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ダンロップの最新スタッドレス「WINTER MAXX(ウインターマックス)」で湿雪の雪国へ

溝容積の向上が確実なグリップの向上につながる

 ダンロップ(住友ゴム工業)が2012-2013年シーズンから投入した新スタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」については、これまで発表会記事、北海道の名寄市にあるダンロップのテストコースでの雪道、氷結路走行記事、そしてドライ路面での走行記事をお届けしてきた。ドライ路面での走行記事の際、雪道の記事もというようなソーシャルコメントがついていたので、北海道の雪質とまったく異なる新潟は越後湯沢の雪道を走ってみることにした。

ダンロップが2012-2013シーズンから投入した最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス」。非対称パターンを新たに採用したほか、先代モデルのDSX-2から内部構造を含めて大幅に刷新されている

●リリース記事
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120724_548764.html

●発表会記事
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120822_554291.html

●雪氷レビュー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120925_561018.html

●「WINTER MAXX(ウインターマックス)」のドライ性能を体感
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121211_577977.html

湿雪を求めて新潟へ

 北海道の雪は、平均気温が安定して低いため、基本的にさらさらの雪になっていることが多い。いわゆる乾いた雪(乾雪)で、パウダースノーの代表的なものになる。一方、豪雪地帯として知られる新潟県南魚沼市は、標高が低く、また平均気温も(北海道に比べて)高めとなるため、湿った雪が(湿雪)が降ることが多い。

 また、昼の気温が0度を超えることもあるため、夜から朝にかけて雪が降り、それが昼に溶け、さらに夜冷え込むと氷として固まるなど、雪が降り続く日、もしくは雪が数日降らない日以外は手強い路面になるのがこの辺りの特徴でもある。除雪作業がしっかり行われていることもあり、国道などでは雪が積もりすぎることはないが、一歩脇道に入ると深雪の道路になっていたりする。

 これら湿雪路面をウインターマックスを装着したレガシィで走ってみたが、北海道で試乗したときと同様快適そのもの。トラクションがしっかりかかり、ブレーキも安定して行える。夏タイヤのようにグリップするわけではないが、走行していて怖さを感じることはない。そもそも、雪道を走る以上、完全なグリップ状態を得るのは難しく、無理なアクセル操作やブレーキ操作はすぐに限界を超えてしまいがち。自分自身スタッドレスタイヤに求めたいのは、この限界を超えてしまった部分の安定性で、ウインターマックスは素直な特性を持っているように感じる。

走行当日は雪が降っていたため、国道でもこの状態。次から次へと雪が降り、道路にどんどん雪が積もってくる

 先代のDSX-2は、確かに雪面のグリップ力はあるのだが、そのグリップが強くなった際にサイドウォールの弱さを感じることがある。たとえば、凍結路面と非凍結路面が交互に出てくる路面の場合、凍結路面から非凍結路面になった際にステアリングにタイヤの剛性感の低さを感じることがある。一方、ウインターマックスではグリップがDSX-2に比べて高くなっているにもかかわらず、そういった個所で不要な動きが起こらず、安心感が高い。DSX-2では、滑った際に路面が変化していると動きが予測しづらい部分がややあるのに対し、ウインターマックスでは予想の範囲内で収まるのが大きな違いだ。

ラグ溝容積の向上が雪中性能の向上に

 ウインターマックスについては、前述のとおり北海道のテストコースでも走行しており、とくに印象的だったのは各ブロックが作り出す雪柱剪断力のグリップ性能。確かに氷結路面での性能はDSX-2より向上していたが、それよりも積雪路面での性能向上が著しく感じた。

側道に入ると除雪されていないため、このような状態に
湿雪のためタイヤに雪がまとわりつく
雪を払ってみた。非対称パターンのため、横方向の太い溝が外側に入っていることが分かる

 それは新潟の湿雪でも同様で、横方向に刻まれたラグ溝容積向上の恩恵を感じる。DSX-2からラグ溝容積が9%増えており、さらにラグ溝を台形の形状とすることで、雪を大きく掴み、そして雪離れをよくしている。容積増大もあるのだろうが、しっかりした構造となったがゆえに、雪上に残るトレッドパターンが明確になるなど、雪柱剪断力の向上が見て取れる。さらさらの乾雪でも重要となる雪柱剪断力だが、重めの湿雪でもしっかりパターンを刻むことができ、ウインターマックスで採用された新しいトレッドパターンの恩恵を感じる部分だ。

雪面にしっかり残るウインターマックスのトレッドパターン。DSX-2に比べ、ハッキリと分かる進化点

 新潟方面への往復は関越自動車道を使用したが、その走行性能は一昔前のスタッドレスタイヤとは比べものにならない。DSX-2は雪氷性能に注力したスタッドレスタイヤだったが、ウインターマックスでは雪氷性能を向上させつつ、そのほかの面を大幅に向上させることに成功している。スタッドレスタイヤでは、雪氷性能を最重要視しなければならない側面はあるが、そのほかの性能も向上しているのはうれしいところだ。

走行中には何度も除雪作業中の車両を見かけた
湿雪でのコーナリングにおいてもウインターマックスの安定感は高い

 今シーズンのスタッドレス商戦は降雪地域では終息へ向かっているが、ウインタースポーツに出かける非降雪地域のユーザーにとっては、最後の悩みどころだろう。DSX-2は降雪地域に住む人向けのスタッドレスタイヤという側面があったが、ウインターマックスは、非降雪地域に住むユーザーの購入選択肢に加えてほしいスタッドレスタイヤだ。

雪国は冬本番。トンネルやスノーシェッドを抜けると雪、そして凍結路面というのは当たり前の季節に突入している。雪の降る地方に出かける際は、まずスタッドレスタイヤの装備を考えていただきたい。もちろん万が一のためにチェーンも忘れずに

(編集部:谷川 潔/Photo:清宮信志)