試乗記
【ステランティスのフレンチブランドイッキ乗り】DSオートモビルの新型「N°4」 フレンチラグジュアリーの優雅な1台
2026年6月19日 07:00
ステランティスが擁するフレンチブランド、「プジョー」「シトロエン」「DS Automobiles」の最新モデルがそろう試乗会が行なわれた。同じフランス生まれのブランドではあるが、1日に乗り換えるとこんなにも別の個性があるのかと驚かされる。
今回は、1955年に誕生したシトロエンの名車・DSの革新性と独創性を受け継ぎ、2014年にフレンチラグジュアリーを届けるブランドとして創設されたDSオートモビルの新型「N°4(ナンバーフォー)ETOILE HYBRID」をレポートする。
ブランドとしてのDSが目指すのは、“フレンチ・アート・オブ・トラベル”の実現。新たな命名理念である、フランス語で番号を意味する「No」を冠したN°4は、ドライブそのものがアートになるクルマとしてデザインにも並々ならぬこだわりが注がれている。SUVとしてはかなり低い全高1495mmで美しいルーフラインを描くボディは、全長4415mm、全幅1830mmと日本の道路事情でも扱いやすいサイズを保つ。そこに、往年のフレンチラグジュアリーセダンを現代的に解釈したかのような、豊かさと先進性を合わせ持つフロントマスクが視線を惹きつける。グリル中央のDSエンブレムから左右に広がる精緻な造形のライティングシグネチャーは、幾何学的な意匠と大胆な意匠が手を組み、まるでパリの荘厳な夜景の中に引き込まれるような感覚をおぼえる。強い存在感を放ちながら、それでいてまったく威圧感がない。これこそがアートの力なのかと感心させられた。
リアビューにもまた、彫刻的な光の演出が仕込まれている。ブラックやスモールクロームの色調を用いながら、流れるようなラインに添ってひし形が並ぶLEDテールランプは、まるでルネ・ラリックのガラス工芸を見ているような美しさ。これが点灯すると、40灯のLEDによるシーケンシャルインジケーターによって光の軌跡を生み出し、控えめなブランドと車名のロゴを引き立てるようなリアビューが新しい。
そしてインテリアは、これまでのDSモデルとは打って変わって落ち着いた空間に仕立てられている。パリの伝統装飾にインスパイアされた“クル・ド・パリ”のモチーフは健在だが、スイッチなどに大胆にあしらわれてややデコラティブだったデザインとは違い、ドアトリムやエアベントにさりげなく用いられているのが印象的。ただ、1つ1つのスイッチはとても凝ったつくりで、指で触れると触感が異なるので、オーナーになればいつしかブラインドタッチでもどのスイッチかがわかるようになりそうだ。
アルカンターラがあしらわれたダッシュボードは、思いのほか硬めの触感だったが、アルカンターラとテップレザー、ファブリックが洗練された模様で個性を感じさせるシートは見るからに座り心地がよさそうだ。実際、厚みのある高密度フォームが身体をそっと受け止め、サイドサポートの張り出しも大きめで、心地よく安心感のある座り心地。頭上のゆとりは大きいとは言えないが、圧迫感があるほどではなく視界もしっかりと確保されている。
パワートレーンは、直列3気筒1.2リッターガソリンターボエンジンに電気モーターを組み合わせ、電気のみでの走行も可能なマイルドハイブリッド。走り出しから軽やかさと上質感のバランスがよく、速度を上げていくほどに低重心な感覚が強まって、SUVを運転しているのとは違った安心感がある。目の前には、10.25インチのデジタルインストルメントパネルとヘッドアップディスプレイが連携し、ほとんど視線移動を行なわずに情報が受け取れる視認性のよさも実感できた。
足下の19インチタイヤはやや路面への当たりが硬めに感じるシーンもあったが、継ぎ目などで跳ねるようなことはなく、乗り心地はほどよく引き締まっているという印象。市街地から首都高速道路というコースでは、上り坂や合流での強めの加速も試したが、途中でエンジンが大きく唸るようなことはなく、モーターのアシストがうまく作用していると感じた。ドライブモードはNORMALE、ECO、SPORTがあり、すべて試してみたがECOでも不自然に抑え込まれるような感覚はなく、市街地でのノロノロ渋滞などで使いやすそうな印象。SPORTはアクセルのレスポンスがやや俊敏になるように感じ、車線変更などで一発でスッと加速が決まるようなキビキビ感がアップする。劇的にスポーティになるわけではないが、シーンに応じた使い分けができるのは嬉しい。
エクステリアではほかにないアヴァンギャルドなラグジュアリーを感じさせながら、インテリアや乗り味ではほどよい個性と心地よさを兼ね備えるN°4。既存のラグジュアリーとは一線を画し、見た目からだけではなく五感で味わうラグジュアリーが息づく1台だ。















