試乗記

改良版のマツダ「CX-60」試乗 マイルドハイブリッド仕様の直6エンジンはロングドライブに最適

改良版の「CX-60」に試乗

お気に入りの仕様でロングラン

 2022年に登場したときは「乗り心地がわるい」「ギクシャクする」など評価は散々だった。ところが、2024年秋に登場したロングボディ×3列シート版の「CX-80」は、ずいぶんようすが変わって全体的によくなっていた。そのよくなった部分が、年が明けて発売された「CX-60」にも盛り込まれた。そこでCar Watchでは、あらためてロングランを試みることにした。

 CX-60はバリエーションが実に豊富で、まずパワーユニットが2.5リッター直4ガソリンと同PHEV、3.3リッター直6と同MHEVという4通りがある。さらにトリムラインが非常に多彩で、それぞれにふさわしいパワーユニットが組み合わされている。

 今回ドライブしたのは「XD-HYBRID プレミアムスポーツ」という、ディーゼルのMHEVのスポーティバージョン、しかもソウルレッドクロスタルメタリックにタン内装がよく似合う、筆者のもっともお気に入りの仕様だ。235/50R20サイズのタイヤを組み合わせたブラックメタリック塗装のアルミホイールが、その精悍なルックスをさらに引き立てている。

今回試乗したのは2025年2月21日に発売された「CX-60」の改良モデル。グレードは「XD-HYBRID プレミアムスポーツ」(574万7500円)でボディサイズは4740×1890×1685mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2870mm
商品改良では操縦安定性・乗り心地の向上を目的に、バネ、ダンパー変更を中心にサスペンションセッティングを見直すとともに、電動パワーステアリングやAWD等の制御を最適化。さらに走行中のさまざまな騒音・振動への対策を織り込み、静粛性も向上させている。足下はブラックメタリック塗装の20インチホイールにブリヂストン「アレンザ 001」(235/50R20)をセット

 オシャレなのは外見だけでなく、インテリアもすばらしい仕立てで見惚れしてしまうほどだ。運転席に座ってポジションを合わせた瞬間からしっくりなじむのはマツダ車に共通する特徴で、縦置き後輪駆動を採用したCX-60にもしっかり受け継がれている。

 車両価格は574万7500円。この状態でいろいろ装備が充実しており、オプション装備はナシ。けっして安いとはいえないまでも、内容を把握し、実車を目にするとなかなか買い得感すらあるように思えてくるほどだ。

インテリアは上質さが感じられるタン内装

直6ディーゼル+MHEVが美味

東京~長野間をロングドライブ

 大幅改良したCX-60に2月に試乗した際の印象は概ね良好だった。ただし、駆動方式を含むパワートレーンの違いで、従来からの上がり幅がけっこう違うように感じた。今回はそのときに感じた先入観を抜きにして、純粋にe-SKTACTIVE D 3.3×4WDのプレミアムスポーツを味わうことにした。

 車重は1950kgもあるが、3人の成人男性が乗車して撮影機材を満載しても、加速の力強さには余力がある。中央道のだらーっと続く長い上り勾配でも、ストレスを感じることはない。

 直6というのがこのディーゼルエンジンの大きな特徴だが、このエンジンがやっぱり気持ちいい。車外にいるとガラガラいう音は聞こえるものの、車内だと全然気にならない。アイドリングからして直6ならではの音がして、踏み込むとディーゼルでありながら直6らしいスムーズで調律された吹け上がりを楽しめるなど、直6の美味しい部分だけが強調されて伝わってくる。

48Vマイルドハイブリッドシステム“M Hybrid Boost”を搭載する「e-SKYACTIV D」は、最高出力187kW(254PS)/3750rpm、最大トルク550Nm/1500-2400rpmを発生する直列6気筒3.3リッターディーゼルターボエンジンと、最高出力12kW(16.3PS)/900rpm、最大トルク153Nm/200rpmを発生するモーターを組み合わせ、WLTCモード燃費は20.9km/L。トランスミッションは8速ATを組み合わせる

 動力性能にはモーターも効いていて、実にいい仕事をしている。一般道での軽やかでなめらかな発進や加速はもちろん、高速巡行時にも平坦で負荷の小さい状況のときにはモーター主体で走るようになる。直6のサウンドも美味しいが、モーターも積極的に使っていて、インテリジェントな感覚も味わえる。

直6サウンドとともにモーター主体のインテリジェントなドライブも楽しめる

 全体的に上乗せされた加速フィールを味わえて、MHEVとしての付加価値を求めるユーザーの期待に応える仕上がりとなっている。中央道はアップダウンが大きいので不利なのだが、高速巡航時の燃費はちゃんとは測っていないものの、普通に20km/Lは超えると思ってよさそうだ。

 トルコンレスATは、当初はけっこうギクシャクしたものだが、ずいぶんなめらかになり、駐車時などでシフトを前進から後退に変えたときに動き出すまでのタイムラグも小さくなるなど、全体的に格段に扱いやすくなっている。

トルコンレスATは扱いやすくなった印象

乗り心地もまずまず

乗り心地も改善された

 肝心の乗り心地も、従来に比べるとだいぶよくなっている。従来はすでに報じられているとおり、とくにリアの突き上げがひどく、高速巡行時に振動が起こるとなかなか収まらないという症状が見受けられた。

 それに対してリアのバネレートを大幅に下げ、スタビライザーを廃し、サブフレームのブッシュを柔らかくするなどサスペンションのセッティングを見直し、操縦安定性と乗り心地の改善が図られたことで、まだ多少の硬さは感じるものの振動はだいぶ収まり、突き上げも減って、問題ないと思えるほどになっている。

 やや重さを感じた電動パワーステアリングもいくぶん軽くスッキリとしたフィーリングになり、取りまわしもしやすくなっている。高速道路での直進安定性も従来は路面の影響を受けやすく乱れがちな印象だったが、だいぶ改善された。もう少しハンドリングの正確性が高まるとなおよいと思う。

電動パワーステアリングもスッキリとしたフィーリングに

 まだまだ、もう少しこうだったらいいのにというところは見受けられなくなかったものの、初期型の人が乗ると悔しがるぐらいの走りにはなっている。ただし、認証等の関係もあり、改良版に採用された新しいパーツは初期型への流用は難しいらしい。

 マツダのことだから今後も商品改良を繰り返して、さらにいいクルマに仕上げていってくれることだろうと、期待の言葉を最後に贈っておきたい。

今後のさらなる進化にも期待しています!
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一