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日産、九州での生産が40周年。生産累計1500万台を記念したオフライン式を開催

ノート、エクストレイルなど主力車種を生産する中核工場で実施

2015年7月9日開催

 日産自動車は7月9日、九州での生産が40周年を迎えるとともに、生産累計1500万台の達成を記念して日産自動車九州(福岡県京都郡苅田町新浜町)でオフライン式を開催した。

 日産自動車九州は、九州初の自動車工場として1975年4月に生産を開始。敷地面積はヤフオクドーム34個分となる236.2万m2を誇り、大きく第1工場、第2工場、日産車体九州、ゲストホール、専用ふ頭で構成される。

 1992年に「働く人」に優しい快適な労働環境を実現した最新鋭の工場として、第2工場の稼働を開始。2000年には国内専用埠頭に加えて専用外航埠頭が開所され、国内向け、海外向け車両とも生産・車両保管・船積みを同一敷地内で行うことが可能になった。2010年には関連会社の日産車体九州が稼働を開始し、九州は日産の国内生産の半分以上を占める重要な生産拠点となった。

 さらに2011年には独立した事業会社として日産自動車九州を設立し、効率的な部品調達と物流の徹底など、九州地域の地の利を最大限に活かすことでグローバルコスト競争力を持ったマザー拠点に位置付けられている。

 これまでダットサントラック、サファリ、シルビア、テラノ、パルサー、セレナ、ムラーノなどの生産を行ってきており、1992年11月に累計500万台、2004年12月に1000万台に到達。そして今年5月に1500万台を達成した。現在は第1工場でセレナとティアナを、第2工場でノートを、両工場でエクストレイル(および北米向けローグ)の製造が行われている。

7月7日にマイナーチェンジしたばかりの新型ノート。写真はシャイニングブルーのボディーカラーに、ブリリアントホワイトパールのルーフ/サイドミラー/アウトサイドドアハンドルを組み合わせた2トーンカラーモデル
2トーンカラーモデルはインペリアルアンバーのボディーカラーにも用意される
こちらは「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーで1988年に登場した5代目「シルビア」(S13型)
頑強なフレームにリーフリジットの足まわり、高い耐久性が支持された「サファリ」(161型)。写真は1985年のハードトップ標準ルーフAD仕様
こちらは九州で生産されたはじめての自動車「ダットサン・トラック」。製造年月日は1976年12月23日

 日産は国内に品質領域におけるリーダー役を担う栃木・いわきリージョン(いわき工場と栃木工場)、電気自動車(EV)をはじめとする新技術・新工法の開発リーダー役を担う関東リージョン(横浜工場、追浜工場、日産車体 湘南工場)、そして地域の優位性を活かしたコスト領域でのリーダー役を担う九州リージョン(九州工場)があり、それぞれの工場で異なる役割が課されている。

 地域の優位性とは、日産自動車九州のある北部九州にはトヨタ自動車の宮田工場やダイハツ工業の大分(中津)工場、そのまわりにマツダの防府工場、さらに韓国西部、韓国南東部を含めた生産能力800万台を誇る“東アジア自動車産業地帯”にある。同地帯に自動車メーカーの工場が集中していることから多くのサプライヤーが集まり、地域内での切磋琢磨とコラボレーションにより競争力のある部品調達が可能になるという。

 今後の予定としては、北米向けのローグを2016年春から生産を開始。2015年の操業50周年までに累計生産2000万台を目指すとしている。

日産自動車の九州での生産の歩み
日産自動車九州における中期経営戦略の変遷
日産自動車の九州での生産実績推移
輸出累計台数は940万台。グローバルで約185カ国に輸出した
マザー工場として海外工場の立ち上げ支援も行う
日産自動車九州の位置づけ
日産自動車九州の概要
地理的優位性の活用
東アジア自動車産業地帯で域内一貫生産・物流の構築を図った
最新の調達先の状況
近接化と動機生産の推進
現状の近接化状況
安価な自動化の促進と付加価値を生まない作業の廃止・自動化を行った結果、生産性指標の日産内グローバルランキングで上位にランクイン
総合的競争力を向上させた結果、高いコスト競争力やフレキシブルな生産ラインを実現
2016年春から北米向けローグ(日本名:エクストレイル)の生産を九州工場で開始する
今後の生産台数見通し

主力車種を生産する日産にとっての中核工場

 オフライン式には日産自動車のチーフ コンペティティブ オフィサー(CCO)西川廣人氏、生産担当副社長 松元史明氏、専務執行役員 星野朝子氏、日産自動車九州 代表取締役社長 柴崎康男氏とともに、福岡県知事の小川洋氏をはじめとする多くの来賓者や日産自動車九州の従業員が出席して盛大に行われた。

 オフライン式では、セレナとノートの間から生産累計1500万台を記念した赤いエクストレイル ハイブリッドに乗って西川氏、松元氏、柴崎氏、小川氏の4名が登場。

日産自動車のチーフ コンペティティブ オフィサー(CCO)西川廣人氏

 はじめに西川氏は、日産自動車九州の歩みを振り返るとともに、「その間、時代の変化もあったが九州の皆さんの特長である強い結束力で乗り越え、今日まで成長してこれた。私が日産自動車で新米だったころ、この工場はピカピカな状態だった。私も色々な仕事をしてきたが、九州の工場もその間色々な役割を果たしてきて今に至ることを考えると、感慨深いものがある」と述べるとともに、「エクストレイル ハイブリッドなど主力車種を生産している、まさしく日産自動車にとっての中核工場。来年から北米向けローグの生産も開始するが、これは長い間続いた超円高からの回復して、日本のものづくりの力を象徴する生産になるのではないか」とコメント。

 また、7月7日にマイナーチェンジしたばかりのノートについて、「燃費の向上や自動ブレーキの全車装着、さらにカラーバリエーションの追加など、一段と魅力を増したモデルになった。エクストレイル ハイブリッドと合わせて今年度の目玉商品となる。大いに販売をして、生産を伸ばしていきたい」と期待感を示すとともに、「累計2000万台を目指して皆さんとともに九州のものづくりを盛り上げていきたい」と述べた。

日産自動車 専務執行役員 星野朝子氏

 次に登壇した星野氏からは、「九州工場では5月に発売したエクストレイル ハイブリッドの生産を行っていただいている。おかげさまでものすごい好評を博しており、もうすぐ受注台数は1万台になる状況。また、ノートも2トーンカラーが追加されるとともに自動ブレーキも搭載され、コンパクトカーの中でもっとも安全に仕上がっており、こちらも一生懸命売ってまいりたいと思う。みなさんには増産のお願いという嬉しい悲鳴をお届けできるように頑張っていく。いいクルマを造って日本国内で高いシェアをとれるようにしたい」との抱負が語られている。

福岡県知事の小川洋氏

 そして来賓者を代表して登壇した福岡県知事の小川氏は、「昭和48年に、それまでの福岡県の産業を支えていた石炭産業に代わって福岡県の経済を大きく支える柱として、県民が待ち望んでいた日産自動車九州工場の進出が実現した。その2年後に九州工場の操業がはじまり、このときに九州での自動車産業がスタートしたわけであります。平成4年には第2工場の竣工が、平成23年には日産自動車九州が設立され、この40年で日産自動車におかれましてはしっかりこの地に根を張っていただいた。そして今や国内最大の拠点として大きく発展を遂げられた」と、福岡県にとって日産九州工場が重要なポジションを担っていることを述べるとともに、「今日、北部九州が150万台を超える生産能力を持つ、世界有数の自動車生産拠点として大きく成長し、九州における製造業の拠点として雇用、そして地域経済に大きく貢献いただいているのも、まさにこの40年前の進出と、その後の皆さまのたゆまない努力、熱意の賜物」と敬意を表した。

 そして小川氏は若かりしころに九州工場に見学した経験があることを語り、「次々と生産されるトラックを見て、故郷の福岡県で福岡の人の手によって自動車が造られるようになったんだと、今でもその感動を覚えている。その意味でも、今回の1500万台達成というのは誠に感慨深いものがある。日産自動車九州におかれては、地域社会との結びつきを今まで以上に深く、広く強めていただき、地元の福岡県、そして九州の会社としてさらに発展していただきたい。福岡県としても、これからも皆様と一緒になって北部九州の自動車産業振興に取り組んでいきたい」と述べた。

 この後、日産自動車九州の生産スタッフによる決意表明が行われた。以下に全文を紹介する。

日産自動車九州の生産スタッフによる決意表明

 私たち、日産自動車九州従業員は、1人ひとりが常にお客様を意識し、妥協を許さないプロとして今日までクルマ作りを行ってきました。日産自動車がこの九州の地に進出して40周年を迎え、さらには生産台数が1500万台を達成できたのは、日産自動車九州の歴史を長年にわたって築き上げ、グローバル日産のマザー工場としての位置づけを確立してきた諸先輩方の技能継承にかけた情熱の賜物です。

 現在、世の中の動きは著しく変化しており、この変化に柔軟に対応できる企業として常にアンテナを高く保ち、時代のニーズや変化を先取りした取り組みを行わなければなりません。そのためにも全従業員の意思統一、今後に向け次のことを決意いたします。

1つ、日産自動車九州の全従業員が一丸となって、あらゆる課題に立ち向かう。常に高い目標にチャレンジする。

1つ、諸先輩方が築いてきた技術力や匠の技にさらに磨きをかけ、技術伝承を行う。

1つ、世界に対応できる人材育成、たくましく活気あふれる職場を作る。

1つ、これまで支えていただいた地域に感謝するとともに、さらに愛される企業になる。


参加者全員で「がんばろう」の掛け合いコール

工場見学も開催

 オフライン式の前に、九州工場の見学会も開かれたので、その模様を写真で紹介する。

九州工場は専用ふ頭があり、写真は諸外国に向けた生産車を船で輸送するところ。主な輸出先は北米が多く、以下中近東、欧州となっている。白と青のカラーリングの船は北米に、白とグレーのカラーリングの船は中近東に向かうもの。2隻ともスペックはほぼ同じで、180×30×45m(全長×全幅×全高)。およそ3000~4000台の生産車を収容できるという
こちらは日本と韓国のナンバーを取得したトラック(ダブルライセンスシャシー)。日本と韓国の両方で走行することが可能。韓国のサプライヤーから直接部品を引き取り、韓国の港(釜山)を経由して届けられる。20時に釜山を出発し、8時に到着するスケジュール
セレナ、ティアナ、エクストレイルなどを生産する第1工場内。工場面積は7万8500m2で、年に24万台の生産能力を持つ。作業者数は280名、ロボット台数は506台。写真は完成したボディーにドアやボンネットを取り付けているところ。品質チェックを行った後、塗装工場に移動する
ラインの横に作業者がボンネットなどの部品を取りやすいよう、取りやすい角度に自動調整される台車が備わる
エクストレイルは第1工場、第2工場の両方で生産されており、写真はフロントドアとリアドアが第2工場から第1工場に自動で運搬されてきたところ。以前は人の手でドアを降ろす作業をしていたが、現在では自動の抜き出しが可能になっている
内装部品のルーフトリムを運搬する無人カート。市販のゴルフカートを自社で改造したものという。これまでルーフトリムを組み立てていた場所から生産ラインまで運ぶのに1600mの距離を大型トラックで移動させていたが、ドライバーや燃料費など多くのコストがかかるためこの無人カートにスイッチ。リチウムイオンバッテリーを搭載し、モーターで走行。充電は工場側に備えられた充電設備で自動充電できる仕組みを有する
セレナ、ティアナ、エクストレイルなどが組み立てられていく
天井に備えられる空調システムのダクト。今の時期は冷却効果を維持するためにビニールのカーテンがかけられている
こちらはエクストレイル ハイブリッドのバッテリーを搭載するための機械
最後に組み上がった車両の品質チェックを行ってユーザーのもとに届けられていく

(編集部:小林 隆)