルが発生した36号車 PETRONAS TOM'S SC430がコースアウトし23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが4位にポジションアップ。36号車 PETRONAS TOM'S SC430はコースに復帰しギリギリでゴールまでマシンを運び5位の座を死守した。

23号車を抜いた36号車と17号車が表彰台を争ったタイヤトラブルでゴール直後にマシンを止めた中嶋一貴選手
優勝した立川祐路選手(左)と平手晃平選手GT500クラスの表彰式

 最終順位は、1位 38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)、2位 100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)、3位 17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)となった。

順位号車マシン(ドライバー)
1位38号車ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
2位100号車RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)
3位17号車KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)
4位23号車MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)
5位36号車PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴/ロイック・デュバル)
6位8号車ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)
7位18号車ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)
8位1号車S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)
9位39号車DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)
10位12号車カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
11位24号車D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)
12位19号車WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)
13位6号車ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)

 このレースの模様はテレビ東京系列で毎週日曜23時30分からの「SUPER GTプラス」(BSジャパンでは毎週日曜10時30分から)で放送される。次戦は富士スピードウェイ(静岡県小山町)で5月3日、4日行われる。

優勝した38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
2位の100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)
3位の17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)

(奥川浩彦)
2012年 4月 6日