試乗記

アルファ ロメオ待望のコンパクトSUV「ジュニア」に乗った! 48Vマイルドハイブリッド「イブリダ」の印象は?

アルファ ロメオ「ジュニア」

ステランティスのグローバルプラットフォーム「CMP」搭載モデル

 アルファ ロメオからBセグメントのコンパクトSUVがリリースされた。その名も「ジュニア」。BEV(バッテリ電気自動車)とマイルドハイブリッドが設定されている。ホイールベースは2560mm。フィアット「600 Hybrid」と共通でステランティスグループがグローバルで展開するCMPプラットフォームを使う。ちなみにパワートレーンも共通で1.2リッター3気筒ターボと16kWのモーターを内蔵したデュアルクラッチ6速トランスミッションの48Vマイルドハイブリッドも共通だ。

 ではボディが違うだけかといえばそうではない。ブランドはそれぞれ目指すものが違う。同じパーツを使っても全く違うクルマに仕上がることをフィアットとアルファ ロメオは証明していた。

アルファ ロメオのコンパクトSUVとなるジュニアに試乗

 ボディサイズはBセグだけにコンパクト。4195×1780×1585mm(全長×全幅×全高)は最新のラインアップではアルファ ロメオ最小のモデルになる。駆動方式はFFのみだ。

 エクステリアはかなり挑戦的。高いボンネットと特徴的なフロントグリル。テールエンドは垂直に断ち切ったようなコーダトロンカ(アルファ ロメオのレーシングクーペで採用された)のモチーフが採用されて、ユニークで独創的。試乗中も注目されたことが多く、多様なクルマが走る東京では珍しい。

アルファ ロメオ「ジュニア イブリダ プレミアム」(468万円)
ボディサイズは4195×1780×1585mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2560mm。車両重量は1330kg
トリノを拠点とするデザインセンター「アルファ ロメオ・チェントロスティーレ」によるエクステリアデザインは、三眼ヘッドライトや進化したトライローブ(三つ葉)形状のフロントグリル、1960年代にアルファ ロメオが先駆けて用いた空力特性のためにリアエンドを断ち切ったデザイン手法“コーダトロンカ”など、随所にアルファ ロメオの伝統的なデザインを採用。機能的かつ情熱的なイタリアン・デザインを体現している。また、ジュニア イブリダ プレミアムは「グロスブラックボディキット」が標準装備される。足下には18インチ ペタリ アルミホイールとグッドイヤー「EfficientGrip Performance 2」(215/55R18)を装着

 インテリアもスペースよりもドライビングの高揚感を重視したドライバーを中心とした2眼のメーターレイアウト、エアアウトレットにもLEDライトを置くなど暗いところでもアルファ ロメオらしい演出は行き届いている。

最高出力100kW/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpmを発生する直列3気筒DOHC 1.2リッターターボエンジンを搭載。さらにフロントに最高出力16kW/4264rpm、最大トルク51Nm/750-2499rpmを発生する「ZA03」型モーターを搭載し、システム全体の最高出力は145PSを発生。トランスミッションは6速DCTで、駆動方式は2WD(FF)。燃料タンク容量は44L。WLTCモード燃費は23.1km/L
ジュニア イブリダ プレミアムのインパネ
レザーステアリングを標準装備。10.25インチ デジタルクラスターメーターにはパワーフローを表示できる
ステアリングスポーク左側にはACCなどの運転支援システムスイッチを、右側にはオーディオコントローラーを配置
シフトはトグルタイプ。センターコンソールにはドライブモード切り替えスイッチも設定される
センターコンソールまわりやエアコンの吹き出し口にLEDライトを配置。ドライブモードを切り替えると色も変わるという遊びゴコロも。なお、自分で好みの色に設定することもできる
ジュニア イブリダ プレミアムのシート表皮はファブリック/テクノレザー。運転席は6ウェイパワーシートとなり、アクティブランバーサポート(マッサージ機能)が付く(助手席は6ウェイマニュアルシート)。シート中央に入る赤いアクセントが輝くネオンのよう
ラゲッジルーム容量は415Lを確保
ラゲッジボードの高さを3段階で変更できる

走りはしっかりアルファ ロメオ

 シートを合わせてスタータースイッチを押すと、フィアット・600 Hybridとは違ったエキゾーストノートが響く。3気筒エンジンでもそれなりに重みがあるところもアルファ ロメオらしい。出力はシステム出力で145PS。48Vマイルドハイブリッドも効果的だが、フィアットではスタートして速度が上がるまでEV走行が可能だったように記憶するが、アルファ ロメオではエンジン始動のタイミングが早いようだ。

ジュニア イブリダはフィアット「600 Hybrid」と同じマイルドハイブリッド

 ドライブモードはDynamicとNatural、Advanced Efficiencyの3種類が選択できる。平たく言えばそれぞれスポーツとノーマル、エコとなり、どのモードで走っても違和感がなく自然に走れる。例えばDynamicはアクセルの感度がよくなり、グンと前に出るが過敏ではなく日常的に使っても不自然ではないし、Advanced Efficiencyも極端な出力制御に入ることがなく、自然に燃費向上できドライバビリティは変わらないのにそれぞれのモードでスポーティさを感じさせるのはさすがである。

 そもそも1.2リッターターボは小排気量の割にはフラットトルクでどこから踏んでもパワーバンドに乗るような柔軟性を持っているが車種によって引き出しが違うのか、アルファ ロメオらしいとがった感触を持たせているのが面白い。

 フィアット・600 Hybridでは穏やかでトルク感のあるおおらかな走りだったのに対しアルファ ロメオはドライバーを刺激するメリハリ感を出している。同じパワートレーンとは思えないほどだ。

メリハリ感のある走りでアルファ ロメオらしさを感じる

 一方6速DCTはフィアット・600 Hybridでは滑らかな変速でトルコンのように使えたが、アルファ ロメオはまだ新品ということもありキャリブレーションができていないのか、低速での変速にギクシャクしたところが残っていた。速度が乗ると気にならないが減速途中でギヤ選択を迷うことがしばしばだった。こういう機械的なところもスポーツカーメーカー、アルファ ロメオの「らしさ」を感じるといったらひいき目過ぎるだろうか。

 装着タイヤはグッドイヤーの「EfficientGrip Performance 2」でサイズは215/55R18。ベースグレードのCoreでは17インチだがPremiumで18インチになり、試乗車はこちらを履いていた。

 サスペンションはスポーツSUVらしく固められており路面からのあたりは強めだがビシッとした乗り心地となっている。荒れた舗装でもリアサスペンションがバタつかず、ショックアブソーバーの減衰力設定も適しており、チューニングも巧みだった。

 ステアリング系もキビキビとした正確さがあり、フィアットのおおらかさとは別ものに仕上がっている。応答性がシャープでコーナーでのロールもよく抑えられている。背の高いSUVらしからぬコーナリング姿勢だった。

 フロントはストラット、リアはトーションビームというスタンダードなサスペンション形式だがここまで性格が変えられるのかと思った。

 フィアットのゆったりした味付けも好きだがアルファ ロメオは常に心地よいドライビングを求めるドライバーにはもってこいだ。

ジュニア イブリダは常に心地よいドライビングができる

 運転席に戻ろう。ドライビングポジションはアルファ ロメオらしく腕が伸びる伝統的なスタイルだが、それでもテレスコなどで姿勢は合わせやすくなった。大きく感じるシートも1クラス上のクルマのハンドルを握っているようだ。

 高いボンネットはクルマが大きく感じ、直前視界はそれほどよくない。また大径タイヤで小まわりはあまり得意でなさそうだ。

 室内のセンターコンソールもドライバー本位で小物置き場は限られているが、操作系の配置は分かりやすく、すぐに手が届くところにあるべきものがある。

 リアシートも統一感のあるデザインにこだわっているのはアルファ ロメオの面目躍如といったところだ。

高速道路を走るジュニア イブリダ

 さて価格。必要なものを標準装備したベースグレードのCoreで420万円。上級のPremiumで468万円、そしてローンチエディションで装備満載のSpecialeは533万円の値が付けられている。

 遅れてやってくるElettricaはBEVの特性で重心高が低くなるはずで、さらにコーナリングに磨きがかけられるに違いない。アルファ ロメオの作るBEVにも注目だ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:中野英幸