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スズキ、120kgの軽量化とエネチャージ採用などで最高35.6km/Lの新型「アルト ラパン」

女性ユーザーのニーズにフォーカスして「ラパンらしさ」を追究

2015年6月3日発売

107万7840円~149万2560円

 スズキは6月3日、新型軽自動車「アルト ラパン」を発売した。価格は107万7840円~149万2560円。

モデルエンジン変速機駆動方式価格JC08モード燃費減税レベル(取得税/重量税)
G直列3気筒DOHC 0.66リッター5速AGS(5速AMT)2WD(FF)1,077,840円29.6km/L免税
4WD1,188,000円27.4km/L80%/75%
LCVT2WD(FF)1,202,040円35.6km/L免税
4WD1,312,200円33.2km/L
S2WD(FF)1,285,200円35.6km/L
4WD1,387,800円33.2km/L
X2WD(FF)1,389,960円35.6km/L
4WD1,492,560円33.2km/L

 軽自動車「アルト」の派生車種であるアルト ラパンは、2002年1月発売の初代、2008年11月発売の2代目と続き、今回のフルモデルチェンジで3代目を迎える。フランス語でウサギを意味するLapin(ラパン)と名付けられたこのモデルは、2015年4月末までに累計63万9000台を出荷。2代目モデルの90%以上のユーザーが女性であり、そのうち20代~30代のユーザーが6割近くになるという特徴的なユーザー構成比となっている。

 これを受け、3代目ラパンは「女性がクルマの購入を考える時、まっさきに思い浮かべるクルマにしたい」という開発思想を採用。女性開発者が企画、開発、アクセサリー展開など多方面で活躍し、女性視点でのこだわりをふんだんに盛り込んでいるという。

新型「アルト ラパン」

 エクステリアデザインは「ぬくもりのあるカタチ」をコンセプトに、「四角いカタチ」「レトロな雰囲気」「シンプルな造形」など、先代までに築き上げてきた「ラパンらしさ」を継承。箱形の四角いデザインをベースに、丸いディテールを多用して独特のプロポーションを構成している。ボディーサイズは全車3395×1475×1525mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2460mm。

 ボディーカラーでは新色の「コフレピンクパールメタリック」「フォーンベージュメタリック」に加え、「フレンチミントパールメタリック」の3色をキャラクターカラーとして設定。このほかに「シフォンアイボリーメタリック」「カシスピンクパールメタリック」など全8色をラインアップする。

 また、カラーリングではボディー下側のバンパーモール、フェンダーアーチモール、スプラッシュガードなどに、「ブラウン」「ネイビー」のいずれかを使う着色材料を採用。ボディーカラーとのコーディネートで個性を演出している。これに加え、初代、2代目にも採用していた「ホワイト2トーンルーフ仕様」をS、Xに設定。ルーフ、ボディー、モールの「3トーンコーディネート」に進化させている。このほか、上級グレードのXでは、AピラーとBピラーをブラックアウトして差別化を実施している。

新色でキャラクターカラーの「コフレピンクパールメタリック」
新色でキャラクターカラーの「フォーンベージュメタリック」
キャラクターカラーの「フレンチミントパールメタリック」
「カシスピンクパールメタリック」
「シフォンアイボリーメタリック」
「アーバンブラウンパールメタリック」
「パールホワイト」
「ブルーイッシュブラックパール3」
「コフレピンクパールメタリック ホワイト2トーンルーフ」
「フォーンベージュメタリック ホワイト2トーンルーフ」
「フレンチミントパールメタリック ホワイト2トーンルーフ」
「シフォンアイボリーメタリック ホワイト2トーンルーフ」
ピラーをブラックアウトした「コフレピンクパールメタリック」
同「フォーンベージュメタリック」
同「フレンチミントパールメタリック」
同「カシスピンクパールメタリック」
同「シフォンアイボリーメタリック」
同「アーバンブラウンパールメタリック」
同「パールホワイト」
同「ブルーイッシュブラックパール3」

 モデルチェンジにあたりプラットフォームも刷新。ボディーでは強度を保ちながら重量を軽減できる高張力鋼板の採用を拡大。高張力鋼板は従来型から重量比で約75%増やした全体の約45%に、超高張力鋼は同約14%増加の約16%に使用個所を広げて重量を軽減。さらにフロア下に設定する骨格を前後で連続させるといった構造の見直し、フロントサスペンションフレームの車体骨格との一体構造化、980Mpaの超高張力鋼を使ったフロントシートフレーム、リアシートの構造見直しなどを実施。新採用のパワートレーンでも軽量化が図られていることで、合計で同じCVTモデルで比較して、2代目から120kgの軽量化を達成。これにより、車重はもっとも軽い5速AGSの2WD(FF)車で650kg、CVTの2WD(FF)車で680kg、4WD車では700~730kgとなっている。

3代目ラパンのホワイトボディー。高張力鋼板、超高張力鋼板の使用範囲を拡大し、大幅な軽量化による燃費性能の追究とともに、高いボディー剛性による安全性と走行性能を並び立たせている
フロア下で前後の骨格を繋げることで、強固で安全なボディーとしつつ軽量化にも貢献
高張力鋼板の活用により、軽量・高剛性でありながら、座り心地も向上させたフロントシート。リアシートは構造の見直しを行い、ボディー側に取り付ける部品を溶接することで軽量化している

 足まわりでは、フロントのマクファーソンストラット式は変更なく、リアでは2代目で全車I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)式だったところから、2WD(FF)車では新たにトーションビーム式を採用。前後ともにサスペンションストロークを拡大し、乗り心地を高めている。また、可変ギヤレシオステアリングを採用して、車庫入れなどの低速走行時には軽い力で操作でき、市街地走行などのシーンではキビキビとした走りを両立させる。

2WD(FF)車のリアサスペンションはトーションビーム式に改められた。ブレーキはフロントがディスク、リアがリーディング・トレーリングを採用
フロントサスペンションフレームを車体骨格と一体構造化したことも軽量化のポイント。さらに高剛性化も果たしている

 パワートレーンでは、2014年12月発売の「アルト」から投入が始まった改良型のR06Aエンジンを採用。「スペーシア」「ハスラー」にも搭載されるようになったこのエンジンは、高圧縮比化、吸排気系の設計見直し、EGRシステムの採用などによって高効率化を果たし、制動時のエネルギーをリチウムイオンバッテリーに回収する「エネチャージ」を追加。トランスミッションに副変速機付CVT、または5速AGS(オートギヤシフト)を組み合わせ、前出の軽量化のほか、2代目から約6%空気抵抗を低減させた空力性能などにより、JC08モード燃費は2WD(FF)のCVT車で35.6km/Lを実現。4WDのCVT車で33.2km/L、5速AGSでは2WD(FF)車で29.6km/L、4WD車で27.4km/Lとなっている。

全車で自然吸気の0.66リッター直列3気筒DOHCの「R06A」型エンジンを搭載。最高出力38kW(52PS)/6500rpm、最大トルク63Nm(6.4kgm)/4000rpmを発生
圧縮比を11.5にアップさせたほか、排気ガスを再循環させるEGRシステム、ボウル型冠面ピストンの採用などによって高効率化している
アルト ラパン Xのインパネデザイン

 車内空間は新プラットフォームの採用によるロングホイールベース化(先代比+60mm)をはじめ、広々と寛げる空間を実現するため室内長を105mm、前後乗員間距離を60mm、前席左右乗員間距離を30mm拡大。実用上なスペースアップに加え、ガラスエリアの拡大、フロントシートのベルトラインの35mm低下、トリム類の張り出し抑制などを実施して、車内の開放感を高めている。

 インテリアデザインでも女性ユーザーの視点を強く意識し、「わたしの部屋」をコンセプトにした空間演出を実施。自分の部屋にいるような雰囲気を感じてもらえるよう、車内のディテールにテーブル、ソファ、置き時計、フォトフレームなどをモチーフにしたアイテムを配置してリラックスできるキャビンを作り上げている。

 内装色は明るいベージュを基本に、上級グレードのXではボディーカラーとのコーディネートでキャラメル内装、ブラウン内装も設定。インパネ前面のカラーパネルはハスラーで好評を受けたものをさらに進化させて採用し、耐衝撃性と耐熱性を高め、軽量化しているほか、表面に付着した菌をはじいて簡単に拭き取れるようにする撥菌性を与えている。また、ルーフトリムには斜め方向にラインを入れてキルティング地を連想させるパターンを採用。ソフトで独自性のある演出としている。

スクエアな四角さと角に丸みを持たせた「まる しかくい」という独自のデザインモチーフを採用。色遣いやガラスエリアの拡大による視覚的演出でも寛げる車内スペースを表現している
置き時計をモチーフにしたというメーターパネル。大型のスピードメーターは見やすさを追求したほか、速度の数字を盤面から浮き上がらせて美しさも重視している
室内寸法は2020×1295×1240mm(室内長×室内幅×室内高)。運転席ではチルトステアリングの調整量を5mm増やして35mmとしたほか、シートリフターの調整量も28mm拡大して60mmとするなど、ドライバーの体格に合うドライビングポジションに調整しやすくなっている
ラゲッジルーム容量は、4人乗車時で先代から30L拡大した115L。後席のシートバックを左右別に分割可倒して大型の荷物にも対応する
柔らかな手触りを連想させるキルティングパターンのルーフトリム
収納スペースでは、助手席側グローブボックスの上に設定する引き出し式の「インパネボックス」(写真)など、他人の視線から隠せるリッド類を設定
カフェのカウンターをイメージしてデザインされたインパネのテーブル。GとLではシンプルなブラウンのドット柄(左)、SとXではナチュラルな白木目調(右)のデザインを採用
Lのインパネ。GとLはステアリングがウレタン製となる。G以外のグレードでは、「オーディオレス仕様車」「メモリーナビゲーション装着車」が設定される
Sのインパネ。本革巻きステアリングを採用し、シフトセレクターのボタンなどがメッキ加飾となる。インパネ中央に設置されているのは、オプション扱いのメモリーナビゲーション
Xのインパネ。「ナノイー」搭載フルオートエアコンはX専用
ソファのような質感にこだわったというシート表皮を採用。ベージュ内装は全グレードに設定。SとXでは前方側に幅広のパイピング(写真右)を使って上質感を演出
Xには2トーンシートも設定。「キャラメル内装」(左)は「フレンチミントパールメタリック」「コフレピンクパールメタリック」「シフォンアイボリーメタリック」「パールホワイト」のボディーカラー選択時に、「ブラウン内装」(右)は「フォーンベージュメタリック」「アーバンブラウンパールメタリック」「カシスピンクパールメタリック」「ブルーイッシュブラックパール3」のボディーカラー選択時にそれぞれ組み合わせ可能となる
シートアレンジのバリエーション

 このほかに装備では、フロントウインドー上側に設置したレーザーレーダーを使う「レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)」、ペダルの踏み間違いによる誤発進を抑制する「誤発進抑制機能」、高速走行中の急ブレーキ時にハザードランプを高速点滅させる「エマージェンシーストップシグナル」、タイヤのスリップや車両の横滑りを防止する「ESP」などの安全装備を全車に標準装備。また、5月に実施された一部改良でスペーシアに採用された「全方位モニター付メモリーナビゲーション」をG以外のグレードにメーカーオプション設定している。

レーザーレーダーを使う「レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)」などの先進安全装備を全車標準装備
全方位モニター付きとなるメモリーナビゲーションは7インチディスプレイを採用。カーナビのほか、USB接続による音楽再生も可能となっている
車両のフロントグリル、ドアミラー下、リアハッチなど4個所に設置するカメラで車両の周辺状況を俯瞰表示する「全方位モニター」では、ステアリングと連動する軌道予測、助手席側の死角表示なども可能
内外装のデザインスケッチ

(編集部:佐久間 秀)