試乗記
ヒョンデのコンパクトEV「インスター」で東京→大阪ロングドライブ ちょい足し充電で走れば意外なほどに快適だった
2025年6月3日 08:00
- 2025年4月10日 発売
- Casual:284万9000円
- Voyage:335万5000円
- Lounge:357万5000円
ヒョンデのインスターに乗って大阪までロングドライブをすることになった。扱いやすい5ナンバーサイズで、ボディサイズは3830×1610×1615mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mm。日本の道路事情に合ったところがインスターのよさ。
シティコミューターとしてピッタリでしょっていうのがアピールポイントだったはず。けれど、なぜにロングドライブなのか? それはインスターが長距離運転も楽勝にこなせる一充電走行距離458km(WLTC)を誇るから(49kWhバッテリ搭載モデル)。150kWの急速充電器なら10%→80%まで30分で充電できるということも自慢の1つらしい。
横浜で手渡されたインスターの最上級グレードLoungeは、もちろん49kWhバッテリを搭載している上位グレード。だがしかし、バッテリ残量を見ればいきなり半分を割っており、なかなか挑発的な試乗会である(汗)。ならば仕方なしと大阪方面には目もくれず、いきなり首都高速の大黒パーキングエリアで充電とお昼ご飯休憩。果たして本日の目的地となる滋賀草津には何時に到着することやら……。
クルマもドライバーも腹を満たし13時半ごろにいよいよ本格的に出発! まずは東名高速道路までゆっくりスタートした。インスターは日本市場に向けてセッティングを改めてやり直し、日本の使い方にマッチしたものにしようと努力を重ねたらしいが、たしかにアクセルは敏感になることなく扱いやすく仕上がっている。
足まわりにはしなやかさがあり、首都高速の継ぎ目が続くような路面であってもうまく吸収し続けていることが感じられる。パワーステアリングも本国仕様よりは軽めにしたとのことで、肩肘張らずにパーキングスピードから高速道路まで扱えるところが嬉しい。
狩場ジャンクションを抜けて保土ヶ谷バイパスを北上、ようやく東名高速に入れた。エコドライブを意識して記録した平均電費は9.6km/kWh。計算すれば一充電走行距離458kmを上まわり、470kmを記録することが可能だ。
ただ、バッテリ残量を気にしながらチンタラと走って問題なく使えたところで現実離れしている。いつも通りに走ってどうか? それをやってみるべきではと考え、再び海老名パーキングエリアで充電を開始。コチラはお腹一杯だというのにデザートを仕方なく、あくまで仕方なく頂戴する。
23分間の休憩&充電でバッテリ残量は94%まで復活。走行可能距離も393kmと出ているから、おおむねあとは無充電で行けるか? ちなみにナビを本日の宿に設定しているとそこまでの距離は奇しくも393kmと出た。エコランすれば無充電は夢じゃない。
だが、スポーツモードにブチ込み、本線への合流で全開加速をさせてみた。するとなかなか爽快な加速を展開。バカッ速な感じではないのも事実だが、現実的に使うには十分すぎる感覚を生み出していた。その後は新東名高速の120km/h制限区間もきちんと制限一杯まで使いながら巡行した。
途中からは電費も気にせずACC(オートクルーズ機能)を使い、ステアリングアシストも起動して走ってみる。すると車線のセンターをビシッとなぞりながら、快適に順行してくれるから有難い。ステアリングには手を添えているだけで十分なのも嬉しい。
試乗当日はちょっと暑かったので、シートのベンチレーション(クーリングファン)を起動させ、エアコンを効かせて走れば何の苦痛もない。気分転換にサンルーフを開け、眠気を吹っ飛ばすことだって可能だ。つまりは、コンパクトカーななりをしているが、ちっとも我慢することがない乗り味なのだ。
足りないのはカップルディスタンスくらいか? 男性編集者との移動だったので、横並びは何だからと後席にも移動してみたが、乗り心地もよく、リクライニングも可能なことからウトウトと眠りについてしまうことも。求めるならアームレストやドリンクホルダーが欲しかったかなという気もするが、トレイであればオプションの準備もあるようだし、これからに期待したいところだ。
さて、そんな感じで走れば当然電気は足りなくなり、結果としてゴールまでもう一度充電が必要なことが見えてきた。だが、腹は満たしすぎでこれ以上の食事は無理ってことで、お手洗い休憩の10分ほどの時間で2回充電してみた。1回は61%→84%へ。もう1回は10%→31%へという具合である。
30分をフルに充電するのではなく、クルマを止めている時間にちょっと足しな感じで充電するだけで、ストレスなくゴールとなる滋賀大津には20時に辿り着けた。結果、平均電費は7.4km/kWh、バッテリ残量は10%までダウンしていたが、やりたい放題の使い方でこれは立派ではないだろうか?
そして何より、どこの充電器でもエラーが出ることなくしっかりと充電できたところはさすがだ。輸入車の場合、いくらCHAdeMOに対応していてもエラーで充電できないなんていうクルマはいくつか経験したことがある。
導入直後の車両ではありがちなことだが、インスターにはそれがなかった。最後に行った宿泊先の普通充電を一晩つないでおいたが、翌朝はしっかりと100%でスタートすることが可能になっており、最終目的地となる大阪までまたやりたい放題の走りができた。
これは日本の道に合わせるためにセッティングをやり直すなど、きちんとテストを繰り返してから登場させたという経緯があるからこそなのだろう。どこかのCMじゃないけれど、これもアリかもと思えたのはいうまでもない。
【お詫びと訂正】記事初出時、電費の単位に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。