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ブリヂストン、レグノブランド初の軽自動車向け「GR-Leggera(ジーアール・レジェーラ)」発表会
「2016年はGR-Leggeraで軽自動車のお客様に対してより高い価値提供に取り組む」
(2015/12/5 01:43)
- 2015年12月4日開催
ブリヂストンは12月4日、「レグノ」シリーズの軽自動車用タイヤ「GR-Leggera(ジーアール・レジェーラ)」を発表。同日に報道陣向けの発表会を開催した。
今回のタイヤは、東京モーターショー2015のプレスカンファレンスで予告されていた軽自動車向けのプレミアム商品となる。発表会では“チームレグノ”として開発陣やマーケティング担当者などから詳細な説明が行なわれた。
製品については関連記事を参照いただきたい。
ブリヂストン、「REGNO」初の軽自動車専用タイヤ「GR-Leggera(ジーアール・レジェーラ)」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151204_733758.html
軽自動車にも“グレートバランスを”
発表会では、まずブリヂストンタイヤジャパン 消費財マーケティング本部長の長島淳二氏が登壇。開発の背景である現在の軽自動車市場から説明した。
現在の軽自動車はカテゴリー区分されるほど個性や多様性があり、クルマの居住性、走行性、安全性などの多機能化が進み、高価格帯のグレードも存在している。その中で、「セダンやミニバンから乗り換える人の比率が高い」「ファーストカーとして使用する方も増えている」という傾向があり、タイヤを購入する際にも性能を重視する人が増えているという。
一方で、レグノは2015年に発売した「GR-XI(ジーアール・クロスアイ)」「GRV II(ジーアールブイ ツー)」が好評で「昨年対比で1.5倍、一昨年対比で約2倍、中でもコンパクトカーのサイズは昨年対比で2.5倍」に上るほど売れている。長島氏は、タイヤ交換後に店に戻ってレグノのよい感想を語ってくるユーザーがしばしば見受けられるという事例を紹介するとともに、「コンパクトカーに対してレグノの価値を提供したいということを課題としてとらえていた」と語る。
そして軽自動車向けのレグノの投入が今になったことについては、「レグノを軽自動車のお客様に届けたいという思いは以前からあったが、乗り越えるさまざまなハードルがあった。軽自動車の特性は小さくて軽い。直径も小さく、同じ距離を走るのに普通乗用車と比べて1.2倍もの回転数となり、摩耗が厳しい」など多く課題があったと述べ、「GR-XIと同じタイミングで出したかったが、開発の難しさがあって1年遅れた」ということも明らかにした。
「GR-Leggera」のネーミングについては「徹底的な研究と技術応用の結晶という、この商品に込めた“チームレグノ”の熱意が由来」とした。これまでレグノの商品名は「GR-XI」などの英数字記号となっていたが、「GR-Leggera」のような名前になったのは、軽自動車向けは少し違う名前をつけたかったとのこと。そして、今後軽自動車向けのタイヤは「Leggera」というネーミングの中で変化させたものにするかもしれないと述べている。なお、普通乗用車向けのレグノシリーズは「GR-XI」などの英数字の名前が与えられているが、今後の新製品もそういった名称になる予定とも話した。
また、レグノブランドを軽自動車に広げたことでブランド価値の低下を危惧するとの声については、すでにコンパクトカー向けに利用は広がっており、性能のよさはプレミアムカーだけでなく車種を問わず理解してもらえるとし、ブランド価値が下がるということはまったく心配していないとした。
長島氏はまとめとして「2016年、ブリヂストンはGR-Leggeraで軽自動車のお客様に対してより高い価値提供に取り組んでいく」と述べた。
軽自動車に合わせた静粛性能を持ち、耐摩耗性なども含め最適化
技術説明はブリヂストン PSタイヤ開発第5部長 山口渉氏が行った。開発コンセプトとしては、「レグノブランドにふさわしい静粛性と快適性、運動性能を軽自動車で実現」「軽自動車におけるライフ性能を大幅に向上し、低燃費性能とウェット性能を両立した長く使えるロングライフタイヤ」を挙げ、その結果「軽自動車専用に洗練されたグレートパランスを実現したタイヤになった」とした。
静粛性能は、特に気になる周波数域を調べ100~400Hzの音が重要とし、この領域のノイズを下げていくことを目指した。この周波数域には路面の「ゴー」「ガー」音やパターン構成要素によるピッチノイズが含まれる。
パターンデザインはリブ、サイプ基調パターンとし、他のレグノシリーズで採用するダブルブランチ消音器は搭載しない。これは軽自動車では溝内共鳴音の直接音は目立たないためで、機能を省いたのではなく、軽自動車の特性に合わせたものだと説明が行なわれた。
一般的なセダンではタイヤのショルダー部が振動するそうだが、軽自動車ではベルト部全体が振動するため、ベルトの振動を抑えるべく「ノイズ吸収シートII」を採用した。これらの技術を採用したGR-Leggeraは「ECOPIA EX20C」に比べて40km/h走行時で24%、80km/h走行時で29%もの騒音エネルギーを低減したという。
快適性、運動性能向上については、非対称パターンと非対称タイヤ形状、パワーサイド構造を採用したことで「車両のふらつきが小さい」「ドライバーがハンドリングしやすい」「同乗者の快適性もふらつきを抑制することで向上」した。
耐摩耗性能では「3D M字サイプ」を採用することで、力がかかったときのブロックの倒れこみを抑制。接地面の接地圧が均一になり、高い耐偏摩耗性を実現した。摩耗性能はECOPIA EX20Cに比べて10%向上、据え切りや山坂道などでの耐摩耗性能ではさらに差が出てくるとした。3D M字サイプは制動時の接地性も高まる効果があるという。
ウェット性能はシリカの配合やパターン技術により向上。ECOPIA EX20Cとの比較で転がり性能は同等ながら、ウェット性能は4%向上。転がり性能がECOPIA EX20Cと同等という点については、転がり性能とウェット性能は相反するものなので、転がりを維持したままウェット性能を上げたことに意味があると説明が行なわれている。
外観はサイド部はレグノに共通するデザインだが、トレッド面にロゴを入れたことが特徴で、外周のウェアインジケータに近い場所の6個所に「REGNO」「Leggera」のロゴが浅く彫り込まれている。
なお、全体的な総合性能では、ECOPIA EX20Cに比べて静粛性能の改善が最も大きく、それ以外も向上しているとした。
各部署横断の“チームレグノ”が登場
発表会では、各部署を横断して開発にあたった“チームレグノ”も登壇。各部署の役割と協力体制も発表された。登壇したのは6つの部署から各1名の代表で、若手社員が中心となる。
ブリヂストンタイヤジャパン 消費財マーケティング本部消費財商品企画第1部の山本恭子氏は「さまざまな使われ方をする軽自動車タイヤとして、レグノブランドとして、どのようなコンセプトを持つべきか、目標性能に落とし込むことに苦労した」と述べるとともに、「初めてレグノを体感するにお客様にはブリヂストンの最高峰の商品で、タイヤでクルマが変わることを実感していただきたい」と語った。
ブリヂストンタイヤジャパン 技術サービス本部消費財第1・業務技術サービス部の毛塚高通氏は「全国各地の使用実態を把握し、軽自動車の使い方やニーズが従来と異なることが分かった」と開発過程を振り返り、GR-Leggeraは「一般のお客様にご満足いだけるのはもちろん、販売店さんもお客様におすすめしやすいタイヤだと思ってる」と説明した。
ブリヂストン PSタイヤ開発第5部構造設計第1ユニットの櫻井太郎氏は「各部署が軽自動車専用として導き出した情報をあますことなくタイヤへと注ぎ込んだ設計。軽自動車に向けプレミアムな性能を具現化する」とし、ブリヂストンにしかできない商品だと語っている。
ブリヂストン イノベーション本部デザイン室の林信太郎氏は、GR-Leggeraのデザインについて路面と接地して性能を発揮するだけでなく、その外観から商品の性質やコンセプトを伝える役割を持つとし、「機能面での要件を満たすだけでなく、その商品に合った外観をデザインするのがデザイナーの役目」と語った。今回のGR-Leggeraは、GR-XIなどとパターン基調が大きく異る中でレグノブランドを感じられるよう「流麗な形状のチャンバリングや、宝石のカットのようなサイプ間の面処理。シンプルながら質感を追求した」と説明した。
また、ブリヂストン実車試験部実車試験第3ユニットの岩本敬匠氏はテストドライバーとして携わり、「軽自動車の性能の底上げするようなタイヤの開発が重要と考えた。テストコースだけでなく、一般道から高速道路、色々なキャラクターのタイヤやクルマの比較試乗をして、課題を抽出したり必要性能を見極めたりした」と語り、その結果目指していたタイヤを作ることができたと自信を覗かせた。
そして生産技術開発を担当したブリヂストン 量産設計部先行量産設計ユニットの岡崎卓也氏は、「ウインタータイヤで培った開発手法を応用し、FEM解析、ラボ実験、開発工場での実機テストを繰り返すことで課題の解決を達成した」と、商品として完成したことの喜びを語った。