インプレッション

ルノー「ルーテシア」

カラーコーディネートが楽しい

 海外で先に披露された新型「ルーテシア(海外名:クリオ)」の写真を初めて見たときは、素直に驚いた。たしか少し前のルノーのコンセプトカーにあったデザインだと思ったら、「デジール」だ。前衛的なスポーツカーであるデジールのデザインが、これまでいささか“コンサバ”で通してきたルーテシアのニューモデルに持ち込まれたことを意外に感じた。そして日本導入が発表され、9月の発売に先立ち箱根で実施された試乗会で、いざ実車と対面。

 既報(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20130726_609147.html)のとおり、恋に落ちることをテーマにしたというスタイリングは、実車で見るとより一層大きなインパクトがあった。そして目にした時点で、「これは相当に力が入ってそうだ」という雰囲気がヒシヒシと伝わってきたのだが、実車の完成度もそのとおりだった。先代と比べてサイズアップしたことは一目瞭然で、Bセグメントにおける最大級のサイズとなった。トレッドも拡大しているが、全高は40mmもダウンしたことで、ワイド&ローフォルムが際立っている。

新型ルーテシアのグレードは「インテンス」「ゼン」「アクティフ」の3つ。いずれもボディーサイズは4095×1750×1445mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2600mmで、先代から40mm低く、70mm長く、30mm広くなった。撮影車両はインテンスで、ボディーカラーは赤(ルージュ フラム)

 価格はベースグレードの「アクティフ」が200万円を切るところからスタートし、発売時点で最上級の「インテンス」グレードでも238万円と頑張った設定。同じフランスのプジョー「208」が出たときも努力したなと思ったが、ルーテシアは一足先に発売された208の動向を見て決めたと思われ、全体的に微妙に安くなっている。

 7色が用意されたボディーカラーは、それぞれ色味の雰囲気もなかなかよい。さらに、エクステリアとインテリアのユニークなカラーコーディネートを楽しめるのも新型ルーテシアならでは。黒と赤を大胆に組み合わせたインテリアが新鮮で、ダッシュボードの大部分を赤く彩った仕様もある。「インテンス」については黒と赤がともに標準設定されているほか、今回の試乗会では用意がなかったのだが、茶系の渋いコーディネートも用意されており、すでに海外で評判を呼んでいるらしい。こちらも実物を早くみてみたい。

 インパネはセンターパネルが独立した感じに設定されていて、ここにカーナビがビルトインできるものと思ったら、そうではないようだ。裏側に臓物があるためこのままでは入らないらしく、ビルトインできるよう、もう少しパネルを手前に移設するなど手を打つことを検討中らしい。PND(Portable Navigation Device)やリトラクタブルタイプはすでに用意されているが、やはりビルトインを待ちたいところだ。

 トランクは300Lの容量が確保されており、広さは十分だろう。フロアが掃き出しまでフラットではなく堀り下げた形状となっており、好みは分かれるかもしれないが使い勝手はよさそうだ。

インテリアカラーはブラックの「パック クルール ノワール」だが、ステアリングホイール、エアコン送風口フィニッシャー、フロントドアトリムフィニッシャーをセットにした「パック デザイン コレクション」を装備。同コレクションは9月23日までに新型ルーテシアを成約するとプレゼントされる
こちらはレッドを基調とする「パック クルール ルージュ」。注文生産となる
後席は分割可倒式でトランクは300Lの容量が確保されている

大改良されたBプラットフォーム

 シャシーは先代のBプラットフォームの基本的な部分を受け継ぎながら、ホイールベースやトレッドの拡大に合わせて大幅な改良を施したうえ、大きな進化点として現行「メガーヌ」にも採用した、フロントのサブフレームとサイドメンバーをダンパーで連結させる手法を採ったことが挙げられる。これがドライブフィールに与える影響は小さくないはずだ。

 まずステアリングフィールがよい。先代は妙に軽くて粘っこい感じのする、電動パワステの悪癖が目立つものだったのに対し、新型は油圧式のようにすっきりとしたフィーリングとなった。ステアリングギアレシオが従来の16.7:1から15.4:1へとクイックにされたこともあって俊敏性も高い。ダイレクト感があり、応答遅れもなく、自然なフィーリングで操舵できる。

 このあたり、電動パワーステアリング自体の改良に加え、先に述べたフレームの改良も少なからず効いていることと思われる。また、これまでなかったテレスコピック機能がステアリングに付いたことも大歓迎だ。

 足まわりも妙味で、市街地走行の速度域では路面の荒れたところでも衝撃が室内まで伝わりにくいことを感じた。高速巡航では逆に、適度に引き締まった感じが心地よい。

 乗り心地については、先代のルーテシアも好印象で、フランス車らしいしなやかな乗り心地には、いくつかの日産車とプラットフォームが共通でも、味をここまで変えることができるのかと思ったものだが、新型ではしなやかさにスポーティさが加わった。適度なロールをともなうコーナリングでは、外輪の沈み込みと内輪のわずかに浮き上がるバランスがよく、ストローク感のある足まわりがよく伸びて内輪の接地性を損なうこともない。

 車高を落としたことで重心も低くなったようだが、おかげでより無理のないサスペンションセッティングができているようだ。リアの安定感も高く、ハンドリングは俊敏ながら、クルマの動きは落ち着いている。普通に流しても、ちょっとペースを上げても心地よく走れる味付け。全体的に車格感が上がっていて、見た目だけでなく運転してもこれまでのルーテシアより格上のクルマに乗っているような印象を受けた。

 シートはサイズが大きくなったとのことで、見た目以上に包まれ感を感じる。斜め後方の視界はあまりよろしくないものの、それと引き換えにこのスタイリングを実現したのだし、どうにもならないほどではないのでよしとしたい。右ハンドル仕様のポジションは、ブレーキペダルとアクセルペダルの段差が大きく、多少ペダルが内側に寄っているように感じたが、同じクラスの欧州車の中ではもっとも違和感が小さいほうだと思う。

 後席にも乗ってみたところ、サイドウインドーの天地方向の長さが後方に行くにつれて短くなっているものの、外見から想像したほどの閉塞感はない。頭まわりのクリアランスもあるし、前席下への足入れ性はまずまず。ただし座面は小さく、センターアームレストもなく、前席のシートが大きくなったことで後席の乗員にとってはやや遮られる感じになっている。全体としてクルマ自体のコンセプトが、より前席重視となったように感じられる。

直4 1.2リッター直噴ターボにDCT「EDC」の組み合わせ

先代ルーテシアが直列4気筒DOHC 1.6リッターエンジンだったのに対し、新型ルーテシアでは最高出力88kW(120PS)/4900rpm、最大トルク190Nm(19.4kgm)/2000rpmを発生する最新世代の直列4気筒DOHC 1.2リッター直噴ターボエンジンにダウンサイジング

 エンジンは最新世代の直列4気筒DOHC 1.2リッター直噴ターボ。トランスミッションには「EDC」と呼ばれるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせ、こちらはゲトラグ製で乾式単板のシンプルなタイプだ。ルノー初のDCTかと思ったが、実は本国ではメガーヌにも採用しているらしい。ただし、そちらは旧世代のエンジンとの組み合わせとなるので、日本にメガーヌのDCT搭載車を導入するのはエンジンが次世代に移行してからになるようだ。

 EDCは細かい動きで若干の唐突感が出るなど、DCT特有のクセは見受けられるものの、それを理解して乗る分には出来はよいほうだと思う。マニュアルモードは押してマイナス、引いてプラスという、スポーティなパターン。ヒルホールド機能が付くので坂道発進も容易だ。

 動力性能に関しては、1.2リッターという排気量のわりにはかなりよく走る印象で、この排気量だと他社では3気筒のケースもあるが、やはり4気筒のほうが音や振動の特性に優れている。実用域での静粛性は十分だ。シフトチェンジを伴わない緩加速では、軽く踏んだだけでレスポンスするのだが、急加速ではシフトダウンに時間を要するせいか、踏み込んでから加速に移るまでややタイムラグある。タコメーターは6000rpm~7000rpmまでがイエローゾーンで、実際には6300rpmぐらいまで回る。なお、6速で100km/h走行時のエンジン回転数は2500rpmぐらいとなる。

 燃費は公表されておらず、我々も計測していないが、エコスイッチを押すとトルクの低減とマップの変更がなされ、シフトアップを促す表示が早い段階で出るようになるとのことで、実際に運転した感覚でも標準モードよりかなりマイルドになった。これを押すと計算上は12%燃費が向上するそうだ。また、余談ながらこのクラスとしては珍しくボンネットにダンパーが付いていることに驚いた。

 そんな新型ルーテシアに、歴代モデルにはなかったインパクトが感じられた。日本では「5(サンク)」の後継である初代から累計で1万2000台が販売されたというが、世界では実に1000倍の1200万台を22年間で販売してきたというから、立派なベストセラーの1台だ。しかも、初代と3代目は欧州COTYを受賞した実績もある。

 そんな欧州では非常にメジャーなルノーながら、日本での2012年の販売台数は純輸入車ブランドで14位となる3108台で、そのうち「カングー」とRS系モデルで85%に達するという、やや歪な状態となっている。そこでルノージャポンでは、この4代目ルーテシアを重要なモデルと位置づけ、カングーと並ぶ柱の1つに育てたいと考えているという。筆者もこのクルマなら立派に柱の1つになれそうな気がした。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛