試乗記

“ワーゲンバス”が現代に復活! フォルクスワーゲンの新型EVミニバン「ID.Buzz」にチョイ乗り

ID.Buzz Pro:888万9000円
ID.Buzz Pro Long Wheelbase:997万9000円
6月20日に受注を開始した「ID.Buzz」(6人乗りのノーマルホイールベース仕様)にちょっとだけ乗った

6人乗りと7人乗りを設定

“ワーゲンバス”が復活した。限られたスペースに多くの人を乗せるミニバンの走りだけでなく、幸せが伝わってくるほのぼのとしたデザインはビートルと並んでフォルクスワーゲンのアイコンでもあった。

 新しいワーゲンバスである「ID.Buzz」はBEV(バッテリ電気自動車)。2-2-2レイアウトの6人乗りと2-3-2レイアウトの7人乗りがあり、前者は2990mm、後者は3240mmとBEVらしいロングホイールベースだ。想定されるツーリング要件を考えてバッテリも前者は84kWh、後者は91kWhの大容量のリチウムイオンを搭載し、WLTCモードの航続可能距離はそれぞれ524kmと554kmを誇る。

 ID.Buzzのサイズはノーマルホイールベース仕様が4715×1985×1925mm(全長×全幅×全高)、ロングホイールベース仕様が4965×1985×1925mm(同)とかなり大型だが、それだけに室内はゆったりしており、使い方を最優先して各シートをアレンジしている。どのシートも広々として快適だ。

 試乗車は6人乗りのノーマルホイールベース仕様だったが、シートデザインもシンプルで美しく、インテリアのパステルカラーも心がウキウキする。またサードシートの足下もゆったりして全員がドライブを楽しめそうだ。シートアレンジも多彩で最大ラゲッジ容量は2469L(ロングホイールベース仕様)で相当に広い。アレンジを活かして2段フロアにすることもでき、テールゲートおよび両サイドのスライドドアはイージークローズ機能が備わり、両手がふさがっていても荷物や子供たちの乗り込みが容易にできる。

560Nmの最大トルクで重さを感じさせない走り

パステルカラーのインテリアが心を躍らせる

 ラージサイズボディは狭い場所での取りまわしに気を使うが、外に出てしまえば明るいキャビンで移動の楽しみが待っている。ドライバー正面のメーターは運転に必要なものが効率よく配置され、大型のセンターディスプレイは車両設定やドライブを楽しくするアプリがちりばめられている。

メーターまわりには運転に必要な各種情報が効率よく配置される

 座ってシートを合わせたところでID.Buzzはスタンバイ状態になり、ステアリンゴコラムから生えたシフトレバーをひねるとDレンジに入る。あとはアクセルを踏むだけで重量2.5tの車体はしずしずと動き出す。560Nmの最大トルクを発揮でき、まったく重さを感じさせない。

大型のセンターディスプレイではナビやエアコンの操作に加え、バッテリの充電状況の確認やアラウンドビューモニター&バックモニターの表示も可能

 早く日本でもBEVのミニバンができないかと思っていたが想像どおり。静かで振動のない車内は快適でくつろげる空間となり期待以上だ。

 装着タイヤはピレリ「SCORPION」。電動車にマッチした転がり抵抗を向上させたもので、フロント235/55R19、リア255/50R19の大径タイヤを履く。タイヤが太いだけにロードノイズは多少大きいが、荒れた路面でも衝撃をよく吸収し、ボディの共振が少なく、乗り心地はピシリと締まったものだ。パッセンジャーシートもフロアのビリビリ感がなく、知らずにたまる疲労も少なさそうだ。

装着タイヤはピレリ「SCORPION」でサイズはフロント235/55R19、リア255/50R19

 回生ブレーキはBレンジで効果的に減速し、強すぎないので日常的にも使えそうだ。Dレンジではコースティングが長く続き、減速には軽くブレーキペダルにタッチする感じになる。

 背の高いミニバンだが、大きなバッテリを床下に置いていることで重心高が下がり、コーナーでのロールは少なくなって乗員への負担も少ない。操舵力は少し重めの設定だがID.Buzzにちょうどよく、ミニバンらしいハンドリングだ。ちなみに急速充電は140kW~150kWに対応可能だ。

 市街地のチョイノリだったが、ちょっとワクワクする時間を楽しめた。ID.Buzzは楽しいぞ!

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。