レビュー

【タイヤレビュー】雪上&ドライならタイヤは何を選ぶ? オールシーズンタイヤという選択

雪上&ドライを主体とするならタイヤは何を選択する?

オールシーズンタイヤを選択

 筆者は父の仕事の関係で幼少期を横浜ですごし、高校を卒業すると上京したので、首都圏で過ごした時期のほうがずっと長いのだが、生まれは富山県の滑川市というホタルイカの群遊で知られる人口3万人あまりの富山湾に面した小さな町だ。

 2019年に父が他界したため、滑川市の実家には現在、高齢の母が1人で暮らしている。そろそろ免許の返納を考えるべき時期なのだが、クルマがないと生活が不便になるのはいうまでもないし、本人ももうしばらく乗りたいと言っている。

 その母が2021年秋にコンパクトなクルマに買い替えた。新潟港の水先人だった父が現役の頃は富山と新潟を頻繁に行き来していたので、両親のクルマは1年間で3万km以上を走ることも珍しくなかった。ところがいまや母がクルマを使う頻度は低く、近所のスーパーにたまに食料品を買い出しに行くぐらいで、もっとも遠くて片道2kmあまり。滑川市から外に出ることもおそらくない。筆者が年始に帰省した際にオドメーターを見たところ、納車されてから月に50kmほどの距離しか走っていない計算になる。

 富山は降雪地なので、クルマを替えて初めての冬を迎えるにあたり、タイヤをどうにかしなければいけないわけだが、いろいろ考えた結果、オールシーズンタイヤにすることにした。これまではもちろんスタッドレスタイヤに履き替えていた。ところがいまや前述のとおり母がクルマを使う頻度はかなり低く、不要不急の外出でクルマを使うこともないし、冬道で鬼門とされる橋をわたらなければならない機会もまずない。それに、いざとなればすぐ近くに住んでいる親戚が手伝ってくれるよう前々からお願いしているので、大雪が降ったら母はクルマを出さずにすむ。

 それならいっそ夏タイヤのままでもよいのではと思ったぐらいなのだが、ちょっとだけ降ったときに、ちょっとだけクルマを使いたいといった状況も考えられる。そんなときこそオールシーズンタイヤ。都市部に住む人も、いざというときに備えてオールシーズンタイヤを、という考え方に近い。むろん高齢の母にとっては、タイヤを運んで交換する手間や保管場所のことを考えてもメリットは小さくない。

175/60R16サイズがある!

2021年秋に買い替えたスズキ「クロスビー」

 さっそく情報収集してみたところ、別の問題に行き当たった。買い替えた「クロスビー」の175/60R16という純正サイズでは、オールシーズンタイヤの選択肢がかなり限られることが判明したのだ。業界内では「ラクティスサイズ」と呼ぶらしいとか。調べていくと、メジャーブランドではグッドイヤーの「Vector 4Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド、以下「ベクター4S」)」であれば設定があることが分かり、岡本家が行きつけのクルマ屋さんで装着してもらった。

 ベクター4SならM+Sはもちろん、欧州で寒冷地でも十分な性能を発揮する冬用タイヤとして認められた証であるスノーフレークマークの表記に加えて、日本でも冬タイヤ規制時でも走行可能な「SNOW」の文字のスノーマークが刻印されているほどで、いざ雪が降ったときでもかなり頼りになりそう。それにほどよくゴツいルックスも、クロスビーになかなかよく似合っている。

 さっそく走ってみたところ、今回は冬場の富山とはいえ舗装路がメインのドライブとなったわけだが、標準装着のタイヤよりも剛性感があり、ドライブフィールは適度にシャキッとしていて、中立の据わりや転舵時の応答遅れも気にならず、よりキビキビと走れる印象で、クロスビーとのマッチングはわるくない。低めの車速で短距離を走る母のクルマの使い方にも合っていそうに思えた。

 ロードノイズはやや大きめで、OEMタイヤではあまり気にならなかったザー系の音がずっと耳に入るのは否めないが、そのあたりはいずれ出るニューモデルではきっと改善されることだろう。

クロスビーで履くことができるオールシーズンタイヤを探したところ、グッドイヤーの「Vector 4Seasons Hybrid」で設定があったのでチョイス
Vector 4 Seasons Hybridには一般的に浅雪用を示す「M+S」(マッド&スノー)が刻印される一方で、欧米では「M+S」以上に冬道性能が高いスノータイヤと認められている「スノーフレークマーク」、さらに日本で冬用タイヤであることを示す「スノーマーク」が入るなど、高速道路等におけるチェーン規制下でも走行可能なのが特徴
Vector 4 Seasons Hybridはいかなる天候、多彩な路面コンディションに対応するべく、高いグリップ性能と操縦安定性を実現するために設計された専用コンパウンド「オールウェザーシリカコンパウンド」、センターエリアのサイプ側面にワッフル状の凹凸の突起を与えることでブロック間が支え合い、より高いブロック剛性を発揮する「3Dワッフルブレード」、優れた排水性を実現するV字型グルーブの「Vシャープドトレッド」などを採用する

 少し標高の高いところで走ってみたところ、浅い積雪なら問題なし。すでにこれまで何度か他の車種でベクター4Sに試乗する機会はあったが、クロスビーとの相性もバッチリだ。多くの深い溝が刻まれている上に大きなブロックが設けられていることで、エッジ効果や雪柱せん断力を十分に身につけていることを、あらためて確認した。凍結路には向かないものの、「雪上ならむしろスタッドレスタイヤよりもよい部分もある」とテストドライバー氏が述べていたのを思い出した。雪道での実力は、後発の最新モデルたちを相手にしてもまだまだ十分に通用するのではと思えたほどだ。

 帰宅して母には、あくまでオールシーズンタイヤでありスタッドレスタイヤとは違うことと、少々の雪なら大丈夫だけど、少しでも不安に感じたらちゅうちょせず親戚に連絡するように念を押しておいた。

予測不能な天候(突然の積雪)に対応できること、1年間をつうじてタイヤ1セットで走行できることなどオールシーズンタイヤのメリットは大きいが、凍結路面などを走ることが多い場合はスタッドレスタイヤを選択したい
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。