試乗レポート

レクサスの新型「UX」 “F SPORT”専用のパフォーマンスダンパーで走りはどう変わる?

レクサス「UX F SPORT」

F SPORT専用装備を多数採用

 レクサスはブランド構築の努力が実ってユーザーからの信頼感も高い。そして「CT」が終了した現在、レクサスのエントリーモデルとなった「UX」。レクサス最少のコンパクトSUVというだけでなく、プレミアムコンパクトクラスで他に比べるモデルがないこともあって盤石な人気がある。

 UXのversion Lについてはすでに誌面上で取り上げており、その静粛性と腰のある乗り心地、上質なレクサスらしいインテリアについてをお伝えした。

 F SPORTはversion Lにはないパフォーマンスダンパーを標準装備し、version Lとは趣の違う走り味になっている。

 試乗したのはブルーメタリックが美しい250hのF SPORT。装着タイヤはブリヂストン「ALENZA 001」でサイズは225/50RF18のランフラットタイヤを標準とする。アグレッシブなホイールからはオレンジに塗色されたブレーキキャリパーが覗いている。片持ちタイプの通常型だがこんなところにもF SPORTのこだわりがある。

 日本の道でも使いやすいボディサイズは4495×1840×1540mm(全長×全幅×全高)。見た目よりもワイドボディで、コンパクトながら都会派SUVとして街に溶け込み、独自の存在感がある。

UX 250h F SPORT(504万1000円)。ボディサイズは4495×1840×1540mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2640mm
ランフラットタイヤとなるブリヂストン「ALENZA 001」(225/50RF18 95V)に組み合わせるホイールは、18×7Jサイズの“F SPORT”専用アルミホイール(ダークプレミアムメタリック塗装)。オレンジのブレーキキャリパーもF SPORT専用
ボディカラーはヒートブルーコントラストレイヤリング。F SPORTのエンブレムが輝く

 インテリアは12.3インチの大型タッチスクリーンを中心に使いやすく、音声認識の優れていることはversion Lのインプレでもレポートした通りだ。

 室内の造形は広々とした空間よりも適度にタイトで一体感のあるデザインで乗りやすい感じを受ける。コクピットといった雰囲気だ。

UX 250h F SPORTのインパネ
ステアリングはF SPORT専用のディンプル本革ステアリング(パドルシフト付)。ステアリングスポーク右側にはカラーヘッドアップディスプレイやアクティブサウンドコントロール(ASC)などのスイッチ類を配置
シートもF SPORT専用。アルミ製スポーツペダル&フットレストも専用品となる
メーター

 パワートレーンはversion Lと変わらないが、ドライブモードにはNorma、Eco、Sportに加えてSport+とCustomが設定されている。Sport+を選ぶとAVS、可変ショックアブソーバーがハード側に切り替わる。

最高出力107kW(146PS)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kgfm)/4400rpmを発生する直列4気筒2.0リッター「M20A-FXS」エンジンに、最高出力80kW(109PS)、最大トルク202Nm(20.6kgfm)を発生する「3NM」モーターをフロントに搭載。4WDモデルは最高出力5kW(7PS)、最大トルク55Nm(5.6kgfm)を発生する「1MM」モーターが追加される

しなやかなハイブリッドドライブ

 最初はノーマルモードからスタートする。アクセルの反応も穏やかで熟成されたトヨタハイブリッドシステムは滑らかだ。ホテルのエントランスから出ても自然な立ち居振る舞いでUXはサマになっている。

 乗り心地はなかなか快適。version Lでは通常型のタイヤを履いており、それまでのUXよりロードノイズが小さく、路面からのあたりがソフトになっていた。しかしF SPORTの新開発18インチランフラットタイヤも優れた静粛性を示した。これまで感じた低周波ノイズが抑えられ、ランフラットタイヤの印象は俄然よくなった。

 路面からのショックも細かい凹凸はよく吸収されており、例えればこれまでのランフラットタイヤがブーツだとするとスニーカーに履き替えたようだ。

 さすがに大きな段差を通過した際は主としてリアから少し大きめのショックを感じる。コーナーにあるような段差や凹凸では余計に大きくなるが、接地に影響を及ぼすほどではない。よくまとめられていると感じた。

 ロードノイズは高速では少しゴー音が大きくなるが、それにしても静かで快適な室内はさすがレクサスだ。エントリーモデルとしてレクサスへの期待を抱かせるに十分な素養を備えていた。

 さらに、ステアリング系はBEV仕様のUXが導入された際にタイロッドエンドの形状変更でダイレクトな感触を得ており、素直な操舵感となっている。F SPORTの美点はこの操舵感でハンドル応答性が滑らかで自然、そして操舵に伴って旋回していく姿勢のバランスがよく取れており、ドライバーにとってはこの一連の自然な動きが好ましい。

 ボディ後端に配置されたパフォーマンスダンパーがボディのねじれ振動を吸収し、しなやかなコーナリングをサポートしているようだ。操舵力変化も同じリズムでキックバックも小さい。

 ドライブモードをSport+にしてみる。前後のショックアブソーバーの減衰力、特に伸び側が高くなるがしなやかさは変わらず、ゴツゴツした感触はない。快適さは変わらないのに感心した。リアから跳ね上げられるような動きは皆無だ。少し締まった感じの好きなドライバーはこのモードを日常的に使っても違和感はないだろう。

 アクセルの反応やCVTの閾値も高くなりモーターサポートも強く、アクセルのツキのよい元気ある走りになる。ターボのようパンチ力はないがメリハリ感のある走りが楽しめる。version Lでも共通のボディに20か所におよぶスポット増しで剛性を効果的に上げたことで、アクセルワークや操舵に一体感がある。プレミアムコンパクトらしいまとまりのよさだ。

 一方、ブレーキのタッチも向上していた。ハイブリッドはバイワイヤのブレーキタッチのリファインが難しく、初期のハイブリッドは滑らかさに欠いたものだが、最新のUXではペダルストロークと踏力がバランスされ、油圧ブレーキと遜色ないレベルとなっている。ブレーキペダルがオルガンタイプで大型化されたこともコントロール性に影響を与えている。

 version L同様に上質で静かな室内、快適でしなやかな乗り心地、そしてプレミアムコンパクトにふさわしいハンドリングを備えたF SPORTはさらに洗練された。作り手のこだわりが反映された1台だ。

 欲を言えばもっと刺激的なUXに乗ってみたい。ベースのよさがそれを期待させるのだろう。いつかチャンスがあるだろうか。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学