試乗レポート

レクサス新型「UX」、ボディ剛性を高めて走りのフィーリングはどう深化した?

マイナーチェンジを実施したレクサス「UX」を試乗した

スポット溶接をピンポイントで追加してボディ剛性を向上

 最小サイズのレクサスとして人気のある「UX」の年次改良モデルに試乗した。2018年の発表以来、ブラッシュアップを続けており、また取り回しのいいコンパクトなクロスオーバーとして女性にも人気が高い。今回の年次改良ではエクステリアの変更は最小で、もっぱら車体とソフトウェアの強化に重点が置かれている。

試乗車はUX250hバージョンL(前輪駆動車)で車両本体価格は519万2000円。デジタルキー、カラーHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)、マークレビンソン プレミアムサラウンドサウンドシステム、アクセサリーコンセント、寒冷地仕様、BSM(ブラインド・スポット・モニター)、おくだけ充電などのメーカーオプションが付いて合計572万8800円
ボディサイズは4495×1840×1540mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2640mm、最小回転半径は5.2m、車両重量は1560kg。ボディカラーは今回の改良で新たに設定された「ソニックイリジウム」

 特に走りの質をレクサスとして統一感のあるものとするべく、ボディの強化が図られた。目に見えるような華やかな改良ではないが、この強化によってUXはコンパクトで取り回しがいいクロスオーバーに加えて、滑らかで隙のないフットワークを手に入れることになった。具体的にはAピラー、ロッカー、Bピラーなどのフロントドア下回り、最後部のバックパネルに計20点の溶接打点を加えてボディの強化と全体の剛性バランスを取っている。パワートレーンに変更はないが、地味だが走りの質に欠かせないボディ部分に力を注いだことで、レクサスの走りに対するこだわりと意気込みが感じられる。

バージョンLはランフラットタイヤから標準タイヤへと変更された。装着タイヤサイズは225/50R18、切削光輝+ダークグレーメタリック塗装のアルミホイールのサイズは18×7J(※F SPORTグレードのみランフラットタイヤが標準装備となる)
特徴的な立体的ブロックパターンを採用したフロントスピンドルグリル。特別仕様車の「Graceful Explorer」はシルバー仕様となる
バージョンLのみ標準装備となる「三眼フルLEDヘッドランプ(ロー・ハイビーム)&LEDフロントターンシグナルランプ」
リアの挙動安定に効果を発揮する「エアロスタビライジングブレードライト」
エンジンは直列4気筒DOHC 2.0リッター(M20A-FXS)で、最高出力107kW(146PS)/6000rpm、最大トルク188Nm/4400rpmを発生。フロントモーターは「3NM」型で、最高出力80kW(109PS)、最大トルク202Nmを発生する。WLTCモード燃費は22.8km/L

 エクステリアも実はわずかだが変化がある。ヘッドライト内の一部がブラックアウトされ、テールランプもそれに合わせて内部が変更されたので、一見して新型と分かる。インテリアではタッチスクリーン化した12.3インチの大型センターディスプレイを中心に変更が行なわれた。また、NXから取り入れられた「直感的で使いやすい」と言われるマルチメディアシステムを採用しており、確かに操作も分かりやすかった。

試乗車のインテリアカラーは「ヘーゼル」
後席
前席
センターコンソールにUSBポートが2つ追加され利便性が高められた。おくだけ充電はオプション設定
最大荷室長約760mm、最大横幅約1255mm、最大荷室容量268L(ハイブリッド車。ガソリン車は310L)を確保する
ラゲッジスペースは2段底になっていて使い勝手がよい
オプション設定のアクセサリーコンセントは、ラゲッジスペースとセンターコンソールボックス後部の2か所に設置される

 車載ナビにはリアルタイムで情報を入手できるコネクテッドナビも搭載し情報が正確になった。加えてiPhoneやAndroidにも対応した車載ディスプレイによって普段使い慣れているアプリを使用できる。追加された機能にパノラミックビューモニターがある。搭載されている前後左右のカメラ映像を合成して床下映像をセンターディスプレイに映し出すもので、フロアが干渉しそうな場面だけでなく手軽に駐車時も便利な機能だ。

駐車時や狭い場所を走る際に、周囲の状況確認がしやすいパノラミックビューモニター機能はメーカーオプション
10.3インチのモニターから、12.3インチのタッチパネルディスプレイへと進化したことで、シフト横にあったナビゲーションなどの操作を行なえる「リモートタッチ」やアームレスト前端にあったオーディオ系スイッチ類は廃止され、代わりにシートヒーター&ベンチレーションやステアリングヒーターのスイッチがセンターコンソールから移設された
改良前のシフトまわり

静粛性やサスペンションの動きも進化していた

 さて多くのバリエーションを持つUXシリーズの中で、今回は2.0リッターNAエンジン+ハイブリッドシステムの250hの「バージョンL」の前輪駆動車を試乗した。UXはグローバルだとランフラットタイヤを履くが、日本市場のバージョンLは通常型タイヤのダンロップ「スポーツマックス050」となり、サイズは225/50R18を履く。ランフラットタイヤはメーカーオプションに設定されている。

 動的な部分ではレクサスらしいこだわりを随所に感じられた。例えばアクセルを踏んだ時にレスポンスよく加速する素直さ。ハンドルを切った時の落ち着いた反応など、ちょっとした動きにも滑らかさが増し、最近のレクサス車との統一性が図られている。電動パワーステアリングも操舵力が軽くなり、BEVから取り入れられたタイロッドエンド変更の効果もあって、操舵フィールもダイレクト感が増している。

 またバージョンLは、ランフラットから通常型タイヤになったこともあり、路面からのあたりがマイルドになったほか、従来モデルもランフラットとしてバランスよくまとめられていたが、小さな路面の凹凸も包み込むような感触になった。

 さらにタイヤのパターンノイズが下がったこととボディの補強効果もあって静粛性が向上していた。外からの音を完全にカットするというよりも、ピークのある音を効率的に防いでいる感じで、コンパクトクロスオーバーとして上質なキャビンに仕上がっている。

 もう1つ、初期モデルからの違いはサスペンションの動きが滑らかになっていたことで、ショックアブソーバーの減衰緑変更に伴いアシがよく動いている印象だ。路面の凹凸に際してもバネ上の動きがフラットに保たれて、小さいながらもレクサスらしい動きになっていた。ボディ側に合わせて変更されたショックアブソーバーの減衰力もスムースな動きに磨きをかけている。

 ブレーキはペダル形状が大きくなってシッカリした感じだが、ハイブリッド車の常で踏力とストロークのバランスではもう少しストローク感が欲しかった。ペダルが踏みやすくなっているので余計に感じてしまったのかもしれない。

 全車速追従クルーズコントロールは、混雑した高速道路の交通環境では前車との距離をもう少し早めに把握してほしい場面もあったがクルージング時は有難みを痛感する。レーンキープもなかなか上手で、カーブでも適度にドライバーをサポートし、介入しすぎずにわずらわしさはほとんどない。

 大きく変わった操作系にも触れておこう。

 大型のセンターディプレイもコンパクトなUXに巧みに配置されおり、視界を遮ることなく無理なく収められている。ディスプレイがドライバー向きに配置されているためタッチパネルでの操作は行ないやすく配慮されている。ちょっとしたことだが操作しやすかった。また音声認識が進化して、ナビゲーションの目的地設定も容易だった。

走行モードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類。メーターの表示も変化する
センターディスプレイは表示内容も見やすい

 センターディスプレイの変更に伴って、スイッチ位置も移動され、整理されている。音楽やナビなどのアイコンがドライバー正面のメーター内に表示できるようになったのも分かりやすい。UXのキャビンは決して広々としているわけではないが、レクサスらしく質感の高い内装とデザインで、どの席に座っても落ち着ける。

 ラゲッジルームも初期型では入らなかったゴルフバックが、9インチサイズなら積めるようになったのは2年前からだと知った。ハイブリッドはバッテリの関係でフロアが少し高くなっているが2段デッキになっているので小物の収納性は意外と高い。さらにマルチメディアなどのソフトウェアのアップデートに無線通信で行なえるOTA(Over The Air)などで行なえる新しい機能が追加されている。

 さてレクサスのスポーツグレードはF SPORTになるが、こちらはさらに走りに磨きをかけて、バージョンLとはまたひと味違ったセッティングになって差別化が進んだ。こちらは別項で紹介したいと思う。

近々スポーツグレードの「F SPORT」も試乗する予定だ
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学