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ARM、ツインモーターハイブリッド車を制御するCPU搭載MCUのデモを披露

自動車業界に向けた取り組みに関する記者説明会

2015年3月26日実施

ツインモーター採用のハイブリッドを制御するARM搭載のMCU(マイクロコントロールユニット)
会場ではツインモーター採用のハイブリッド車を制御するARM搭載のMCUで模型のデモを行った

 プロセッサー設計のARMは3月26日、自動車業界に向けた取り組みに関する記者説明会を開催。会場では、ツインモーター採用のハイブリッド車に向けた、ARMの「Cortex-R5」CPUを搭載する「HEV/EV向けモーターコントロールMCU」を使ってモーターを制御する様子を披露した。

 会場には、英ARMエンベデッド担当副社長のリチャード・ヨーク氏が来日。「ARM Cortex-R5」CPUを採用する半導体メーカーのSpansion 自動車事業部事業部長の赤坂伸彦氏も参加し、ARMとSpansionの自動車業界に向けた戦略を説明した。

 この日デモンストレーションが行われたのは、近日商品化予定のツインモーター採用のハイブリッド車に向けた製品。モーターを制御するSpansionの「Traveoファミリー MB9D560シリーズ」は、ARM Cortex-R5 CPUを2個搭載。動力モーターに使用されているレゾルバセンサー専用のインターフェース回路(RDC)、機能安全を考慮したエラー検出回路を内蔵したモーター演算アクセラレータ(MVA)などをそれぞれ2個搭載し、2つのモーターを搭載するHEV/EV等の動力モーター制御に最適な製品としている。

ARM搭載のTraveoファミリーを使ったデモ
新しいグラフィックエンジンでは3D表示が可能となる

 プレゼンテーションでは、ARMのCPUやSpansionのMCU(マイクロコントロールユニット)が、ハイブリッドシステムやメーターパネル、エアコンシステムなどの制御に採用されていることを紹介。近年はADAS(Advanced Driver Assistance System)として軽自動車にも自動ブレーキが採用されるなど、よりCPUのパフォーマンスが求められている状況が説明された。

英ARMエンベデッド担当副社長のリチャード・ヨーク氏のプレゼンテーションスライド

 ARMのヨーク氏は、同社のプロセッサーの特長について「低消費電力で高性能」であることや、CPUは壊れないことが前提であるが、CPUが壊れてもクルマのシステムを担保できる機能安全規格であるISO 26262への準拠にいち早く対応したことなどをあげ、「これから10年後クルマは大きく進化するが、その裏にはARMの技術が入っていることでしょう」と自信を示した。

 一方、Spansionの赤坂氏は「現在の車載半導体市場を牽引している要因は2つ」と語り、「クルマの販売台数そのものの伸長があり2018年に向けて3.5%ずつ成長し、2018年にはクルマの販売台数は1億台に達し大きな市場になる」「クルマの販売台数の成長率3.5%に対して、車載向け半導体は9.5%で伸びている」と、今後もクルマの中の電子化が進み車載半導体産業にとってチャンスになるとの見方を示した。

英ARMエンベデッド担当副社長のリチャード・ヨーク氏
Spansion 自動車事業部事業部長の赤坂伸彦氏
Spansion 自動車事業部事業部長の赤坂伸彦氏のプレゼンテーションスライド

 現在、多くの自動車メーカーが自動運転車を2020年までに実用化することを目標として掲げているが、自動運転に関する領域について、赤坂氏は「我々Spansionは、走る、曲がる、止まるを制御する部分を得意分野としていますので、画像認識をはじめとする自動運転を司るハイパフォーマンスな領域にはいきません。そこから指示を受けた我々のマイコンがクルマを制御する、そういった役割分担になると思う」との考えを示した。

(編集部:椿山和雄)