試乗レポート

【氷上イッキ乗り】日産「サクラ」「GT-R」「フェアレディZ」、ハンドリングコースで最も早かったモデルは?

日産のBEV「サクラ」

無駄なく加速していくサクラ

 氷上試乗として最新の4輪制御技術「e-4ORCE」搭載モデル、e-POWER搭載モデルと分けて紹介したが、試乗会場となった女神湖では日産の誇るFRスポーツカー「フェアレディZ」と4WDスポーツカーの雄「GT-R」、それにFFのBEV(バッテリ電気自動車)「サクラ」にも試乗した。

 ツイスティなハンドリングコースで最も早かったのは、実はサクラではないかと思う。BEVのサクラはもちろんFF。タイヤサイズも165/55R15と細い。ブリヂストン「VRX2」を履き、スルスルと走り出すとすぐにトラクションコントロールが効いてホイールスピンを自然にコントロールするが、ドライバーにはそのショックをあまり感じさせない。瞬時に制御できる電気モーターの強味だ。無駄なく加速していくところはなかなか素晴らしい。

 コーナーではタイヤサイズが少し小さい感じで横方向の踏ん張りは効かないが、慎重にグリップさせながら走らせると意外と素直に曲がってくれる。スタビリティコントロールはタイヤのグリップ力以上のことはできないものの、姿勢制御は緻密に行なわれ想像以上に旋回力を発揮する。基本的に車両重量が1070kgとBEVの中では軽いことから止まりやすく、曲がりやすい。滑りやすい氷上では軽いことはタイヤの氷上性能同様に大きな武器になる。

サクラ G(304万400円)のボディサイズは3395×1475×1655mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2495mm。バッテリ総電力量は20kWhで、フロントモーター(MM48型)は最高出力47kW/2302-10455rpm、最大トルク195Nm/0-2302rpmを発生する

 よく磨かれた路面でハンドルを切り返すS字コーナーでも反応しやすく、軽快に氷の上を走り抜けたのが印象的だ。電気モーターの反応の速さがここでも生きている。

ドライバーに優しいスーパースポーツカー

専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リアスポイラー、専用エンジンカバーなどが特別装備される「GT-R Premium edition T-spec」(1590万4900円)。ボディサイズは4710×1895×1370mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2780mm。V型6気筒DOHC 3.8リッターツインターボ「VR38DETT」型エンジンは最高出力419kW(570PS)/6800rpm、最大トルク637Nm(65.0kgfm)/3300-5800rpmを発生する

 GT-Rの試乗車は「Premium edition T-spec」だ。GT-Rはランフラットタイヤを前提としておりスタッドレスタイヤの選択は限られており、ダンロップの「DSX CTT」を履く。フロントは255/40ZRF20、リアは285/35ZRF20とサイズも大きい。

 GT-RはFRをベースにして前輪にも適時に駆動力を配分することでスーパースポーツカーでも氷上をドッシリ構えて走ることが可能。発進も丁寧にアクセルを踏めば氷を掴んでジワジワと加速していく。VR38DETTのパワーをこの路面でフルに使う勇気はないが、加速力もしっか発揮する。

 ただ、重量級ということもあり制動はかなり手前からブレーキの準備をしないと間に合わない。慎重に大胆にブレーキを踏み、ハンドルを切り込むとGT-Rはジワリとノーズをまわしてコーナーに入る。しっかりインを向いてからアクセルを踏み始めると旋回姿勢に入る。反応は遅れるがグリップしながら4輪の駆動力配分をするのが分かる。スタッドレスタイヤの中でもウィンタータイヤに近いタイヤのわりには丁寧に扱えばよく向きを変え、曲がる。

 恐る恐るモンスターマシンを走らせたが、終わってみればドライバーに優しいスーパースポーツカーがGT-Rだった。

やはりFRはおもしろい

6速MT仕様の「フェアレディZ Version ST」(646万2500円)。ボディサイズは4380×1845×1315mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2550mm。新開発のV型6気筒DOHC 3.0リッターツインターボ「VR30DDTT」エンジンは最高出力298kW(405PS)/6400rpm、最大トルク475Nm(48.4kgfm)/1600-5600rpmを発生する

 最後に新型フェアレディZにも触れておこう。試乗車はVersion STで、氷上ではMTよりもATのほうが気は楽だ。装着タイヤはブリヂストン「VRX3」でフロント255/40R19、リア275/35R19。まるで樽を履いているような太さだ。

 スタートはさすがに如何ともしがたい。トラクションコントロールは効きっぱなしだが少しも前に進まず、氷のウネリに乗るとすぐにリアを振りたがり修正舵を必要とする。こうなると速度に乗せるのもためらわれる。ブレーキを早めに踏み出してもABSが全開で効き、直進状態を保ちつつ速度が十分に落ちるのを待つ。ターンインもハンドルの手応えを確認しつつ向きが変わるまで我慢する。アクセルに足を乗せるのはグリップする雪混じりの氷路面に入ってからだ。それでも修正舵の用意は常に構えていないとスピンしそうになる。

 VR30DDTTの298kW(405PS)/475Nmも氷の上では使い道はほとんどない。氷の上でハイパワースポーツカーを速く走らせるの難しい。それでもやはりFRはおもしろい。ブレーキング、ハンドル、そしてアクセルワークというドライビングの基本を忠実にトレースできるのも魅力の1つだ。巻き上げた雪がリアエンドに張り付いた姿はやはりかっこいい。

6速AT仕様のフェアレディZ Version ST
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学