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トヨタ、2014年3月期通期の決算説明会を実施。営業利益は2兆2921億円、純利益は1兆8231億円

グループ総販売台数は1013万3000台。年間配当金は1株につき165円

「お客様を笑顔にする“もっといいクルマ”と、それを生み出す“人材”を成長のエンジンに、トヨタを成長し続ける会社にしたいと思っています」と決算説明会で語るトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏
2014年5月8日発表

決算内容について解説するトヨタ自動車 取締役副社長の小平信因氏

 トヨタ自動車は5月8日、2014年3月期の通期決算内容、2015年の3月期の見通しに関する説明会を実施した。

 2014年3月期の通期決算は、連結販売台数が前年度比で24万5000台増の911万6000台。売上高が3兆6277億円(16.4%)増の25兆6919億円、営業利益は9712億円(73.5%)増の2兆2921億円、純利益は8609億円(89.5%)増の1兆8231億円となっている。販売台数は日本国内では8万6000台増の236万5000台、海外市場全体では15万9000台増の675万1000台となっている。また、総販売台数は前年度の969万2000台から44万1000台増加し、1000万台の大台を超える1013万3000台となった。

総販売台数はついに1013万3000台に突入
連結決算の要約。売上高は25兆6919億円
営業利益のマイナス要因である「諸経費の増加」には、3月に発表した「米国ニューヨーク州南地区連邦検事局との合意」で支払った12億ドルが含まれている
2月の第3四半期決算と比較すると営業利益は下がっているが、これは2月に発表したオーストラリアでの生産中止に伴う費用など約1000億円が計上されたことが大きく影響
日本国内では販売台数、営業利益ともに増加。景況感の改善、消費税の8%化を前にした駆け込み需要に加え、カローラ ハイブリッド、ハリアー、ヴォクシー/ノアといった新型車が好調に推移した結果
北米も自動車市場が堅調を維持し、RAV4、タンドラ、レクサス ISなどが販売を牽引
欧州市場ではハイブリッドカーの新型車が好評で、原価改善などにより営業利益が伸びている
唯一、販売台数が減少したアジア市場。インドネシア市場で新型アギアが堅調に売れているものの、タイやインドの市場縮小、競争の激化などが原因。原価改善により営業利益では増益を確保
逆に中近東や中南米などのその他の地域では販売台数を大きく伸ばしているものの、各国の通貨変動やオーストラリアでの生産中止の費用を計上したことを受けて減益という結果に
金融セグメントでは融資残高の増加と為替変動などにより増益
日本、中国の持分法会社の業績が好調に推移して持分法投資損益を増益にしている
株主に対する1株あたりの配当金は、期末配当の100円を合わせて年間165円。リーマン・ショック前の水準を超える金額となっている
3月に発表した「トヨタ・モビリティ基金」に、自己株式の取得と消却で活動原資を拠出する予定
2015年の見通しでは、連結販売台数を2014年並みの910万台に設定。日本国内での消費税増税の影響で15万5000台が減少するとしている
連結決算の見通しでは、売上高と営業利益の増加としつつ、“持続的な成長”に向けた先端領域に対する投資や人材育成などの先行投資を行う予定で、純利益は減少する見込みとしている
先行投資には研究開発費に500億円、労務費に650億円など、合計2000億円を諸経費として投入する
トヨタでは“持続的な成長”に向け、すでに多額の予算を先行投資に使っている
決算説明の資料の最後では、同日発表された4月の「乗用車車名別販売台数」で3位にランキングされたヴォクシーを紹介

“再び成長拡大局面に入りつつある今こそ、実は危機的状況に置かれている”と豊田社長

“数字”が主役の決算説明会だが、販売台数や収益といった数字には敢えてこだわらない姿勢を強調した豊田社長

 決算説明会の冒頭では、社長就任後5回目の通期決算となるトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏が登壇した。これまでにも説明してきた会社の“持続的な成長”について、赤字の状態から国に納税できる状態に回復し、スタートラインから1歩を踏み出せるようになったと説明。過去の失敗を振り返り、販売台数の増加を堅実に企業規模の積み上げとリンクさせてコントロールすることの重要性を説明した。キーワードとしてたびたび口にしてきた「もっといいクルマづくり」をさらに進め、このために2013年4月から導入した4つのビジネスユニットを軸とする新体制の考え方を前進させ、これまでの車種単位での個別的な最適化から、プラットホームごとにクルマづくりを考える取り組みをスタートさせていることを紹介している。

 このほか、自動車メーカーとして成長を続けるためのイノベーションでは、現在の環境技術の核となっているハイブリッドカーをさらに強化しつつ、「低燃費ガソリンエンジン」「燃料電池車」「安全技術の開発と実用化」「次世代モビリティ」「ITインフラの革新」といった項目に対して積極的に取り組んでいくとした。また、“持続的な成長”のためには魅力ある商品である新型車と、車両を開発する人材が“成長のエンジン”になると語り、販売台数や収益の拡大に必ずしもこだわらないと表明している。この部分は後半の質疑応答でも補足を行っており、自身が分かりやすい数値的な目標を提示した場合、社員がその数字をクリアすることに拘泥すると、結果として本来目指すべき「もっといいクルマづくり」に意識が向かなくなり、株主などのステークホルダーの利益を損なうことに繋がると解説した。

決算説明会は東京本社が会場となったが、質疑応答では愛知県豊田市の本社に集まった記者とも中継を行って質問が行われた
今回の決算内容について、為替の変動に加え、継続してきた原価改善の取り組みが寄与していると語る小平副社長
質疑応答で出た為替変動の影響について「私どもの会社では、例えばアメリカの工場で生産したクルマをカナダに輸出したり、ヨーロッパからロシアに輸出することもあります。新興国の通貨に対して米ドルやユーロが強くなっていると、アメリカで作ったパーツを新興国で使ってクルマを組み立てると、収益に影響が出ることもあるのです」と解説するトヨタ自動車 常務役員の佐々木卓夫氏

(編集部:佐久間 秀)