試乗レポート
日産の新型「キックス」に試乗 第2世代e-POWERの搭載で走りはどう進化した?
2022年7月19日 14:00
第2世代e-POWER搭載とともに4WDが新登場
日産自動車の小型SUV「キックス」がパワートレーン系に大きなマイナーチェンジを受け、合わせて初の4WDモデルをラインアップに加えた。パワートレーンは第2世代とよばれる「ノート オーラ」のe-POWERを搭載し、パワフルになったばかりでなく、より上質な走りになっている。
具体的にはフロントモーターが従来のEM57型からEM47型に置き換わり、出力は95kWから100kWに約5%アップ、トルクは260Nmから280Nmに約7%アップ。また、新たに設定された4WDでのリアモーターはノート オーラに搭載されている50kW仕様のMM48型モーターが流用された。バッテリはノートの80セルから96セルになり、車重のあるキックスに合ったものに変更されている。動力性能の面でSUVにふさわしいものになった。
インテリアに大きな変更はないが、センターコンソールとシフトレバーまわりのデザインが一新した。また、内装も上質感のあるものになり、ベージュのバリエーションも追加されている。
インターフェースでは上級グレードに「インテリジェント アラウンドモニター」や「インテリジェント ルームミラー」などが標準装備された。さらにスモールSUVの中では初めてとなる前方衝突予測警報が標準装備される。こちらはレーダーを使って2台前の車両の相対速度を検知してアラームを出し、衝突回避を促すものだ。上級車ではすでに実用化されているが、スモールサイズでは初めてになる。
スモールクラス以上の快適性
試乗車は4WDのX FOURスタイルエディションで、タイヤは横浜ゴム「ブルーアース E70」(205/55R17)を装着する。テストコース内でのわずかな走行だったが、従来のキックスからの進化を感じた。
ドライバーシートはSUVらしくヒップポイントが高く、直前視界も含めて視界が広い。e-POWERはスタート直後はバッテリだけの走行で粛々と走り始め、50km/hほどで1.2リッターのミラーサイクル3気筒エンジンが始動して発電を開始する。初期のe-POWERでは発電用エンジンの始動時に大きな音がして興ざめだったが、かなり軽減された。速度が乗ってロードノイズなどが大きくなり始めたタイミングでエンジンがかかるように設定されている。
このエンジン始動時の車体振動も抑えられており、ドライブフィールに連続性がある。ただスモールクラスでは遮音対策には限界があり、始動時の3気筒エンジンからの透過音、振動は若干残る。それでもクラス以上の快適性がある。
パフォーマンスはモーターの出力アップに伴い、フロントモーターは従来型より最大トルクで7%アップし、高速でのレスポンスが向上し、追い越し加速も余力を持って行なえる。4WDはリアモーターの出力が50kWになっており、4WDらしい悪路走破力が期待できるが、残念ながらオンロードでの試乗ではその効果のほどは確認できなかった。こちらも機会があればぜひ低ミュー路で試してみたい。
ちなみにFFでのWLTCモード燃費は23.0km/L(4WDは19.2km/L)で、従来モデルのキックスの21.6km/h、それにノート オーラ 4WDの22.7km/Lを上まわる燃費となっている。
日本では日産が先鞭をつけたワンペダルドライブのe-Pedalで、アクセルOFF時の回生エネルギーを積極的に取り入れる。このe-PedalはスイッチによってON/OFFが可能だ。ドライブモードでは出力制限をするEcoや出力マップをパワー側に切り替えるSportが選択でき、さらにどのモードでもBレンジに入れるとe-Pedal同様にアクセルOFFではエンジンブレーキ状態になる。この減速Gはe-Pedal ON時ほど強くはないが大きな減速Gが得られる。使い方としては街中や雪道ではe-Pedalを使い、オンロードの下り坂ではBレンジだと使いやすそうだ。
ホイールベースは2620mm。SUVらしく全高が1605mmと高いためか不快ではないがノート オーラよりも少しピッチングがある。乗り心地は荒れた路面からジョイント路まで路面相応の感触はあるものの上下のショックはよく抑えられており、また厚いシートは路面からの微振動を吸収しており総じて快適だ。
ハンドリングは素直。前後輪の荷重変化の多いアップダウンのあるワインディング路でもハンドル追従性がよく、コンパクトSUVらしく軽快だ。長い高速コーナーでのグリップ力も妥当で姿勢変化の少ないアンダーステアを維持して安心感がある。また街中の角を曲がるような場面では操舵力が軽くて運転しやすい。コンパクトSUVの使いやすさとコンパクト以上の質感がキックスの魅力だ。
マイナーチェンジだが、パワートレーン系の変更と4WDの登場で、SUVにふさわしい駆動力を手に入れたキックスは存在感を持ったコンパクトSUVのポジションを強固なものにした。