試乗記
フォルクスワーゲン「ゴルフTDI」で新潟へ 最新クリーンディーゼルの燃費チェック!
2025年6月6日 08:00
「プレス対抗 燃費バトル」にゴルフTDIで挑む
フォルクスワーゲンがクリーンディーゼルの魅力を伝えるために、「TDIフルラインナップ ロングディスタンス プレス試乗会」を開催した。その目玉となるのは「プレス対抗 燃費バトル」だ。東京 品川にあるフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)から、関越自動車道・赤城高原SA(サービスエリア)までの道のりで燃費競争する内容だ。そして後半は「メディア対抗フォトコンテスト」用の撮影を行ないながら、ゴールとなる新潟県長岡市を目指した。
ということでさっそくCar Watchチームの車両だが、もっともベーシックな「ゴルフTDI Active Advance」が与えられた時点で筆者は「勝った!」と思った。今回の参加車両は、日本導入モデルのTDIフルラインアップ。ポロは日本仕様だと1.0TSIのみだから、ティグアンやパサートといったクルマたちの中で見ると、ゴルフは2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボの搭載モデルとしてはもっとも軽量コンパクト。しかもActive Advanceのタイヤサイズは一番細い225/45R17だったのである。
ただこれにはライバルたちからもブーイングの声が飛び交った。うーん実に、みんな大人げない(笑)。しかしVGJも当然こうした車両の差については理解しており、出発前のブリーフングでは今回の燃費競争が「カタログ値に対する伸び率」で争われるとアナウンスした。なるほど、これはおもしろそうだ。
ちなみにゴルフ TDI Active AdvanceのWLTC総合燃費は20.8km/Lと、もとからかなりいい数値だ。だからそもそも論でいえば、「そこに伸びしろなんて果たしてあるのだろうか?」とちょっと疑問だった。
またブリーフィングでは「タイヤの内圧は規定値から変えないこと」や、「エアコンはオンで」というルールが紳士協定として共有された。もちろんそれは、皆さんが普段クルマを使っているときの使用状況になるべく近づけるためだ。そして純粋な走り方だけで、フォルクスワーゲンのTDIがどれだけ燃費よく走れるのかを、より多くの人たちに知ってもらうためである。
もしかしたらリッター30km超え!?
ということで地下駐車場へと降りて、出発の準備だ。少しでも燃料を節約するために、エンジンをかけたら即出発。そろり、そろりと走らせながらメーターを確認すると、スタート後の燃費は走り出したばかりということもあって4.3km/Lを指していたが、走行可能距離は900kmと表示されていた。
さて燃費良くクルマを走らせる上で一番大切なのは、当然ながらなるべくエンジンを回さないことだ。つまりいかにうまくスピードを乗せて交通の流れに乗り、高いギヤを使って惰性で走らせるかがカギとなる。
最初の関門は、どこから首都高に乗るかだった。普通に行くなら品川からは首都高速中央環状(C2)を使ったルートが一般的。しかしC2は渋滞にはまると抜け道が少ないことや、すでに渋滞の始まりそうな気配があったため、Car Watchチームは芝公園から5号池袋線へと向かった。
序盤の山場は東京外環自動車道 美女木JCT(ジャンクション)の渋滞で、これを目の前に急遽ルートを変更。首都高 埼玉大宮線でそのまま北浦和まで走り、下道から関越道 所沢IC(インターチェンジ)を目指した。これはなかなか機転の効いた判断だと思ったが、後から聞くと上には上がいて、そのまま東北道まわりでアベレージスピードを保ったというチームもいた。今回の勝負は燃料の使用量ではなく、あくまで燃費で決まるから、遠回りしても構わないというわけだ。とはいえゴールのタイムリミットは14時(出発は10時)だったから、のんびり走ってもいられない。
ということで所沢ICまでの下道で若干ロスしたCar Watchチームだったが、関越道に乗ってからのゴルフTDIの燃費はかなり優秀だった。燃費計の数字はみるみる上がってゆき、割とすんなりWLTC値の20.8km/Lはクリア。そして高速モード燃費である24.8km/Lを越えたとき、「もしかしたらリッター30kmいくんじゃないか!?」と、モーレツに大台を意識し始めた。
もどかしかったのはギヤリングだ。ゴルフTDIは7速DSGを搭載しており、7速目にシフトアップする分岐点が86km/h付近。オーソドックスに燃費走行しているとこのまさに6速85km/h付近の燃費がかなりいい。そして7速に入れると状況によってはトルクが追従せず、アクセル開度が大きくなってしまうケースが出てくるのだ。だからといって慌ててアクセルを閉じると6速へと戻ってしまう。
損して得取れと思い切って初速を付けて巡航したら、また違った領域が見えてきたかもしれない。しかし筆者にはそれを試す勇気がなかった。折しも関越道では渋滞に揉まれたであろうライバルが、追い越し車線を悠然と走り抜けていった。最初は「そんなに踏んで大丈夫か?」と思ったが、彼らはいち早くその領域をつかんだのかもしれない。
ちなみにゴルフに限らずフォルクスワーゲン車は、「エコモード」にするとアクセル開度が可視化できる。タコメーターの真ん中には燃費だけでなく、青いバーが出てくるのだ。バーには現在の燃費を示す▽マークが記されていて、走行中はこれをなるべく下まわらないように走らせると、燃費がどんどん良くなっていく。
そして最大のハイライトがゴール直前に訪れた。現在の燃費計はなんと大台の30km/Lを示していたのだが、赤城高原SAまでの道は、長い上り坂が延々と続いていたのだ。登坂車線を使いながら、なるべくアクセルを一定にして坂道を上っていく。しかし燃費計の▽マークは段々と下がっていく。
果たして約2時間半のエコランを終えた燃費は、29.4km/Lだった。ちなみにVGJは今回JC08モードと対比させていて、それだとカタログ燃費に対して約131.3%という数値。そしてより現実的なWLTCモード総合燃費だと、これが約141%になる。どちらにしてもすごい数値だ。
そんなCar Watchチームはしかし、順位的には8台中の6番手と振るわなかった。今回は上には上がたくさんいた。優勝は28.0km/LをマークしたENGINEチームのパサート TDI 4MOTION R-Lineで、その燃費向上率は180.6%(JC08モード)。相手が4WDだったことを考えると、これはグウの音も出ない結果だった。
モデル名 | T-Roc TDI 4MOTION R-Line Black Style | T-Roc PA TDI 4MOTION R-Line Black Style | パサート B9 TDI 4MOTION R-Line | ゴルフ TDI Active Advance | ゴルフ TDI R-Line | ゴルフ ヴァリアント TDI R-Line | ティグアン TDI 4MOTION Elegance | ティグアン TDI 4MOTION R-Line |
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媒体名 | Motor Magazine | LE VOLANT | ENGINE | Car Watch | CARTOP | webCG | Motor Fan | AUTOCAR JAPAN |
JC08モード燃費 | 19.1 | 19.1 | 15.5 | 22.4 | 22.4 | 21.7 | 16.9 | 16.9 |
燃費表示 | 26.9 | 23.4 | 28 | 29.4 | 30.2 | 26.7 | 24.3 | 25.9 |
燃費結果 | 140.8% | 122.5% | 180.6% | 131.3% | 134.8% | 123.0% | 143.8% | 153.3% |
順位 | 4位 | 8位 | 1位 | 6位 | 5位 | 7位 | 3位 | 2位 |
しかしこのTDIエコラン、かなりおもしろい。燃費の算出方法には曖昧な部分も多かった。そしてこうしたルールを厳格化してしまうのが正解なのかは分からないが、次があればもちろん参加するつもりだ。
そしてここが一番大切なところだが、やはりディーゼルエンジンが高速巡航時の燃費に優れていたユニットであることを、今回はことさら強く実感できた。スピードを乗せるにも、追い越しをかけるにもディーゼルターボのトルクが勢いを付け、そのあとスムーズにクルージング体制に入れる。
ちなみに今回高速巡航でエンジン回転数が2000rpmを超えたことはなかった。そのほとんどを1500rpm付近でまかなえた。それはもちろんエコランをしていたからで、ストレスなく走らせればその限りではない。
しかしエコランを終えたあと、撮影をしながらでもその燃費は、エコラン癖が抜けなかったこともあるが25km/Lをマークした。高速道路を降りて、街中をグルグルと走り回っての数字だから、本当に大したものである。
普段からちょっとだけアクセルの踏み方を気にかけるだけでも、燃費はかなり変わる。ストレスが溜まるほどガマンするのは良くないけれど、フォルクスワーゲンの2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボユニットには、こうした運転に応える低速域の粘り強さがある。そして7速DSGもギクシャクせず追従してくれる。
乗り心地が抜群によいのも、ハードなエコランをこなせた理由の1つだ。おすすめはやっぱりこの17インチで、ガソリンエンジンを積む1.5eTSI Activeと比べて110kg重たい車重と、45扁平のエアボリュームが、しっとりとした乗り味を実現していた。
その価格はCセグメントのハッチバックとしては450.8万円とちょっと高価だ。ベーシックグレードとして考えると正直躊躇してしまうプライスだが、その骨太で真面目な作り込みには大いに惹かれる。8.5世代になって上質さをも取り戻したゴルフTDIは、自信をもっておすすめできる1台だ。
T-Roc TDIの熟成具合はばっちり
辛く楽しいエコランを終えた翌日は「T-Roc TDI 4MOTION」で帰路についた。グレードは1月に発売されたばかりの「R-Line Black Style」だ。T-Rocは2020年に登場してから翌2021年、そして2023年と2度に渡って輸入車SUVの年間登録台数でナンバーワンを獲得した実力派だが、これまでTDIと4MOTIONの組み合わせがなかった。それがようやく、このR-Line ブラックスタイルを始め通常の「R-Line」、そして「スタイル」にも設定して発売されたというわけだ。
エコランせずに走らせたT-RocのTDIは、第7世代のプラットフォームを全く意識させないほどドライバビリティがよかった。エンジンはゴルフと同じ、2.0リッターの直列4気筒TDI(150PS/360Nm)。SCR触媒コンバーターを直列に2つ配置して、アドブルーを2段階で噴射してNox除去効率を高める「ツインドージング」システムも同じく搭載されている。組み合わされるトランスミッションも7速DSGだ。
肝心な4MOTIONの真価は、今回の試乗路では体感できなかった。FWDをベースとした4WD制御はフロントで100~50%、リアには0~50%のトルクを適宜配分して安定性を保つ仕組みだが、普通に走らせる限りはそのスプリットを特別意識させられることはない。
むしろ常用域では4MOTION化によって前後重配分のバランスが適正化され、より重心が低くなったことが安定感に貢献していると思う。この重さが215/50R18サイズのタイヤに適度な荷重を与え、シッカリ感と乗り心地の良さを巧みに両立させている。だからMQBプラットフォームがエボ化していなくても、そこにハンディは感じなかった。
プログレッシブステアリングを備えないハンドリングは穏やかで、これもトルキーなTDIのキャラクターには合っている。次期型の動向も気になるが、熟成具合はばっちり。「ゴルフはいいけどやっぱりSUVに乗りたい。しかもディーゼルで」という欲張りなオーナーには、相変わらずおすすめできる1台だ。