試乗レポート
レクサス新型「UX」、ボディ剛性を高めて走りのフィーリングはどう深化した?
2022年8月23日 11:59
スポット溶接をピンポイントで追加してボディ剛性を向上
最小サイズのレクサスとして人気のある「UX」の年次改良モデルに試乗した。2018年の発表以来、ブラッシュアップを続けており、また取り回しのいいコンパクトなクロスオーバーとして女性にも人気が高い。今回の年次改良ではエクステリアの変更は最小で、もっぱら車体とソフトウェアの強化に重点が置かれている。
特に走りの質をレクサスとして統一感のあるものとするべく、ボディの強化が図られた。目に見えるような華やかな改良ではないが、この強化によってUXはコンパクトで取り回しがいいクロスオーバーに加えて、滑らかで隙のないフットワークを手に入れることになった。具体的にはAピラー、ロッカー、Bピラーなどのフロントドア下回り、最後部のバックパネルに計20点の溶接打点を加えてボディの強化と全体の剛性バランスを取っている。パワートレーンに変更はないが、地味だが走りの質に欠かせないボディ部分に力を注いだことで、レクサスの走りに対するこだわりと意気込みが感じられる。
エクステリアも実はわずかだが変化がある。ヘッドライト内の一部がブラックアウトされ、テールランプもそれに合わせて内部が変更されたので、一見して新型と分かる。インテリアではタッチスクリーン化した12.3インチの大型センターディスプレイを中心に変更が行なわれた。また、NXから取り入れられた「直感的で使いやすい」と言われるマルチメディアシステムを採用しており、確かに操作も分かりやすかった。
車載ナビにはリアルタイムで情報を入手できるコネクテッドナビも搭載し情報が正確になった。加えてiPhoneやAndroidにも対応した車載ディスプレイによって普段使い慣れているアプリを使用できる。追加された機能にパノラミックビューモニターがある。搭載されている前後左右のカメラ映像を合成して床下映像をセンターディスプレイに映し出すもので、フロアが干渉しそうな場面だけでなく手軽に駐車時も便利な機能だ。
静粛性やサスペンションの動きも進化していた
さて多くのバリエーションを持つUXシリーズの中で、今回は2.0リッターNAエンジン+ハイブリッドシステムの250hの「バージョンL」の前輪駆動車を試乗した。UXはグローバルだとランフラットタイヤを履くが、日本市場のバージョンLは通常型タイヤのダンロップ「スポーツマックス050」となり、サイズは225/50R18を履く。ランフラットタイヤはメーカーオプションに設定されている。
動的な部分ではレクサスらしいこだわりを随所に感じられた。例えばアクセルを踏んだ時にレスポンスよく加速する素直さ。ハンドルを切った時の落ち着いた反応など、ちょっとした動きにも滑らかさが増し、最近のレクサス車との統一性が図られている。電動パワーステアリングも操舵力が軽くなり、BEVから取り入れられたタイロッドエンド変更の効果もあって、操舵フィールもダイレクト感が増している。
またバージョンLは、ランフラットから通常型タイヤになったこともあり、路面からのあたりがマイルドになったほか、従来モデルもランフラットとしてバランスよくまとめられていたが、小さな路面の凹凸も包み込むような感触になった。
さらにタイヤのパターンノイズが下がったこととボディの補強効果もあって静粛性が向上していた。外からの音を完全にカットするというよりも、ピークのある音を効率的に防いでいる感じで、コンパクトクロスオーバーとして上質なキャビンに仕上がっている。
もう1つ、初期モデルからの違いはサスペンションの動きが滑らかになっていたことで、ショックアブソーバーの減衰緑変更に伴いアシがよく動いている印象だ。路面の凹凸に際してもバネ上の動きがフラットに保たれて、小さいながらもレクサスらしい動きになっていた。ボディ側に合わせて変更されたショックアブソーバーの減衰力もスムースな動きに磨きをかけている。
ブレーキはペダル形状が大きくなってシッカリした感じだが、ハイブリッド車の常で踏力とストロークのバランスではもう少しストローク感が欲しかった。ペダルが踏みやすくなっているので余計に感じてしまったのかもしれない。
全車速追従クルーズコントロールは、混雑した高速道路の交通環境では前車との距離をもう少し早めに把握してほしい場面もあったがクルージング時は有難みを痛感する。レーンキープもなかなか上手で、カーブでも適度にドライバーをサポートし、介入しすぎずにわずらわしさはほとんどない。
大きく変わった操作系にも触れておこう。
大型のセンターディプレイもコンパクトなUXに巧みに配置されおり、視界を遮ることなく無理なく収められている。ディスプレイがドライバー向きに配置されているためタッチパネルでの操作は行ないやすく配慮されている。ちょっとしたことだが操作しやすかった。また音声認識が進化して、ナビゲーションの目的地設定も容易だった。
センターディスプレイの変更に伴って、スイッチ位置も移動され、整理されている。音楽やナビなどのアイコンがドライバー正面のメーター内に表示できるようになったのも分かりやすい。UXのキャビンは決して広々としているわけではないが、レクサスらしく質感の高い内装とデザインで、どの席に座っても落ち着ける。
ラゲッジルームも初期型では入らなかったゴルフバックが、9インチサイズなら積めるようになったのは2年前からだと知った。ハイブリッドはバッテリの関係でフロアが少し高くなっているが2段デッキになっているので小物の収納性は意外と高い。さらにマルチメディアなどのソフトウェアのアップデートに無線通信で行なえるOTA(Over The Air)などで行なえる新しい機能が追加されている。
さてレクサスのスポーツグレードはF SPORTになるが、こちらはさらに走りに磨きをかけて、バージョンLとはまたひと味違ったセッティングになって差別化が進んだ。こちらは別項で紹介したいと思う。