試乗記

【ステランティスのフレンチブランドイッキ乗り】DSオートモビルの新型「N°4」 フレンチラグジュアリーの優雅な1台

DSオートモビル「N°4」

 ステランティスが擁するフレンチブランド、「プジョー」「シトロエン」「DS Automobiles」の最新モデルがそろう試乗会が行なわれた。同じフランス生まれのブランドではあるが、1日に乗り換えるとこんなにも別の個性があるのかと驚かされる。

 今回は、1955年に誕生したシトロエンの名車・DSの革新性と独創性を受け継ぎ、2014年にフレンチラグジュアリーを届けるブランドとして創設されたDSオートモビルの新型「N°4(ナンバーフォー)ETOILE HYBRID」をレポートする。

DS Automobiles「N°4」、プジョー「5008」、シトロエン「C5 エアクロス」にイッキ乗り。今回はDS Automobiles「N°4(ナンバーフォー)」のインプレッションをお届け

 ブランドとしてのDSが目指すのは、“フレンチ・アート・オブ・トラベル”の実現。新たな命名理念である、フランス語で番号を意味する「No」を冠したN°4は、ドライブそのものがアートになるクルマとしてデザインにも並々ならぬこだわりが注がれている。SUVとしてはかなり低い全高1495mmで美しいルーフラインを描くボディは、全長4415mm、全幅1830mmと日本の道路事情でも扱いやすいサイズを保つ。そこに、往年のフレンチラグジュアリーセダンを現代的に解釈したかのような、豊かさと先進性を合わせ持つフロントマスクが視線を惹きつける。グリル中央のDSエンブレムから左右に広がる精緻な造形のライティングシグネチャーは、幾何学的な意匠と大胆な意匠が手を組み、まるでパリの荘厳な夜景の中に引き込まれるような感覚をおぼえる。強い存在感を放ちながら、それでいてまったく威圧感がない。これこそがアートの力なのかと感心させられた。

 リアビューにもまた、彫刻的な光の演出が仕込まれている。ブラックやスモールクロームの色調を用いながら、流れるようなラインに添ってひし形が並ぶLEDテールランプは、まるでルネ・ラリックのガラス工芸を見ているような美しさ。これが点灯すると、40灯のLEDによるシーケンシャルインジケーターによって光の軌跡を生み出し、控えめなブランドと車名のロゴを引き立てるようなリアビューが新しい。

フレンチラグジュアリーの美学と創造性を体現したというN°4。ボディサイズは4415×1830×1495mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2680mm、車両重量は1490kg
バンパー端のLEDデイタイムランニングライトから中心のDSロゴに集まるようなライティングシグネチャーが特徴
19インチアロイホイール[LIMA]にはミシュラン「e-PRIMACY」(205/55R19)を組み合わせる

 そしてインテリアは、これまでのDSモデルとは打って変わって落ち着いた空間に仕立てられている。パリの伝統装飾にインスパイアされた“クル・ド・パリ”のモチーフは健在だが、スイッチなどに大胆にあしらわれてややデコラティブだったデザインとは違い、ドアトリムやエアベントにさりげなく用いられているのが印象的。ただ、1つ1つのスイッチはとても凝ったつくりで、指で触れると触感が異なるので、オーナーになればいつしかブラインドタッチでもどのスイッチかがわかるようになりそうだ。

 アルカンターラがあしらわれたダッシュボードは、思いのほか硬めの触感だったが、アルカンターラとテップレザー、ファブリックが洗練された模様で個性を感じさせるシートは見るからに座り心地がよさそうだ。実際、厚みのある高密度フォームが身体をそっと受け止め、サイドサポートの張り出しも大きめで、心地よく安心感のある座り心地。頭上のゆとりは大きいとは言えないが、圧迫感があるほどではなく視界もしっかりと確保されている。

上質な素材と細密なディテールにこだわり、静謐で洗練された印象のインテリア。「パリの爪」とも呼ばれるギョーシェ彫りの「クル・ド・パリ」を随所にあしらっている
フロントシートには高密度フォームを採用
ラゲッジは5人乗車時で430L、リアシートバック折りたたみ時で1240Lという十分な容量を確保

 パワートレーンは、直列3気筒1.2リッターガソリンターボエンジンに電気モーターを組み合わせ、電気のみでの走行も可能なマイルドハイブリッド。走り出しから軽やかさと上質感のバランスがよく、速度を上げていくほどに低重心な感覚が強まって、SUVを運転しているのとは違った安心感がある。目の前には、10.25インチのデジタルインストルメントパネルとヘッドアップディスプレイが連携し、ほとんど視線移動を行なわずに情報が受け取れる視認性のよさも実感できた。

最高出力100kW(136PS)/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpmを発生する直列3気筒DOHC 1.2リッターターボエンジンを搭載し、トランスミッションには6速ATを組み合わせる。さらに、トランスミッション内に最高出力15kW/4264rpm、最大トルク51Nm/750-2499rpmの電動モーターを搭載。市街地などではモーターのみでの電動走行も可能としている

 足下の19インチタイヤはやや路面への当たりが硬めに感じるシーンもあったが、継ぎ目などで跳ねるようなことはなく、乗り心地はほどよく引き締まっているという印象。市街地から首都高速道路というコースでは、上り坂や合流での強めの加速も試したが、途中でエンジンが大きく唸るようなことはなく、モーターのアシストがうまく作用していると感じた。ドライブモードはNORMALE、ECO、SPORTがあり、すべて試してみたがECOでも不自然に抑え込まれるような感覚はなく、市街地でのノロノロ渋滞などで使いやすそうな印象。SPORTはアクセルのレスポンスがやや俊敏になるように感じ、車線変更などで一発でスッと加速が決まるようなキビキビ感がアップする。劇的にスポーティになるわけではないが、シーンに応じた使い分けができるのは嬉しい。

華やかなデザインで、しっかりとした走りを味わえる

 エクステリアではほかにないアヴァンギャルドなラグジュアリーを感じさせながら、インテリアや乗り味ではほどよい個性と心地よさを兼ね備えるN°4。既存のラグジュアリーとは一線を画し、見た目からだけではなく五感で味わうラグジュアリーが息づく1台だ。

フレンチラグジュアリーを存分に体感できる個性派モデルだ
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:安田 剛