試乗記
改良されたマツダ「CX-60」初試乗、操縦安定性や乗り心地といった“動的性能の進化”を確認
2025年2月21日 11:30
マツダの「CX-60」が大幅な商品改良を行ない、2月21日から発売を開始した(PHEVモデルは3月中旬発売予定とのこと)。機種体系の見直しが実施され、価格は326万7000円~646万2500円だ。
そもそもCX-60は、エンジンからプラットフォームまで刷新したマツダの次世代ラージ商品群を支える1台として2022年にデビュー。3.3リッターの直6ディーゼルを縦置きで搭載し、FRベースの4WDモデルとして鳴り物入りでデビューしたが、トルクコンバーターレスのトランスミッションはなめらかな変速を苦手としていたり、ハイブリッドモデルにおける巡航時にi-stopからの復帰において減速Gが出たりなどの課題を抱えていたように思う。
また、サスペンションは独特な考え方で成立しており、リアのトー変化を嫌ったマルチリンクの採用に始まり、ピッチングセンターは車両後方へ飛ばすことを行なっていた。それだけが理由ではないが、実際に乗れば不整地路面における瞬間的な入力に対して弱く、突き上げ感が強い傾向にあったのは否めない。一方で、揺らぎが始まると上下動が収まらずにリアが常にバウンスする感覚。巡航時には直進安定性が薄いといったことも気になったことを思い出す……。
今回の変更は多岐にわたる。まず、フロントサスペンションはダンパーの減衰力、そしてナックル締結ポイントの変更を行なっている。バンプするとトーアウトになるが、以前のモデルではその量が少なく、今回はトーアウト量を増やすことで安定性を出しているという。
リアサスペンションはスプリングレートやダンパーの減衰力、バンプストッパー特性、スタビライザー、クロスメンバーブッシュ、サスペンションリンクブッシュの特性変更を行なっている。また、バネレートは落としつつも、減衰力は引き上げたとのことで、10%ほどそれぞれ変更したそうだ。
さらにブッシュマウントは前後と左右の特性を分けるために、“すぐり”と呼ばれる空洞を開けているが、その特性を見直し、搭載方向も見直したという。結果として瞬間的な入力に対して徐々に反発するプログレッシブな特性を持たせることに成功したそうだ。加えてバンプストッパーを短くして、すぐに当たっていたところを改善しているとのこと。
まずはトップグレードのHD-HYBRYDのAWDモデルから走ってみる。そこでまず感じたことは荒れた路面であったとしても、リアからの強烈な突き上げ感がないことだった。全体的にかなり引き締められたにも関わらずこのフィーリングは好感触だ。入力があったとしても、即座に収束する感覚にあふれており、フラットに乗れるようになったところもうれしい。以前のようなリアがいつまでもバウンスしていた感覚はもうない。また、高速道路に乗って揺らいでも、直進安定性が崩れることもなかった。
懸念材料だったi-stopからの復帰においても、減速感が出るようなことはなくなった。高速巡航状態で低負荷になるとエンジンが止まる機能なのだが、そこからの復帰で従来はガクンと減速感が出ていた。それが新しいプログラムではきちんと回転同調が行なわれ、減速Gが出ないように改められていた。
これは従来モデルに乗るユーザーにもサービスキャンペーンを行ない改められたとのことだから、もう問題を抱えているような車両は少ないだろう。また、各ギヤのつながりもなめらかな感覚が備わった。それでいてダイレクト感が損なわれていないところもいい。
エンジンは力強くリニアさにあふれている。音も調教されているが、上り勾配でギヤをホールドしすぎてノッキング音がチリチリと感じるところがやや気になる。効率優先で仕方ないかもしれないが、やはり適度なギヤを選んで音は解決してほしいような気もする。
続いて乗ったXD SPというノンハイブリッドモデルは、先ほどよりもさらにしなやかに調教されている感覚があった。スポーティを意味する「SP」という文字とは裏腹に、路面からの当たりが柔らかく、程よく肩の力が抜けた感覚がある。
パノラマルーフが付いてないせいか、はたまたハイブリッドが降ろされているからか? こちらの車両重量は80kgも軽い1870kg。いろいろとのちに聞いてみたが、実は重量は違っていても足まわりは同じ。重い方がどっしりとしていて乗り心地もよさそうなものだが……。
実は2台の違いはホイールだそうで、ハイブリッドモデルのホイールは空力などの燃費対策とNVH対策を施しているため、数百g重く、15%ほど剛性が高いという。結果的に減衰がよく効く設定ではあるが、硬いタイヤが付いたようなフィーリングになるのだという。ただXD SPのホイールは程よく入力をいなしてくれる感覚があり、即座に減衰はしないがマイルドなフィーリングを与えてくれる。
最後に乗ったXD L Packageの車重は1820kg。4WDじゃなくFRなので当然ながら軽くて軽快な身のこなしをしてくれる感覚。アクセルを踏めば即座にリアだけにトルクが流れてしまうこともあり、リアが一気に沈み込むようなフィーリングや、フロントのバタツキなど、やや荒々しいところが見え隠れしていた。ただ、以前のように一定の円弧を描いてコーナリングしにくいなど、先読みできない動きはなくなったように思える。
このように、今度のCX-60はマツダにもあったという自覚症状をかなり払拭できたように感じる。方向性をひと言で語るなら全体的に引き締めてネガを消したという感じ。これがスタート地点であってほしかったというのが正直なところだ。
今後はこの動きを保持しつつ、しなやかさが出てくれたら最高かもしれない。いずれにしても、独特な考え方のシャシーを残しつつ、このフィーリングが出せるなら、マツダのラージ商品群の未来も明るいかもしれない。シリーズ全体がこんな仕上がりになってくれたらうれしい。
特別仕様車「XD-HYBRID Trekker」を新たに設定
新しく設定された特別仕様車「XD-HYBRID Trekker」は、XD-HYBRID Exclusive Sportsがベースで、自然に溶け込むカラー「ジルコンサンドメタリック」を特別仕様車限定カラーとして設定したほか、パノラマサンルーフを標準装備。また、急ブレーキや事故などの際に、2列目や前席への荷物の侵入を防止するパーティションネットが標準装備となっている。

























