試乗記

新しくなったスズキ「クロスビー」はデザインも走りも磨きがかかっていた!

新型クロスビー

「かわいい+頼れそう」にイメチェンした新型クロスビー

 久しぶりに会ったらすっかり頼もしくなり、どこか遠くへ連れて行ってくれそうな凛々しい姿に頬がゆるむ。新しいクロスビーはまさに、8年ぶりのビッグマイナーチェンジでそんな存在へと生まれ変わっていた。

 全長3.7mほどのサイズは、SUVとしてはありそうでないコンパクトさ。でも、力強くアクティブな要素を強めたデザインからは、これまでのかわいさ、キュートさだけでなく大人っぽさ、かっこよさが伝わってくる。

 特にフロントマスクは、角をまるめた四角をモチーフに取り入れ、目ヂカラ強めのヘッドライトが特徴的。光り方にもこだわり、クロスビーだとすぐに分かるアイコニックなグラフィックを採用した。そしてワイド感のある水平基調のフロントフードや張り出したバンパーによって、顔まわりに厚みが増してしっかりと芯のあるキャラクターを主張しているようだ。

まるも亜希子が新しくなったクロスビーに試乗!

 後ろにまわれば、颯爽とした走りを想像させる大型ルーフエンドスポイラー。サイドには「X」モチーフが個性的な16インチ切削ツートーンアルミホイールが新たに採用され、足下にオシャレで機能的なスニーカーを履いている気分になる。市街地だけじゃなく、高速道路も山道も走りたい。クロスビーに誘われて、運転席におさまった。

今回試乗したのはクロスビー HYBRID MZ(タフカーキパールメタリック ホワイト2トーンルーフ)の4WDモデル。ボディサイズは3760×1670×1705mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2435mm、最低地上高は180mmを確保している
エクステリアデザインは、角を丸めた四角をモチーフにしてSUVらしい力強さを表現
クロスビーのXをモチーフとしたアルミホイール。タイヤは175/60R16 82Hサイズのブリヂストン「エコピア EP150」を装着
颯爽とした印象を与えるルーフエンドスポイラーを装着
単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」を搭載

 するとインテリアも大きく変わっていることに気づく。メーターやセンターパネル、エアコンアウトレットには、ヘッドライトに共通する角丸の長方形がモチーフに取り入れられて、とてもオシャレ。しかも、上質な革とステッチを模したおおらかで表情豊かな造形によって、家具のような温もりも伝わってくる。

 その上、従来のクロスビーがこだわっていた細やかな配慮が感じられる収納や、使い勝手のよさは健在。500mlの紙パック飲料から630mlのペットボトルにも対応するカップホルダーや、ティッシュボックスも置けて手が届きやすいトレイ、スマホや充電ケーブル、芳香剤などの収納に配慮したスペースがしっかりある。

クロスビー HYBRID MZのインテリア。ステアリングホイールとシフトノブは本革巻きとなる
2段式のセンターコンソールや、センターコンソールアッパートレー、大型のドリンクホルダーなど、使い勝手のよい収納を多く備える。HYBRID MZのアップグレードパッケージ装着車はカラーがサファリカーキとなるドアパネルやインパネには、肌触りのよさそうなレザー素材が用いられているように見えるが、実は樹脂製。革だと思って触ると固くてびっくりする
シートヒーターは全グレードで標準装備。ステアリングヒーターはHYBRID MZの専用装備となる
7インチメーターディスプレイ(カラー)をスズキ国内初採用。モードによって色が変わる
カラーヘッドアップディスプレイはHYBRID MZのアップグレードパッケージ装着車に搭載
全方位モニター付き9インチメモリーナビゲーションをメーカーオプションに設定

 シートは十分な大きさと、サイドサポートがほどよくフィットする、上質感のある座り心地。でも撥水加工の表皮を採用しているので、アクティブなシーンでもガンガン使えるのが嬉しい。そしてステアリングを握ると、新デザインとなっていた。センターディスプレイも心持ち大きくなったようで、目の前の7インチメーターのデザインもモダンに進化していて見やすく感じる。

HYBRID MZのアップグレードパッケージ装着車はブラウンステッチ入りのレザー調&撥水ファブリックシートを採用。リアシートは165mmのスライドやリクライニングができる
HYBRID MZは防汚タイプラゲッジフロアを標準装備。後席背面も防汚タイプとなるので、汚れてもサッとふき取れて手入れしやすくなっている

 パワートレーンは、従来の3気筒1.0リッターターボのマイルドハイブリッド+6速ATから、スイフトやソリオで定評のある直列3気筒1.2リッターエンジンのマイルドハイブリッド+CVTという組み合わせにアップデートされた。さらに、スポーツモードとスノーモード、グリップコントロールとヒルディセントコントロールが4WD車だけでなく、2WD車の「MZ」にも採用されている。

最高出力59kW(80PS)/5700rpm、最大トルク108Nm(11kgfm)/4500rpmを発生する直列3気筒1.2リッター「Z12E」型エンジンをクロスビーとして新採用。ハイブリッドシステムでは、新たに最高出力2.3kW(3.1PS)/1100rpm、最大トルク60Nm(6.1kgfm)/100rpmを発生する「WA06D」モーターが搭載された。HYBRID MZ 4WDモデルのWLTCモード燃費は21.0km/L
助手席下にハイブリッド用の電池(3Ah)を収納する
スポーツモード、スノーモード、グリップコントロール、ヒルディセントコントロールの4モードを設定。HYBRID MZは2WDモデルにも設定される(HYBRID MXは4WDモデルのみ)

走り出すと「頼れそう」から「頼れる」に変わる!

 アクセルをひと踏みすると、タイヤの転がり始めから接地感が高く、ボディがしっかりとしたカタマリだと思わせる剛性感がアップしているような気がした。大人3人が乗車し、後席を片側だけ倒して荷物を満載にしているというのに、加速フィールは十分に軽快。ターボのような盛り上がりはない代わりに、スイスイと速度を上げていく印象だ。手のひらに伝わるステアリングフィールも上質で、低速ではほどよい軽さがありながら、中速域に入ってくると落ち着きが増してリラックスできる。

軽快でも剛性感のある走り

 高速道路では直進安定性の高さに加え、ノイズがよく抑えられているところにも感心した。おかげで車内の会話は弾み、いつしかディープな女子トークに……。後席の男子は寝たフリをしていたのか、どうなのか。でも後席は座面の厚みがたっぷりとあり、リクライニングが可能。シートスライドは前後165mmも動かせて、足下スペースにゆとりがあるため、うとうとできるほど快適だったということかもしれない。

高速道路でも直進安定性は高い

 確かに乗り心地にはフラット感が高まり、カーブでの挙動も落ち着いていると感じた。今回、カーブでの膨らみを抑える「コーナリングアクティブサポート」が採用されたことや、減衰接着剤の採用でボディ剛性がアップし、足まわりの動きがしなやかになっているようだ。ほんの短距離だが、路面が荒れていて細い山道を走ってみたところ、ゴツゴツとした路面状況のインフォメーションは伝えながらも、不快な揺れは抑えられ、水平基調のボディは見切りがよくてタイトなコーナーも不安なく操作できた。「クロスビーでよかった!」と心から思ったワンシーン。今回はスノーモードやグリップコントロールを試すチャンスはなかったが、きっと長く一緒に走りまわるうちに、そんなシーンが何度も訪れるのではないだろうか。

細い山道も安心して走れる

 これまでも、コンパクトSUVらしからぬ頼もしさが魅力だったクロスビーは、見た目からして凛としたかっこよさをまとい、中身は乗る人を安心感で包み込むような“やさしい強さ”に磨きがかかっていた。きっと、いろんなところへ行きたくなる、ロングドライブがしたくなる新生クロスビーだ。

クロスビーと一緒に、いろんなところへ行きたくなる
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:安田 剛