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すべての自動車が電気自動車になる時代を見据えたFormula Eと鈴木亜久里氏

2014年8月1日実施

テレビ朝日本社のアトリウムに展示されているAmlin Aguriカラーに塗られたFormula Eの車両を前に記念撮影をする鈴木亜久里氏

 電動のフォーミュラカーを利用したFIA Formula E選手権は、2014年9月13日に中国・北京市のストリートコースで行われる開幕戦によって最初のシーズンがスタートする。その後、世界各地を転戦。2015年6月27日にロンドンで行われる最終戦までの全10戦でチャンピオンが争われることになる。

 そのFormula Eが、テレビ朝日系列で放送されることは以前の記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20131129_625742.html)でお伝えしたとおり。来月の開幕戦でシーズンがスタートするため、参戦チームであるAmlin Aguriの上級会長に就任した鈴木亜久里氏が記者会見を行った。

9月13日に予選、決勝を迎えるFIA Formula E開幕戦はテレビ朝日系列3波で放送

 放映権を取得しているテレビ朝日では、以下のスケジュールで放送する予定になっている。

●9月13日
練習走行:BS朝日(調整中)
予選:CSテレ朝チャンネル(調整中)
決勝:地上波 テレビ朝日系列

 このほか、同系列で放送されているスポーツニュース番組「Get Sports」で連続企画が放映され、8月26日には特番も予定されているなど、かなり力を入れてFormula Eを扱っていく。

 すでに開幕戦に向けて各チームの体制なども整ってきており、原稿執筆時点では、以下のようなチーム、ドライバーが参戦することが決定している。

●FIA Formula E選手権に参戦するチーム、ドライバー(Formula Eの公式Webサイト発表による)

チームドライバー
AMLIN AGURIキャサリン・レッグアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ
ANDRETTI AUTOSPORTフランク・モンタニーTBN
AUDI SPORT ABTルーカス・ディ・グラッシダニエル・アブト
CHINA RACINGTBNTBN
DRAGON RACINGマイク・コンウェイジェローム・ダンブロシオ
E.DAMS RENAULTニコラス・プロストセバスチャン・ブエミ
MAHINDRA RACINGカレン・チャンドックブルーノ・セナ
TRULLIヤルノ・トゥルーリミケーラ・セルッティ
VENTURI FORMULA E TEAMニック・ハイドフェルドステファン・サラザン
VIRGIN RACINGハイメ・アルグエルスワリサム・バード

 参加ドライバーには、ヤルノ・トゥルーリ、ニック・ハイドフェルドやブルーノ・セナ、カレン・チャンドック、ハイメ・アルグエルスワリ、ジェローム・ダンブロシオ、セバスチャン・ブエミ、フランク・モンタニーといった元F1ドライバーもほか、F1のシートは獲得出来なかったものの、お金やチャンスさえあればいつF1に昇格してもおかしくないアントニオ・フェリックス・ダ・コスタやマイク・コンウェイといった実力派などが多数そろっている。さらに、過去にインディカーシリーズを走っていたキャサリン・レッグやミケーラ・セルッティという女性ドライバー2人が含まれているのも要注目だ。

 日本人ドライバーの名前がこの中に含まれていないのは日本のファンとしては少々残念ではあるが、日本でも名前が知られている、トゥルーリやハイドフェルド、さらにはマイク・コンウェイといった実力派のドライバーがそろっており、充分期待できるドライバーラインアップと言えるだろう。

日本からももっとFormula Eへのサポートがほしいと、鈴木亜久里氏

Amlin Aguri 上級会長 鈴木亜久里氏

 そうしたFormula Eに、自らの名前を冠したチーム“Amlin Aguri”で参戦するのが、同チームの上級会長を務める鈴木亜久里氏だ。鈴木氏と言えば、説明するまでもないが、1989年からF1世界選手権に参戦し、1990年のF1日本GPではラルース・ランボルギーニを駆って日本人初表彰台を獲得した日本を代表する名ドライバーの1人だ。現在はSUPER GTにARTA(AUTOBACKS RACING TEAM AGURI)を率いて参戦しているほか、2006年~2008年には今や伝説となっているSUPER AGURI F1(SAF1)でF1にも参戦するなど、日本と世界のモータースポーツをつなぐキーマンだと言ってよい。

 鈴木氏によれば今回の参戦は「もともとSAF1の時のスタッフだったマーク・プレストンが話を持ってきて始まったプロジェクト。去年の11月1日にマークとFormula Eの関係者とが、新宿のハイアットホテルに集まって正式に契約書に調印して参戦することが決まった。SAF1の時も11月1日だったので、ちょっとした縁を感じた」とのことで、鈴木氏が積極的に動いて決まったというよりは、SAF1時代に同チームのテクニカル・ダイレクターを努めていたプレストン氏が鈴木氏に一緒にやろうと持ちかけてきたのだと説明した。

 以前から電気自動車には興味があって、ARTAプロジェクトで作成した「ガライヤ」を電気自動車にしてみようとバッテリーについてもずっと研究を続けていたのだという。鈴木氏は「ホンダがF1に参戦していたころはF1を走る実験室と位置づけしていたが、Formula Eは電気自動車の走る実験室になると確信しており、それがやろうと思った最大の理由」と述べ、今後数十年の間に自動車はみな電気自動車に置き換わっていくと鈴木氏は信じており、その先駆けとなる意味があるのだと語った。

 すでにイギリスのドニントンサーキットでテストを終えているとのことだが、鈴木氏は「モーターは内燃機関と違って、いきなりパワーが出る。0-100km/hの加速がわずか2.9秒と圧倒的。さらに、ガソリンエンジンと違って、爆音も排ガスもなく、まさにクリーンなレースになると思う」と述べ、従来のF1やSUPER GTなどとは違う魅力がFormula Eにはあるとした。また「将来的にはF1も電気自動車になっていくと思う」と述べ、今後はモータースポーツ全体がそちらの方向に向かっていくと鈴木氏は予想しているとした。

 なお、ファンの楽しみ方に関して言えば「正直なところ、スピードはF3ぐらいであまり速くない。その点はF1やSUPER GTの方が魅力はあると思うが、Formula Eには1レースの間にバッテリーを交換することができないので、ドライバーが車両そのものを乗り換えるというユニークなルールがあるほか、ファンがSNSで投票するとそれがブースト機能になる取り組みなど、これまでのレースでは想像できなかったような新しい見所が沢山あると思う。テレビ放送などでもそういうところを取り上げてくれればすごく面白いレースになると思う」と述べ、音やスピードなどではない、新しいレースの特徴に注目してほしいとした。

 なお、Amlin Aguriはスポンサーもイギリスの保険会社(Amlin)で、チームのベースもイギリスにあるなど、鈴木氏が代表ながらやや日本色が薄いチームになっているが、「実際、日本からはスポンサーを持ち込めていないので、僕は非常に肩身が狭い」と冗談を交えながらも、スポンサーを大募集中であることをアピールした。鈴木氏は「自動車メーカーも注目をしており、ルノーがプロストのチーム(筆者注:E.DAMSのこと)のスポンサーになったり、アウディも同様の動きをしている。今、世界中からFormula Eの取り組みに注目が集まっており、日本の自動車メーカーや電機メーカーなどはぜひ注目してほしい」と述べ、日本メーカーからのFormula Eへのサポートを希望していた。

(笠原一輝)