インプレッション
ルノー「ルーテシア GT」
Text by 真鍋裕行(2014/7/30 00:00)
2012年に4代目モデルがフランス本国でデビューし、日本市場では2013年9月から販売が開始されたルノーの「ルーテシア(海外名:クリオ)」。「恋に落ちる」というデザインテーマによりエクステリアが大幅に刷新され、そのキリッとした顔立ちのなかにも愛らしさを併せ持ったデザインは、多くの支持を集めている。
新型のボディーサイズは4095×1750×1445mm(全長×全幅×全高)で、先代モデルよりも全長、全幅は広がり、全高は低くなったため見た目には大きくなり、そして車高が下がったことでスタイリッシュさが増している。
そんなルーテシアに魅力的なグレードが追加された。「ルーテシア GT」と名付けられた新グレードは、ルノーのモータースポーツとスポーツモデルの開発を担うルノー・スポールがシャシーのセッティングを手がけているのがトピック。
試乗会場となった箱根のターンパイク・ビューラウンジに置かれたルーテシア GTは、全車が専用色の「ブルー マルトM」をまとっていた。すでに販売されているゼンやインテンスといったグレードに用意されている「ブルー ドゥ フランス」は、どちらかといえば水色に近いブルーだが、このルーテシア GT専用色は濃いブルーで、深海を想起させるような色の深さにメタリックが入っている。
フロントバンパーも専用のデザインとなり、サイドグリル部分にはLEDのデイライトも装備される。リアまわりに目を移すと、ルーテシア ルノー・スポールと同様の大型スポイラーと専用のリアディフューザー、クロームメッキ仕上げのデュアルエキゾーストパイプが装備されている。ホイールも専用のデザインとなる17インチ。タイヤは205/45 R17のミシュラン パイロットプライマシー3を履いている。
続いて運転席のドアを開けると、こちらにもルーテシア GT専用のパーツが見受けられた。まずは、RENAULT SPORTのロゴが入ったキッキングプレート。そしてシートは、上半身をしっかりサポートするホールド性の高いスポーツシートを装備。ステアリングにはパドルシフトが付き、グレーメタリックのエアコン吹き出し口なども専用品となる。内外装ともに、ルーテシア GTというスポーティさが特徴のグレードを十分に感じさせる仕上がりだ。
ルノー・スポールがセッティングした足まわりは、ルーテシアのほかのグレードと比べてフロントのスプリングレートが40%、ダンパーの減衰力が30%アップされていて、バンプラバーも専用品に交換している。リアのトレーリングアームを含めたアスクルは、剛性を高めるためにクリオ・エステートのものを流用。これらの変更により、ベースモデルに対してロールスピードを22%抑制しているという。
切り返しの多い低中速域でファンな部分が前面に出る
では、実際にルーテシア GTはどんなハンドリングになっているのか、ターンパイクを走らせてみる。スプリングレート、ダンパー減衰力ともに引き上げている足まわりだが、乗ってみると硬さを感じるシチュエーションはなかった。そして、リアの剛性が高められているので、接地性も抜群で挙動が掴みやすい。試乗当日は朝から雨模様で、時間帯によっては横殴りの雨も降っていたが、ステアリングから伝わる接地性や挙動ともに不安感はない。全体的に過度な演出ではないので、レスポンスのよいハンドリングやスポーティな乗り味を体感するには最適なバランスだ。
速度が高いワインディングよりも、切り返しの多い低中速の道を走るとルーテシア GTのファンな部分が前面に出てくる。ロール量はほどほどに抑えられているうえに、ステアリングを切ったらその分だけ反応してくれるので、かなり楽しくワインディングを走れる。
さらに、運転を楽しむアイテムとして用意しているのが「RSドライブ」のスイッチ。ベースモデルでは「エコスイッチ」なのだが、ルーテシア GTではそれがRSドライブに変更されている。スイッチを押すとメーターパネルの下側が「RENAULT SPORT」と点灯。すると、いわゆるスポーツモードになり、シフトタイミングが短縮され、パワーステアリングのアシスト量も変更。ダイレクト感をより強くする演出となる。
「RENAULT SPORT」のアンビエントライトは、通常時がグリーンで、エンジン回転数がリミッターの作動する6500rpm手前になるとオレンジになり、リミッターを迎えるとレッドに変化する。
しっかりと手応えのあるステアリングフィールなので、ワインディングなどを走るときはRSドライブをスポーツモードにするのがよいだろう。
ルノー・スポールが手がけた足まわりやRSドライブの機能など、スポーツ性能を存分に引き上げているルーテシア GT。だが、エンジンはベースモデルと同様の直列4気筒DOHC 1.2リッター直噴ターボで、最高出力は120PS/4900rpm、最大トルクは19.4kgm/2000rpmというスペック。そして、前後のブレーキもストックのままなので、1.6リッターエンジンで200PSを発生するルーテシア ルノー・スポールと比較してしまうのは酷なのかもしれない。ルーテシア GTは、あくまでも基本ラインアップのなかのスポーツモデルという立ち位置になる。
これだけの専用装備やルノー・スポールによるセッティングを施されているルーテシア GTだが、価格はこれまでの最上級グレードであるインテンスから14万円ほど引き上げた259万円と、戦略的なプライスタグが付けられている。ルーテシア ルノー・スポールだとハードすぎるというオーナーもいるはずなので、その隙間を埋めるスポーツグレードしては最適なモデルと言える。