ダンロップ、完全新設計のスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX」発表会 氷上ブレーキ性能11%アップで、同社史上、断トツNo.1の氷上性能 |
ダンロップ(住友ゴム工業)は、完全新設計のスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」を、8月から順次発売している。発売サイズは13インチから19インチ(135/80 R13 70Q~245/45 R19 98Q~)の88サイズで、価格はいずれもオープンプライス。サイズごとの発売時期については、関連記事を参照のこと。
同社は2005年以降、「DSX」シリーズのスタッドレスタイヤを展開してきたが、今シーズンのスタッドレスタイヤは、最新のタイヤ技術を投入し、名称もWINTER MAXXとなった。この新製品の発売にあわせて技術説明会を8月21日に都内で開催、さらに福山雅治氏らを起用した新CMの発表なども行われた。
WINTER MAXXは非対称トレッドパターンを採用。左がイン側 | イン側 | アウト側 |
住友ゴム工業 取締役 常務執行役員 タイヤ技術本部長 西実氏 |
WINTER MAXXに盛り込まれた技術に関しては、住友ゴム工業 取締役 常務執行役員 タイヤ技術本部長 西実氏が詳説。西氏は「GRASPIC HS-1」から始まったダンロップスタッドレスタイヤの歴史を図示しながら、「冬の運転で最も重視される氷上のブレーキ性能を進化させてきた」と言い、なによりも氷上のブレーキ性能が大切だと語る。
その上で同社が調査した、ここ3年のユーザーニーズと、地域別のユーザーニーズを紹介。いずれも氷上性能、雪上性能、ウェット性能、ライフ性能の順で重視されているが、氷上性能に極端に偏った形ではなく、すべての性能のニーズが高まる傾向にあると言う。
ダンロップ スタッドレスタイヤの変遷 | ここ3年のユーザーニーズの変化 | 地域別ユーザーニーズ |
WINTER MAXXの開発コンセプト | 重視した4つの性能 | まったく新たな製品名となった |
そこで、新スタッドレスタイヤWINTER MAXXでは、「ダンロップ史上、断トツNo.1の氷上性能実現」を開発コンセプトとし、冬道の安心・安全追求のため、雪上性能、ウェット性能、ライフ性能の引き上げを図った。
その結果、昨シーズンのトップモデルである「DSX-2」と比べて、氷上ブレーキ性能は11%アップ、ウェットブレーキ性能は15%アップ、耐摩耗性能は48%アップと、全域での性能向上を実現したとする。
■MAXXシャープエッジとナノフィットゴムで氷上性能向上
氷上性能向上のキー技術となったのが、「MAXXシャープエッジ」と「ナノフィットゴム」。一般的にスタッドレスタイヤでは、サイプと呼ばれるジグザグ状の溝によるエッジ効果で氷上のブレーキ性能を確保している。ただし、サイプを増やしすぎるとブロックの倒れ込みが増大し、粘着摩擦力が低下。結果としてサイプの増量に限界があった。
氷上ブレーキ性能は11%アップ | MAXXシャープエッジとナノフィットゴムで実現 |
これを解決するのが、2005年に発売されたDSXから採用した「ミウラ折り」サイプで、ミウラ折り形状にすることで倒れ込みを抑制、氷上ブレーキ性能を改善していた。
WINTER MAXXでは、このミウラ折りサイプを25%薄くすることでより緻密なサイプ配置を実現。エッジ成分が22%増えるとともに、ブロックもより倒れ込みにくくなり接地面積もアップ。結果として氷上ブレーキ性能と操縦安定性能向上に寄与しており、これらを総称してMAXXシャープエッジと名付けている。
エッジ効果について | DSXでミウラ折りサイプを採用 |
WINTER MAXXでは、ミウラ折りサイプをさらに進化 | 氷上ブレーキ性能と操縦安定性能が向上 |
ナノフィットゴムは、マクロレベルで見た場合はブロック剛性が高いものでありながら、ナノレベルで見た場合は水に追従・密着する柔軟性を両立するゴムのことで、低燃費タイヤブランド「エナセーブ」のフラッグシップモデル「エナセーブ PREMIUM(プレミアム)」で初投入された新材料開発技術「4D NANO DESIGN(フォーディー ナノ デザイン)」を活用。シリカのまわりに軟化剤を配置することで、アイスバーンの凸凹にゴムが密着し、そのシリカを高密度配置することでゴムの剛性アップを図っている。
ナノフィットゴム開発へのアプローチ | 開発目標 | 4D NANO DESIGN技術を採用 |
分子シミュレーション | シリカのまわりに軟化剤を配置 | ナノ領域の柔軟性をアップすることで、アイスバーンの凸凹に密着 |
ゴムの剛性も確保している | 剛性シミュレーション。白はシリカ。シリカを高密度配置している |
このMAXXシャープエッジとナノフィットゴムにより、スタッドレスタイヤで最も重視されるという氷上ブレーキ性能の11%改善を実現した。これまでのDSXシリーズでは、ビッググラスファイバーやハイパーテトラピックなどをコンパウンドに投入することにより、引っかき効果などで氷上ブレーキを確保していたが、よりミクロのレベルでコンパウンドの組成を改善。分子構造を3D可視化する4D NANO DESIGNにより、根本的なところから作り直されているスタッドレスタイヤとなる。
まとめ |
■雪上性能やウェット性能もアップ
雪上性能やウェット性能もアップされており、雪上性能ではより大きな雪柱を刻むよう9%の容積アップを図ったラグ溝をトレッドパターンに採用。また、雪柱がしっかり排雪されるよう、奥に向かって細くなる台形のラグ溝とすることで、雪道でのトラクション性能を改善していると言う。
雪上走行のメカニズム |
このような現象が次々に発生している | ラグ溝容積9%アップ | 雪上性能も向上している |
ウェット性能では、センター部の縦溝の容積を40%アップ。これによりウェット路面でのハイドロプレーニング現象への対応力も高くなっているほか、シャーベット路面での走行性能もアップしていると言う。ウェットブレーキ性能については、DSX-2に比べ15%のアップを実現した。
縦溝の容積40%アップで、ウェット性能も向上 | |
ナノフィットゴムも貢献している | ウェットブレーキ性能は15%アップ |
また、技術説明の部分ではあえて触れられていなかったが、WINTER MAXXはイン側とアウト側でトレッドパターンが異なる非対称トレッドパターンを採用。センター部の縦溝も、直進時に影響を与えるイン側に大きく刻まれているほか、アウト側ではジグザグ状のイナズマグルーブとなっている。
ライフ性能向上に関しては、タイヤのコンパウンドの主成分に破壊特性に優れる高分子ポリマーを採用。これにより耐久性が向上し、耐摩耗性能は48%の大幅アップとなっている。
破壊特性に優れた高分子ポリマーを採用 | 耐摩耗性能は48%アップ |
WINTER MAXXでは、プロファイルやブロック形状も刷新されている | 非対称トレッドパターンのため、タイヤウォールにはイン側、アウト側指定が刻まれる |
WINTER MAXXは、コンパウンド、トレッドパターンを大幅に変更。タイヤ構造も専用構造を新たに採用したほか、プロファイル(形状)についても平衡形状プロファイルという大きな円を描くものを採用。DSXシリーズから、大きな技術的ジャンプアップを果たした製品となっていた。
住友ゴム工業 執行役員 ダンロップタイヤ営業本部長 山本悟氏 |
■CMのコピーは「変える。」「届ける。」
まったくの新製品となるWINTER MAXXのマーケティングプランについては、執行役員 ダンロップタイヤ営業本部長 山本悟氏が説明。DSX-2の投入によってダンロップのスタッドレスタイヤの認知度、安心・信頼度、品質、優位性の4項目について、ブランド価値が上昇。とくに2010年~2011年で見ると福山雅治氏のCMなどによりブランドイメージが大きく向上。今シーズンも福山氏を起用したCMを展開していくと言う。
そのCMのキャッチコピーは「変える。」で、店頭ツールも福山氏を前面に打ち出したものになり、WINTER MAXXのイメージカラーであるブルーにゴールドを加えることで高性能を表現する。
ダンロップのブランド価値調査 | ブランドイメージ向上で、ブランドだけで選ぶ人の割合が増えている |
福山雅治氏を引き続き起用し、「変える。」をコンセプトにCMを制作 | 店頭ツール |
「変える。」CMからの1シーン |
この「変える。」をコンセプトとしたCMを受けて、「届ける。」をコンセプトとした北海道・東北・北陸などの個別エリアCMも作成。個別エリアCMには鈴井貴之氏、サンドウイッチマン、伊勢みずほさんが出演する。
そのほか、WINTER MAXXの技術などを分かりやすく解説するサイト「すべらん大学」(http://www.suberan.jp/p/suberan.html)を開設。これは、滑らないタイヤを追求するダンロップと、すべらないギャグを目指す吉本がコラボレーションしたもので、すべらん大学の理事長には千原ジュニア氏が就任。生徒はサバンナの高橋茂雄氏で、解説動画などが掲載されている。
個別エリアのイメージキャラクター | 「すべらん大学」を開設 |
山本本部長は、売り上げ目標については年間200万本と言い、完全新設計のスタッドレスタイヤWINTER MAXXで、今シーズンのスタッドレス商戦に臨んでいく。
CMのクリエイティブディレクターは箭内道彦氏。CM制作についてのトークショーも行われた | 「届ける。」をコンセプトとしたCM |
(編集部:谷川 潔)
2012年 8月 22日