試乗レポート
円熟の現行型に追加されたプレミアムスポーティ「エルグランド AUTECH」、その仕上がりは?
2021年5月4日 06:00
メーカー直系ならではの上品さ
日産自動車のコンプリートモデルである「AUTECH」は、Premium Sportyをキーワードにしたブランドイメージの刷新を行なった。それは2017年秋に実施され、これまでに2018年に「セレナ」と「ノート」、2019年には「リーフ」と「ルークス」、2020年には「エクストレイル」、そして2021年には新型「ノート」に対して新生「AUTECH」のエンブレムを与えてきた。
そのいずれもがエクステリアには湘南のさざ波をイメージしたシルバーのエアロがアクセントとして与えられ、テーマカラーは通称・湘南ブルーを設定(車格やクルマのキャラクターを考え、車種によって微妙に色は異なる)。また、インテリアにもブルーが与えられているが、いずれも落ち着きのある仕上がりなのが印象的だ。
今回はその新生「AUTECH」のフラグシップで、2020年に登場した「エルグランド AUTECH」に乗る。このクルマに与えられた湘南ブルーはダークブルーパールであり、深みのある色彩がたしかにこの車格にマッチしているように感じる。街中ですれ違うエルグランドは概ねホワイトかブラックで、それに目が慣れているせいかかなり新鮮だ。
グリル、ヘッドライト、フォグフィニッシャ―にはダーククロムのメッキパーツが与えられることで、押し出しすぎないさりげない輝きを放っている。飽きのこない普遍的な価値を狙うホイールは、ベースモデルとの違いをハッキリと持たせつつ、メーカー直系ならではの上品な仕上がりを展開する。そのほか、各部に対してエアロパーツを装着するが、過激になり過ぎずにまとめたところが伝わってくる。これぞPremium Sportyということなのだろう。
インテリアに対してはブラックレザーシートに外装色同様のブルーのダイヤモンドステッチを与え、統一感を与えているところが好感触。ステアリングやシフトノブに対しても同色のステッチを施しているところもメーカー直系ならではの仕上がりだ。光が差し込むとわずかに主張してくるさりげない仕上がりをしており、強調しすぎていないところもまた嬉しい。
ベースモデルのマイナーチェンジに従い、360°セーフティアシストを手にしたことで、周囲の状況を把握しながらドライバーに各種警告を与えてくれる。また、単眼カメラに加えてミリ波レーダーを備えるインテリジェントクルーズコントロールを備えた。かつては3.5リッター仕様でなければACCが付かなった時代もあったが、2.5リッターを選択しても高速クルージングを楽にしてくれるのだ。
また、電動パワーゲートも備えたことで、テールゲートの開け閉めも容易になったこともありがたい。かつてエルグランドの2.5リッターユーザーだった身からすれば、これはかなり羨ましい装備。これなら小柄な女性であったとしても開閉がかなり楽になるだろう。
まとまりのある仕立てが感じられる
走りの部分に関して言えば変更はないが、久々にエルグランドに乗って改めてそのよさを感じた。低床低重心で仕立てられたそのパッケージは、セダンの感覚で操れるイメージがあり、コーナリングでピタリと路面に吸い付くようなフィーリングを展開してくれる。かつて惚れたのはそんなところだったのだ。無駄なピッチングやロールを生まないその仕立ては、走りを愉しみたいドライバーにとっても、一体感溢れる場を提供してくれるだろう。
搭載される2.5リッターエンジンは、決してパワフルという部類のものではないが、CVTとの組み合わせによって不満なく加減速をこなす。よくCVTはダイレクト感がないと言われているが、この車格、そして多くのパッセンジャーを乗せるクルマにとっては、かなりありがたいものだと改めて感じる。加減速で感じる段付きを一切与えないため、首が前後に揺さぶられることなく、全ての領域をカバーするその仕上がりは、ロングドライブをするとやはり快適であり、疲れが軽減されるものだと思えてくる。
また、前述したインテリジェントクルーズコントロールを作動させていても、無駄な加減速をせず、スムーズに周囲の交通環境と仲よくなれる走りを展開してくれるようになったことが好印象だった。目先ばかり見ず、さらに前の状況まで把握すると言われるこのシステムのよさが展開されているということだろう。
走りから見た目まで全てに対して落ち着きを見せた円熟のエルグランド AUTECH。全てにおいて、人とは違うが突出しすぎない、そんなまとまりのある仕立てが感じられる仕上がりがそこにあった。