試乗レポート
【氷上イッキ乗り】日産「サクラ」「GT-R」「フェアレディZ」、ハンドリングコースで最も早かったモデルは?
2023年2月21日 11:21
無駄なく加速していくサクラ
氷上試乗として最新の4輪制御技術「e-4ORCE」搭載モデル、e-POWER搭載モデルと分けて紹介したが、試乗会場となった女神湖では日産の誇るFRスポーツカー「フェアレディZ」と4WDスポーツカーの雄「GT-R」、それにFFのBEV(バッテリ電気自動車)「サクラ」にも試乗した。
ツイスティなハンドリングコースで最も早かったのは、実はサクラではないかと思う。BEVのサクラはもちろんFF。タイヤサイズも165/55R15と細い。ブリヂストン「VRX2」を履き、スルスルと走り出すとすぐにトラクションコントロールが効いてホイールスピンを自然にコントロールするが、ドライバーにはそのショックをあまり感じさせない。瞬時に制御できる電気モーターの強味だ。無駄なく加速していくところはなかなか素晴らしい。
コーナーではタイヤサイズが少し小さい感じで横方向の踏ん張りは効かないが、慎重にグリップさせながら走らせると意外と素直に曲がってくれる。スタビリティコントロールはタイヤのグリップ力以上のことはできないものの、姿勢制御は緻密に行なわれ想像以上に旋回力を発揮する。基本的に車両重量が1070kgとBEVの中では軽いことから止まりやすく、曲がりやすい。滑りやすい氷上では軽いことはタイヤの氷上性能同様に大きな武器になる。
よく磨かれた路面でハンドルを切り返すS字コーナーでも反応しやすく、軽快に氷の上を走り抜けたのが印象的だ。電気モーターの反応の速さがここでも生きている。
ドライバーに優しいスーパースポーツカー
GT-Rの試乗車は「Premium edition T-spec」だ。GT-Rはランフラットタイヤを前提としておりスタッドレスタイヤの選択は限られており、ダンロップの「DSX CTT」を履く。フロントは255/40ZRF20、リアは285/35ZRF20とサイズも大きい。
GT-RはFRをベースにして前輪にも適時に駆動力を配分することでスーパースポーツカーでも氷上をドッシリ構えて走ることが可能。発進も丁寧にアクセルを踏めば氷を掴んでジワジワと加速していく。VR38DETTのパワーをこの路面でフルに使う勇気はないが、加速力もしっか発揮する。
ただ、重量級ということもあり制動はかなり手前からブレーキの準備をしないと間に合わない。慎重に大胆にブレーキを踏み、ハンドルを切り込むとGT-Rはジワリとノーズをまわしてコーナーに入る。しっかりインを向いてからアクセルを踏み始めると旋回姿勢に入る。反応は遅れるがグリップしながら4輪の駆動力配分をするのが分かる。スタッドレスタイヤの中でもウィンタータイヤに近いタイヤのわりには丁寧に扱えばよく向きを変え、曲がる。
恐る恐るモンスターマシンを走らせたが、終わってみればドライバーに優しいスーパースポーツカーがGT-Rだった。
やはりFRはおもしろい
最後に新型フェアレディZにも触れておこう。試乗車はVersion STで、氷上ではMTよりもATのほうが気は楽だ。装着タイヤはブリヂストン「VRX3」でフロント255/40R19、リア275/35R19。まるで樽を履いているような太さだ。
スタートはさすがに如何ともしがたい。トラクションコントロールは効きっぱなしだが少しも前に進まず、氷のウネリに乗るとすぐにリアを振りたがり修正舵を必要とする。こうなると速度に乗せるのもためらわれる。ブレーキを早めに踏み出してもABSが全開で効き、直進状態を保ちつつ速度が十分に落ちるのを待つ。ターンインもハンドルの手応えを確認しつつ向きが変わるまで我慢する。アクセルに足を乗せるのはグリップする雪混じりの氷路面に入ってからだ。それでも修正舵の用意は常に構えていないとスピンしそうになる。
VR30DDTTの298kW(405PS)/475Nmも氷の上では使い道はほとんどない。氷の上でハイパワースポーツカーを速く走らせるの難しい。それでもやはりFRはおもしろい。ブレーキング、ハンドル、そしてアクセルワークというドライビングの基本を忠実にトレースできるのも魅力の1つだ。巻き上げた雪がリアエンドに張り付いた姿はやはりかっこいい。