試乗レポート

トヨタ「カローラ」シリーズイッキ乗り【カローラ ツーリング編】

 カローラが大きな改良を加えられてビッグマイナーチェンジとも言えるほど内容の充実が図られた。

 ハイブリッドはこれまでのTHS(TOYOTA Hybrid System)だが、第5世代に入りいっそうの燃費改善が図られた。もはやカローラクラスでもリッター20kmが簡単に出せる時代になった。主として電動モジュールの刷新が大きなポイントになる。

 一方、ガソリン車もカローラとツーリングの1.5リッター仕様はダイナミックフォースエンジンになり、合わせてカローラスポーツの2.0リッターエンジンも同様に新世代のダイナミックフォースエンジンに変わった。

 また、カローラ スポーツを除いたガソリン仕様のFF車は、リアサスペンションがダブルウィッシュボーンからトーションビームに変更になった。走りを訴求するカローラ スポーツのリアサスは従来通りのダブルウィッシュボーンを踏襲する。

カローラ ツーリング(ハイブリッド車)。グレードはW×B。駆動方式は2WD(FF)と4WDのE-Fourを設定。試乗車はE-Fourで、価格は304万8000円。ボディサイズは4495×1745×1460mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2640mm。車両重量は1440kg

 カローラ ツーリングの試乗車はE-Fourに試乗した。一見したところ外観上の大きな変更はないが、ホイールの意匠変更などでより精悍な印象になった。装着タイヤは横浜ゴムの「BluEarth-GT」。サイズは215/45R17を装着する。BluEarth-GTはウエット、転がり抵抗、ハンドリング、乗り心地とのバランスのとれたタイヤで癖がないのが特徴だ。

ダークグレーメタリック塗装の17インチアルミホイールに組み合わせるタイヤは横浜ゴムの「BluEarth-GT」。サイズは215/45R17
カローラ ツーリング(ハイブリッド車)のインパネ
ステアリング
シフトまわり
ドライブモード切り替えスイッチ
メーターの表示パターン
シートはW×Bはブラックのほか、ホワイトも選択可能

 カローラは出張などではレンタカーで借りることが多いが、いつ乗っても安定・安心の性能でいつも感心させられているが、あと一味特徴の薄い印象があった。

 ところが新型のハンドルを握ってその先入観を改めた。これまでのカローラにしなやかな一味が加えられたからだ。加速感もアクセル操作に応じて力強く自然になっている。加えてフロントタイヤの接地感があってそれがステアリングフィールにも好影響を与えている。路面の凹凸もサスペンションがしっかりいなしてくれ、穏やかで安心感のある動きになっていた。

 コーナーではこれまで通り適度にロールをしながら安定した姿勢で曲がってゆくが、これに加えてESPの改良でハンドル応答に無駄がなく、すっきりとしたコーナリングに磨きがかかった。それもそのはず、今回の改良ですべてのグレードでスプリング、ショックアブソーバー、スタビライザーの取り付けに至るまで見直しが行なわれており、クルマの動きが上質になった。また、E-FOURではリアのトルクが向上しており、4輪の接地力が高まると同時にライントレース性も一段とレベルアップした。質にもこだわった変更点でカローラ開発陣のこだわりが感じられる。

 乗り心地もフロントシートでは快適そのもの。下からの突き上げの収まりもよく、シートのショック吸収力も高い。フロアから伝わる微振動や大きな入力に対してもサスペンション、車体でバランスよくショックを吸収している。

 半面、リアシートではレッグスペースの広さはあるものの、細かい振動を伝えやすく前後シートではやや印象が異なった。試乗車がE-FOURだったことで重量配分などでの違いの可能性もあるが、大きなストロークは苦手のようだ。

 ハイブリッドのエンジンは低フリクション化を進め、最大熱効率40%を達成して、高燃費を担っている。また、モーター出力の向上で加速時のラバーバンドフィールが減り、アクセルのツキに対して違和感のない加速が可能だ。アクセルを強く踏むとこれまで以上に力強い加速で、しかもエンジンノイズは抑えられている。特に強く感じるのは追い越し加速でのトルクの大きさで、瞬発力のあるパワートレーンになった。

 ハイブリッドはこれまでの運転行動から減速時にその地点を登録しており、アクセルオフ操作で回生ブレーキを使うことによって、運転のしやすさと合わせて電気を回収している。また地図データから下り坂を予測し積極的に回生を行なう。さらにナビゲーション情報から渋滞前に積極的に充電し、渋滞時のエンジン始動頻度を減らしている。このような涙ぐましい努力によって積極的にエネルギー回収で燃費向上が図られた。

最高出力72kW(98PS)/5200rpm、最大トルク142Nm(14.5kgfm)/3600rpmを発生する直列4気筒1.8リッター「2ZR-FXE」エンジンを搭載し、フロントに最高出力70kW(41PS)、最大トルク185Nm(18.9kgfm)を発生する「1VM」モーターを組み合わせる。E-Fourはリアに最高出力30kW(41PS)、最大トルク84Nm(8.6kgfm)を発生する「1WM」モーターをさらに搭載している。WLTCモード燃費は24.9km/L

 ADAS系はノア/ヴォクシーで採用された新世代のトヨタセーフティセンス(TSS)になっており、渋滞時のハンズオフこそできないが全車速追従ACCで前車との距離の取り方も上手で、前のクルマに合わせて減速する感覚も巧みだ。また交差点での右折車への事故軽減、右左折での歩行者検知も備わっている。

 コネクティッドナビも、トヨタのスタンダードになる「コネクティッドナビ」に対応する8インチディスプレイオーディオと、10.5インチ大型ディスプレイオーディオPlusが設定される。車内Wi-Fiもオプション設定され、一気に膨らんだ。ただ機能をディスプレイに表示させる操作はもう少し簡略化してほしいところ。

コネクティッドナビ対応の10.5インチディスプレイオーディオPlusはオプション設定

 人気のカローラ ツーリング。試乗したE-FOURは上質な乗り心地、素直なハンドリング、瞬発力のあるハイブリッドで思わず襟を正すほどの進化を遂げていた。カローラを大切にしていこうとするトヨタの気概を感じた。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛