ニュース

ヤマトHD、「羽田クロノゲート」を竣工

「止めない物流」を実現する国内最大の総合物流ターミナル

羽田クロノゲートの外観
2013年9月20日竣工

 ヤマトホールディングスは9月20日、総合物流ターミナル「羽田クロノゲート」(以下、羽田CG)の竣工式を開催した。同施設は10月上旬から本格稼動を開始する。

 羽田クロノゲートは、同社が東京都大田区羽田旭町に国内最大級の物流ターミナルとして建設したもので、鉄骨8階建、うち地上6階建ての建物だ。床延べ面積は19万7697.07m2で東京ドーム約4個分の面積を誇る。

 羽田CGはヤマトホールディングスが進める物流改革「バリューネットワーキング構想」の一翼を担う施設の1つで、すでに稼動を開始している厚木ゲートウェイ、沖縄国際物流ハブとともに多機能スーパーハブとしての役割を期待されている。

羽田CGの模型。カフェや保育所、スポーツ施設なども備え、社外の人も利用できる
調達側・供給側の双方のニーズを満たす
バリューネットワーキング構想を支える5つの柱
「スピード」「コスト」「品質」は従来は加算だったがこれからは乗算の時代に

 羽田CGは、輸送と24時間365日稼動という付加価値機能を一体化し、「止めない物流」を実現する日本最大級の総合物流ターミナルとして竣工。1~2階が「仕分けエリア」で、1階中央にはクール宅急便などを取り扱う「クール室」を設置。3階以降は付加価値機能を提供するエリアとなっている。

 付加価値機能とは、たとえば国内外で製造した製品や部品などを羽田CG内で集約し、配送先ごとに同梱する「クロスマージ機能」がある。これにより、顧客倉庫とヤマト拠点間の在庫移動が不要となって輸送の効率化ができるほか、納品先にとっても荷物がまとまって届くため効率化が図れる。

 こういった同梱作業には「FRAPS」(Free Rack Auto Picking System)と呼ばれる独自規格によるピッキングシステムも導入され、正確な流通加工を実現しているという。

 これ以外にも、医療用機器の洗浄・メンテナンス設備や、家電製品の修理などを行う機能を備え、倉庫内で処理した製品をそのまま出荷することも可能として物流のスピードアップを実現する。また、羽田/成田に到着する海外からの貨物を外国貨物のまま運び入れて通関させる「スピード通関」や、外国貨物のまま日本語ラベルへの張り替えなどが可能な「保全/ローカライズサービス」も提供する。

医療機器の洗浄・メンテナンスや家電製品の修理なども可能
「FRAPS」のデモ。ランプが点灯した棚にある品物を振り分けていく

 施設内はインフラ面でも効率化が図られている。従来、こうした大型倉庫では上層と下層階間の荷物を移動させるためにエレベーターなどを使っていたが、羽田CGでは全階層を螺旋状のコンベアで結ぶ「スパイラルコンベア」を設置。施設内の荷物移動がスムーズに行えるようになっている。

 ベルトコンベアには「クロスベルトソータ」を採用。ベルト底面が進行方向に対して直角にスライドする機能を備え、荷物の分岐時に底面がスライドして移動するため荷物を痛めにくい。

上下階層を直結している「スパイラルコンベア」
「クロスベルトソータ」を備えたベルトコンベア
ベルトコンベア上は品物1つごとに1つのセルとなっており、それが横にスライドして荷物を振り分ける
「クロスベルトソータ」を使って横方向に移動させ「シューター」に流すシーン

 そのほか、クルマから降ろされたロールボックスパレット(荷物を積載したケージ)の移動を自動化。これはパレットの重量が約600kgもあり、自動化によって省力化と安全性の向上が図られている。ロールボックスパレットからベルトに荷物を載せるときは従来どおり人間による作業も行われるが、新たにロボットアームも投入。レーザーで荷物の大きさや形を認識し、吸盤状のアームで荷物を吸い上げてベルトコンベアに流していく。これらのシステムを導入したことにより、従来型の施設では1時間あたり約2万4000個だった仕分け数を1時間あたり4万8000個まで増やすことができたという。

 羽田CGにはこうした物流施設だけではなく、地域貢献として敷地内にカフェや保育所、スポーツ施設などを備え、社員でなくてもこれらを利用することができる。

自動化されたロールボックスパレット
ロールボックスパレットから手動で仕分けをする様子
仕分け用のロボットアームを導入
写真右のレーザー発振器で荷物のサイズなどを計り、左の吸盤状のアームで箱を1つずつ吸い上げる
ヤマトホールディングス代表取締役社長 木川眞氏

 竣工式では、ヤマトホールディングス代表取締役社長の木川眞氏が挨拶した。木川氏はまず「物流としては日本最大級の施設が完成した。6年後にヤマトグループは創業100周年を迎えるが、これに向けた、あるいは次の100年の発展に向けた布石としたい」と述べ、「3年前からアジア一円への宅配ネットワークを、5つの国と地域で展開してきたが、今後国内外の物流を大きく進化させたい。現在は国内では翌日配達サービスが最短だが、これを当日に可能にするためのネットワーク、特に東京-大阪間でそれを実現したい」とも語り、新たなサービス展開に向けて意欲を見せた。

 最後に木川氏は「2020年の東京オリンピック開催が決まったが、これを日本経済の発展スピードを上げるために活用したい。そのなかで物流が担う役割はもっと増える。日本経済の成長加速のために新しい価値創造をしたい」と口にして挨拶を終えた。

衆議院議員 石原慎太郎氏

 式典には、主賓として衆議院議員の石原慎太郎氏も出席して挨拶。石原氏は「羽田は昔、私の選挙区だったこともあり縁が深い。羽田の国際空港化に関しては当時の運輸省の次官をほとんど脅迫して滑走路増築を迫まった。羽田には2020年に大規模な国際展示場を建設する計画もあり、ドンドン生まれ変わる。日本にはまだまだ底力がある。物流は日本の経済を支える血液であり、この素晴らしい施設が活用されて日本を支えるエネルギーとなることを期待する」と語って激励した。

(清宮信志)