試乗記
GRステアリングを標準装備とした26式「GRヤリス」と、魅力的な足まわりの特別仕様車「モリゾウRR」
2026年5月4日 13:30
GRステアリングを装備し、大きく印象の変わった26式GRヤリス
モータースポーツのために生まれたGRヤリス。その誕生は2020年。初めてステアリングを握った時は心が震えたのを鮮明に覚えている。
GRヤリスはたゆまずに進化を続け、2024年にはそれまで蓄積したノウハウを活かした初めての大幅なマイナーチェンジを行なった。コクピットではメーターの操作性や視認性の向上、ボディまわりでは剛性のアップ、エンジン出力は272PS/370Nmから302PS/400Nmに向上させた。縦引きのパーキングブレーキもラリー現場からの発想だ。
さらに25式ではGRカローラ同様のフランジ付きボルトでサスペンションとボディの締結剛性を上げ、8速ステップATであるGR-DATにおいてはスポーツ走行時のギヤ段を見直した。こちらは国内ラリーにも投入され、開発が続けられている。
最新の26式ではステアリングホイールの進化、ハイグリップタイヤに対応するEPSの制御、新開発のブリヂストン製ハイグリップタイヤの採用とそれに合わせたショックアブソーバーの減衰力の変更、快適装備の改良が行なわれた。
また特別仕様車の「GRヤリス モリゾウRR」が国内100台、欧州100台で販売され、9度の世界チャンピオンに輝くセバスチャン・オジエ選手の知見が入った「GRヤリス Sébastien Ogier 9x World Champion Edition」も発売される。こちらも日本、欧州で各100台の限定生産となる。
ここでは26式GRヤリスと、短時間試乗できたモリゾウRRについてお届けする。
まず「オッ」となったのは「GRステアリング」と名付けられた新しいステアリングホイール。今まで何気なく握っていたが確かにスポークに配置されたACCやオーディオの各種スイッチが「らしく」なかった。そのスイッチが操舵時に手のひらに触れないような位置に、右側にはADAS系、左側にオーディオ系に整理されスッキリとまとめられGRらしくなった。
しかもイルミネーションリングで表示されるので夜間もすぐに操作できる。ドライバーフレンドリーなのはそれだけではない。素早い操舵ができるように小径化され、握りの部分が手のひらになじむ形状になったのもうれしい。
正面のディスプレイが見やすいのは24式からだが、モードによってはGRカローラで採用された瞬時に判断できる棒グラフ式タコメーターも表示でき実戦的だ。
機能面では大きいのはブリヂストンの新開発タイヤ、ポテンザ レースである。国内ではGRヤリスのために開発されたレースは新しいブリヂストンの開発方法ENLITENから作られた。転がり抵抗とロードノイズを下げながら、グリップの高さと限界域でのコントロール性も上げる目標を実現したものだ。
アウタースリックのようなパターンで重量は従来のミシュランより重いということだったが、縦バネも高くしなやかなのが強く印象に残った。前後ショックアブソーバーの減衰力特性もタイヤに合わせて変更され、シャシーとの一体感が強くなっている。
またこれまでコーナリング中の高負荷時に滑らかさを欠くときがあったEPSは制御を変えることで解消されたという。日常的な走行では気にならないが、確かに速い操舵で反応に余力があるように感じた。これもこだわりでGRにとって大切なポイントだ。
ボディ剛性はコンパクトなヤリスにとってはスタートから有利で、締結剛性のアップはコーナーで感じる一体感でGRカローラを上回る。まさに競技車から市販車へという開発時のテーマを進化させている。
空力はGRにとって欠かせない重要な装備で「エアロパフォーマンスパッケージ」は伊達でない。スリットやフィンの形状、特にWRCのヤリス ラリー1に触発された大型のリアウィングは強いダウンフォースを得られ、ハンドリングに大きな影響を与えている。
今回の試乗車もエアロパフォーマンスパッケージが装備されていたが、中速でも4輪の接地力が高いのはリアウィングの効果がありそうだ。これまでのGRヤリスと比較するとさらに気持ちよく走れた。
余談だがGRカローラでも取り入れられているハンドリングに正確さをもたらしたフランジ付きボルトは、締結トルクの管理をマイレージで行なっている。当たり前だが改めて聞くと納得がいく。GRヤリスとGRカローラは微妙に客層が異なるが運転が楽しいという目指すところは共通だ。
GRヤリスを4WDスポーツカーとして決定づけているのはGR-FOURと呼ばれる4WDシステム。ITCCによる前後可変トルク配分でNOMALモードでは前輪の駆動力が強くなっている。
TRACKモードは前後駆動力配分が60:40から30:70まで走行状態に応じて連続的に変化し高い旋回力をキープしているが、その滑らかなトルク配分に感心する。前の世代は固定の30:70配分だったものが現在はドライバーの意図により柔軟に変化させている。安全に快適に走れる。
GRAVELモードは前後トルク配分が50:50になる。コーナリングの駆動力変化を好まないドライバーに向いている。クルマ任せでも駆動力変化を理解しながらのドライブも面白く、様々なクルマとの楽しみ方ができるのもGRヤリスならではだ。
ドライブモードのSPORTとNOMALでは前後駆動力配分は同じだが、アクセルレスポンスが違う。SPORTでは前輪の駆動力が高くなったように感じられた。ちょっと気分転換したい時には丁度よい変化幅になっている。CUSTOMモードではアクセル操作に対してのパワートレーンのレスポンスとステアリングの重さを個別に変更でき、自分のクルマを作れる。
ハンドリングは操舵時の滑かさと鋭さがバランスしたEPSとタイヤのCF特性。コーナーでの姿勢変化も連続的でコントロールしやすく、4輪の駆動力変化も違和感がない。クルマとの一体感が増し自在に操れるのが26式で感じた完成度の高さだ。
今や名機と言われるG16E-GTS。その軽やかで強烈なパンチ力はGRヤリス最大の武器である。3気筒独特の音もモータースポーツに直結した響きがあって好ましく、軽い重量はコーナーの立ちあがりでの鋭い加速に直結する。デビュー以来そのパフォーマンスには磨きがかかって完成されたものだ。
乗り心地は当初のコツコツと跳ね上げられる動きは姿を消し、24式以降カドの取れたものになっている。さらにサスペンションの締結剛性向上や、26式ではタイヤと一体になった減衰力設定でデビュー時とは全く違う乗り心地に進化した。グリップは上がっている中で乗り心地の向上は素晴らしい。
足まわりで魅了するモリゾウRR
短時間の試乗であったものの、モリゾウRRには驚いた。進化した26式GRヤリスの試乗後でこれ以上の刺激はないだろうと思って乗ったらバネ上のフラットな動きに魅了された。
発進直後の微低速から中速まで、キレイな舗装から荒れた路面までゴツゴツしたところはまったく感じられない。大きなカーボンウィングで得られるダウンフォースを前提として前後ショックアブソーバーの減衰力を変更した成果で路面へ追従性がグンと上がっている。
GRステアリングを通じて得られるインフォメーションも正確で、前後ダウンフォースに適合させたEPSの操舵フィールも素晴らしい。試す時間がなかったが、4WD駆動モードでGRAVELに代わりMORIZOモードとした前後50:50の駆動力配分でチューニングされた制御はどんな走りを見せてくれるのだろう。
同時に発売されるオジエエディションはTRACKモードをSEBモードに置き換え前後トルク配分を40:60とし、GRAVELモードをMORIZOモードとして設定している。何れもSEB、MORIZOとも専用制御が入っているのでドライバーの個性が分かる。味なことをやる。






