試乗記

フォルクスワーゲン新型「ゴルフ」、1.5リッターターボ統一のパワートレーンなどその出来栄えは?

新型「ゴルフ「ゴルフ ヴァリアント」に試乗

ガソリン車のパワートレーンは直列4気筒1.5リッターターボに統一

 一時の勢いは薄れたとはいえCセグメントの鉄板と言えば「ゴルフ」だ。現在のゴルフは2022年に登場した第8世代となるが、初のマイナーチェンジを受けて8.5世代となった。

 ゴルフは世代ごとにセグメントリーダーらしく安全性のアップデートなどを図ってきたが、第8世代のゴルフは先進安全技術を積極的に採用し、48Vマイルドハイブリッドを取り入れて時代の先頭を走る。

 通称ゴルフ8.5はエクステリアでは新デザインのフロントバンパーと直線基調となったLEDヘッドライト、リアバンパーとコンビライトがスッキリとしたデザインになっている。

今回試乗したのは2024年9月に受注を開始した新型「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」。撮影車両は「ゴルフ ヴァリアント eTSI Active」(393万9000円)で、ボディサイズは4640×1790×1485mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
標準グレードの一角を担う「eTSI Active」だが、LEDヘッドライトやアダプティブクルーズコントロール、緊急時停車支援システム“Emergency Assist”、レーンキープアシストシステム“Lane Assist”、同一車線内全車速運転支援システム“Travel Assist”、レーンチェンジアシストシステム“Side Assist Plus”などを標準装備
足下は16インチアルミホイールにネクセン「N'blue S」(205/55R16)をセット
「eTSI Active」が搭載する直列4気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンは最高出力85kW(116PS)/5000-6000rpm、最大トルク220Nm(22.4kgfm)/1500-3000rpmを発生。WLTCモード燃費は18.8km/L
こちらはハッチバックの「ゴルフ eTSI Active」(379万9000円)。ボディサイズは4295×1790×1475mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2620mm。なお新型ゴルフのエクステリアではイルミネーション付きVWエンブレムを日本初採用している
ボディカラーについて、ハッチバックのR-LineとGTI、Rはブラックルーフ仕様となり、ヴァリアントは全グレードとも単色の設定

 インテリアも大きな変化がある。インフォテイメントがMIB4となり、12.9インチの大型タッチスクリーンがダッシュセンターに構える。これに合わせるようにドライバー正面のメーターは12.25インチのデジタルメーターになった。

 また朗報はディスプレイに入っていた各種スイッチの一部がアナログスイッチになったことだ。従来のデジタルスイッチは走行中に目線を移動する必要があり、操作系については難点もあった。それに合わせるようにエアコンの温度調整(タッチスライド式)にバックライトが備わり、暗い中でも操作できるようになった。これまで装備されていかったのか不思議だ。また音声認識が進化して、「Hello,IDA(ハロー・アイダ)」もしくは「Hello,Volkswargen」と発するとエアコンの温度コントロールなど多くのことが操作できる。

ゴルフ ヴァリアント eTSI Activeのインテリア。最新のインフォテイメントシステムのMIB4は、センタークラスターに設置された12.9インチ大型タッチディスプレイを採用。頻繁に操作するエアコン温度設定や音量設定ではディスプレイ下部に配されたバックライト付きタッチスライダーバーで操作性を向上。メニュー構造も大型画面を活かすように改良されている
ゴルフ ヴァリアントのラゲッジスペースは611Lから最大で1642Lまで拡大可能

 パワートレーンには大きな変更があった。直列3気筒1.0リッターのダウンサイジングターボモデルが廃止され、すべて直列4気筒1.5リッターターボに統一された(グレードによって出力が85kWと110kWの2種類ある)。

 48Vマイルドハイブリッドはセルモーターとベルト駆動スターターモータージェネレーター(BSG)で駆動していたが、マイチェンで水冷式BSGのみに簡略化された。またターボは可変ジオメトリータービンを採用することで、アクセルオン時にタイムラグの少ない発進加速を可能にしたという。このエンジンは「パサート」にも採用されているものでコースティングの際には4気筒から2気筒にスライドし、カムプロファイルもそれに応じて変更されるために変速時のショックもなかった。

 もう1つのエンジンは2.0リッターディーゼルターボのTDIで、こちらもアドブルーを2か所から噴出することでNOxの排出量を減らしている。

ユーザーフレンドリーなモデルに成長した新型ゴルフ

さっそくゴルフ eTSI Activeに試乗

 試乗したのはベースグレードの1つ上の「eTSI Active」。出力は85kW(116PS)/220Nmに7速DSGを搭載するモデルだ。

 ベースグレードとはいえステアリングヒーターやシートヒーターを備えており、主要なADAS系はアダプティングクルーズコントロールや緊急停車システム、トラフィックアラートなどを標準装備して379万9000円のプライスタグがつけられる。これにLEDマトリックスヘッドライトのテクノロジーパッケージ(22万円)とナビゲーションのDiscoverパッケージ(17万6000円)のセットオプションを加えたのが今回の試乗車だ。

 代々ゴルフのシートは腰があって硬いのが特徴だった。ロングドライブでも疲労の少ないシートだが、逆に短距離では硬すぎると感じられる時代もあった。8世代目のシートはややソフトで腰の座りが良くなり、座面も少しソフトに感じられる。

 そして大型センターディスプレイが目に入る。いろいろできそうでワクワクする。視認性に優れたドライバーモニターも表示を変えられ、必要に応じてナビなどを映し出せる。HUDも備わるので運転中に視線を大きく移動させることはない。

 装着タイヤはネクセン「N'blue S」(205/55R16)。日本ではあまり見かけないがヨーロッパではボチボチOE装着もありポピュラーになりつつある。

エンジンは低速回転からレスポンスよくトルクフルな走りを見せ、マイルドハイブリッドとのコンビネーションも良好

 48Vマイルドハイブリッドはスタート直後から高いトルクで滑らかに発進する。予想以上に強力な電動アシストで静かながら力強い発進力を持つ。

 エンジンは低速回転からレスポンスよくトルクフルな走りだ。マイルドハイブリッドとのコンビネーションも良く、特に微低速ではトルクがあって路面によってはホイールスピンを起こすことがあるほどだ。

 転がり抵抗の少なそうなタイヤに加えて自動車専用道路では空走感が高く、どこまでもアクセルを足すことなく走っていく。アクセルオフでのエンジンブレーキはあまり期待できないのでフットブレーキを微妙にかけるか、最初はパドルでシフトダウンした方が使いやすいかもしれない。

 付け加えるとこのエンジンは走行状態に応じて4気筒から2気筒となりエネルギーロスを減らしているが、切り替わる瞬間はまったく分からない。さらに加速する場合も瞬時にパワフルな4気筒になり、レスポンスよく加速する。日常的な走行では十分な加速力を持っている。

 燃料消費率はWLTCモードで18.8km/L。ストロングハイブリッドには敵わないが、素直なドライブフィールで欧州車らしい質感を併せ持った使い勝手のよいCセグはやはり光るものがある。

 乗り心地は鋭角的な凸路面でリアからくるピッチングを感じるが、路面の捉え方がうまく重厚感があるゴルフらしい乗り味だ。ちなみにこのグレードはリアサスはトーションビームになる。より高出力な110kW(150PS)エンジンを乗せる「eTSI Style」は4リンクの独立懸架となり、乗り心地でその違いはあるだろう。

 同時に試乗した同じサスペンションを持つ「eTSI Active」のヴァリアント(ハッチバックよりも50mmホイールベースが長い)ではピッチングが小さく、さらに5人乗りで640L/2人乗車で1642Lのラゲッジルームを持つワゴンは魅力だ。

ゴルフ ヴァリアント eTSI Activeにも試乗

 取りまわしではハッチバックでもステアリングギヤ比がもう少し小さいと使いやすく、ハンドリングの軽快感も向上すると思われるが、ゴルフらしさは現状でも十分に堪能できる。

 ドライブモードはECO、COMFORT、SPORT、CUSTOMがあり、それぞれアクセルレスポンス、選択ギヤなどに違いがあり、オーナーの使い方でそれぞれ設定を変えられるCUSTOMを選ぶのもおもしろい。

 8.5世代ゴルフ。剛性感のあるボディ、凝ったパワートレーンによる滑らかな走り、シンプルで広い室内、前期型をブラッシュアップして使いやすくなった操作系などユーザーフレンドリーなモデルに成長した。ゴルフはやっぱりゴルフだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学