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ダンロップの最新スタッドレス「WINTER MAXX(ウインターマックス)」のドライ性能を体感
非対称パターンなどでドライ路面での性能が飛躍的に向上
(2012/12/11 00:00)
ダンロップ(住友ゴム工業)が2012-2013年シーズンから投入した新スタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」。それまでのスタッドレスタイヤ「DSX-2(ディーエスエックス ツー)」シリーズに別れを告げ、新規にブランディングをし直したタイヤとなる。製品名には、ダンロップの夏用タイヤの頂点に立つ「SP SPORT MAXX(エスピースポーツマックス)」シリーズのマックスを採り入れ、冬用タイヤの頂点に立つことを示した。
ウインターマックスでは、DSXシリーズから設計思想を一新。外観では非対称のトレッドパターンを採用し、「MAXXシャープエッジ」と「ナノフィットゴム」で氷上ブレーキ性能を向上。その効果などについては、以前お届けした発表会記事やテストコース試乗記となる雪氷レビューを参照いただきたい。
●リリース記事
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120724_548764.html
●発表会記事
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120822_554291.html
●雪氷レビュー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120925_561018.html
すでに雪上や氷上でのDSX-2との違いは、記事にも書いたとおり、ウインターマックスでは著しい進化が見られる。DSX-2が、以前のDSXやDS-1の正常進化型であるのに対して、まったく異なる思想で作られているのが感じられる。具体的には、DSX系では柔らかめのゴムに氷を引っかくためのグラスファイバーやテトラピックを組み込んでいるのだが、ウインターマックスではナノレベルでゴムの組成を見直すことで、氷に追従・密着するゴムを実現。剛性もあわせ持つことで、操縦安定性を向上させている。
スタッドレスタイヤを購入するメインユーザーが望むのは、まず雪や氷での性能となる。そのため、スタッドレスタイヤの新製品発表ではドライ性能に触れられることはほとんどない。ドライ性能がよい=雪氷性能がわるい、と思われてしまいがちなため、たとえドライ性能が向上していても強くアナウンスをすることはない場合がほとんどだ。
ウインターマックスもそれは同様で、強く打ち出しているのは「氷上ブレーキ性能11%アップ」という部分。次が溝成分の増加による雪上性能の向上で、その次がウェットブレーキ性能15%向上。ドライ性能に関しては直接言及することはなく、「耐摩耗性能48%アップ」ということが示されただけだ。
タイヤの記事をよく読まれている方なら分かるとおり、この先代比48%アップというのはとんでもない性能向上値になる。ウインターマックスでは、耐摩耗性が圧倒的に向上しており、さらにイン・アウト別々の荷重設計が可能となる非対称パターンを採用していることから、「多分ドライ性能もずいぶんよくなっているな」と予測することは容易だ。実際ダンロップのテストコースにおいて、圧雪路面を120km/hで走行した際は、DSX-2に比べるとウインターマックスの安定感は抜群のものがあった。
とくにそれが顕著に出たのが、セレナ 4WDを試乗したとき。セレナ 4WDは4WD車としてトラクションのバランスがよく、ステアリング操作で片側の荷重を高めると、横に逃げるのではなく縦にかかる。コーナーの入口でブレーキングしながらステアリングホイールを回すと、DSX-2だと片側前輪が“ヨレッヨレッ”となるのに対して、ウインターマックスにはその不安感がない。雪氷路面のグリップ力以前に、コンパウンドを含むタイヤの構造そのものがまったく異なっている製品だ。
関東でスタッドレスタイヤに求めたいのは、氷上性能とドライ性能
東京に住む筆者にとって、スタッドレスタイヤに求めたい性能は、1に氷上性能、2にドライ性能となる。関東は朝夕に気温が極端に下がることが多く、日陰のコーナーでは日中も凍結している場合がある。また、風の強い日は橋などで凍結することもあり、ドライ→凍結→ドライ→凍結といった極端な路面も発生する。9割以上ドライ路面のため、9割以上雪氷路面が続く雪国に比べて走行ペースが速く、気がついたらあわや……なんてことにもなりかねない。レジャーで雪国へ出かける場合は、「高速道路→降りたらいきなり凍結路面がスキー場まで」(主に万座方面)ということもあり、リスクを分かっている人にとってスタッドレスタイヤは必需品とも言えるものだ。
その際にやはり欲しくなるのがドライ路面での性能。長距離を走るレジャー用途はもちろん、関東在住の場合は普段使いにおいてもドライ性能は重視したい部分だろう。そこで本記事では、スバル「レガシィ」にウインターマックスを装着して、晩秋の那須塩原に向かってみることとした。
タイヤ交換に訪れたのは、東京 環七沿いにある「タイヤセレクト環七杉並」。タイヤ交換は11月半ばに行ったのだが、東京でのスタッドレスタイヤの動きはボチボチといったところで、本格的な商戦期は12月上旬からになると言う。タイヤセレクトが主に扱うのはダンロップ製品のため、店頭にはスタッドレスタイヤのウインターマックス、DSX-2、そしてエコタイヤの「エナセーブ」シリーズが並ぶ。
ウインターマックスに関する問い合わせはかなりあるとのことで、サイズの在庫と値段を確認する人が多いようだ。また、購入者が実際に店頭に来て驚くのが、DSX-2とウインターマックスのサイドウォールの硬さの違いとのこと。DSX-2は軽く押すだけでぷにぷに凹むのに対し、ウインターマックスは夏タイヤのようなしっかり感がある。根本的に違うタイヤであるのを改めて感じる部分だ。
新品のウインターマックスに交換した後は、400kmほど完全ドライ路面で皮むきをしてから、いよいよ那須へと向かう。明け方にひたすら東北自動車道を北上し、秋晴れの那須塩原に到着した。
昨年は被災地支援・観光振興の無料化が実施されていた東北道をDSX-2装着車で北上した。ウインターマックスでの走行をDSX-2と比べると、ステアリング中立付近の甘さが解消され、車線変更時やアップダウンの伴う高速コーナーでの不安が減っているのを感じる。佐野SA(サービスエリア)付近のアップダウンコーナーで、しっかり横荷重をサポートしているのが分かる。
走行音に関してはレガシィの遮音性能が優れているためか、とくに耳障りな音はせず、100km/h巡航を問題なくこなせる。ただ、音に関してはDSX-2も100km/h巡航で気になることはなかったので、引き分けと言える。
西那須野塩原IC(インターチェンジ)を降りたら、元湯温泉の「元泉館」を目指す。この元泉館では日帰り入浴ができ、天然硫黄の温泉を掛け流しで楽しむことができる。ただし、日塩もみじラインよりも奥に位置するため、たどり着くまでには曲がりくねったワインディングを走る必要がある。幸いとくに凍結している部分もなく元泉館に到着。塩原温泉郷では複数の旅館が協力して「湯めぐり手形」(価格:900円)というものを販売しており、この湯めぐり手形を買えば無料で1回温泉が楽しめるほか、25軒の旅館・ホテルの入浴料が50%引き(各施設で1回利用可)になる。那須塩原で日帰り入浴をする場合は、利用を検討してみてほしい。元泉館のフロントで湯めぐり手形を購入して入浴し、風呂を上がる頃には雪がちらついていた。
●湯めぐり手形
http://www.siobara.or.jp/tegata.stm
幸い雪が積もることはなく、元泉館を後にして東京へと向かう。ウインターマックスに限らず、スタッドレスタイヤを履いていて楽しいのは、自分の行動範囲が広がることと、雪に対する緊張感が圧倒的に減ることだ。スタッドレスタイヤを履いていないクルマだと、雪がちらつくだけで暗い気分になってくるが、スタッドレスタイヤを履いているクルマだと、雪がちらつくだけでなんだか楽しくなってくる。この心の余裕が運転の余裕につながり、結果的に危険な状態に陥ることを防いでくれているのだと思う。
帰路はあえて首都高速道路を走ってみたが、首都高においてもウインターマックスのスタビリティは高い。法定速度で道路を走る限りは、ウインターマックスのドライ性能に不満を感じる人は少ないだろう。とくにDSX-2との比較で優れているのは、ステアリングの入力に対するタイヤからの手応え。DSX-2では、さまざまな場面でかつてのスタッドレスタイヤにありがちなやや曖昧な反応があるのに対し、ウインターマックスではハッキリした手応えが返ってくる。これにより、路面のインフォメーションを明確に感じることができるため、次の入力をどうするかの判断も容易になっている。
これはグリップが高いとか低いとかの問題ではなく、タイヤの適切な剛性が確保できているかどうかということ。スタッドレスタイヤでは雪氷路面での性能追求が優先されるため、ドライ路面での性能追求は基本的に後回しだ。ウインターマックスもそれは同様だが、雪氷路面で性能追求をするための基礎技術を変更した結果、ドライ路面での性能も向上してしまったということなのだろう。1日、2日走った程度では摩耗性能の向上を実感することはムリだったが、ダンロップがタイヤ開発における何らかの技術的ブレークスルーを達成したのを実感できたドライ路面走行だった。
すでに12月。スタッドレスタイヤは季節商品のため、大量販売車種に採用されていないタイヤサイズの場合は追加生産が行われないため、欠品などが生じてくる時期だ。気になる製品の購入については、早めに手を打っておくほうがよいだろう。