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NASVA、2012年度の「自動車アセスメント結果発表会」を開催

5月11日も二子玉川ライズで衝突試験車両公開や技術説明会を実施

もっとも衝突安全性に優れるクルマとなり、JNCAP大賞を受賞した、三菱自動車のSUV「アウトランダー」
2013年5月10日発表

2013年5月11日試験車両一般公開

 国土交通省とNASVA(自動車事故対策機構)は5月10日、2012年度(平成24年度 )「JNCAPファイブスター賞」受賞車両を決定、発表した。会場は東急田園都市線・大井線 二子玉川駅近くの商業施設、二子玉川ライズS.C.内 ガレリア。発表会場においては、試験車両が公開されており、5月11日10時30分~18時30分もこれら試験車両は一般公開される。

 1995年度(平成7年度)から行われている自動車アセスメントでは、日本市場で販売台数が多く、交通社会において影響力が大きいと考えられるモデルを対象に、各種の衝突試験を実施して車両の安全性能を評価。試験結果をユーザーにも分かりやすいよう点数や星印に置き換えて一般公開し、新車購入時の目安になるようにするほか、自動車メーカーに対してもより安全な車両開発を促すことを目的に、毎年度行われている。

 2012年度前期の自動車アセスメントでは、トヨタ自動車「カローラ アクシオ/カローラ フィールダー」と、スバル(富士重工業)「インプレッサ」が新・安全性能総合評価の最高ランクである「ファイブスター賞」を獲得していた。今回は2012年度後期として新たにに8種の車両をテストし、その中から4車種が同賞を受賞した。

 今回ファイブスター賞を受賞したのは、三菱自動車工業「アウトランダー」、マツダ「CX-5」、スバル「レガシィ」、本田技研工業「CR-V」の4車種。その中でも年度内で最も総合得点が高い車両に与えられる「JNCAP大賞」には、「アウトランダー」が184.6点を獲得し、受賞した。

自動車アセスメント:三菱アウトランダー:フルラップ前面衝突試験
自動車アセスメント:三菱アウトランダー:オフセット前面衝突試験
自動車アセスメント:三菱アウトランダー:側面衝突試験
自動車アセスメント:三菱アウトランダー:後面衝突頚部保護性能試験

 なお、2012年度については前期・後期合計で13車種をテストしているが、テスト対象となる車両は市場に多く出回っているものを選定の判断基準としているという。また試験車両の入手方法については、試験に使用することは明かさず、一般と同じ購入手順で購入していると言う。購入費用は自賠責保険の一部を使用している。

会場の様子。11日も同会場で車両の展示や技術説明会などが実施される
国土交通省 自動車局 技術政策課 技術規格室長 久保田 秀暢氏

 会場ではまず、国土交通省 自動車局 技術政策課 技術規格室長の久保田秀暢氏が挨拶した。久保田氏は「最近の交通事故では、昨年は死者数4411人、負傷者82万人を超え、減少傾向ではあるが依然厳しい状況」という認識を示し、現在は第9次交通安全基本計画に基づき2015年(平成27年)までに死者数3000人以下、2018年(平成30年)までに同2500人以下にすることを目標に掲げているという。

 国交省ではこれらの目標達成のため、自動車安全対策、安全運転技術、先進安全自動車(ASV)の普及に努めているという。また、安全性能の比較情報を一般に公開することでドライバーが安全なクルマを選びやすくし、自動車メーカーにも安全な車両開発を促すことで、より安全な自動車の普及を促進させていきたいとした。

 自動車アセスメントは1995年度から実施されているが、試験内容、評価方法は常に時代に合わせて変化しており、近年では歩行者の死亡事故が最も多いことから、歩行者が交通事故に遭った場合の衝撃を評価する、「歩行者保護性能評価」の項目を平成23年度に追加した「新・安全性能総合評価」に基づいた基準で安全性評価が実施されている。

交通事故の現状
政府目標
アセスメントの実施体制
アセスメントの歴史
試験の様子
安全性能総合評価について
2012年度の選定車種。電気自動車を除く車種が対象となっている

 「ファイブスター賞」受賞式に先立ち、独立行政法人 自動車事故対策機構 理事長 鈴木秀夫氏がNASVAの取り組みについて語った。

独立行政法人 自動車事故対策機構 理事長 鈴木秀夫氏
ファイブスター賞を受賞した各社代表

 鈴木氏は「NASVAは交通事故防止と被害者支援をやってきている。安心安全、快適な社会作りに貢献するため、安全指導業務、被害者援護業務を実施してきた。事故をいかに未然に防ぐが、事故に伴う被害をいかに減らすかを軸にやっている」とコメントしたほか、「平成18年度から優秀メーカーを表彰する取り組みを始めたが、平成23年度のファイブスター賞受賞車両は3車種だったのに比べ、今年は前期と合わせて合計6車種を表彰することになった。これは各自動車メーカーが積極的に安全性向上に取り組んだ証明といえる」などと語り、メーカーの努力をねぎらった。

JNCAP大賞を受賞したアウトランダー。過酷なテストの様子がうかがえる
マツダ「CX-5」の試験車両
ホンダ「CR-V」の試験車両
スバル「レガシィ」。レガシィのみ試験車両の展示ではなkった
こちらは前期にファイブスター賞を受賞したトヨタ「カローラ フィールダー」
同じく前期に受賞したスバル「インプレッサ」
三菱自動車工業 プロダクト・エグゼクティブの岡本金典氏

 受賞式が終わると「JNCAP大賞」を受賞した三菱自動車が「アウトランダーの安全性能」についてプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションを担当したのは同社プロダクト・エグゼクティブの岡本金典氏。

 アウトランダーは「安全・安心」「環境性能」「上質感」の3つの柱を軸に開発されたという。特に「安全・安心」を実現する技術は「予防安全技術」と「衝突安全技術」に分けられる。

 予防安全技術は、事故発生そのものを低減する技術であり、レーダークルーズや自動ブレーキによる衝突被害の低減、車線逸脱警報システムなどを備える「e-Assist」によって実現されている。

 衝突安全技術は特に今回の受賞の目玉となるもので、車両そのものの安全性、全ての乗員と保護者の障害を最小限にすることを目指して開発したという。

 まず紹介されたのは衝突安全強化ボディ「RISE」(Reinforced Impact Safety Evolution)。車体骨格の主要部位に高張力鋼板の適用を拡大したほか、稜線を途切れなくつなげる骨格構造の最適化によって、車体剛性を損なわずに軽量化と高い衝突性能を実現したという。

 フロアーメンバーの追加やピラー結合構造を強化したことで全方位からの衝突に対してキャビンの耐久性も向上した。

 エアバッグについては運転席、助手席、運転席ニーエアバッグ、サイド(運転席及び助手席)、カーテンエアバッグ(左右)の計7カ所にSRSエアバッグを標準装備し、乗員の安全性を高めている。

衝突安全強化ボディー「RISE」
7つのSRSエアバッグを標準装備

 人身事故発生時の歩行者障害の軽減については、ボンネット、カウルトップ、フェンダーの衝撃吸収特性を最適化することで頭部への損傷を軽減しているほか、バンパーにロアーバンパービームを追加することで脚部への損害も軽減している。

 また、アウトランダーには「全席シートベルトリマインダー」と呼ばれる機能が搭載され、搭乗者が全員シートベルトを着用しているかどうかを一目で確認できる。

 岡本氏は最後に「安全は世界中で重要な要素になっている。アウトランダーは日本以外欧州やオーストラリアでも最高ランク評価を頂いた。引き続きお客様に安全安心を提供し、安全技術のさらなる向上に努めていきたい」としてプレゼンテーションを終了した。

三菱車内で実施している試験の一部
歩行者障害軽減ボディー
全席シートベルトリマインダー

 各車両の衝突試験映像は、NASVAのWebサイト(http://www.nasva.go.jp/mamoru/new_car_h24L.html)で公開されている。気になるクルマについては、再生してみてほしい。

(清宮信志)