試乗レポート
ルノー「アルカナ R.S.LINE MILD HYBRID」、新導入のマイルドハイブリッド仕様をチェック
2023年2月22日 11:41
2022年12月に発売となったマイルドハイブリッド仕様のアルカナ
F1由来とも言われるドッグクラッチを使った欧州初と言ってもよいストロングハイブリッドが2022年に日本に導入されたルノー「アルカナ」。場面によってEV走行も可能なメカニズムはユニークなもので、ルノーは他車種にも積極的に展開している。
試乗したのはそのマイルドハイブリッド版である「R.S.LINE MILD HYBRID」。5ドアSUVクーペというカテゴリーに属するボディはそのままに、パワートレーンを変更して買いやすい価格としている。
メカニズムはシンプルで、1.33リッターのガソリンターボに12Vのマイルドハイブリッドとリチウムイオン電池を搭載して、7速のデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。さらにコースティング機能を選択でき、モニターの操作で機能をONにするとアクセルOFFでもエンジンブレーキをかけることなく限りなく空走し、燃費向上に貢献する。
R.S.はルノースポールの略称で、ルノーのスポーツ魂の象徴でもある。そのR.S.ラインはそのテイストを受け継いだモデルで、内装に取り入れられた赤いステッチやスポーティな大径ホイールが特徴だ。
少し高い着座位置に座ると改めてアルカナがSUVであることを認識し、シートにもすんなりと腰が下ろせる。ボディサイズは4570×1820×1580mm(全長×全幅×全高)で日本の道でも使いやすいサイズだ。装着タイヤはクムホ「エクスタ」。サイズは215/55R18と大径になる。ホイールに入る赤いアクセントが粋だ。
走り方次第で燃費は20km/L台に
コースは自動車専用道路と市街地を設定した。スクリーン下にあるトグルスイッチからモード設定を呼び出し、「クルージング」モードをONに。これにより30~140km/hの間でフリーホイール機能が働き駆動力がかからなくなり空走し、かつエンジンも止めるので走らせ方によってはかなりの燃費節約になる。エンジンブレーキを優先したい時はブレーキを踏めば解除される。ルノーらしくなかなか賢いシステムでWLTCモードでは17.0km/hの燃費を誇る。
ストロングハイブリッド「E-TECH HYBRID」は143PSだが、マイルドハイブリッドはターボチャージャー搭載で158PSと出力が大きい。1.33リッターのガソリンターボは元気いっぱいで活発だ。回転の伸びも素直で何よりもトルクが低回転から出ているので乗りやすい。マイルドハイブリッドで使われるモーターは19.2Nmとささやかだが、発進時のサポートをして低回転からトルクを出すエンジンに受け継ぐには十分だ。スタートも滑らかでなかなか完成度が高い。
びっくりしたのはクルージングモードにしてからのコースティングだ。で50km/hほどからのアクセルOFFで速度が落ちる様子もなくブレーキを踏むまで延々と空走し続けた。
この空走は西湘バイパスでも実感した。70km/hからアクセルOFFにするとしばらくは交通の流れについていくことが可能。その間はエンジンもストップするので燃費の改善になるだろう。WLTCの高速道路モードは19.2km/Lと1380kgの背の高いSUVとしてはかなり良い燃費だ。ルノー・ジャポンによれば走り方次第で20km/L台に届くこともあるという。確かにルートの環境次第ではそのぐらい走りそうだ。コースティング機能が働くとメーター内にグリーンランプが点灯して燃費運転を知らせてくれる。
この機能はなかなか賢く、わずかな上り坂にかかるとすぐにコースティングを中止し、エンジン始動する。この間の流れは自然に行なわれドライバーが認識することはない。クルージング中に前車に追従した場合、距離を秒数で知らせてくれるが間隔が1.6秒以内に入ると表示はグリーンからイエローに変わり、車間距離の警告にもなっている。
7速DCTのダイレクト感があってアルカナのスポーティなキャラクターには合っている。低速でアクセルを緩く開けた時に時々選択ギヤにとまどうことがあるが、それも含めてドライバーとしては愛着が持てる。
市街地の乗り心地は路面によってはタイヤの硬さを感じるものの、ルノーらしい腰のある柔らかさを持っているのが好ましい。フランス車らしいたっぷりとしたシートとの相乗効果でトップレベルの快適さだと思う。
リアシートのレッグルームとヘッドクリアランスも適度な広さがあり、ラゲッジルームも奥行きがあり、大人4人分の荷物は余裕で積めそうだ
フットワークは予想以上に軽快。素直なハンドル応答性と小さなロールでコーナーもキビキビとこなす。最低地上高が高いSUVとは感じられない。欧州車らしいハンドルのセンターフィールと効きの正確さにも好感が持てる。市街地での直前視界の広さ、自動車専用道路での安定性ともにリラックスしてドライビングができる。
価格は399万円からのスタートになるが、グレードは1つで買い得感のある設定になっている。好調な日本市場でも期待できるモデルになりそうだ。