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佐藤琢磨ファンクラブミーティング"TCM2015"リポート

空力効率がテーマだった今年のインディカーシリーズ。デトロイト戦での2位表彰台などをファンに報告

2015年12月12日開催

ステージ上にはダラーラ DW12のショーカーが置かれた

 今年もインディカー・シリーズに参戦し、デトロイトで行なわれた第8戦で2位表彰台にあがる活躍を見せた佐藤琢磨選手のファンクラブ”Takuma Club”の公式ミーティングとなるTCM(Takuma Club Meeting)2015が、東京都渋谷区代々木の山野ホールにおいて12月12日に開催された。このTCMは佐藤選手がファンを対象に行なっているイベントで、毎年その年の報告やファンとの交流の場として活用されている。

 今回は、ステージ上に佐藤選手が米国で走らせているダラーラ DW12と同じマシンのモックアップが展示された他、実際のレース映像を利用しての1年の振り返り、ファンとの質疑応答、プレゼント抽選会、ジャンケン大会などが行なわれ、集まった佐藤選手のファンは大いに楽しんだ。

ホンダ勢が厳しい戦いになったのは空力効率の差。ハイライトはデトロイトの2位

インディカードライバー 佐藤琢磨選手

 例年12月に行なわれているTCMでは例年、佐藤選手のシーズンを振り返っていくというトークショーがメインのイベントとなっている。今年も司会の女性と佐藤選手、そして自動車ライターの大谷達也氏の3名で、佐藤選手の今シーズンの映像を見ながら振り返っていくという形でトークショーが進められた。

 今年は昨年のTCM2014で佐藤選手が口にしたコメントが、実際には今年どうだったかということをチェックする"琢磨語録"という趣向が取り入れられた。TCM2014で佐藤選手が発言した「開幕戦から行きたいでしょ! ブラジルから優勝ですよ!!」などが取り上げられるというちょっとドSな内容から入り、多くのファンの笑いを誘っていた。

 今シーズンのインディカーは、新たにエンジンメーカー別のエアロパッケージが導入され、そのエアロパッケージがシボレーとホンダの間で性能差を産んでしまった。実際に佐藤選手はその差について「最大の違いは空力効率。空力効率とはドラッグ、つまりは空気抵抗とダウンフォースの割り算。空力効率の数字が小さければ小さいほどダウンフォースが大きくなる。その状態からウイングをつけていくとダウンフォースも増えるけどドラッグも増えてしまう。同じウイングをつけて同じダウンフォースの状態にした時でも、シボレー勢の方がドラッグが全然低いという状況が生じてしまい、常にペンスキー勢が前にいるという展開になってしまった」と佐藤選手は説明した。

 そうしたホンダ勢がやや厳しい中でも、今年の佐藤選手はホンダ勢の最上位を予選で何度も獲得するなど、上位を争うレースができていた。その中でもハイライトは第8戦 シボレーデュアル・イン・デトロイト レース2だ。週末に2回のレースが行なわれたデトロイトのレースは、土日とも雨でなかなか難しいレースになったが、車両の性能ではやや劣勢のホンダ勢にすれば上位を伺うチャンス。しかし、予選が雨で中止になってポイント順でのスタートになったため、佐藤選手は下位からのスタートになった。そこから徐々に順位を上げ、ランキングトップのファン・パブロ・モントーヤ選手らと激しい上位争いを繰り広げながら最終的に2位表彰台を獲得した。

自動車ライターの大谷達也氏(右)と佐藤選手、司会の女性でトークショーは進められた
“琢磨語録”という昨年の発言を振り返る企画
ファンサービスのための盛り上げコメントを、1年後に再び引っ張り出してくるとは……。スタッフさんなかなかドSだ

“来年はバッチリ”という佐藤選手。ロードコースの空力はホンダ陣営だけにアップデートが許可

 そうした1年を振り返って、佐藤選手は「とにかく、シボレーとホンダの空力パッケージには大きな差があった。両陣営から提出されたデータで見る限りは違いがないのにおかしいと、インディカーの運営側が両者から提供されたデータではなく、実際にクルマを風洞に入れて測ってみたら大きな差があると分かったんです。ホンダ側の空力がデータほどは性能が出ていないんだ、と。それで運営側はシリーズのことを考えて、来年はシボレーにはロードコースでの空力パッケージをアップデートできないようにすると聞いています」と語り、来年はシボレー陣営とホンダ陣営で空力パッケージに差がある状態は解消される見通しであるとした。

 そして、来年についても再び“琢磨語録”として2016年のTCMで使われることを前提に「ばっちりです」と述べて笑いを取ると、「今年はオーバルでも大きな進化が果たせたし、フォンタナやポコノでは勝てそうで勝てなかったので、勝ちたい」とファンに対して意気込みを語った。

 そして来年の体制についても「ジャックと僕のコンビは……。あ、まだ発表はされていないですよね、来年もそのコンビでできるといいなぁと思っています」と述べ、2016年も今年のチームメイトだったジャック・ホークスワース選手と佐藤選手の2台体制で、現在の所属チームであるA.J.フォイトエンタープライゼスから走る可能性が高いことを示唆した。佐藤選手によると来年の体制の正式な発表は「そんなに遠くない時期」とのことで、このイベント終了後に米国に飛んで、打ち合わせやチームのクリスマスパーティに参加する予定であることなども明らかにした。A.J.フォイトエンタープライゼスに残留する可能性がかなり高いのではないだろうか。

 その後行なわれた質問コーナーでは、日本に帰ってくる予定、例えばスーパーフォーミュラに参戦する予定はあるのかと聞かれた佐藤選手は「今のところ予定はない。ただ、現在のスーパーフォーミュラはコーナリングだけを見たらF1の上を行っており、非常に楽しいマシン。いつかはと思うが、今はまだインディカーメインで頑張っていきたい」と述べ、スーパーフォーミュラのマシンは凄くて、実際それに乗ってレースをしたいとは思うものの、現時点ではインディカーだけに集中したいとした。また、ドライバー個人としては、やはりインディジャパンを再び日本で開催できるようになれば嬉しいとも述べた。

 また、この前の週末にツインリンクもてぎで行なわれた「Honda Racing Thanks Day 2015」(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151210_734582.html)において、フェルナンド・アロンソ選手と一緒になったことについて質問されると「GTカーの話をした。SUPER GTのNSX-CONCEPT GTに乗って、パワーはあまりないけどダウンフォースの大きさとタイヤのグリップには驚いていた。また、サプライズでMotoGPのバイクに乗ってたけど、彼は4輪用の開口部の狭いヘルメットしか持ってきていなくて、前が見えなくてコーナーの度に首を伸ばして乗ってたと言ってた」と裏話を披露して会場を笑わせた。

 この他、佐藤選手が監修を担当した新しい鈴鹿サーキットのサーキットカート(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150929_723074.html)について聞かれると、「16年ぶりのモデルチェンジで、鈴鹿の国際サーキットをヘルメットなく風を切って走れるのが特徴。子供さんでも楽しめるように調整が必要なペダルを排除して、ハンドルだけですべてを操作できるようにした。EVになったのでギヤはいらないのだが、逆に楽しめるように自動車のエンジンの特性をマッピングしたギヤをつけた。例えば(低速では)4速だと加速していかないようになっているので、結構楽しめると思う。1回目ではベストが出ないと思うので、2回、3回と乗ってほしい」と述べ、来春オープンする新しいサーキットカートの魅力を語った。

 お楽しみ抽選会では佐藤選手がデトロイトで2位に入った時に写真撮影で使ったキャップ、さらには非売品で実際にシーズン中に着ていたチームシャツやパーカーなどが当選したファンにプレゼントされた。その後、全員が参加したジャンケン大会が行なわれ、こちらも勝ち残った人にはプレゼントが渡された。ジャンケン大会後には、来場者全員が順々に佐藤選手と握手する握手会が行なわれてTCM2015は終了となった。

デトロイト戦で2位表彰台に立った時にかぶっていた帽子がプレゼントに
こちらは実際にレースイベントなどで着ていたシャツ。抽選は席の番号を佐藤選手が引くという形で進められた
ジャンケン大会は会場の来場者と佐藤選手がジャンケンする形で進められた
会場の外には、佐藤選手が取り組んでいるチャリティプログラムの報告書などが掲示されていた
会場には特製の横断幕も

(笠原一輝)