ニュース

アジアクロスカントリーラリー2013&パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム2013参戦ドライバートークショー開催

三菱自動車の最新技術を搭載した、ブラグインハイブリッドと電気自動車で挑んだ2つのレース

2013年9月26日開催

三菱自動車の益子修社長

 今夏、EV(電気自動車)で2つのレースに参戦した三菱自動車工業が、本社ショールームで参戦ドライバーのトークショーを開催した。

 トークショーの始まりに際し、まず初めに三菱自動車の益子修社長が登壇。「2台はどちらも当社が進めている電動車両によるモータースポーツの参戦です。競技はパワーとスピード、ハンドリングなど刻々と変わる路面コンディションや気象条件のなか、ドライバーはクルマの特性を最大限引き出し、クルマはそれに応えるよう極限状態まで性能を発揮しなければなりません。このような過酷な条件のなかでこそクルマの真価が問われる」とレース参戦の意義を紹介。

 登壇したのは、アジアクロスカントリーラリーに参戦した青木孝次ドライバー&石田憲治コ・ドライバー、そしてパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに参戦した増岡浩ドライバーという3選手。

 タイ、マレーシア、シンガポール、中国、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーの8カ国を走破する「アジアクロスカントリーラリー2013(英名/FEDERAL-FLEX Asia Cross Country Rally 2013)」は、1996年から開催され、今回で18回目となるアジア最大のクロスカントリーラリー。今年は8月10日に車検およびスタートセレモニー、翌11日から16日までの6日間で約2000㎞を走破する内容となった。

 このラリーレイドへのアウトランダーPHEVの出場は、増岡氏からの提案によるもの。PHEVの安全性や機能を十分に備えていることを実証しようという提案がきっかけ。提案をした増岡氏はスケジュールの都合がつかず、このラリーにはチーム「ツーアンドフォーモータースポーツ」からの参戦となった。市販車改造クラスで初参戦ながら完走し、成績は参加20台中17位。過酷な悪路をツインモーター4WD&S-AWCで駆け抜け、もちろんプラグインハイブリッドEVシステムはトラブルフリーでその信頼性を実証している。

アウトランダーPHEV

 石田氏は今年のアジアンクロスを「これまでよりももっともひどいコースだった」と振り返るほどで、青木ドライバーも「レースは毎日がドラマのようで、コースがキャンセルされたりいろいろな問題が起きた。初参戦のクルマで完走が目標だったけれど、正直できるとは思っていなかった」とコメントするほど。「振動に弱いというイメージもあって、電気トラブルで悩まされるんじゃないかと思っていたけれど、まったくなかったですね。水のなかも怖かったですね。それは全開で駆け抜けたんで大丈夫だったですが。あとはバッテリーを下に積んでいるんですが、そこに当てないようにしなければならないんですが、ブレーキを踏んでも間に合わないんで何度かぶつけてしまったんですが、何事もなくてビックリでした」とコメント。

 増岡氏は、「クルマはあくまで市販車で、ノーマルの基本性能で実証したいと思っていまして、それが実証されたことをうれしく思っています。車両は、悪路走行のために、サスペンションまわりはエボのモノを使用し、タイヤも変更はしましたが、最低限のところだけの変更に留めています。車両のコンピュータプログラムもノーマルのまま持ち込みました。セッティングの変更は現場でプログラムを書き換えながらやっています」ということであった。

 コ・ドライバーの石田氏もこのセッティング変更については「一度足をばらして、という今までのラリー車のチューニングやセッティングと違って、パソコンをいじることでまったく違う次元にクルマが変わっていき、ラリーが進むにつれてどんどんクルマがよくなっていきました。我々も最初はいろいろと新しいことばかりだったけれど、徐々にクルマに慣れていき、電気をバッテリーに充分貯めた状態でのアクセル全開は、ターボ車とは違う走りで楽しめました」と。青木氏も「スリッピーな道が多いんですが、何もしなくてもクルマが勝手にやってくれるんで、この制御でずいぶんと楽させてもらいました」とコメントした。

 一方、「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、三菱としては参戦2年目で、クルマも大きく進化させての参戦となった。

 舞台となるのは、アメリカ・コロラド州にあるパイクスピーク(標高4301m)。この山をひたすら駆け上がるヒルクライムレースだが、その歴史は古く、1916年から開催され、アメリカではインディ500に次ぐ歴史を持っている。走行距離20㎞、156のコーナーを持つコースは、スタート地点の標高が2862mで富士山の8合目付近と同じ高さ。平均勾配7%の路面は昨年のレースから全面舗装路となっている。

 昨年は、三菱自動車のモータースポーツ参戦50周年という意味も込めてこのレースにEVとして初参戦を果たした。参戦車両は、パイプフレームに市販のi-MiEVのユニット流用(モーターの出力は47kWから80kWに変更)し、モーターをフロントに1つ、リヤに2つ搭載し4WDとしたi-MiEV Evolutionを増岡浩選手がドライブし、もう1台の市販車「Mitsubishi i(i-MiEVの北米仕様)」をベッキー・ゴードン選手がドライブした。増岡選手の昨年の記録は10分30秒850で、EVクラス2位となった。

 今年は昨年の課題をクリアしつつ、市販車の流用ではなく、数々の先行開発品を使ったものとなり、車両は大きく変わった。前後2基ずつで4基搭載したモーターは、出力を100kWにアップしている。i-MiEV Evolutionが電子制御モノをほとんど搭載していなかったのに対し、今回のMiEV Evolution IIはS-AWCを用い、制御ソフトも大幅に改修。EVの可能性を追求したモデルとなっている。ちなみに0-100㎞/h加速は2秒台で到達するという。

 また、今回も同じように2台体制としたが、MiEV Evolution IIを2台とし、ドライバーは増岡浩選手と、グレッグトレーシー選手。天候が悪化したなかで今年の結果は、増岡選手がクラス2位(10分21秒866)、グレッグ選手が同3位(10分23秒649)となった。

増岡浩ドライバー

 このレースへの参戦を増岡氏は「ガソリンエンジン車は、空気が薄い頂上付近では3割ほど出力ダウンするけれど、EVなら最後まで全速力で走れるのでEVには適しています。このレースで成績を残してEVのすばらしさをアピールし、これをフィードバックして安心・安全なクルマ作りに活かしていけます。残念ながら今年は天候の急変と出走タイミングが重なってしまって、練習走行ではずっと1-2の結果を残してきただけに、非常に悔しい思いをしています」とコメント。「来年はさらにモデファイをして、天気も味方につけて勝利を勝ち取りたいと思います」と来年に向けた抱負も語った。

MiEV Evolution II
トークショーではじゃんけん大会も実施

(青山義明)