試乗レポート

【2022 ワークスチューニング試乗会】ニスモが仕上げた新型「フェアレディZ」の乗り味をショートサーキットで試す

新型エクストレイル用ニスモパーツも続々登場

ニスモが手掛けた新型「フェアレディZ」をショートサーキットで試乗してみた

ニスモZの見た目は大人しそうだが、走りの性能はどうか?

 ようやく一般ユーザー向けの車両も納車が始まってきたという日産「フェアレディZ」。それに合わせるかのように、ニスモからチューニングパーツがリリースされた。ノーマルでも旧型からかなりの進化が見られた新型なだけに、伸び代がどれだけあるのかは未知数だが、果たしてその仕上がりとはどんなものなのかをクローズドコースで試す。

 バージョンSTの9速ATモデルをベースにしたニスモパーツ装着車のZは、一見するとかなりシックな佇まいだ。見た目ではカーボンドアミラーカバーと、現在開発中で太めの5本スポークが特徴の鍛造アルミホイール「LM GT4」、そしてそれを縁取るフェンダーモールくらいのものか?

エクステリアはホイール、フェンダーモール、ミラーカバーぐらいの変更のみ

 しかしこのモール、どこか見たことある形だと思い質問をしてみたら、やはり旧型(Z34)NISMO用フェンダーモールを付けているだけだとか。ホイールのサイズをフロント9.5J インセット+30、リア10.5J インセット+25という組み合わせでは、フェンダーモールの必要性アリとの判断だったそうだ。それがなくても問題なくフェンダーに収まりそうだと感じるが、さすがメーカー系だけにニスモの基準はかなりシビア。

 もしも車体の個体差があって、少しでもタイヤがはみ出てしまえばマズイので、かなりの気を遣っている。だからこそ開発にも時間がかかるのだろう。ホイールは現在のところ1台分で約7kgの軽量化を実現しているそうだ。ノーマルホイールもレイズの鍛造だが、これほどまでに軽量になるとはさすがはアフターパーツである。

フェンダーアーチに装着さているフェンダーモールはZ34用パーツの流用だという
開発中のホイールは前後ともレイズ製19インチ鍛造アルミホイール
装着していたタイヤはブリヂストンのポテンザS007で、サイズは前が235/40R19、後が275/35R19

 けれどもそれ以外のアイテムは製品化が早かった。それは兎にも角にもZと同じエンジンを搭載するスカイライン400Rでの経験があったからだという。「スポーツリセッティング TYPE-2」と名付けられるコンピュータチューニングは、低中速におけるアクセルのツキを大切に仕上げたもので、これは400Rのデータをベースに仕立てられている。400RとはATそのものが異なるが、そこのマッチングもしっかり詰めているそうだ。

 また、オールステンレス製のマフラーも奢っている。NISMOロゴが刻まれるリベット留めのフィニッシャーを与えたそれは、ノーマルもオールステンレス製であるために重量自体はそれほど変わらないとのことだが、軽快かつ心地よいエキゾーストノートを奏でてくれるというから試乗が楽しみだ。

 さらにブレーキパッドもラインアップ。カッパーフリーのロースチール材を採用することでコントロール性を重視しているという。常温域から650℃までを対応し、今回走るようなミニサーキットレベルであれば想定内となる。

 さて、こうしてライトチューニングが施されたニスモZはどんな走りを展開してくれるのか?

VDCの完全オフができれば、もっと楽しくなる可能性を秘めている

 試乗コースとなるモビリティリゾートもてぎの南コース。まずはDレンジ、走行モードはノーマルで走り始める。室内のスピーカーを使って音の演出を行なう「アクティブ・サウンド・コントロール」は、ノーマルモードで走る時には作動しないが、その時点でもやや爽快に高音が感じられるエキゾーストノートは、やはりマフラー交換をしたおかげだろう。室内にこもり音もなく、これならずっと付き合ったとしても疲れることはない。もちろん、スポーツモードを選択してそこに演出を加えれば、爽快感はさらに高まる。

 ATのセレクターをマニュアルモードにスイッチし、パドルシフトでギアのアップダウンを楽しめば、もうMTが必要ないかとさえ思えるくらい、アクセルに対してリニアにエンジンが反応しながら加速してくれる。

 今回はスタンディングスタートから4速まで全開加速を行なってみたが、その際のテンポよく吹け上がる感覚もなかなか。わりと低回転からリニアに反応を示すため、回転がドロップするようなタイトターンでもコントロール性が高く、その気になればどこでもスライドコントロールが可能だ。

 正直にいえば慣れるまでは「機敏すぎるか?」と思えたが、それは己の右足がドタバタしていて、それが挙動になって現れているだけの話のようだ。冷静になって丁寧に乗ればZは見事なまでに応えてくれる。

 それはブレーキのコントロール性についても同様。基本的に踏力に忠実に減速Gがついてくる感覚があり、踏む方向も抜く方向もペダルについてきてくれる感覚が高いことが印象的。連続周回しても熱ダレすることもなかった。そこに軽量・高剛性のホイールが加わることで、少ない操舵角から無駄なくキチンと反応を示してくれる。たしか1.6tオーバーの車体のはずなのに、人馬一体感がしっかりと備わっているのだ。

 ただし、連続したS字でドリフト走行をつなげようとした際、アクセルコントロールのみで振り返しを行なうことは可能だが、S字の中でブレーキを使って振り返そうと思い「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」をオフにしても、どうしても作動してしまい安定方向に一気に戻されてしまうところが気になった。

 どうやらコレ、よくよく聞いてみるとVDCは完全オフとはならない仕様らしい。そこが新型Zのウイークポイントのようにも感じる。もちろん、これはベースモデルが課題とするところなのだが、ダンスパートナーだと謳うのであれば、例えばGT-RのようなVDC完全カットを可能にするアイテムが欲しい。そこをニスモがサポートするような体制ができたら最高だろう。

NISMOパーツの解説を行なってくれた日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社(NMC) ニスモ事業所 モータースポーツ・マーケティング&セールス部 企画・営業グループ 主管 碓氷公樹氏

 基本的にはサーキットを周回するようなクルマではないと思っていたZ。だが、ニスモのアイテムを搭載したこのクルマに乗ると、ちょっとその気になってしまう。だからこそ、もっと求めたくなるわけだ。それくらい今回のニスモチューンは新型フェアレディZの可能性を感じさせてくれた1台だった。

【ワークスチューニング2022合同試乗会】NISMO フェアレディZ(1分37秒)

新型エクストレイルのパーツも続々ラインアップ

 新型エクストレイルは、フロントリップスポイラー、ピラーガーニッシュ、バックドア&ウイングサイドガーニッシュ、アンテナガーニッシュ、ドアハンドルプロテクターと、小技を効かせたエアロパーツやアルミホイールで見た目をグッとスポーティに仕上げた1台。機能部品はNISMOロゴの入ったステンレス製のスポーツマフラーのみとなる。

 ただし、e-POWER車両初のNISMOマフラーで、メインパイプは50.8Φで、テールは65Φ×87.5の楕円形状を採用。フロントチューブから交換することによって、音質の変化をしっかり体感できるサウンドを奏でつつ、リアビューもスポーティに仕上げられる。ニスモの測定値ではノーマルよりも約1kg軽いという。

 アルミロードホイール「LMX6S」は、新型エクストレイル用に新サイズを設定。リム部にNISMOロゴがあしらわれ、機能的でスポーティなデザインの中に力強さと美しさを両立している。

ニスモパーツを装着した新型エクストレイル
フロントリップスポイラーは4万8000円(税別)
ピラーガーニッシュは3万5000円(税別)
ドアハンドルプロテクターは2800円(税別)
バックドア&ウイングサイドガーニッシュは2万8000円(税別)
アンテナガーニッシュは1万2000円(税別)
ステンレス製スポーツマフラーは14万8000円(税別)
アルミロードホイール「LMX6S」価格は1本5万円(税別)
マルチファンクションブルーミラーは2万4000円(税別)
ニスモマフラーのサウンドは軽快で心地よいレベルだった
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一
Photo:中野英幸