試乗レポート
プジョーの4WD PHEV「3008 HYBRID4」に乗って感じた“細やかなモーター制御”
2021年5月5日 06:00
“プジョーらしい”デザインとパッケージのプラグインハイブリッドモデル
プジョーの元気がいい。2020-2021のCOTY(カー・オブ・ザ・イヤー)でも「208」がインポートカー・オブ・ザ・イヤーを獲得しており、シャープなデザインも好評。街で見る機会も急角度で上昇している。
そんなプジョーのラインアップ群で注目のSUVがデビューした。すでに1月に発表されていたCセグメントSUVの「3008」がそれで、今回プラグインハイブリッドである「GT HYBRID4」にやっと試乗の機会が巡ってきた。
鮮烈なブルーメタリックのボディカラーが電動化へのチャレンジを体現しているようで印象的。フレームレスのフロントグリルの中にメッシュ状に凝った開口部を備え、その両端に細く配置されるデイライトは新しいプジョーを象徴するサーベル状になる。GTではフルLEDになるヘッドライトが巧みに組み込まれたデザインは斬新だ。
そのフロントのデザインはサイドからリアエンドに至るまで統一性が取れており、キュッと締まったデザインに人気の理由も分かろうというものだ。
試乗車のタイヤは235/55R18サイズのミシュラン「PRIMACY 4」。エクステリアデザインに合っておりデザイン的にも3008にピッタリのサイズだ。
パワートレーンはフロントに147kW(200PS)/300Nmの1.6リッターガソリンターボエンジンと81kW(110PS)/320Nmのモーターを、リアアクスルには83kW(112PS)/166Nmのモーターをそれぞれ搭載し、駆動用バッテリーは13.2kWhの総電力量がある。
エンジンとフロントモーターに挟まれたトランスミッションはプジョーが使い慣れたEAT8速。電動化対応でトルコンの替わりに湿式多板クラッチを使用する。
走行状態によって駆動輪は前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動に変化する。ちなみに4つ選べるドライブモードではオールマイティなHYBRIDモードがお勧め。4つのモードを簡単に説明すると以下になる。
4WDモードは路面状況に応じて4輪へのトルク分配を行ない、電池残量が少なくてもエンジンで発電してリアモーターを動かす、トラクション重視の場面で使う。
HYBRIDモードはデフォルトのモードで、システムを起動すると最初はこのモードになる。バッテリー残量がある限り発進はリアモーターで行なう後輪駆動となり、状況に応じて駆動輪を変えていく。緩加速を続けるとそのままエンジンをかけることなく後輪駆動のEVとして走っていることが多い。バッテリー残量がなくなると走行状態に応じてエンジン駆動か、フロントモーターがアシストするエンジン駆動、あるいは発電しながらEV走行を行なうなど多彩な変化をする。
ELECTRICモードはその名のとおり電気モーターだけで走るモード。ただしアクセルを深く踏み込んだ時はエンジン始動する。
SPORTモードはエンジン走行主体となり、モーターがサポートしながら走るモードだ。
コクピットはプジョーの「i-Cockpit」のコンセプトでデザインされた未来的なもの。楕円形の小径ステアリングホイールの上に見るメータークラスターが特徴だ。視線移動が少なく、小径ステアリングホイールは操舵量が少ないメリットがある。メーターは12インチ液晶ディスプレイで鮮明で見やすい。
プジョー独特の小径ステアリングホイールは握る姿勢が必然的に両脇を締めるようなポジションになり、決まったドライブポジションを取れる。個人的にはちょっと窮屈に感じる時もあるが、より正確なドラポジが自然にとれるのは好ましい。
操作系はダッシュボードの上にあるトグルスイッチで行なえる。手を伸ばせば感覚的にも分かり操作しやすい。トグルスイッチは左からオーディオ、エアコン、ナビ、車両設定、電話、写真、ハザードとなっている。その下のスイッチはシートヒーターや前後ガラスの曇り止め、内気循環などだ。またオーディオのメインスイッチが独立している点も視線移動が少なく歓迎だ。
期待を持って座ったシートは裏切らなかった。体重のかかる部分のクッションが心地よく、シートの縫い目もないのですんなり座ることができた。体によくなじむシートだ。リアシートも平板なものではなく、大人が寛げる面圧分布になっているのも嬉しい。
このシートに座っての視界は高からず、低からずで車両感覚を掴みやすい。欧州車らしく太いAピラーで斜め前方は一部遮られる部分もあるが、全幅1840mmのクルマにもかかわらず狭い路のすれ違いもあまりストレスを感じない。ステアリングの操舵力もちょうどよく、しかもステアリング操作の初期でよく切れるので小回り性は高い。市街地で小回りが効くのはありがたい。
できる限りリアモーターを使ってEV走行しようとするシステム
走行時にエネルギーモニターを見ているとほとんどリアモーターで駆動しているのが分かる。バッテリーはモニター上では残量がなくなったように見えてもマージンを取ってあり、試乗中の発進は常に後輪のモーターで行なっていた。
走行中はHYBRIDモードを使っていたが、ほぼ後輪駆動のEVで走る。急加速を行なうとエンジンが始動するが、巡航中はアクセルワークによってエンジン停止とモーター駆動を速やかに行なっているのが確認できる。基本的にEV走行なのがこのハイブリッドの特徴だ。
市街地走行では振動がないEV特有のもので、滑らかな走りはいつも新鮮だ。音に関してはロードノイズが少し大きめ。それ以外のメカノイズはほとんど耳に入らない。また、加速や高速走行でエンジンが始動する場面でもショックはなく、ドライバーが意識することなくエンジン駆動に移る。
バッテリー走行はWLTCモードで64kmとされているが、負荷のかかる普通の走行状態では40kmぐらいが目安だろうか。
ちなみにHYBRIDモードで市街地から高速道路までエンジンもかけながら走り、アクセルオフ時に少し強めの減速でエネルギー回生を併用していると、モニター上のバッテリーは40kmぐらい走行したところで空になる。
砂地では用心して4WDモードにしてみたところ、モニター上のバッテリーは空だが低速は前後モーターを駆動するEV 4WDでモソモソと動く。やがてエンジンも加勢するが微妙なアクセルワークにも正確に答えてくれるのが嬉しい。駆動力配分だけ見ればレスポンスのよいEV 4WDは可能性を持っていると感じた。
乗り心地は快適。フワリとした味ではないが腰がありシッカリしたものだ。ショックを上手に吸収してくれ、荒れた路面でもバネ上の動きはよく制御されている。また大きな路面段差でも剛性の高いボディと後輪マルチリンクのサスペンションはバシャンとした衝撃などは全く伝えない。3008シリーズの中でも1880kgと重量があるHYBRIDだけ後輪のサスペンションを作り変えている効果は大きい。
また、高速道路の直進時でもミシュランとのコンビネーションもよく、微舵での過敏な反応はないのでリラックスしてドライブできる。
ただ「アクティブブラインドスポットモニターシステム」や「アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)」といったADAS機能はもう少し実践での適合が必要に感じた。
同じようにブレーキはストローク感が浅い踏力コントロールとなり、少しデリケートなタッチが必要だった。
ハンドリングは1630mmの車高にもかかわらず、キビキビした応答性と高いグリップ力、そしてよく抑えられたロールでスポーツハッチバックのようにフットワークは上々。抜群の乗り心地と軽快なハンドリングを合わせ持ち、520L~1482Lの広い荷室容積を持つSUVの使い勝手は非常に高い。
充電時間は普通充電で200V/3kWの充電器で5時間、6kWで2.5時間で満充電となる。3008 HYBRID4には充電モードがないので、走りながら充電することはできない。もし設定されていたとしても燃費にはよい影響を与えないとの配慮だが、充電設備をつけられないマンションなどでは将来必要かもしれない。
価格は565万円、オプションのナビ(24万8380円)やパノラミックサンルーフ(15万3000円)などを備えた試乗車では約615万円となる。これには補助金による減額は含まれない。