試乗記
ホンダ「シビック e:HEV RS」公道試乗 S+Shiftを組み合わせた走りは痛快!
2026年7月28日 07:00
プレリュードとシビックe:HEVとの比較試乗
6月に発売を開始し、好調な滑り出しを見せているという「シビック e:HEV RS」。プレリュードで話題となった「S+Shift」と、引き締められた足まわりを持つスポーティな1台だ。
ちなみに現行シビックでいうと、「RS」は先んじて6速MT搭載のガソリンモデルが登場している。今回その比較試乗こそなかったが、代わりにベースとなる「e:HEV」(グレードはEX)と、元祖S+Shift搭載モデルである「プレリュード」との比較で、その実力を確かめることができた。
シビック e:HEV RSを走らせ、まず最初に感じるのはドシッと落ち着いた乗り味だ。その足まわりは基準車であるe:HEVに対して、スプリングおよびスタビライザーのロール剛性を11%向上。これに併せてダンパーの減衰力もマッチングが図られた。
またロワアームのボディ側ブッシュも、ガソリンモデルのRSと同じくソリッドラバー化。液体封入式ブッシュに対してフロントで45%、リアで62%その剛性を引き上げた。さらにステアリングのトーションバーも、ガソリン仕様の「RS」と同じハイレート仕様(60%も剛性を向上)が装着されている。
タイヤサイズは235/40R18でガソリンモデルの「RS」と同じだが、コンパウンドはグッドイヤー「イーグル F1 ASYMMETRIC 2」から「イーグル F1 ASYMMETRIC 6」へと進化を果たした。これによって乗り心地や操縦安定性とウェットブレーキ性能をキープしながら、転がり抵抗を20%低減し、ドライブレーキ性能を3.4%向上。そしてフェーズ3へ移行した車外騒音規制に対応するためだろう、ロードノイズも8.8%低減した。ちなみに当日試乗した標準仕様のe:HEVには、ミシュラン「パイロットスポーツ4」が装着されていた。
11%引き上げられた足まわりの剛性に対しては、e:HEVユニットの重量がうまくバランスしている。多少段差ではブッシュがコツコツと硬さを訴えかけてくるけれど、低速からダンピングも効いていて、ガソリンモデルのような突き上げまでは感じない。
ステアリングフィールも好印象だ。高剛性なトーションバーでも初期操舵がリニアなのは、わずかなねじれをセンサーで感知できているからだと思う。そのアシスト量はスポーティモデルとしては適切な重さで、タイヤの接地感がきちんと手の平に伝わってくる。
ハイライトとなる「S+Shift」は、RS用に専用チューニングが施された。操作系はパドルがアルミ製に。常用域でこれをダウンシフトすると、4段階で回生ブレーキ制御が得られるのはこれまでどおりだ。そして「S+Shift」ボタンを押すと、疑似8段のステップ制御が得られるようになる。
その際、ドライブモードも自動的に「SPORT」になるのが、各モードでS+Shiftを使えたプレリュードとの大きな違いだ。またメーターも、プレリュードではタコメーターデザインとギヤ段数の組み合わせだったが、シビック e:HEV RSではパワーメーターのままギヤ段数が「D」の横に数字で小さく表示されるのみとなる。
S+Shiftボタンを押せば即SPORTモードになるなら、モードボタンの「SPORT」はいらないのでは? 2つの操作は混乱を招かないのか? と開発陣に尋ねたら、「ステップ制御なしでスポーツモードのレスポンスだけ欲しい、というニーズがあるのではないか」という結論に落ち着いたのだという。要するに、ブンブンさせずリニアに走りたいシチュエーションもあるだろう、というわけだ。
足まわりとS+Shiftを組み合わせた走りは痛快
そんなシビック e:HEV RSのステップ制御はとても気持ち良かった。その要となっているのは、4つにスピーカーを増やした「アクティブサウンドコントロール」だ。場所的には従来のAピラー両側2つに対して、フロントバルクヘッド側とリアクォーター右側に1つずつスピーカーが追加された。
そのサウンドは、プレリュードよりもアグレッシヴだと感じた。実際、制御的にもより低いエンジン回転数からサウンドを立ち上げ、音量自体も高めたという。パドルを操作しないでも、仮装ギヤはその都度走りに合わせて変速を繰り返す。そのペースが緩ければ心地良く、アグレッシヴに走らせれば小刻みにシフトをアップ/ダウンする。確かに標準のe:HEVは、エンジン回転がピークを迎えない限りステップ制御をしなかったから、より常用域からスポーティな雰囲気が楽しめるようになったといえるだろう。
そしてパドル操作を行なうと、走りはさらにダイレクトさを増す。シフトアップ時のトルク変動はプレリュードの方が高いとのことだったが、疑似変速そのものは、十分レスポンシブ。前述のサウンドエフェクト効果もあって、確かにDCT変速を味わっている気分になれる。
パワーメーターが100%を超える場面(エンジン回転でいうと6000rpm)でシフトアップされてしまうのは少し残念だが、EVの疑似シフトとは違ってこちらは実際にエンジンを動かしているから、リミッターに当て続けるわけにもいかないだろう。エンジン回転をそのままキープして、サウンドでリミッターを表現し、インジケーターでシフトアップを促したりできる「MT」モードがあったらおもしろそうだが、そこまでする必要もないということだろう。
こうした足まわりとS+Shiftを組み合わせた走りは痛快だ。シビック TYPE Rの足まわりを移植し、しなやか仕上げとしたプレリュードに比べ、より重心の高いシビックボディをガッシリと支える分だけe:HEV RSの走りはむしろダイレクト感が高い。フロントの剛性感、回頭性の高さに対してはリアの伸びを抑えて車体を安定させているし、スポーティだけれど間口の広いセッティングになっている。
ただその分だけ、リアシートの乗り心地は極端にわるい。フロントシートでは感じられなかった強いハーシュネス。素早く立ち上がる横Gに対して、体を支えられない肉薄でホールド感のないシート。シビックのリアシートは非常に広くて快適だから、少しもったいない感じがした。
しかし開発陣いわく、この乗り心地は想定内だという。つまりはこの運動性能の高さに対して、快適性よりもリアタイヤの接地性(すなわち安全性)を取ったわけだ。個人的にはもう少し素直にリアサスを伸ばしてもよいと思うが、これがホンダの回答だ。
ちなみに6月から販売を開始して、いまやその40%以上がe:HEV RSなのだという。そしてそのユーザー層は60代以上が中心となっている。このことから考えても、確かに後部座席の使用率は少ないし、いざというときにはもちろん融通も利く。なんとも元気な60代だとは思うけれど、納得である。さらに言えばガソリンモデルの「RS」は、20代が中心とのこと。より安価で、乗り心地がソリッドなRSを若者が選ぶというのもやはり納得できる。
対して50代の筆者は、標準仕様のe:HEVに心地良さを感じた。あまりにまとまり過ぎてもの足りない部分もあるけれど、だからこそこれに「S+Shift」が装備されたらいいのにと思った。そもそもホンダの「RS」って“ロードセーリング”じゃなかったかしらん? と尋ねてみたら、社内的にはいまだにロードセーリングとのこと。しかし開発チーム内では「レーシングスポーツ」側に寄せていくコンセンサスが取られており、それをホンダ全体としても浸透できたらいいと考えている、とのことだった。
なるほどいまはホンダにとって元気が必要な時期だから、「RS=レーシングスポーツ」の意気込みには賛成だ。ロードセーリング、確かにちょっと意味が曖昧ではあるし。その上でノーマルモデルにも「S+Shift」が選べるようになったらとてもいい。























