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グッドイヤー、米本社の通期決算と2017年の日本戦略&新製品説明会

スタッドレスタイヤ「ICE NAVI 6」後継モデルを次シーズンに発売予定

2017年2月16日 開催

グッドイヤーの2017年戦略発表と新製品説明会でフォトセッションに立った日本グッドイヤー株式会社 代表取締役社長 金原雄次郎氏(左)とザ・グッドイヤー・アジア・パシフィック地区 消費財担当副社長 マイク・リトコスキー氏(右)
会場に展示されていたグッドイヤーのタイヤ。左は2月1日発売されたハイパフォーマンスタイヤの新製品「Eagle F1 Asymmetric 3(イーグル エフワン アシメトリック スリー)」、右は2016年8月1日に発売された新オールシーズンタイヤ「Vector 4 Seasons Hybrid(ベクター フォー シーズンズ ハイブリッド)」

 日本グッドイヤーは2月16日、2017年の戦略発表と新製品説明会を実施。合わせて2月8日(現地時間)に公表されたザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー(米グッドイヤー)の2016年度第4四半期・通期決算についての解説を実施した。

ザ・グッドイヤー・アジア・パシフィック地区 消費財担当副社長 マイク・リトコスキー氏

 説明会では最初に、ザ・グッドイヤー・アジア・パシフィック地区 消費財担当副社長のマイク・リトコスキー氏が登壇して米グッドイヤーの連結業績などについて解説を行なった。

 リトコスキー氏は120年近く重ねられてきている米グッドイヤーの歴史と現在の企業概要などを語り、イノベーションを自分たちの大きなテーマとして位置付け、これまでに「T型フォード」やNASAの「月面探査車」などにグッドイヤーのタイヤが装着されていたことをアピールした。

 本題となる2016年度の通期グローバル決算では、前年度比でグローバル営業利益は30%増となり、アジア・パシフィック地区でも増益となってそれぞれ過去最高を更新。この要因をリトコスキー氏は「しかるべきセグメントに自分たちの力を傾注して、利益率を高め、競争力を上げてきた結果」と分析し、今後については「コスト構造や製造関連コストなどを最適化するなかで競争力を高めていきたい」とした。

グッドイヤーは2016年度にグローバルで1億6610万本のタイヤを販売し、売上高は152億ドルとなった
118年の歴史における主なイノベーション
2016年度はグローバル営業利益が前年度比30%増となった

 さらに将来分析では、「タイヤ産業全体に明るい未来を見据えている」としつつも、短期的には原材料価格の急騰などが2017年度の課題になると語り、タイヤを生産するときに必要となるコスト全体のなかで、天然ゴムや合成ゴムなどの原材料コストが69%を占めていることを紹介。過去6カ月における世界レベルの価格変動が高騰を続けていることを示し、2017年度は原材料価格の高騰に対応しつつ、収益性を確保していく必要があると述べた。また、長期目標としては持続可能な売り上げ、収益力のある成長を目指し、同時にブランド力強化を図っていくとした。

 この長期目標を実現するため、「消費者体験」「顧客サービス」「品質」「高付加価値セグメント」「複雑性への対応」という5つのポイントが焦点になると解説。それぞれグッドイヤー製品を消費者がより購入しやすくすること、ユーザーと協力して「選んでもらえるサプライヤー」となり、小売業者に協力すること、よい製品を提供して最高のタイヤを楽しんでもらうこと、自分たちの技術力を生かして付加価値の高い製品を生み出すこと、イノベーションや新しい技術に対応するなかで増加する複雑性に対応しつつ、よい製品を提供していくことが必要であると語った。

高騰を続けている原材料価格に対応しながら収益性を確保することが2017年度の課題
長期目標を実現するため、「消費者体験」「顧客サービス」「品質」「高付加価値セグメント」「複雑性への対応」を焦点に取り組みを行なっていく

「スタッドレスタイヤの新製品を投入する計画」と金原社長

日本グッドイヤー株式会社 代表取締役社長 金原雄次郎氏

 続いて登壇した日本グッドイヤー 代表取締役社長の金原雄次郎氏からは、2017年の方針と具体的な取り組みなどについて語られた。

 まず金原氏は、2016年について新車販売や車検需要などの減少によって厳しい状況となっていたと振り返り、業界全体では市販用タイヤの販売が前年比とほぼ変わらないものとなったことを紹介。そのなかで、日本グッドイヤーは住友ゴム工業とのアライアンス解消後に「新生グッドイヤー」として臨んだ最初の年度となったが、金原氏は「初年度としてはまずまずの成績を残せた」と自己分析。その理由について「1年をとおして履き替えることなく走れる『Vector 4 Seasons Hybrid』が、8月の発売以降手応えを十分に感じられたこと」と語り、この勢いは2017年になっても続いており、最近では指名買いをするユーザーも出てきていると述べた。

 そのなかで、2017年はグッドイヤーがオールシーズンタイヤを世界で初めて製品化してから40周年を迎えることになり、北米では乗用車用タイヤの約8割がオールシーズンタイヤとなり、欧州でも普及が進んでいることを口にして「日本でもぜひグッドイヤーがオールシーズンタイヤの市場でパイオニアになって切り拓いていきたい」と意気込みを語った。

 2017年の方針では、「存在感のあるブランド」になること、「持続可能な成長」を遂げる会社になること、「ステークスホルダーに信頼される」会社になることの3点を挙げ、取り組みでは製品とブランドにフォーカスしていきたいとの考えを金原氏は口にした。製品ではVector 4 Seasons Hybridに続く独自性の高い製品を市場投入したいと述べ、すでに2月1日から超高性能乗用車用タイヤ「Eagle F1 Asymmetric 3(イーグル エフワン アシンメトリック スリー)」の販売を開始したことを紹介した。また、オールシーズンタイヤについても市場開拓をさらに推し進め、これに加えて競争力に優れたタイヤでは、年の後半から始まる冬シーズンに向けて「スタッドレスタイヤの新製品を投入する計画」であると明らかにした。

 このほかブランドの消費者認知度の向上に引き続き取り組み、2016年の秋から開始したTV番組の提供活動、2月1日に実施したホームページリニューアルを具体的な活動として紹介。また、10月から開幕する「第45回 東京モーターショー 2017」でもグッドイヤーの先進性や革新性にフォーカスしてブランド紹介を行ないたいと述べている。

2017年の方針と取り組みポイント。2017年後半に「新型スタッドレスタイヤ」の発売を予告した

 2017年の方針説明に続き、金原氏は好調に推移しているオールシーズンタイヤの解説に時間を割いた。このなかで金原氏は、新製品として発売したVector 4 Seasons Hybridの販売データを紹介し、とくに東京をはじめとする首都圏に突然雪が降った11月には販売数がジャンプアップ。今後は3月から始まる夏タイヤの需要期にも引き続きVector 4 Seasons Hybridをアピールし、1年をとおして売れる商品に育てていきたいとの考えを示した。

 このほか、独自に実施したユーザーの意識調査の結果、「とても使ってみたい」「やや使ってみたい」という回答で3人に2人がオールシーズンタイヤの使用に興味を示していることを紹介し、「グッドイヤーは消費者のみなさまのご期待にしっかりと応えて、これからもオールシーズンタイヤの市場開拓に邁進していく所存でございます」と締めくくった。

Vector 4 Seasons Hybridは、グッドイヤーの分析どおり首都圏や関東、東海エリアなど積雪のないエリアが販売の中心となっている
グッドイヤーのホームページ上での閲覧データでも、Vector 4 Seasons Hybridの注目度が高まっていることが示されている
ユーザーの多くがオールシーズンタイヤに関心を持っているという調査結果も紹介し、今後も市場開拓を推し進めていくと語られた
日本グッドイヤー株式会社 技術本部長 松崎洋明氏

 新製品説明では、2月1日に発売を開始したラグジュアリースポーツカー向けのハイパフォーマンスタイヤ「Eagle F1 Asymmetric 3(イーグル エフワン アシメトリック スリー)」について、日本グッドイヤー 技術本部長の松崎洋明氏が解説を担当。

 インポートプレミアムカーや国産ラグジュアリースポーツなどをターゲットに開発されたグッドイヤーで「ウルトラハイパフォーマンス」と位置付けるEagle F1 Asymmetric 3は、タイヤラベリング制度の転がり抵抗性能「A」(一部サイズは「B」)、ウェットグリップ性能「a」のA-aを実現。ドライグリップ力を追求する高性能タイヤながら、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能の両方を高いレベルで両立する高度な技術が与えられた製品であると松崎氏は紹介。

 また、従来モデルでもさまざまなメーカーに新車装着タイヤとして採用されており、新製品もジャガー「XF」、メルセデス・ベンツ「Eクラス」、アルファ ロメオ「ジュリア」、シボレー「カマロ」などで新車装着されているという。このほか、欧州でタイヤ開発が行なわれており、性能は速度レンジの高い欧州での要求水準を満たすスペックが与えられていると語られた。

29サイズを設定するEagle F1 Asymmetric 3。タイヤラベリング制度の転がり抵抗性能では、19サイズで「A」、10サイズで「B」を獲得。ウェットグリップ性能は全サイズ「a」となる
欧米のハイパフォーマンスカーで新車装着タイヤとして採用されている
従来モデルとの性能比較
松崎氏の解説で登場したEagle F1 Asymmetric 3の技術紹介ムービー
日本グッドイヤー マーケティング部 マーケティング本部長 有田俊介氏

 発表の最後には、日本グッドイヤーマーケティング部 マーケティング本部長の有田俊介氏から今後のマーケティングスケジュールについての紹介が行なわれた。

 2017年の活動では、金原社長のプレゼンテーションでも紹介されたように、存在感のあるブランドを目指して消費者にこれまで以上に知ってもらうこと、消費者に近づいていくことを目的にPR活動を実施。独自のオールシーズンタイヤの40周年を記念して、「オールシーズン」というキーワードから日々の生活を楽しくするコンセプトを紹介。機能性という面だけでなく、オールシーズンタイヤを使うことで自分のライフスタイルがいかに楽しくなるかをアピールしていきたいと有田氏は語る。

 また、同じく金原社長のプレゼンテーションで取り上げられたユーザーの意識調査を詳しく分析し、「クルマの維持で面倒に思うこと」という項目で、「車検」「洗車」に続き、「タイヤの交換」が3番目に挙げられていることに着目。これに関連して夏用タイヤとスタッドレスタイヤの変更を半数近くの人が面倒に思っており、その半面でオールシーズンタイヤを装着しているという人がわずか5.8%であること、実際に使った人の満足度が非常に高いということから、使ったことのない人に体験してもらえれば大きな需要拡大が望めると分析。「明るい未来を感じている」と有田氏は表現した。

 年間のスケジュールでは、3月から始まる夏タイヤの需要期を前に、前出のEagle F1 Asymmetric 3を2月から発売したほか、ネーミングに変更はないものの、「EAGLE RS Sport S-SPEC(イーグル アールエススポーツ エススペック)」に新コンパウンドを採用した製品を同じく2月から市場投入していることを説明。冬に発売予定というスタッドレスタイヤの新製品を加え、2製品の新発売、1製品の配合変更を訴求していく構えだ。

自動車を保有する男女400人から寄せられたタイヤに関連する調査結果。半数近くの人が夏用タイヤとスタッドレスタイヤの変更を面倒に思っていると回答(円グラフ)
オールシーズンタイヤの装着率は538%と低いが、満足度は95%を超えるという高評価。これを受け、オールシーズンタイヤが持つ市場拡大のポテンシャルはまだまだ高いと有田氏は分析
PR活動の年間スケジュール。「ICE NAVI 6」の後継モデルとなるスタッドレスタイヤの新製品の市場投入も予定されている
2月にリニューアルを行なったグッドイヤーの新しいホームページでは、導線の整理や内容の充実を実施。スマートフォンでも閲覧しやすいようレスポンシブデザインを採用した
Facebookを活用した製品体感プログラム「グッドイヤーアンバサダー」はユーザーからの好評を受けて活動を拡大。Eagle F1 Asymmetric 3のアンバサダー募集は2月24日にスタートする
会場内で行なわれたEagle F1 Asymmetric 3(左)とVector 4 Seasons Hybrid(右)の製品展示
Eagle F1 Asymmetric 3
Vector 4 Seasons Hybrid