試乗記

フォルクスワーゲンの新型「ID.Buzz」、BEVミニバンという唯一無二の世界観は魅力たっぷり

フォルクスワーゲンの「ID.Buzz」に試乗

思わず指名買いしたくなるが

 フォルクスワーゲンはいま6月30日までに登録、およびローン契約がなされた車両に対して低金利のキャンペーンを行なっている。車種によってその値は異なるのだが、いつもより安いとなればちょっと手が届きにくいクルマであったとしても、思い切ってみる、なんてことも可能になるかもしれない。

 そんな情報を目にして真っ先に浮かんできたクルマが「ID.Buzz」という存在だ。ID.Buzz Proで888万9000円から、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseで997万9000円からという、事実上フォルクスワーゲンのフラグシップであるこのクルマ。ワーゲンバスのエッセンスを取り込み、現代流にアレンジされた個性的なデザインは、思わず指名買いしたくなるほどなのだが、いかんせん高額車両でありなかなか手が出ないという人も多いはず。けれども件のキャンペーンがあるのならいまはチャンスと頭に浮かんだわけだ。

 ただ、購入へ向けてハードルになるのは価格だけじゃない。サイズがなかなかの大柄であることだ。ボディサイズはID.Buzz Proで4715×1985×1925mm(全長×全幅×全高)となりホイールベースは2990mm、最小回転半径は5.9m。ID.Buzz Pro Long Wheelbaseで4965×1985×1925mmとなりホイールベースは3240mmにも達し、最小回転半径は6.3mとなる。

今回試乗したのは2-3-2シートレイアウトの「Pro Long Wheelbase」。ボディサイズは4965×1985×1925mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは3240mm。”Pro Long Wheelbase”ではLEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”やリラクゼーション機能(運転席/助手席)、エクステリアカラーとマッチするカラーインテリアや20インチアルミホイールを装備する
搭載される電気モーターは最高出力210kW(286PS)/3581-6500rpm、最大トルク560Nm(57.1kgfm)/0-3581rpmを発生し、駆動方式は後輪駆動。空力性能を追及し、Cd値(空気抵抗係数)は0.285(欧州仕様)を達成した。バッテリ容量はロングホイールベースモデルが91kWh(ノーマルホイールベースが84kWh)で、WLTCモード一充電走行距離はロングホイールベースモデルが554km(ノーマルホイールベースが524km)
「Pro Long Wheelbase」のインテリア。ワンタッチ操作で遮光が可能なパノラマガラスルーフとプレミアムサウンドシステム“Harman Kardon”を組み合わせたオプションの「ラグジュアリーパッケージ」を装備する

 SUVの「ID.4」と同じBEV専用プラットフォームを採用していることもあり、ハンドルのキレ角は大きいため最小回転半径はこの程度で済んでいるが、曲がる際は内輪差で内側を引っ掛けないか心配になることも事実である。

唯一無二の世界観で全てが許せてしまう

リゾート感満載で明るく華やかなインテリアを楽しみつつ試乗に向かった
今のところ日本で唯一のBEVミニバンというポイントに惹かれる

 ハードルを上げるだけ上げてみたが、以上のことがクリアになるならやはり大いにアリな1台だ。インテリアはリゾート感満載でかなり明るく華やかな雰囲気。堅実なフォルクスワーゲンとは思えぬインテリアの色使いがホッコリさせてくれる。走り出せばサイズの割に車両感覚は掴みやすく、意外にも取りまわしはしやすく実用的に感じてくる。

 動力性能は最高出力210kW(286PS)、最大トルク560Nmもあるため、たとえPro Long Wheelbaseの車両重量2730kgであったとしても不満に思うようなことはない。BEVならではの静かでスムーズなことはこの世界観に絶妙にマッチしているようにも感じる。ミニバンでBEVは今のところ日本で唯一というところも惹かれるポイントかもしれない。ID系のBEVは唐突さがなく日常域から扱いやすいことが特徴の1つだが、このクルマもその仕立ては変わらずといった印象だ。

 シャシーは割と引き締められた印象があるが、その車重をしっかりと支え、きちんと狙いどおりリニアに動かすことを許してくれる。タウンスピードでは硬質な雰囲気だが、速度を重ねれば重ねるほどフラットライドになってくる印象がある。高速巡航時の安定感はなかなかだ。これならロングドライブでも不満なく走れるだろう。BEVということで足の長さも気になるところだが、一充電走行距離(WLTCモード)はProで524km、Pro Long Wheelbaseで554kmとまずまずの値を示している。

 細かなことを言えば3列目にアプローチする際に2列目シートを跳ね上げる必要があり、それを戻す際にやや力がいること。また、シートを折りたたんだ際にフラットにはなるけれど隙間が大きいことなどなど、国産ミニバンに慣れきった人間からすればシートはチトもの足りないようにも感じる。

3列目にアプローチするには2列目シートを跳ね上げる必要がある。跳ね上げ後、戻す力が必要なのが気になるポイント

 けれども、欧州ミニバンらしくシートをすべて取り外してラゲッジの空間を最大限に活かすこともできるところが特徴の1つ。容量はProで2133L、Pro Long Wheelbaseで2469Lにも達するから、趣味のアイテムを載せて楽しむことだってできる。かなりの可能性を秘めているのではないだろうか?

 このようにID.Buzzを改めて見返してみるとハードルはあるものの、やっぱりあのルックスと唯一無二の世界観で全てが許せてしまう。少しでも気になるなら、トライしてみるもの大いにアリな1台だろう。

総じて魅力たっぷりのID.Buzz。唯一無二の世界観を楽しんでほしい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一