レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】“氷上ブレーキ性能7%向上”のグッドイヤー「ICE NAVI 7(アイスナビ セブン)」をスケートリンクで試す

氷上でのコーナリング&ブレーキ性能、その実力やいかに?

グッドイヤー「ICE NAVI 7(アイスナビ セブン)」の進化した氷上性能をスケートリンクでチェック

 日本グッドイヤーは、8月1日から同社のスタッドレスタイヤ「ICE NAVI」シリーズの最新作となる「ICE NAVI 7(アイスナビ セブン)」の販売を開始する。

8月1日から販売を開始するグッドイヤーの新型スタッドレスタイヤ「ICE NAVI 7」。日本で製造している日本市場専売モデルだ

 グッドイヤーのICE NAVIシリーズは、1997年に日本市場へ導入されてから今年で20年目の節目の年を迎える。1997年に発売された初代ICE NAVIから数えると、ICE NAVI 7は7代目のモデルとなり、昨今のユーザーニーズを取り入れて開発されたニューモデルとなる。

 グッドイヤーが行なった市場調査では、ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能のなかで大多数の意見となったのが「氷上性能の向上」だそうだ。スタッドレスタイヤの氷上性能の向上は、ほかのタイヤメーカーも同様にコンセプトとして挙げているので、昨今のユーザー全体が思うことのようだ。

 そこでICE NAVI 7では氷上性能を向上させるため、トレッドパターンからコンパウンドまで全面的に改良を施した。トレッドパターンは見た目でも分かるように、5つのリブと4本の太い縦溝で構成される。とくに氷上性能を向上させるために取り入れられたのは、「エキストラ・マルチプル・サイプ」と「ウルトラ・NAVIブレード」で、これらは1つ1つのブロックで確認することができる。従来モデルの「ICE NAVI 6」では1つのブロックにサイプは5本だったが、ICE NAVI 7のエキストラ・マルチプル・サイプは6本に増えている。加えてウルトラ・NAVIブレードの効果でブロックの倒れ込みを抑制することによって、1つ1つのブロックが氷をしっかり掴むことが可能となっている。

新しいトレッドパターンでとくに氷上性能向上に注力されているのが「エキストラ・マルチプル・サイプ」と「ウルトラ・NAVIブレード」。2つの相乗効果で従来モデルの「ICE NAVI 6」からエッジ成分を13%アップさせて前後左右の氷上グリップを高めている

 また、コンパウンドでは改良された「エキストラ・コンタクト・コンパウンド」を採用。従来モデルよりも細分化されたシリカを使用することで低温でも柔らかさを維持する。これにより、氷上路面の凹凸にタイヤがより密着してグリップ力を発揮する。

 このように、氷上での性能向上に注力して開発されたICE NAVI 7。その性能を体感するために用意された試乗会場は屋内スケートリンクで、クルマで走るには少し狭かったが、注目すべき氷上性能を体感するには十分なフィールドだった。

試乗会場となったのは「新横浜スケートセンター」。平滑で凍結状態も公道とは桁違いに安定しているが、やはり表面はツルツルと滑りやすい。ICE NAVI 7の進化した氷上性能やいかに!?

ICE NAVI 7は“ヒヤッとする経験”を削減してくれる

FF車であるトヨタ自動車「C-HR」のハイブリッドモデルでICE NAVI 6とICE NAVI 7を比較

 試乗は従来モデルのICE NAVI 6と新しいICE NAVI 7を、同じトヨタ自動車「C-HR」に装着して比較。パイロンを使ったS字スラロームでの横方向のグリップ力、大きなコーナー、静止状態からの発進とブレーキングの制動性能などが体感できるコースとなっていた。

 最も違いが感じられたのはS字でのコーナリング性能。すべてが氷の路面となるので、もちろん極低速(10km/h程度)でコーナリングすることになるが、ICE NAVI 6は、操舵を行なってからクルマが曲がり出すまでのタイムラグがある。つまり、グリップせずに滑っている時間が長いことになる。一方のICE NAVI 7は、操舵を行なうと最初のコンマ数秒はグリップ感が希薄だが、すぐに氷を掴むようにグリップする。リアタイヤも同様で、しっかりとグリップしてる感覚が得られる。

まずはICE NAVI 6装着車を試乗。S字では極低速(10km/h程度)でも、操舵を行なってからクルマが曲がり出すまでタイムラグがある
同じ状況でICE NAVI 7は、操舵を行なってすぐに氷を掴むようにグリップ。リアタイヤも同様の感覚がある

 例えば、雪道で交差点を曲がろうとして操舵を行なった瞬間に、フロントタイヤがグリップせずにそのまま前方にクルマが進んでしまったり、コーナリング中に曲がりたい方向にクルマが進まなかったという経験を持つドライバーもいるはず。冬の市街地の道路は、圧雪もあれば氷盤もあって、タイヤのグリップが一瞬抜けてしまうことも多い。このようなヒヤッとする状況を減らしてほしいというのが「氷上性能の向上」というユーザーニーズに繋がっているはずだ。

 スケートリンクで試した感覚だと、ICE NAVI 7はこのヒヤッとする経験を削減してくれるだろう。

 加えて、コーナリング中にわざとブレーキを掛けてどれだけグリップを失うかも試してみたが、ICE NAVI 7はグリップを失ってから復帰するまでの時間が短くなっている。それだけ従来モデルよりも氷上での性能が上がっていることを証明している。

 ブレーキングの性能だが、これは加速する区間が短かったためブレーキを開始する速度を2つのモデルで合せることが難しかった。何度か試したが、「20km/hからのブレーキング」という状況で、ICE NAVI 7の方が50cmほど手前で止まれるような感覚を得られた。なお、ニュースリリースの公式データでは、20km/h時のブレーキ性能は7%アップしているそうだ。

「20km/hからのブレーキング」での停止位置。上がICE NAVI 6で下がICE NAVI 7。ゼロ発進時にタイヤが空転すると瞬間的にスピードメーターの指針が跳ね上がってしまい、メーターを見ての速度調整が難しかったが、何度か試して加速度を合わせた
日本グッドイヤー株式会社 技術本部長の松崎洋明氏から、試乗の前後に製品特性や試乗で体感してほしいポイントなどが解説された

 ブレーキ性能よりも氷上性能の向上を体感できたのがゼロ発進時のグリップ力で、明らかにICE NAVI 7の方がしっかりと氷を掴んで加速していく。ブレーキング性能ではないが、縦方向のグリップ力が向上していることの証明になるだろう。

 氷上性能の向上に合わせてICE NAVI 7は、燃費性能やウエットブレーキなども従来モデルに対して改善しているという。今回は氷上性能のみの体感となったが、雪上やドライ路面でも性能を試してみたい。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。

Photo:高橋 学