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【インタビュー】ドライから圧雪路まで使えるグッドイヤーのオールシーズンタイヤについて聞く

スノーフレークマーク入りの全天候型タイヤとは?

 国内の降雪地域では、冬場にスタッドレスを履き、春から秋にかけて夏タイヤを履くというのが一般的なタイヤのサイクルになっている。一方で、ウインタースポーツを趣味にしている人ならまだしも、降雪の少ない都市部でスタッドレスタイヤを持っている人は少なく、年に数回あるかないかの大雪で交通網が麻痺するというのが、近年の冬の恒例となっている。

 海外の冬タイヤの状況はどうなっているのかといえば、欧米だとスタッドレスタイヤを履く文化はごく限られた地域のみで、オールシーズンタイヤやウインタータイヤが主流。北欧やロシアなどはスパイクタイヤを履くことが多いと聞く。

 今回注目したのはオールシーズンタイヤだ。その名の通り、夏場でも冬場でも使用できる性能を併せ持ったモデルになる。欧米で販売されるオールシーズンタイヤのなかで高いシェアを持ち、パイオニア的存在といえるのがグッドイヤーになる。

 国内ではまだまだ浸透していないオールシーズンタイヤだが、夏タイヤとしての性能を持ちつつ、雪道も走れるというオールマイティな特性を持つ。この特性は年に数回しか雪の降らない都市部での選択肢の1つと言えよう。同社では現在オールシーズンタイヤとして「Vector 4Seasons(ベクター フォーシーズンズ)」を扱っており、今回のインタビューではオールシーズンタイヤの概要やVector 4Seasonsなどについて、日本グッドイヤーのマーケティングを担当している石山真嗣氏に話をうかがった。


日本グッドイヤーでマーケティングを担当する石山真嗣氏に話をうかがった

──グッドイヤーでは30年以上も前からオールシーズンタイヤにこだわっているそうですね。

石山氏:弊社は世界初となるオールシーズンタイヤ「TIEMPO(ティエンポ)」を1977年にデビューさせ、1980年の「ARRIVA(アリーバ)」、そして1984年に始まるベクターブランドで現在に至っており、その歴史は40年になります。アメリカでいえば、カリフォルニアからロッキー山脈を越えてフロリダへ、欧州ならばドイツからアルプスを越えてイタリアへと長距離の大陸移動を行なう人が少なくないです。土地によって気候が異なるのはもちろんで、どのような環境でも走破できるというのがオールシーズンタイヤに求められる性能になります。

──日本ではオールシーズンタイヤに対しての認知度が低いように思います。

石山氏:国内では降雪地域と非降雪地域の差があり、冬の選択肢としてはスタッドレスかチェーンに分かれていて、オールシーズンはまだまだ浸透していません。その理由としては、オールシーズンタイヤに刻印されている「M+S」(マッド&スノー)は浅雪用であって、雪上での性能が低いと思われているからです。しかしオールシーズンタイヤであっても「スノーフレークマーク」が入ったモデルについては、欧米では「M+S」以上に冬道性能が高いスノータイヤと認められています。弊社の「Vector 4Seasons」ももちろんスノーフレークマークが入っているので、全天候型でありながらスノータイヤでもあります。ですので、都市部での冬場の降雪くらいでしたら難なく走行できる性能を持っています。

グッドイヤーが展開するオールシーズンタイヤ「Vector 4Seasons」。155/70 R13 75T~225/55 R17 101V XLの全23サイズを展開する
「Vector 4Seasons」ではいかなる天候、多彩な路面コンディションに対応するべく、グリップ性能と操縦安定性を実現するために設計された専用コンパウンド「オールウェザーシリカコンパウンド」を採用。トレッド面にはV字型グルーブの「Vシャープドトレッド」を与え、優れた排水性能を確保したという

──スノーフレークマークはいつごろから使われているマークなのでしょうか?

石山氏:M+S以上のスノー性能が求められるようになった1999年に北米で生まれています。スノーフレークマーク入りのオールシーズンタイヤの登場は2000年代からの導入がほとんどでしょうね。2012年からは自動車の安全性に関するEU規則で雪道走行時にはスノータイヤ、つまりスノーフレークマークの刻印のあるタイヤを装着することが求められています。スノーフレークマークは、ロゴの形から「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)」というのが正式なネーミングです。弊社のモデルでは先代の「ベクター5」時代から刻印されています。

──日本国内でもスノーフレークマークが重要になっているのですか?

石山氏:日本ではそうなっておらず、一般に「Studless」「Snow」の刻印の有無がスノー性能の尺度となります。このVector 4Seasonsは輸入タイヤなのでその刻印はありませんが、ここ日本の基準においても冬用タイヤ規制・チェーン規制の高速道路でも走行できる性能を持ち合わせています。

 よく、高速道路のチェーン規制をオールシーズンタイヤで通過できるか聞かれることがあるのですが、当社のモデルは日本におけるスノータイヤの性能を満たしているので、「SNOW」と刻印されたタイヤと同じように走行することができると説明しています。

各タイヤの路面適合イメージ


路面状態スタッドレスタイヤVector 4Seasons夏タイヤ
通常路面ドライ
ウェット
積雪路面シャーベット×
圧雪×
凍結(アイスバーン)×
高速道路 冬用タイヤ規制通行可通行可チェーン装着
全車チェーン規制チェーン装着チェーン装着チェーン装着
「Vector 4Seasons」のサイドウォール。「M+S」(マッド&スノー)マークの左横にあるのがスノーフレークマーク

──雪上性能でスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの違いはあるのでしょうか。

石山氏:ゴムの柔らかさや溝の深さ、トレッドパターンなどが異なります。スタッドレスタイヤはアイスバーンや新雪など、あらゆる冬の路面環境でも走行できるように作られています。一方、オールシーズンタイヤは、圧雪などの路面ならば難なく走ることができますが、氷上性能が多少劣っているのは確かですね。冬道でマイナスになる点については、夏道での乗り心地やグリップ性能の利点と相反するところです。

 そのため、北海道や東北などの地域にお住まいの方には冬場はスタッドレスタイヤの装着をお勧めしますが、年に数回程度しか雪が降らないような都市部でしたら、オールシーズンタイヤが最適だと思います。

──オールシーズンタイヤということで、ドライやウェットのグリップ性能も気になるところです。

石山氏:排水性に優れたトレッドパターンや、オールウェザーシリカコンパウンドを配合するなど、ウェット性能も重視しています。なので、ドライとウェットのパフォーマンスは通常の夏タイヤと同等です。このVシェイプのパターンがもたらすウェットグリップ性能をお褒めいただくことは多いですね。そして乗り心地にも優れています。普通のサマータイヤ並みだと思ってくだされば、と思います。

──オールシーズンタイヤのメリットは、やはり年間通して使えることですよね。

石山氏:そうなります。都市部ではスタッドレスタイヤを購入・保管し、シーズン毎に脱着をするのが難しい人もいるはずです。マンション暮らしの方はとくにそうでしょう。チェーン脱着を煩わしく感じている方にもおすすめです。年間通して同じタイヤを履ける、そして雪道も走破できるというのは最大のメリットだと言えます。

 このように、氷上性能こそスタッドレスタイヤには劣るものの、圧雪路や雪道では同等の走破性を持ち、ドライやウェットは夏タイヤに近いパフォーマンスを発揮する。年間通して履き替える必要がないのがオールシーズンタイヤと「Vector 4Seasons」の特徴で、その利便性はユーザーにとって大きな魅力になるのではないだろうか。

Vector 4Seasonsサイズリスト

リム径(インチ)偏平率(%)タイヤサイズ
1755225/55 R17 101V XL
60215/60 R17 96V
1655195/55 R16 87H
205/55 R16 94V XL
60205/60 R16 92H
215/60 R16 95V
1555185/55 R15 82H
60185/60 R15 88H XL
65185/65 R15 88H
195/65 R15 91V
205/65 R15 94H
1460165/60 R14 75H
65155/65 R14 75T
165/65 R14 79T
175/65 R14 82T
185/65 R14 86H
70165/70 R14 81T
175/70 R14 84T
185/70 R14 88T
1365165/65 R13 77T
70155/70 R13 75T
165/70 R13 79T
175/70 R13 82T

(真鍋裕行)